NARANJO BEJARANO CARLOS
鳥海不二夫 ⅰ 篠田孝祐 ii 大澤博隆 iii 三宅陽一郎 iv
4. 実データへの適用
以下では,提案する利用状態の分類手法を,実際の データに対して適用し,その有効性を確認する.
4.1 対象データ
実験には,ユーザ行動の可視化や広告効果測定など の マ ー ケ テ ィ ン グ 支 援 機 能 を 提 供 す るMetaps Analytics[5]
4.2 分析結果
に蓄積された,アプリの起動や課金ログデー タを使用する.対象期間は 2016/05/01 から 2016/11/31 の7 ヶ月間で,期間中にMetaps Analyticsを導入してお り,Google PlayもしくはApp Storeにおいてインストー ル可能なゲームが対象アプリである.対象デバイスは,
期間中に複数アプリを起動したことがあり,かつ月に1 日はアプリの起動履歴のあるデバイスとする.
本節では,利用状態と継続性,そして課金行動との 関係性について順に確認していく.パラメータ w と x は,今回はそれぞれ3と2に設定した.つまり3日中2 日の起動でCore状態であると定めている.
4.1.1 継続性に関して
表1 は,期間開始日から7 日時点でいずれかのアプ リでCore状態であったユーザのうち,一定日数が経過 した後も同一アプリにおいてCore状態であった確率を,
1Cと2Cそれぞれで算出し,平均した値を示している.
表を見ると,30 日経過時点では大きな違いはないが,
90 日経過時点では明確に 2C の方が高い確率となって いることが分かる.この結果から,より長期的にアプ リを利用してもらうためには,他にもCoreで利用して いるアプリが1つ以上ある状態が望ましいと言える.
表1: 利用状態別の継続率 7日時点の利用状態
1C 2C
30日後 0.593 0.608
60日後 0.478 0.508
90日後 0.424 0.475
120日後 0.431 0.478
150日後 0.399 0.431
180日後 0.359 0.415
4.1.2 課金行動に関して
対象期間中の課金額と利用状態及び選択多様性の違 いを確認していく.まず,期間中の各利用状態の出現 比率と,多様性Eに基づき,k-means法によりユーザを 7つのクラスタに分けた.各クラスタの利用状態出現比 率とエントロピーの平均値は表2に示している.
表2: 各クラスタの利用状態とエントロピーの平均 クラスタid 0C 0L 1C 2C E 0 0.135 0.269 0.547 0.048 0.482 1 0.142 0.359 0.364 0.135 1.383 2 0.136 0.541 0.223 0.100 2.303 3 0.143 0.712 0.111 0.034 3.236 4 0.000 0.000 1.000 0.000 0.134 5 0.000 0.000 1.000 0.000 1.284 6 0.000 0.000 0.000 1.000 1.384 表から,クラスタ0と1は期間中に1C状態がある程度 確認され,クラスタ 1 は利用アプリ数が少なく,クラ スタ 2 は様々なアプリを遊んでいるグループと解釈で きる.クラスタ2と3は,どちらも0L比率が高く,あ まりゲームを利用しないグループと思われる.クラス タ4と5はどちらもずっと1C状態であるグループであ り,4は少数のアプリを長期利用するグループ,5は何 度か利用ゲームをスイッチしているグループである.
最後のクラスタ6は,期間中ずっと複数アプリを Core 利用しているグループである.
各クラスタの課金行動を調べるために,アプリごと の課金率と,課金ユーザ 1 人あたり課金額の平均値を 算出した.表3はその結果である.ここで課金率とは,
期間中に 1 度でも課金したユーザの割合を意味する.
また,表中の課金ユーザ1人あたり課金額の平均値は,
クラスタ0を1とした時の比率に変換している.
