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ナノ粒子合成の考察

6LiMnO2

LiMnO 2 LiMn 2 O 4

4.4 ナノ粒子合成の考察

168 (a) X線回折による定性分析

RF出力を30 kWに変化させ合成したナノ粒子のXRDパターンをFig. 4-12に示す.20kW

のRF出力で得られた生成物と同様に,2θ値である37.8°および43.8°の(111)面および(200)

面のピークから Li0.4Ni1.6O2 結晶構造であることが確認できた.RF 出力の変化による Li0.4Ni1.6O2結晶構造の変化は確認できなかった。RF 出力の変化による Li-Ni 複合酸化物の 合成は,Li0.4Ni1.6O2 結晶構造の変化に対して,影響が小さいことを示した.さらに,20kW のRF出力と同様に単斜晶系Li2CO3の生成が確認された.Li-Ni複合酸化物ナノ粒子の構造 は RF 電力を 20kW から 30kW まで変化させた場合においても変化しないことが示唆され た.したがって,これらの結果は非化学量論的Li0.4Ni1.6O2の結晶構造は,RF電力または酸 素モル分率の変化に強く影響されないことを示した.

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であり、nは波動関数を3d原子状態に投影して得られるオンサイト3d軌道占有行列である

(mまたはm′ = -2、-1 0,1,2は異なるd軌道を示し、一方、σ= 1または-1はスピンを示す)。

酸化または酸素の損失を伴う反応において、反応エントロピーはO2の生成によって支配さ れ,温度の影響は効果的にシステム中のO2の化学ポテンシャルを変化させ,それにより生 成物の自由エネルギーを変化させる.したがって、Li-Ni複合酸化物の一般的な組成反応と して,次式が表される

/2O O

Ni Li O

Ni

Li1-x 1x yy'1-x 1x yy' 2 , (4-3) O 2分子あたりの反応エネルギーは,次式で表される.

) (O /2 ) O Ni (Li )

O Ni

ΔH0 E0(Li1-x 1x yy'E0 1-x 1y yy' E* 2 (4-4)

ここでE°は0 Kでの全エネルギーを指し,E*(O2)はO2分子中のGGA誤差を補償するため O2分子あたり0 K + 1.36 eVでのO2分子の計算エネルギーである[10].エントロピー変化ΔS は、主に放出されたO2に起因する.反応エンタルピーの温度依存性が-TΔS項と比較して小 さいと仮定すると形成エネルギーは,次式で表される.

0 y

y 1 x -1 0 y' y y 1 x -1 0 0 0

0 H T S E E y' E* T S

G Δ Δ (Li Ni O ) (Li Ni O ) /2 (O ) Δ

Δ    2  .

(4-5)

エントロピー変化ΔSは,主に酸素の放出に起因する.酸素のエントロピーは温度の関数で

あり,JANAF熱化学表[11]から得ることができる.Li-Ni-O系は,Li濃度が大きい場合には

安定相を形成し,主にLiNiO2構造を形成する.LiNiO2生成エネルギーは,NiO構造のより も低くなる.これは,そのような相変態を促進する熱力学的駆動力がなければならないこと を意味する.これまで,Li1-xNi1+xO2構造(Li:x = 1)の計算された生成エネルギーは,最も 低く安定した構造であることが知られていた.生成エネルギー計算の結果からLiを用いた Ni酸化物は,NiO 構造よりもより安定な構造であることを示した[12-17].しかしながら,

熱プラズマを用いて合成したLi-Ni-O系[Li1-xNi1+xO2構造(Li: x = 0.6)]は,生成エネルギー 計算と完全に一致していなかった.Li-Ni複合酸化物ナノ粒子の結晶構造は, 298Kを超え る温度の反応場においてLiNiO2が容易に形成されないことを示唆した.

4.4.2 核生成温度の推算

Li-Ni複合酸化物ナノ粒子の生成機構を検討するため,核生成温度の推算を行った.核生

成温度の推算方法は,第3章にて述べたとおりである.

今回の核生成温度を求める条件を述べる.シースガス,インナーガス,キャリアガスとし てArをそれぞれ60,5,3 L/minで供給し,粉体供給量は0.4 g/minとした.また雰囲気圧力は 大気圧とし,原料蒸気を理想気体と仮定した.今回の計算に用いたそれぞれの金属の物性値 はTable 4-5に示している.

170

Fig. 4-14は、各元素の核生成温度および酸化物の融点および沸点を示す。 Li2OおよびNiO

の融点は2257 K, 1705 Kであり,LiおよびNiの核生成温度よりも高く、これにより酸化物が 最初に核を生成し,その核へLi2Oが酸化反応を伴いながら凝縮することでLi系複合酸化物が 生成すると示唆された.一般に、遷移金属の核形成温度は融点に近く,その結果は金属酸化 物にも適用される.Fig. 4-15にLi-Ni系(Li:Ni:O2=1:1:35)の平衡組成図を示す.Fig. 4-15はLiと

Niの比が1:1の系である.1,800~3,000 Kの範囲で酸化物の蒸気圧が大きくなっている.NiOが

液相の範囲ではLi2Oは気体で存在していることが確認できる.したがって,NiOへのLi2Oの 凝縮はNiO液相とLi2O気相の状態で生じていることが分かる.

