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伊藤彰教 ⅱ 伊藤謙一郎 ⅲ

ドキュメント内 2016 2016 目次 (ページ 38-41)

東京工科大学大学院情報・バイオメディア研究科〒192-0982東京都八王子市片倉町1401-1

1. はじめに

ディジタルゲームが登場して以来、殆どのディジタ ルゲームに見られる映像と音響・音楽とともに演出が 構成されてきた。特に近年、ゲームの音楽・音響、つ まりゲームサウンドに関する研究は急速に進展してい る。Collinsの出版した「GameSound」[1]により、ゲーム のサウンド研究は学術研究まで高められており、その 後もゲーム音楽研究書[2][3]や、高度な音楽的・構造的視 点からゲーム音楽のメソッドを記した著書[4]も出版さ れた。日本国内では伊藤がGameSoundを講読し、解釈 したものを、BGM・SE・Dialogに再整理し、11種類に 分類した旨の講演を行っている[5]。その後、米山らはそ の分類を再整理し、9 種類にまとめたうえ、「戦国無双 シリーズ」(1)の分析を行っている[6]

また、伊藤らはゲーム構造分析および楽曲分析研究 に向けた研究のためのフレームワークを検討している

[7]。映画での音楽分析を踏まえ、ゲーム音楽の分析を音 楽研究における視聴における楽曲分析として学部生に 行わせた。

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概要ディジタルゲームにおいて擬似的な身体感覚を誘発するシーンは数多く確認することができる。従来のゲー ムシステムから考えられたゲームサウンドとは別に、本研究では、ギャラガーの提唱した身体保持感や運動主体感 から擬似的な身体感覚を捉える。擬似的な身体感覚を誘発するシーンでのゲームサウンドの役割を分析する。

キーワードゲームサウンド,身体保持感,運動主体感

本研究者らは、これらゲームサウンド研究において 取り上げられていない、ゲームのインタラクションに おけるゲームサウンドの機能に着目した。映像とサウ ンドによる演出と、操作が合わさることにより誘発さ れる複数の感覚を、ギャラガーの提唱した[8]「身体保持

感」と「運動主体感」から捉え、それら感覚が誘発さ れる演出においてゲームサウンドがどのように機能し、

演出を高めているかを明らかにする。

本研究では身体保持感および運動主体感が誘発され る演出におけるゲームサウンドの機能を明らかにする ための研究手法および分析手法を検討する。

2. 擬似的な身体感覚

まず、身体保持感および運動主体感が誘発される感 覚にどのような感覚があるかを検討する。ヒトは特殊 感覚と呼ばれる、視覚・聴覚・味覚・臭覚・平衡覚の 他に、体性感覚と内臓感覚を持つことが知られている。

このうち、体性感覚では皮膚表在感覚・深部感覚があ り[9]、皮膚感覚では触圧覚・温覚・冷覚・痛覚がなど、

深部感覚では筋覚・関節覚などが知られている。これ ら体性感覚は皮膚表在受容器と深部受容器が興奮する ことにより得られるものであるが、聴覚と体性感覚の ふたつの感覚器が刺激されることにより誘発されるマ ガーク効果[10]といった、複数の感覚器を刺激すること により誘発されるマルチモーダルな知覚も確認されて いる。一方、感覚間の相互作用を利用することで感覚 器と直接対応していない感覚を引き起こす、クロスモ ーダルな感覚情報提示もあり、デジタルメディアでは 多く利用されている。

本研究者らは過去から現在のゲームまで、そのよう なクロスモーダルな感覚が 8 種類あると考えた。重さ 感・引っ張られ感・反作用感・眩暈感・空間の知覚・

操作の遊び・上昇下降感・摩擦感である。本研究では これらを擬似的な身体感覚とする。これら擬似的な身 体感覚はギャラガーの提唱した身体保持感と運動主体 感から検討することで、それぞれの感覚器で起こる現 象や、感覚間の相互作用といったヒトの内部の現象か ら、ヒトと外部との関係性として感覚の誘発現象を捉 えることができる。そうすることで、単純にヒトとゲ ームの関係性の分析を行えると考えた。擬似的な身体 感覚でのサウンドの機能を分析するに先立ち、映像に よる誘発表現、映像と操作による誘発表現の分析・検 討を行う。それぞれの分析の手法を検討する。