表3: 各クラスタの課金率と1人あたり課金額 クラスタid 課金率 1人あたり課金額
0 0.153 1.000
1 0.115 0.613
2 0.059 0.333
3 0.021 0.229
4 0.216 1.743
5 0.126 0.248
6 0.307 1.234
課金率と1人あたり課金額ともに,クラスタ4 と6が 明らかに高い結果となった.課金率はクラスタ 6 が最 も高く,次いでクラスタ4となり,1人あたり課金額は その逆となっている.しかし,表 3 はアプリごとの集 計値の平均であることと,2Cメインのクラスタ6の方 がより多くのアプリを利用していることから,アプリ を区別しない 1 人あたり課金額は,クラスタ6 の方が クラスタ4より高くなるだろう.
これらの結果の考察をすると,2Cメインのユーザの 方が,時間短縮のための課金の必要性や,単純にゲー ムアプリへの課金の敷居が低いユーザが多いのではな いかと考えられる.一方1Cメインのユーザは,課金機 会は少ないが, 1つのアプリにより熱狂的であるため,
それが課金額として反映されているのではないかと考 えられる.マーケティングへの応用では,単一のアプ リを開発しているチームの視点と,アプリプラットフ ォームや複数アプリを販売している企業の視点それぞ れで議論する必要がある.前者にとっては,現在利用 しているユーザの特徴から,1Cメインか 2Cメインの どちらのユーザを獲得すべきかが変わってくるだろう.
例えば,課金率に課題を抱えていれば,よりマルチで ゲームをプレイしそうなユーザに接触できる場所に広 告を集中配信するのが望ましい.逆に,より課金額の 高いユーザを期待するのであれば,今はCore状態のゲ ームがないユーザにアプローチする方が確率は高くな る.後者にとっては,デバイスあたりの課金額の観点 から,2Cメインで継続してもらう方が良い状態である
といえる.したがって,現在Coreアプリを持つユーザ に対しても,積極的に他アプリを勧めるべきである.
最後に,利用アプリの組み合わせも課金行動に影響 を与えるのではないかという仮説のもと,課金ユーザ の課金日を課金クラス,無課金ユーザの各利用日を無 課金クラスとして分類問題を設定した.説明変数は利 用したアプリ名のみであり,同じユーザで同じ利用ア プリの日が複数回ある場合は重複を削除している.モ デル構築手法としては,あるクラスに特徴的に出現す るコントラストパターンと呼ばれるパターン集合を利 用したクラス分類モデル構築手法であるCAECP[6]
図 2 は,出力モデルの例である.ここで,ノードラ ベルはカテゴリ
を利 用する.紙幅の都合上,CAECPの詳細な説明は割愛す
るが, CAECPは,ごく少数のパターンでモデル構築可
能であるため可読性が高く,かつ比較的高い予測精度 を出すことが実証されている.5回の交差検証法による 計算機実験の結果,正答率は0.621となり,これはクラ
ス比率の0.589に比べて高く,意味のある予測モデルを
構築することができた.つまり,利用アプリの組み合 わせは,課金に対して多少影響があると思われる.
1
1 Google Play Storeで分類されているカテゴリ名を使用して
いる.
レベルでマスクされた利用アプリ名を 表し,パターンはエッジの接続で表現され,エッジの 太さはパターンの影響力の強さに比例している.実線 のエッジは長さ3 以上のパターンを,点線は長さ 2 の パターンであることを意味する.また,図の左に位置 するほど課金クラスに強い影響を与えるノードで,逆 に無課金クラスに強い影響を与えるノードはより右に 配置される.どちらのクラスにも出現するノードは中 心に配置される.図から,Action1 とRPG1のように,
課金が発生しやすい特定の組み合わせが存在すること が確認できる.また,例えばRPG3 は,Pazzle1 と同時 利用されていれば課金クラス,逆にMusic1 と同時利用 されている場合には無課金クラスに属するなど,興味 深いパターンもいくつかみられる.しかし,パターン 内のカテゴリ名に統一性はなく,一見しただけでは意 味の解釈が難しい.この点に関しては,アプリのカテ
ゴリ名以外の特徴も抽出し,どういった共通項がみら れるのか,さらなる分析が必要である.
