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窒化物は空気中で比較的安定であり,耐腐食性に優れている.窒化物ナノ粒子は半導体材 料やコーティング材料などに応用されている.熱プラズマ合成法では,高価なSiH4ではな く,安価なSiCl4原料とNH3を用いてSi3N4ナノ粒子を合成できるなど,熱プラズマ法の優 位性を示すことができる.熱プラズマを用いた窒化物ナノ粒子は主に金属元素が第13族系 のBN[183-185],AlN,GaN,第4族系のTiN,第14族のSi3N4および第2族のMg3N2[186]

が数多く報告されている.最近ではナノ粒子だけでなく,BNナノチューブの合成研究も行 われている[187].下記に熱プラズマによる窒化物ナノ粒子の合成法をまとめた.

(a) AlNナノ粒子の合成

AlN の結晶構造は,ウルツ鉱構造の六方晶系と閃亜鉛鉱構造の立方晶系の 2 種類存在す る.ウルツ鉱構造は閃亜鉛鉱構造に比べがエネルギー的に安定である.AlNは広いバンドギ ャップ(6.2eV),高い熱伝導性(3.2 W/cmK),優れた電気絶縁性を有する.またエピタキシャ ル材料として用いられるGaN、AlGaN 系材料との格子定数や熱膨張係数(4.4×10-6/℃)の差が 小さいことから,最適な基板材料の一つとして期待されている.しかし、AlNは高融点材料 であることから,Siで用いられる融液法による単結晶成長が困難である.このため,昇華法 やハイドライド気相成長法など気相法を中心とした単結晶成長の研究が数多く行われてい る.AlNナノ粒子合成では,主にN源としてNH3,N2および原料のNを用いて合成する手 法がある.ΔGが小さいほど高温での金属の窒化反応が熱力学的に有利であることから,N2

や窒化物金属原料よりNH3との反応が熱プラズマ合成に非常に有効である.

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・NH3を窒化元素とした合成

Babaらは,原料であるAl粉末を4.2 g/minで供給し,20 kWの高周波熱プラズマにより AlNナノ粒子を合成した[188].プラズマガスとしてAr,N2を供給し,プラズマ尾炎部にNH3

ガスを吹き付け窒素源としている.生成物は六角形状もしくは平板状の粒子形状であり,平

均粒径は60 nm程であった.これは,ウルツ鉱構造の六方晶AlN の結晶構造に対応した六

角形状(0001)面方向の成長核が形成していることを意味している.Yuらは,非移送式DCア ークプラズマを用い,100 nm未満のAlNナノ粒子を合成した.プラズマガスとしてNH3と N2ガスを使用した[189].Kimらは,アークプラズマを用いてAlNナノ粒子を合成した[190].

Ar-N2熱プラズマにて Al粉末を蒸発させ,NH3を反応ガスとして反応器に導入した.合成 した AlN粒径および結晶化度は,NH3の流速が増加するにつれて増加した.最大粒径は,

約100nmであった.さらに過剰のNH3流量では、AlNの粒径および結晶化度は減少した.

OhらはAlNの超微粉末を大気圧中でアークプラズマによって合成した[191].合成の反応は 化学平衡組成について計算した.合成したAlNはX線回折パターンとFTIRスペクトルから アモルファスAlNであることが分かった.アモルファスAlNは,低温領域でのNH3ガス注 入により増加した.粒径は50-350nmであると測定された.

・N2を窒化元素とした合成

Kulkarni らは,移送式直流アークプラズマを用い AlNナノ粒子を合成している[168].陰

極に2 wt%ThO2添加W電極,陽極にAl電極を用いた.陽極周辺にN2ガスを導入し,蒸発

させた陽極を窒化させAlNナノ粒子を合成した.反応場の圧力を変化させることにより,h 型とc型AlNを選択的に合成できることがわかった.生成したナノ粒子の粒径は10~80 nm であった.Kimらは,3~8 µmのAl粉末を供給速度0.17 g/minで導入し,プラズマ出力25 kWのA-N2高周波熱プラズマで処理することにより,純度99.91%のAlNナノ粒子を合成し た[192].生成物の粒径は 20~60 nm程であり,多角形状および棒状の粒子形状を有してい た.これは,ウルツ鉱構造の六方晶 AlN の(0001)および(10-10)方向の結晶構造に対応した 成長核が形成していることを意味している.

・窒化物原料を窒化元素とした合成

Inoueらは直流アークにより,AlNに金属を加えたAl-Cr-M-N(M=Fe, Co or Ni)ナノ粒子の

合成を報告している[193].Tian らは,AlN ナノワイヤーの合成のための二段階アプローチ を開発した[194].最初に粗い Al粉末(20〜50μm)をN2雰囲気の熱プラズマジェットに直接 注入することにより調製し,形成されたAlナノ粒子をN2雰囲気中1100℃で3時間加熱し た. 加熱した中間体の31%がAlNナノワイヤーに変化していた.

(b) TiNナノ粒子の合成

TiNは,化学量論約1:1で空間群Fm3mのNaCl型結晶構造をとり,TiNxのxが0.6-1.2の

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化合物でも熱力学的に安定である.TiNは耐食性,耐熱性が優れており,また化学反応性が 低く安定であることから,主にコーティング材料として使われている.さらにナノサイズ化 することで,導電率,硬度,靭性が向上することから,TiNナノ粒子が注目されている.TiN ナノ粒子合成では,主に窒化剤としてN2を用いて合成が行われている.