4.4.3 熱力学的検討

NiおよびLi2CO3はAr-O2を用いた熱プラズマにて合成し熱力学的に考察した.Liおよび Ni酸化物の多くの化学種は4000Kを超えると原子に解離するので,本研究の上限は4000 K に設定した.全圧は大気圧とした.

Li/Niモル比が1/2および1/1の条件で合成したLi-Ni複合酸化物ナノ粒子は,立方岩塩構

造を有するLi0.4Ni1.6O2であった.Li/Niモル比1/2のLi2OおよびNiの熱力学反応は以下の ように表される:

2 2

6 . 1 4 . 0 2

2

O

10 Li 1 5 O 2 Ni Li 10 O

Ni 9 5 O 8 5 Li

2     

, (4-6)

3 2 2

2

Li CO

5 CO 1 5 O 1 10 Li 1 5

2   

, (4-7)

また、Li/Niのモル比1/1のLi2OとNiとの反応は

2 2

6 . 1 4 . 0 2

2

O

10 Li 3 5 O 6 Ni Li 10 O

Ni 9 5 O 8 5 Li

4     

(4-8)

3 2 2

2

Li CO

5 CO 3 5 O 3 10 Li 3 5

6   

. (4-9)

NiOおよびLi2Oのギブスの自由エネルギー変化と温度の関係をFig. 4-16に示す.NiOを 形成する反応は,3414 Kを超える温度で支配的であるのに対し,3414 K未満の温度では Li2O生成反応が支配的である.Fig. 4-14に示すようにNiOが最も高い融点を有し最初に 核生成を生じる.Li2OはNiOを形成した後でも未反応のO2が気相に留まるため,O2雰囲 気下で安定な状態で生成する.NiOの核生成温度は2257Kであるため,Li2OのNiO核へ

の凝縮は2257Kまで継続される.さらに、Fig. 4-16に示すようにLi2Oは 3414K未満の

温度で優先的に生成されるため,NiOが核を形成するときLi2OはNiOよりも容易に生成 される.したがって,Li2Oの生成環境は,熱力学的にLi-Ni複合酸化物の生成に大きく寄 与することを示唆した.

LiNiO2およびNiOのギブスの自由エネルギー変化と温度との関係をFig. 4-17に示す.

NiOを形成する反応は,2248 Kを超える温度で支配的である.これに対し,LiNiO2生成反

171

応は2248 K未満の温度で支配的である[14, 18].

NiOの核生成温度は2257 Kであるため, 2257 Kの温度領域ではNiOはLiNiO2より優先的 に生成される.さらに,LiNiO2はセクション4.4.1の生成エネルギーの計算結果から低温領 域において熱力学的に最も安定な生成物である.ギブスの自由エネルギー変化は,2 価の

NiO(Ni2+)が2248 Kを超える温度で3価のLiNiO2(Ni3+)よりも安定であることを示唆し

た.したがって,目的生成物であるLiNiO2はNiOの核生成温度2257K未満で安定であるた め,Li2OはNiO上に凝縮し難くLi欠損のLi-Ni複合酸化物およびLi2CO3が生成し易いこ とが推察される.これにより,Li欠損構造である非化学量論組成のLi1-xNi1+xO2が生成され た.また,NiO上に凝縮できなかったLi2Oは大気中で安定なLi2CO3として生成された.

さらに,Fig. 4-18にLi0.4Ni1.6O2,LiNiO2およびNiOのギブス自由エネルギー変化と温度の 関係を示す.Li0.4Ni1.6O2のギブス自由エネルギー変化の結果から,Li0.4Ni1.6O2の生成反応は 2387 KでNiOおよびLiNiO2より支配的であった.これは,Li0.4Ni1.6O2がNiOおよびLiNiO2

よりも優先的に生成されることを示唆している.立方晶岩塩構造を有する Li0.4Ni1.6O2は,

2387 Kの合成温度において層状岩塩構造を有するLiNiO2よりも安定であった.低温の1494

K未満では層状岩塩構造を有するLiNiO2が最も安定な構造を示した.Li-Ni複合酸化物は合 成温度によってその生成物が異なることが明らかとなった.NiOは4000K~2387 Kまで支 配的であり,Li0.4Ni1.6O2は2387K~1494Kまで支配的であり,LiNiO2は1494 K未満の領域 で支配的であった.これにより,Li欠損構造である非化学量論組成のLi1-xNi1+xO2は2387 K

~1494 Kで生成し易いことが確認できた.また,NiO上に凝縮できなかったLi2OはLi2CO3

として生成した.