図2: 出力モデル例
5. まとめ
本稿では,ゲームアプリの利用状態と選択多様性に 基づきユーザを分類する手法を提案した.提案手法は,
実際のログデータに対して適用し,予測モデルの構築 などを通して,アプリの継続性や課金行動との興味深 い関連性を明らかにすることができた.今後の課題と しては,アプリの特徴量も考慮するなど,より複合的 な視点で分析を進めていきたい.また,本研究で得ら れた結果をゲーム開発会社やアプリストアに提供し,
より有効なプロモーション方法や,より最適な広告配 信モデルを検討していきたい.
文 献
[1] 矢野経済研究所, 「スマホゲームの市場動向と将来 性分析」, 2016.
[2] セガネットワークス, 「スマホゲームユーザー解体 新書 2014」, 2015.
[3] E. Pessemier and M. Handelsman, “Temporal Variety in Consumer Behavior”, Journal of Marketing Research, Vol. 21, No. 4, pp. 435–444, 1984.
[4] 白 井 康 之, 森 田 裕 之, 中 元 政 一, and Stephane Cheung, “購買選好度減衰曲線を用いた選択多様性 解析とその応用”, 日本オペレーションズ・リサー チ学会 2014年秋季研究発表会, pp. 234-235 [5] 株 式 会 社 メ タ ッ プ ス リ ン ク ス , Metaps
Analytics
[6] M. Nishiguchi, H. Morita, “CAECP and CRPD:
Classification by Aggregating Contrast Patterns and Contrast Ranked Path Diagrams”, Journal of Infromation & Knowledge Management, Vol. 15, No.
4, 2016.
Research on state transition analysis of game app utilization for multi event log data
Mao NISHIGUCHI
ⅰKatsuyuki ARII
ⅰand Fujio TORIUMI
ⅱⅰDevelopment Department, Metaps Inc. Sumitomo Fudosan Oak Tower 30F, 6-8-1 Nishi-Shinjuku, Shinjuku-ku, Tokyo, 163-6030 Japan
ⅱ
E-mail:
School of Engineering, The University of Tokyo 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-8656 Japan
ⅰ{mao_nishiguchi, katsuyuki_arii}@metaps.com, ⅱ
Abstract In this study, we try to analyze the transition of the usage state of the social game applications by using multi event log data, which recorded startup and purchase behavior. In addition, we discuss the influence between usage state and other behaviors by building classification models, and aim to obtain useful knowledge for marketing activities.
Keywords Social Game,State Transition,Sequential Data,Predictive model
日本デジタルゲーム学会 2016年度 年次大会 予稿集 Digital Games Research Association JAPAN Proceedings of 2016 Annual Conference
卒業制作でのチームゲーム開発におけるアジャイル手法の段階的適用 に関する事例
今給黎 隆
東京工芸大学 芸術学部 〒164-8678 東京都中野区本町 2-9-5 E-mail: [email protected]
概要 卒業制作として行ったゲームのチームによる開発において,段階的にアジャイルな手法を導入した事例の 報告を行う.本手法によるプロセスの改善で,学生はより効率的に開発できたことが実感された.
キーワード ゲーム開発,アジャイル, 事例
1. はじめに
卒業制作・研究はアジャイル手法との親和性が高い.
ゼミという名称でレビューが行われ,定期的に目に見 える成果が検証されていく.アジャイル手法を研究に 適応した事例[1]
本事例は,2017年3 月に卒業予定のゲーム学科にお ける卒業制作一つである.スマートフォンをコントロ ーラーとした,対戦型のオンラインゲームである(図1).
ス マ ー ト フ ォ ン と の や り 取 り は , バ ッ ク エ ン ド に
node.js,フロントエンドはenchant.jsで行い,表示アプ
リはUnityで開発された.メンバーは,企画3名,プロ
グラマー2名,デザイナー1名で構成された.
スケジュールは,卒業年度の10月末に学科内での中 間発表があり,翌年1月末が最終締め切りであった.
就活もあり,開発は実質的に6月から始まった.
指導教官は,新任の教官であり,メンバーとプロジ ェクト以前に面識はない.以前はゲームの開発に携わ り,認定スクラムマスターおよび,認定スクラムプロ フェッショナルの資格を所持している.