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バスの待ち時間

ドキュメント内 ii (ページ 114-118)

バスや電車が来ると待っている人が全部いなくなるように、待っている客を全部一時に処理し てしまうようなサービスシステムをクリアリングシステムといいます。バスの定員は制限が無 く、いくらでも乗れるものとすると(解析のための理想化!)、このシステムで客の待ち時間は、

その客の到着時刻とバスの到着時刻だけから決まり、ほかの乗客の振る舞いには無関係です。こ の場合の待ち時間を計算してみましょう。

ここで問題:ピッタリ10分間隔で到着するバスを待つ場合と、平均10分間隔で不規則に到着 するバスを待つ場合とでは、平均的にみてどちらの待ち時間が長いと思いますか。もちろん、あ らかじめバスの発車時刻は分からないものとします。次の三つの中から選んでください。そう考 える理由もメモしておいてください。

(1)どちらも同じ (2)ピッタリ来る方が短い (3)不規則の方が短い

ピッタリ10分間隔ならば、バスの発車直後に停留所に到着する不運な客と、発車直前に到着 する幸運な客のバランスをとって、平均的な待ち時間は5分というのは納得するでしょう。到着 間隔がばらついたときどうなるでしょうか。

もし、間隔が5分と15分が交互に現れるとすると5分間隔の間に到着する客の待ち時間は平 均的に2.5分、15分間隔の間に到着する客の待ち時間は平均的に7.5分、だからその平均をとれ ば5分、したがって、バスの到着間隔がばらついても乗客の平均待ち時間は変わらない、という 推論は正しいでしょうか。

練習9.6 バスの到着間隔が5分と15分を交互に繰り返すものとします。下の図の横軸は5分 刻みの目盛が付いた時間軸で、バスは図の矢印の時刻に到着するとします。時刻tに到着する客 の待ち時間をW(t)とするとき、W(t)のグラフを図に記入しなさい。

解答:

練習9.7 上のグラフの平均的高さを計算しなさい。その結果と、きっちり10分間隔で到着する 場合の平均待ち時間の関係を説明しなさい。

解答:

練習9.8 バスの到着間隔が2分と18分が交互に繰り返す場合に同じ計算をしなさい。一般にx 分と20−x分が交互に繰り返す場合はどうなりますか。

解答:

練習9.9 これらの計算結果から、バスの到着の不規則性と待ち時間の関係について分かったこ とを説明しなさい

解答:

バスの発車直後を0とし、5分後、20分後、25分後、40分後にバスが到着するものとします。

その間に40人の客が1分間隔で到着するものとしましょう。1台目のバスに乗る人の待ち時間 は平均すると2.5分、2台目のバスに乗る人の待ち時間は平均すると7.5分、のように計算する と、1台目、3台目に乗る乗客10人の平均待ち時間は2.5分、残り30人の乗客の平均待ち時間

は7.5分、結局40人全体の平均待ち時間は

2.5×10 + 7.5×30

40 = 6.25

となり、10分の半分より長くなりました。

問題を提示した直後の推論では、平均2.5分の待ち時間と、平均7.5分の待ち時間を単純に平 均して結論を導きましたが、それが間違いの元でした。客の平均待ち時間ですから、すべての客 の待ち時間の平均になっていなければいけません。間隔が長い区間に到着する客の方が短い間隔 の区間に到着する客の数より多いのですから、その数によって重みを付けなければ、「客の」平 均待ち時間にならないのです。

さて、この議論を一般化してみましょう。時刻0から時刻TまでにバスがN 台到着したもの として、その到着時刻をt1, t2, ..., tN、到着間隔をxk =tk−tk−1とします。乗客は単位時間当 たりa人来るとすると、k台目のバスに乗る客は約axk人、その人たちの平均待ち時間はxk/2 として良いでしょう。そうすると、N 台のバスに乗る約aT 人の平均待ち時間は

1 aT

XN k=1

³axk×xk 2

´= 1 T

XN k=1

x2k 2 = N

T × 1 N

XN k=1

x2k 2 となります。

さて、ここからは確率の話になります。バスの到着間隔X1, X2, ...は確率変数で、その平均 分散をm =E(X), σ2 =V(X)としましょう。上のx1, x2, ...はこの確率変数の標本です。区 間[0, T]の間にバスがN 台来たのですから、T/N はバスの平均到着間隔E(X)にほぼ等しいと 言って良いでしょう。N1 PN

k=1x2kN が十分に大きいとすれば、大数の法則を使って、X2 期待値(2次モーメントと言います)

E(X2) =V(X) +E(X)2=σ2+m2

と置き換えても構いません。以上により、バスの平均待ち時間wは次のように表すことが出来 ました。

w= 1 m

E(X2)

2 = 1

2m

¡σ2+m2¢

=m 2

µ 1 +³σ

m

´2

ここで、σ/m、つまり標準偏差σを平均mで割ったもの、は変動係数と呼ばれ、「ばらつき」の 大きさを基準化する場合に用いられる尺度です(これにより、象の心臓の重さのばらつきと、「の み」の心臓の重さのばらつきの大きさを正当に評価することができる、ということだったこと思 い出してください)

到着間隔が一定ならばσ= 0ですから、変動係数は0、したがって平均待ち時間はm/2です。

到着間隔がばらつきだすと、上の式の第2項の分だけ平均待ち時間は増加します。もし、σ=m ならば、つまり変動係数が1ならば、2倍になります。このようにして、ばらつきが平均待ち時 間を増大させることを量的に評価することが出来ました。客を待たせることを社会の損失と考え れば、損失を抑えるために、バスの到着間隔をそろえることが重要であることが分かります。

クリアリングシステムとして、工場の出荷を考えてみますと、客つまり製品の出荷を待たせる ことは在庫につながり、損失になります。したがって、安定出荷(生産)、すなわち品質をそろ える、ということがいかに重要か、ということの例にもなっています。

練習9.10 区間[a, b](b > a >0)で一様分布する確率変数の変動係数の2乗が(b−a)2/3/(a+b)2 になることを確かめ、バスの到着間隔が区間[5,15]で一様分布している場合に平均待ち時間を計 算しなさい。到着間隔が平均10の指数分布になった場合はどうですか(指数分布の密度関数は 0.1e−0.1tです)

解答:

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