・N2を窒化元素とした合成

Yoshidaらは,原料として25 μmのTi粉末を用い,高周波熱プラズマによりTiNナノ粒

子を合成した[195].プラズマガスとしてAr,N2ガスを導入し窒素雰囲気とした.生成した ナノ粒子は5~150 nmであり,TiとNの組成比によって格子定数が変化していることが 確認された.Sakkaらは,Ni-Ti合金粉末を14 kWの高周波熱プラズマで処理することに より,Ni-TiNナノ粒子を合成した[196].Ni-TiNナノ粒子はダンベル状もしくは立方体形 状を有していることがわかった.また,Fe-Ti合金を用い,同様の手法でFe-TiNナノ粒子 を合成した[197].Samokhinらは,アークトーチを用いたプラズマジェット中のH2-N2プ ラズマ処理によりTiCl4蒸気からTiNおよび炭窒化物ナノ粒子を合成した[198, 199].合成 したナノ粒子は20-150 nmの立方体形状のNaCl型立方晶格子を有する単相ナノ粉末が得 られた.合成パラメータにより,TiN0.79-TiN0.99に対応した,N含有量18.8-22.5wt%のTiN ナノ粒子を合成することが可能であった.炭窒化チタンナノ粒子は,炭CおよびN含有量 がそれぞれ7.5-13.6および13.5-5.1w%であった.また,Samokhinらは,直流アークプラ ズマで発生した熱プラズマ中の水素化チタンからTiNナノ粒子を合成した[200].プラズマ 合成と粉末生成物の沈降分離の2段階のプロセスにより単相TiNナノ粉末を合成できるこ とを示した.収率は最大90%であった.Filkovらは,N2を導入した直流アークプラズマジ ェットを用いてTiNを合成した.生成物の粒径は10〜200 nmの範囲で会った[201].Kakati らは,アークプラズマトーチを用いてTiNを合成し,TiNの合成過程の熱エネルギー収支 計算,制御パラメータにおける動的挙動および物性評価の指針を示している[202].

・窒化物原料を窒化元素とした合成

Bangらはマイクロ波プラズマトーチを用いて材料の気相合成によりTiN,VN,Si3N4を合 成した[203].

・TiNの複合化

TiN-Ti-シリサイド複合体ナノ粒子は,TiNナノ粒子に比べて,機械的特性および高温化で

の酸化耐性が優れており,高性能なコーティング材料として期待されている.Kanekoらは,

陽極にTi-Si合金を用い,直流アークプラズマを発生させることで,TiN-Ti5Si3複合ナノ粒子

を合成した[204].プラズマ出力は 5.25~6.75 kW とし,N2-H2-Ar 雰囲気で合成実験を行っ た.高分解能電子顕微鏡により分析を行ったところ,平均粒径が41.2 nmであり,TiN粒子 の表面にTi5Si3が付着していることが分かった.

37 (c) Si3N4ナノ粒子の合成

Si3N4の結晶構造はβ-型構造およびα-型構造共に六方晶系の2つの結晶構造を作る.β-型

は約1670 K以上で安定であり高温型である.窒化ケイ素合金はβ-型窒化ケイ素粒子と粒界

相から成り立っている.また,Si3N4は高温下において強度が高く,耐摩耗性も優れている ことから,自動車部品の材料として用いられている.現在,毒性の強いSiH4を原料とした Si3N4ナノ粒子合成例が報告されているが,熱プラズマプロセスにより安全性の高いSiCl4を 原料とし,Si3N4ナノ粒子を合成することができる.

Leeらは,高周波熱プラズマとDCアークプラズマを組み合わせたハイブリッドプラズマ を用い,Si3N4ナノ粒子を合成している.プラズマ出力は高周波電源を20 kW,直流電源を

6 kWとした[205].原料としてSiCl4を使用し,プラズマ尾炎部からNH3ガスを供給した.

NH3/SiCl4比が1.33 以下の条件において,10~30 nmのアモルファスSi3N4ナノ粒子が生成

した.また,ナノ粒子の結晶性はNH3/SiCl4比とNH3ガス導入位置の影響を受けることが分 かった.Houらは,5~10 µm のSi3N4粉末を10 kWの高周波熱プラズマで処理することに より,粒径50 nm以下のα- Si3N4ナノ粒子を合成した[206].原料供給量は1~10 g/minとし た.生成したナノ粒子は完全な球状粒子であり,フェノール樹脂の16倍の高い熱伝導率を 示した.

(d) GaNナノ粒子の合成

GaN の結晶構造は,AlN と同様にウルツ鉱構造の六方晶系と閃亜鉛鉱構造の立方晶系の 2種類存在する.ウルツ鉱構造は閃亜鉛鉱構造に比べがエネルギー的に安定であり,よく使 用されている.GaN は青色蛍光体として利用されており,照明装置用材料として期待され ている.また,ナノサイズ化することにより省エネルギー化,高特性化することから GaN ナノ粒子合成プロセスが急務となっている.Kimらは,非移送式DCアークプラズマによる

Ga(NO3)3・xH2O 粉末とNH3ガスを処理することでGaNナノ粒子を合成した.またプラズ

マ出力は8.4~12.6 kWとした[207].生成したナノ粒子は結晶性が低く,不純物であるC3H6N6

が混入していた.しかし,アニーリング処理を行うことで,C3H6N6 を除くことができ,結 晶性の高い平均粒径30 nm程のGaNナノ粒子を合成することができた.