3. 映像による誘発表現

3.1 撮影術・SFX //視覚による動きの知覚

映像における誘発表現を検討するためには、ヒトが どのように動きを知覚しているか、どのような錯覚が あるかを確認する必要がある。また、知覚とは別に、

映画の分野における研究や、実際に行われているカメ ラオペレーションなど、映像表現も調査する必要があ るだろう。

知覚に関しては「運動視」がある。ヒトの、最も基 本的な動きに関する感覚処理過程であり、このうち、

知覚される運動対象が客観的に運動している場合は

「実際運動」、客観的には静止している場合を「仮現運 動」「誘導運動」「自動運動」としている[11]。有名な錯 覚としてベクションがあり、これは視覚と体性感覚の マルチモーダル[12]によって引き起こされる。

映画の分野では制作手法が体系的に整理[13]されてお り、また、映像分析も多く行われている[14]。映画の制 作手法では当然ながら映像表現に関する手法が多く確 立されている。被写体の動きや画面の構成および構図 といった画面上の要素から、それを撮影するカメラの 位置や移動、レンズの被写界深度などがあげられる[15]

3.2 映像分析

擬似的な身体感覚のための映像分析を考えた場合、

画面上の被写体の動きや構成・構図の分析と、それを 撮影するカメラの移動や位置の二方向からの分析が必 要になるだろう。そして静止画としてだけでなく、時 間ごとの変化を明らかにしなければならないだろう。

まずは、スクリーンプレイやストーリーボードの入手 し、分析を行うのが良いだろう。しかし、入手が困難 である場合は画像解析などにより、効率よく抽象化し たデータを収集する手法が必要となる。またカメラの 位置や移動といった画面外の要素に関しても同様であ る。

4. 映像と操作による誘発表現

映像と操作による誘発表現においても確認する。映 像と操作によるクロスモーダルな現象として擬似触覚 があげられる。擬似触覚は映像と操作によってヒトに 感覚器と直接対応していない刺激を与えているのに同 様な感覚を錯覚するものである。Lécuyerはマウスとポ インタによる摩擦抵抗感覚[16]をはじめ、バネ抵抗感[17]

や力覚提示[18]といった様々な感覚提示を行っている。

映像と操作を用いたインタラクションではタッチパネ ルを用いたインターフェイスやコントローラーを用い たゲームが挙げられる。タッチパネルでのゲームデザ インはタップやダブルタップ、フリックといった操作 があげられる[19]

5. 身体保持感と運動主体感

身体保持感とは「これはまさに自分である」という 感覚である。身体保持感を確認できる例として「ラバ ーハンド錯覚」が挙げられる.BotvinickとCohenのラ バーハンド実験[20]では、被験者は,注視しているラバ ーハンドと自分の手を同時かつ同様にブラシで撫でら れた際に、注視しているラバーハンドの感覚あたかも 自分の手で感じられるような錯覚を確認している、一 方で、ラバーハンドと自分の手が撫でられたタイミン グをずらした際には錯覚は生じない。このことから視 覚と体性感覚の時間的な整合性が重要であると考えら れる。運動主体感は「この運動を引き起こしているの はまさに自分である」という感覚である。例えば、モ

ニタ上のマウスカーソルが動いているのはマウスを自 分が操作したからだ、といった例が挙げられる。ラバ ーハンド錯覚に見られる身体保持感と同様,運動主体 感においても視覚と体性感覚、そして遠心性コピー[21]

の時間的な整合性が重要と考えられている。Jeannerod は遠心性コピーと感覚フィードバックが空間的にズレ ていても、時間的な整合性が取れていれば運動主体感 に問題は起こらないとしている[22]

6. 音による誘発の演出の向上

擬似的な身体感覚を誘発するゲームシーンを身体保 持感および運動主体感で整理し、そこに付与されてい るサウンドを分析する。ゲームシーンにおける映像お よび映像と操作を上で述べた手法で検討するとともに、

