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第 5 回シリアスゲームジャムの実施報告

ドキュメント内 2016 2016 目次 (ページ 111-115)

Game State

2. 第 5 回シリアスゲームジャムの実施報告

シリアスゲームの開発において重要なのは,テーマ の選定,適切な専門家及び実行委員による協力体制の 確立,適切にターゲットを明確にした参加者募集,チ ームの編成,ペラコンの実施,会場選定,日程選定及 び協力企業・組織等への支援依頼である.以下,各項 目の検討過程を含めて実施内容を述べる.

図1 事前講義ビデオを収録(7月16日) 2.1 テーマの設定

先述した通り,第1 回から第 3 回までのテーマは教 育に関連したもので,第 4 回では社会問題に対する啓 蒙であった.第 5 回では,シリアスゲームの適用分野 として期待されていながらこれまで取り組んでいなか った医療・福祉を対象とすることと決めた.続いて,

市販のゲームやIT機器等を積極的に現場に適用する試 みがなされている作業療法士の先生のアドバイスがき っかけとなり,大学生の時に難病にかかって車椅子生 活を送られている織田友理子さんの協力が得られるこ ととなり,“バリアフリーに対する意識の向上”をテー マとすることが決まった.また,織田友理子さんには7 月16日に事前講義のビデオ撮りを行い(図1),YouTube 上での公開準備を行った.更に,車椅子の少女をイメ ージキャラクタとするべく,イラストの得意な学生に 声をかけてキャラクタデザインを開始した.その後,

宇宙からやってきたペティルが重力の影響により地球 上では車椅子による移動を余儀なくされている,とい うストーリが学生達によって考え出され,図 2 のポス ターのようなキャラクタ“ペティル”が完成した.

2.2 専門家及び実行委員による協力体制の確立 専門家の代表として先述した織田友理子さんが決ま った後,医療・福祉分野で臨床に関わっている方とし て作業療法士の田中栄一先生(国立病院機構 八雲病院),

福祉工学の分野で実践的研究をされている伊藤史人先 生(島根大学総合理工学研究科)の2名に専門家として実 行委員として加わっていただいた.この専門家 3 人に よる体制は,SGJ5でとても良い効果が確認されたので,

今後実施する際には参考とすると良い.最も良かった

図2 SGJ5のポスター(当日掲示用)

のは,参加者が制作の各段階で専門家の方に質問をし,

設計に適時反映していた点である.次に良かったのは,

今後制作したゲームを臨床実験する際等の協力体制が 得られやすい点である.

また,その他の実行委員としてはゲーム教育SIGメ ンバの他,ゲームジャムの運営経験が豊富な方,シリ アスゲームの教育への応用について研究している大学 院生,ジャーナリスト等に運営側に入っていただき,

今後の継続的な実施に向けて,様々なノウハウの共有 ができる体制を組んだ.

2.3 参加者の募集とチーム編成

参加者の募集にあたっては,これまでの経験等に基 づき,以下の3つの仮説を基本方針として募集した.

(仮説1) ゲーム開発のプロが参加した方が良いだろう

(仮説2) ソフトウェア開発の現場経験のある社会人の

参加が効果的であろう.

(仮説3) 外国人の参加者も加わると良いであろう.

この基本方針の下,10月10日から教員の口コミ,ホ ーム・ページ及びSNS上で参加者募集を開始した.具 体的には,各大学・専門学校,ゲーム制作会社,社員 研修に積極的なIT関連企業,留学生のいる大学等を対

象に募集告知をした結果,社会人(日本人):6名(内ゲー ム開発のプロは2名),社会人(外国人):1名,学生(外国 人): 5名,学生(日本人): 28名の,計40名の参加者が11 月4日の締切までに集まった.

また,並行してシリアスゲームの企画書コンテスト

(ペラコンとよぶ)のため企画書の受付を行い,11 月 7日の締切までに16作品が集まった.この中から実行 委員により 5 作品を選考し,参加者にはどの作品を制 作したいか第3希望まで申告するアンケートを実施し,

希望の作品とスキルがバランスするようなチームを編 成した(表1).編成にあたっては,コアとなる数名が同 じ組織となるように工夫したが,これは,事後作業を 確実にやり遂げてもらうための配慮である.

チーム編成を発表した11 月 10日からジャム当日の

12月10,11 日までの約1 ヶ月間,各チーム内のコミュ

ニケーション及び事前準備は自由とし,当日までには チーム形成の基本部分が完成しているようにした.

表1 参加者のスキルとチーム編成

チーム番号 T1 T2 T3 T4 T5

ディレクタ 1 1 1 1 1

プランナ 4 4 5 2 3

プログラマ 6 3 5 3 2

デザイナー(2D) 1 1 1 2 1

3Dモデラ 1 1 0 2 2

サウンド 0 0 1 0 0

リサーチャ 2 3 2 3 2

日本人 6 6 5 6 5

外国人 1 1 1 1 1

1 1 2 1 2

8 8 8(7) 8 8(6)

(

)

人数(かっこ内は欠席者除外後) 社会人

学生

2.3 制作した5作品の紹介 (1) ゴーゴンの館

肢体が不自由な方にフレンドリーな社会を実現す るための入力手段として視線入力装置を用いたシュー ティングゲーム.館の中を移動しながら,敵の瞳を注 視して攻撃する,視線の動きが誰でも自然に操作可能 な入力装置であることを体験でき,着眼点とゲーム性 が評価された.