Fig. 4-19は,Li-Ni-O系ナノ粒子の生成機構のモデル図を示す.これらの核形成および熱

力学の考察は,NiOが最初に核生成し,Li2O蒸気が生成したNiO核上に共凝縮し,それに よって非化学量論的Li0.4Ni1.6O2および非凝縮Li2Oを生成することを明らかにした。生成し たLi2Oは大気中のCO2と反応し,熱力学的により安定なLi2CO3に変換される。

4.5 電気化学特性および電池特性の実験結果

高周波熱プラズマにおける Li-Ni 複合酸化物ナノ粒子の電気化学特性および電池特性を 検討した.これまでの合成実験の結果から,Li-Ni酸化物系の合成では非化学量論組成であ るLi0.4Ni1.6O2が生成した.Li0.4Ni1.6O2はLi含有量が少ないため,Liイオン電池としては容 量特性を低下させる要因であると示唆される.この考察では,Li1-xNi1+xO2系における電気化 学特性および電池容量特性を明らかにし,電気化学的な Li1-xNi1+xO2の特性を定量的に評価 検討した.

4.5.1 電池容量特性

Li-Ni酸化物であるLiNiO2の理論容量は274 mAh/gである.平均放電電位3.7 Vの実効

172

容量は約160 mAh/gである.この結果は,高い放電電位と高い容量を持つ材料であること

を示している.本研究で合成したLi0.4Ni1.6O2はLi含有量が少ないため,高い放電容量は期 待できない.しかし,合成したLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子結晶性が高く,比表面積が大きく,さら に切頂構造体であるため,充放電中のLi挿入脱離の電気化学的要因によって放電容量に変 化が現れるか確認を行った.

Fig. 4-20に合成した Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子の充放電曲線を示す.充放電曲線は3サイクルま でとした.さらに,Fig. 4-21に合成したLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子のサイクル特性を示す.サイク ル特性は10サイクルまでとした.充放電曲線の結果は充電容量43.0 mAh/gであり,放電

容量28.1 mAh/gであった.3サイクルまでの充放電測定の結果,充放電曲線の変化は確認

できなかった.サイクル特性の結果は,充電容量維持率47.1 %であり,放電容量維持率65.9 % であった.充電容量維持率に比べ放電容量維持率で高い維持率を確認することができた.

Fig. 4-22に充電時および放電時の不可逆容量を示す.その結果,初期から3サイクルまで高

い不可逆容量を示した.これは,Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子がLi脱離は容易であるが,Li挿入は 困難であることを示している.Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子の構造はLi層およびNi層が不規則な配 列になり,Li層にNiが侵入し部分的に占有する構造である.したがって,Liは容易に脱離 可能であるが,Li挿入は結晶構造内部の空間配置に起因するため,Li 挿入の困難性が高い ことが分かった.さらに,Li脱離後にNiがその空間を占有し,Li挿入の空間を減少するこ とが示唆される.よって,Niは最安定構造であるNiO構造に近づき,サイクル毎に容量が 低下すると示唆される.これらの結果から,合成したLi0.4Ni1.6O2結晶構造とLi挿入脱離に は相関があることを見出せた.

4.5.2 電気化学特性

合成されたLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子のNiの酸化還元反応を測定するため,作製したハーフコ インセルの電流-電圧特性をCV曲線によって確認した.評価したLi0.4Ni1.6O2ナノ粒子は,

Li/Niモル比1/2,O2流速2.5 L/minの条件で合成した.

Fig. 4-23は、2.0 Vから4.5 Vの動作範囲のLi-Ni酸化物ナノ粒子の電気化学的特性を示す.

Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子に通電していないときの開回路電圧(OCV)電位は,3.1 V(Ni2.25 +)で あった. Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子のCV特性は,最初のサイクルの充電で4.26 V以上のNiの酸 素損失反応を確認した.Li0.4Ni1.6O2ナノ粒子は、4.26 V以上の充電で結晶構造中の酸素欠損 を引き起こした.対照的に,Ni還元のピークは2.5 V未満の放電で確認された.Li0.4Ni1.6O2

ナノ粒子は、2.5 V 未満の放電を伴う Li +イオンの挿入によって Ni還元反応を引き起こし た.Ni酸化のピークは第2サイクル充電で3.6Vおよび4.18 Vに現れた.合成したLi0.4Ni1.6O2

ナノ粒子は3V以上でLi +イオンを容易に脱離し,2.5 V以下の低電位でLi +イオンを挿入す る特徴を示した.電気化学的特性から4.26V以上の酸素損失反応と2.5V以下のLi +イオン の挿入は,化学量論的組成のLi +イオンの挿入と脱離とは異なり,非化学量論的組成である Li1-xNi1+xO2と同じ挙動であることが確認された[19].