そこで誘発される感覚が身体保持感と運動主体感どち ららか、もしくはどちらでもあるかを検討し、本研究 者らが挙げた 8 つの感覚に当てはまるかを検討する。

そこでそれぞれの感覚を誘発するようなゲームサウン ドの機能を明らかにする。

7. おわりに

擬似的な身体感覚でのゲームサウンドの機能を明ら かにするために映像と映像および操作における既存の 手法を確認し、ゲームサウンドを身体保持感と運動主 体感から分析する手法を検討した。しかし、それぞれ の分析手法は確立されたものでない。また、擬似的な 身体感覚を誘発するシーンの系統だったデータが不足 しているため、今後は分析手法の確立とデータの収集 を行っていきたい。

文 献 [1]

[2] Peter Moormann(Ed.)(2013). Music and Game Perspectives on a Popular Alliance. Springer VS Karen Collins (2008). GameSound. The MIT Press

[3] K.J.Donnelly(Ed.)(2014). Music in Video Games.

Routledge

[4] Winifred Phillips(2014). A Composer’s Guide to Game Music. MIT Press

[5] 伊藤彰教 (2013). ゲームサウンドの機能と IM の可能性 -海外の研究事情をもとに-

http://kokucheese.com/event/index/132754/(2016年1 月31日)

[6] 米山, 伊藤彰教, 伊藤謙一郎(2014).Collinsの手法 によるアクション系ゲームのサウンド機能の分 析.DiGRA Japan Proceedings 2014 summer, 20-23.

[7] 伊藤彰教(2014).音楽学を応用したゲーム構造分析 および楽曲分析研究に向けた研究フレームワーク の検討.DiGRA Japan Proceedings 2014

summer,28-31.

[8] Gallagher, S.(2000). Philosophical conceptions of the self: Implications for cognitive science. Trends in Cognitive Science, 4, 14-21.

[9] 乾敏郎(監),電子情報通信学会(編)(2012).感覚・知 覚・認知の基礎.オーム社.pp37-47

[10] McGurk, H., & MacDonald, J. (1976). Hearing lips and seeing voices. Nature, 264, 746-748.

[11] 中島義明(1996). 映像の心理学-マルチメディアの

基礎-.サイエンス社.pp14-22

[12] Brandt, T., Dichgans, J., & Koenig, E. (1973).

Differential effects of central versus peripheral vision on egocentric and exocentric motion perception.

Experimental Brain Research, 16, 476–491.

[13] Blain Brown(2012).Cinematography: Theory and Practice: Image Making For Cinematographers and Directors. Focal Press.

[14] Gustavo Mercado(2010).The Filmmaker's Eye:

Learning (and Breaking) the Rules of Cinematic Composition.Focal Press.

[15] ジェニファー・ヴァン・シル(著),吉田俊太郎

(訳)(2012).映画表現の教科書-名シーンに学ぶ決定 的テクニック-.フィルムアート社.

[16] A.Lécuyer, S.Coquillart, A.Kheddar, P.Richard, P.Coiffet(2000). Pseudo-Haptic Feedback: Can Isometric Input Devices Simulate Force Feedback?.

IEEE International Conference on Virtual Reality, pages 83-90, New Brunswick.

[17] A.Lecuyer, J.-M.Burkhardt, S.Coquillart,

P.Coiffet(2001). 'Boundary of illusion’: an experiment of sensory integration with a pseudo-haptic system.

Proc.IEEE Virtual Real.

[18] L.Dominjon, A.Lecuyer, J.-M.Burkhardt, P.Richard, S.Richir(2005). Influence of control/display ratio on the perception of mass of manipulated objects in virtual environments. IEEE Proceedings 2005. Virtual Reality.

[19] S.Rogers (著), 塩川洋介(監),佐藤理絵子(訳)(2013).

「タッチパネル」のゲームデザイン―アプリやゲ ームをおもしろくするテクニック.オライリージ ャパン. pp50-55.

[20] Botvinick, M., &Cohen, J. (1998). Rubber hands ‘feel’

touch that eyes see, Nature,

[21] Von Holst, E. (1953). Relation between the central nervous system and peripheral, Journal of Animal Behavior, 2, 84-94.

391, 756.

[22] Jeannerod, M. (2003). The mechanism of self-recognition in humans. Behavioural Brain Reserch 18, 314-320.

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