(最優秀グランプリ賞受賞)

(2) BLIND MAZE

視覚が不自由な方にフレンドリーな社会を実現する ため,聴覚を駆使して暗闇の中で音をたよりに出口を

探すVRゲーム.ゲームジャムの会場を舞台とし,VR ゴーグルを装着して真っ暗闇と頭部の方位検出を実現 する.視覚があった場合との比較も可能.視覚障害に 関する研究が十分なされていたことと,総合的なデザ イン性が評価された.

(優秀リサーチ賞・デザイン賞受賞)

図3 BLIND MAZEプレイ中の様子

(3) バリアからの脱出VR

車椅子生活者にとっての室内におけるバリアを疑 似体験することを目的とし,バリアだらけの室内を舞 台としたVR脱出ゲーム.VRゴーグルを装着してリア ルな室内が疑似体験されたことが評価された.

(優秀VR賞受賞)

(4) Go! ペティル Go!

車椅子生活者にとっての街におけるバリアを体験 することを目的とし,例えば階段をスロープに変えて 街をバリアフリー化し,最終的には自分の故郷の星へ 帰還するための宇宙船の部品を集めるゲーム.ペティ ルのキャラクタデザインは学生が行い,3Dモデルは共 催したビサイド社のプロが制作した.

(オランダ大使館賞受賞)

(5)

視覚が不自由な方にフレンドリーな街を実現する ことを目的とし,視覚障害のある二匹の猿が安全に移 動できるよう,信号機へのメロディ付与,点字ブロッ ク敷設等,バリアフリー化作業を次々と行うゲーム.

助けて!見え猿聞こえ猿

2.4 Lessons Learned(得られた教訓)

募集時にたてた 3 つの仮説に対し,直感的かつ定性 的な評価を試みると,次の通りとなる.

(仮説1) 結果的に今回プロの参加者は2名で2つのチ

ームに所属した.いずれもゲームとしての出来栄 えに効果があったと考えられ,今後は全チームに

配置できるよう工夫することが今後の課題である.

(仮説2) ソフトウェア開発の現場経験者を全チームに

1名以上配置し,工程管理に大変効果があることが 確認された.社員研修へのシリアスゲームジャム の活用について,各企業の研修担当者等と情報共 有を続けるのが今後の課題である.

(仮説3) 全チームに外国人を配置したことにより,初

めて外国人と協働のソフトウェア開発を経験した 学生が多く,良い経験になったと考えられる.

図4 表彰式後の集合写真

4. 第1回シリアス&アプライドゲームサミット SGJ5の後援をしていただき,初日の晩は郷土料理を 夜食として提供していただいたのがオランダ大使館で ある.オランダではシリアスゲームをアプライドゲー

ムと呼び,産業の一分野を形成するほど近年ゲーム会 社の数が急増していることで知られている[3].そこで,

両国におけるシリアスゲームに関する研究開発及び商 業化に関する取り組み方の違いについて情報共有を図 るため,2017年2月24日にオランダ大使館で開催する のが第 1 回シリアス&アプライドゲームサミットであ る.開催結果の詳細については年次大会で報告する.

5. おわりに

本稿では,第 5 回シリアスゲームジャムの開催概要 を報告した.これまで 5 回の開催経験を通し,効率的 な運営のために必要なノウハウが蓄積してきた.また,

今回は初めてIT系企業の社員の方が6人参加し,プロ ジェクト管理全体についてその経験が活かされた.こ れらの成果は,今後マニュアル化することによって本 イベントを今後も継続的に実施できるようにするとと もに,シリアスゲームの社会的認知度向上に向けて,

ゲーム教育SIGとして活動を続ける予定である.

文 献

[1] 藤本徹(2007),シリアスゲーム 教育・社会に役立つデジ タルゲーム,東京電機大学出版局.

[2] 岸本好弘,古市昌一,“シリアスゲームジャム開催の歩 み –第1回から第4回シリアスゲームジャムまで-”, 日 本デジタルゲーム学会 2016年々時大会予稿集 (2017) [3] 古市昌一他,“オランダにおけるシリアスゲーム教育状

況 〜国際化教育と 2 国間シリアスゲームジャム〜”,

日 本 デ ジ タ ル ゲ ー ム 学 会 2015 年 年 次 大 会 予 稿 集 pp.022-025 (2016)

Game Education SIG Activity Report : Lessons Learned from the 5th Serious Game Jam and the 1st Serious & Applied Game Summit

Masakazu FURUICHI

i,

Yoshihiro KISHIMOTO

ii

, Masahito FUJIWARA

iii

, Megumi AIBARA

i

,

i Graduate School of Industrial Technology, Nihon University

ii Tokyo University of Technology, iii

E-mail: [email protected] Sensyu University

Abstract Although game is one of the typical Japanese culture known over the world, the awareness of the importance of serious games in a society is very lower comparing to other countries. In order to increase such awareness, we have been organized serious game jam, and this paper is about the 5th Serious Game Jam (SGJ5) which was held on Dec.

10-11, 2016. The topic SGJ5 is the awareness of accessibility, and this topic was the first trial for us to the field of medical and welfare. In the paper, we are also introduce the 1st Serious and Applied Game Summit which was held on Feb. 24, 2017.

Keywords Serious Game, Social Welfare, Game Jam, Serious Game Jam

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