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ナノ粒子合成の実験結果

6LiMnO2

LiMnO 2 LiMn 2 O 4

4.3 ナノ粒子合成の実験結果

4.3.1 Li/Ni組成比による結晶構造への影響

合成したLi-Ni複合酸化物ナノ粒子のLi/Ni組成比の影響を確認するために,Liモル含有

率を変化させ結晶構造を調べた.Li-Ni複合酸化物ナノ粒子はLi/Niモル比が2/1,1/1およ

び1/2,シースガスとしてAr流量57.5 L/minおよびO2流量2.5 L/minの混合気体でそれぞ

れ合成した.

(a) X線回折による定性分析

合成したLi-Ni複合酸化物ナノ粒子のXRDパターンをFig. 4-2に示す.XRDの結果は

Li-Ni複合酸化物ナノ粒子が,立方晶岩塩構造(空間群Fm-3m)を有する非化学量論的構造の Li0.4Ni1.6O2(粉末回折データカードICDD: 01-081-0095(ICSD: 71422))であることを確認し た.非化学量論的構造のLi0.4Ni1.6O2の結晶構造は,Li層およびNi層が不規則な配列になり,

Niが酸素数6配位を形成し結晶構造内の3a位置を占有する.さらに異相として,単斜晶系

(空間群C2/c)を有するLi2CO3(ICDD: 00-022-1141(ICSD: 100324))の生成を確認した.

Li2CO3の生成はNiOとLi2Oの凝縮の困難性に起因し,余剰のLi2OがLi2CO3に変化したと 推察される.Li/Niのモル比が2/1のとき,Li2CO3の2θ値である21.3°および31.7°の(110)

面および(002)面のピーク強度がさらに高くそしてシャープになった.これに対し Li0.4Ni1.6O2結晶構造の変化は,Li0.4Ni1.6O2の2θ値である37.8°および43.8°の(111)面およ び(200)面のピーク強度から確認できなかった.これはLiのモル比を増加させると,Li2CO3

の生成が増加することを示唆している.Fig. 4-3は合成したLi0.4Ni1.6O2の相対量とナノ粒子

合成時のLi/Niモル比の関係を示す.Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子の収率は,ナノ粒子合成中のLi/Ni

モル比が減少するにつれて増加する傾向を示した.XRD の解析により生成した Li0.4Ni1.6O2

ナノ粒子の割合とLi/Niモル比との間に相関が見出された.Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子の割合は,

ナノ粒子合成中のNiモル含有量の増加と共に増加する傾向があった.逆に,Li2CO3の割合 は,ナノ粒子合成中にNiモル含有量が増加するにつれて減少する傾向が確認できた.

(b) TEMによる粒子径および形態観察

Fig. 4-4は異なるLi/Niモル比1/1および1/2で調製されたナノ粒子のTEM画像および粒

度分布を示す.TEM観察およびXRDの結果から,得られたLi0.4Ni1.6O2化合物はFig. 4-4(a)

および4-4(b)に示すように,立方晶岩塩構造の特長を有する球状構造を有することが明ら かになった.得られたLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子(a)および(b)の平均直径はそれぞれ67nmお よび75nmであった.

166 (c) SEMによる粒子形状の観察

Fig. 4-5は合成したLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子のFE-SEM像を示す.観察されたLi0.4Ni1.6O2ナノ 粒子の形態は,球形ではなく立方体の先端が切り取られた14面体構造であった.観察され た立方体の14面体構造は8つの6角形{111}面と6つの4角形{100}面で構成していた.熱 プラズマによって合成されたLi-Ni複合酸化物ナノ粒子は,他の合成法を用いて得られる構 造体とは異なり切頂構造を形成した[3-5].切頂された14面体構造は高い結晶性を有するナ ノ粒子であった.得られた結晶構造の結果は,ナノ粒子の表面エネルギーが低くなることに よって切頂構造に転換したと推察される.

(d) TEM-EDS、ICP-AESおよびXRDによる定量分析

Fig. 4-6はLi/Niモル比1/1で合成したLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子のHAADF-STEM画像(a)お

よびNi(b)およびO(c)のTEM-EDS元素マッピング画像を示す.TEM-EDSマップの青

色領域はNiを紫色領域はOを示す.TEM-EDSマップは合成されたLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子中 にNiおよびOが均一に分布していることを示した.Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子のNiおよびO含 有量は,それぞれ36.3 at%および63.7 at%であった.Table 4-3はLi/Niモル比1/1で合成し

たLi-Ni複合酸化物ナノ粒子のICP-AES,TEM-EDSおよびXRD定量分析によって決定さ

れた元素組成比を示した.ICP-AESの結果からLi-Ni複合酸化物ナノ粒子中のLiおよびNi 含量はそれぞれ39.6 at%および60.4 at%であった.XRDによる元素比の定量分析は,参照 強度比(RIR: Reference Intensity Ratio Fitting)法によりICDDカード記載のRIR値(I/Ic)を 用いてXRD分析結果の組成式から元素比を算出した.XRDの結果からのLi-Ni複合酸化物 ナノ粒子中のNiおよびO含有量はそれぞれ36.8 at%および63.2 at%であった.XRDの結

果からLi-Ni複合酸化物ナノ粒子中のLiおよびNi含量はそれぞれ36.0 at%および64.0 at%

であった.XRD定量分析結果は,TEM-EDSおよびICP-AES分析結果と一致した.したが って,XRD,TEM-EDSおよびICP-AES分析の結果はLi0.4Ni1.6O2が均一組成で合成されたこ とを示している.

(e) TEMによる電子線回折

熱プラズマ合成後の Li-Ni複合酸化物ナノ粒子の原子構造は TEM を用いて調べた.Fig.

4-7は合成されたナノ粒子のLi/Niモル比1/1のTEM電子回折像を示す.Table 4-4は電子回 折像の散乱回折スポット指数およびX線回折パターンから決定された格子間隔(d)および 格子定数(a)を示す.電子回折像の散乱回折スポット指数はOA(2-20)面でd = 0.147 nm,

a = 0.416 nm,OB(1-31)面でd = 0.125 nm,a = 0.415 nm, OC(-1-11)面でd = 0.234 nm,a

= 0.405 nm,対応する表面角度は∠AOB: 31°,∠BOC: 59°,∠AOC: 58°を有した.X線回折

の面指数は,2θ値が63.1°の(220)面ではd = 0.147 nm,a = 0.416 nmであり,75.7°の(311)

面ではd = 0.125 nm,a = 0.416 nm,37.6°の(111)面ではd = 0.239 nm、a = 0.414 nmであっ た.したがって,散乱回折スポット指数,面指数,および格子間隔のこれらの結果は,合成

167

したナノ粒子が粉末回折データカードICDD: 01-081-0095(ICSD:71422)に従い立方岩塩構 造(空間群 Fm-3m)の Li0.4Ni1.6O2組成を有することを示した.熱プラズマにより合成した

Li-Ni複合酸化物ナノ粒子の電子回折パターンは,XRDパターンと完全に一致した.

4.3.2 酸素モル分率による結晶構造への影響

合成した Li-Ni 複合酸化物ナノ粒子の酸素モル分率の影響を確認するために,O2流量を

増加させ結晶構造に及ぼす影響を調べた.Li-Ni複合酸化物ナノ粒子はシースガスとしてAr

とO2流量2.5,5および10 L/minの混合気体,Li/Niモル比1/1でそれぞれ合成した.

(a) X線回折による定性分析

酸素モル分率を変化させ合成したナノ粒子のXRDパターンをFig. 4-8に示す.2θ値であ

る37.8°および43.8°の(111)面および(200)面のピークからLi0.4Ni1.6O2結晶構造であるこ

とが確認できた.酸素モル分率の変化による Li0.4Ni1.6O2 結晶構造の変化は確認できなかっ た.酸素モル分率の変化によるLi-Ni複合酸化物の合成は,Li0.4Ni1.6O2結晶構造の変化に対 し,影響が小さいことを示した.Fig. 4-9は生成したLi0.4Ni1.6O2の相対量と合成するときの O 2流量2.5,5および10 L/minとの関係を示す.Li0.4Ni1.6O2の収率変化は,酸素ル分率を変 化させた場合に観測されなかった.熱プラズマを用いた Li-Ni 複合酸化物の合成は,

Li0.4Ni1.6O2収率の変化に対し,酸素モル分率の影響が小さいことを示した.

(b) TEMによる粒子径および形態観察

Fig. 4-10は2.5および5 L/minのO2流量でのTEM画像および合成したナノ粒子の粒子径 分布を示す.TEM観察とXRDの結果から,得られたLi0.4Ni1.6O2化合物はFig.4-10(a)お よび(b)に示すように立方晶岩塩構造の特徴を有する球状構造を有することが明らかとな った.得られたLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子の平均粒子径は80および83 nmであった.Fig. 4-11は O2流量2.5,5および10 L/minによる平均粒子径への影響を示す.Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子の平 均粒子径は,ナノ粒子合成中の O2流量の増加と共に増加する傾向を示した.TEM および XRD分析からLi0.4Ni1.6O2の平均粒子径の増加は,O2流量の増加によって合成温度の上昇に よる凝縮滞留時間の拡大およびLi0.4Ni1.6O2へのLi2Oの供給量の増加が要因であると示唆さ れた.O2流量の増加は,Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子の成長効果を示した.

4.3.3 プラズマ出力による結晶構造への影響

合成した Li-Ni 複合酸化物ナノ粒子の RF出力の影響を確認するために,RF 出力を増加

させ結晶構造に及ぼす影響を調べた.Li-Ni複合酸化物ナノ粒子はRF出力30 kW,シース ガスとしてAr流量55 L/minおよびO2流量5 L/minの混合気体,Li/Niモル比1/1で合成し た.

168 (a) X線回折による定性分析

RF出力を30 kWに変化させ合成したナノ粒子のXRDパターンをFig. 4-12に示す.20kW

のRF出力で得られた生成物と同様に,2θ値である37.8°および43.8°の(111)面および(200)

面のピークから Li0.4Ni1.6O2 結晶構造であることが確認できた.RF 出力の変化による Li0.4Ni1.6O2結晶構造の変化は確認できなかった。RF 出力の変化による Li-Ni 複合酸化物の 合成は,Li0.4Ni1.6O2 結晶構造の変化に対して,影響が小さいことを示した.さらに,20kW のRF出力と同様に単斜晶系Li2CO3の生成が確認された.Li-Ni複合酸化物ナノ粒子の構造 は RF 電力を 20kW から 30kW まで変化させた場合においても変化しないことが示唆され た.したがって,これらの結果は非化学量論的Li0.4Ni1.6O2の結晶構造は,RF電力または酸 素モル分率の変化に強く影響されないことを示した.