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金属炭化物材料は,高硬度と熱的・化学的安定性を備えた高付加価値製品である.TaCお

よびHfCは,約4000 Kの非常に高い融点を有する超高温セラミックである. 球状WC粒子

は, 高い熱的・機械的応力および高い電極性能を有する表面硬化コーティング材として使用 されている.金属とのメタンなどの炭化反応は,ΔGの減少と共に高温でより熱力学的に有 利となる.したがって,熱プラズマは様々な炭化物ナノ粒子の合成に適していると言える

[219].熱プラズマを用いた炭化物ナノ粒子では,主に金属元素が第14族系のSiC,第4族

系のTiC,第5族系のTaC,第6族系のWCが数多く報告されている.下記に熱プラズマに

よる炭化物ナノ粒子の合成法をまとめた.

(a) SiCナノ粒子の合成

SiCは電気陰性度が大きいことにより約18%のイオン性を持つ共有結合型の結晶である.

そのため,Si:C=1:1の化合物として安定に存在する.SiCはSiの約3倍のバンドギャップお よび約 4 倍の熱伝導率を有しており,最近ではパワーエレクトロニクス半導体として注目 を集めている.また融点が高いことから高温状態でも動作が可能である.結晶構造は正四面 体を軸とした多様な積層構造をとり,100 種類以上の結晶多形が存在する.

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・CH4を炭化元素とした合成

Tamouらは,ハイブリッド型プラズマを用い,SiCナノ粒子合成を行った.直流電源を5

kW,高周波電源を20 kWとし,プラズマガスとしてAr,H2ガスを導入した[220].また,

原料としてSiCl4溶液を用い,クエンチガスとしてCH4ガスを供給した.CH4と SiCl4の比 を制御することにより,副生成物の生成を抑制することができ,高純度なSiCナノ粒子の合 成に成功した.また,同グループでは,CH4の分解反応の観点から生成メカニズムについて 検討を行い,CH4 の反応履歴がナノ粒子メカニズムに大きな影響を与えると報告している

[221].同様の手法でBouyerらは,α-SiCとβ-SiCおよびSiナノ粒子の合成を行った[222].

プラズマ出力は25-35 kWとし,液体原料であるSiCl4を1-3 mL/minで供給した.C/Si比を 変化させることで,α-SiCナノ粒子とβ-SiCナノ粒子を選択的に合成できることが確認され た.また,チャンバー内の圧力を変化させることにより,粒径を制御することに成功してい る.Ohらは,直流サーマルプラズマジェット(8-12 kW,101 kPa,Ar-H2プラズマ)を使用し て,SiCl4とCH4の混合物から80 nm未満の炭化ケイ素粒子を合成した[223].H2がSiClxの 分解および還元を促進するため,H2添加がSiCの変換速度を増大させることを見出した.

Tongらは,25.6 kWの非移送式DCアークプラズマを用いSiCナノ粒子を合成した[224].

原料に粒径45 µm以下のSiO2粉末を使用し,キャリアガスであるAr,CH4ガスとともにプ ラズマジェットに供給した.XRDおよび電子線回折より,β-SiCナノ粒子が生成しているこ とが確認された.TEM 観察より,球状ナノ粒子とファイバー状ナノ粒子が確認されたが,

大多数はファイバー状ナノ粒子であった.ファイバー状ナノ粒子が生成した原因として,冷 却管に堆積した球状粒子の表面から,(111)面方向に成長したものであると筆者らは考えて いるが,明確な原因はわかっていない.

・固体原料を炭化元素とした合成

Karolyらは,高周波熱プラズマを用い,SiCナノ粒子の合成した[225].SiO2と固体炭素源

を混合した粉末を用い,実験を行った.固体炭素源として,スス,炭,黒鉛を用いた.出力

は30 kWとし,プラズマガスとしてAr,Heガスを供給した.炭素源の種類によりSiCへの

転化率は異なっていたが,転化率は60~73%であった.Yu らは,固相合成したSiC粉末を アーク熱プラズマ処理により調製し,Si被覆 SiC複合ナノ粒子を合成した[226].合成した Si被覆SiC複合ナノ粒子は,セラミックス形成用の焼結添加剤として使用した.焼結SiCペ レットを放電プラズマ焼結(SPS)により調製し,ミクロンサイズのSiC 粉末の焼結挙動を調 べた.焼結温度と保持時間を長くすると,ビッカース硬度と相対密度は増加した.相対密度 とビッカース硬度は,ミクロンサイズのSiCとナノサイズのSi/SiC(10 wt%)の混合物に活性 炭(0.2 wt%)を加えた反応接合によってさらに増加した.焼結温度 1800℃で最大相対密度 (97.1%)およびビッカース硬度(31.4GPa)が得られた.

41 (b) TiCナノ粒子の合成

TiCの結晶構造は空間群Fm3mの立方晶系である.TiCはコーティング材として用いられ ており,耐摩耗性に優れ,摩擦係数が小さいことから,摺動部品などに用いられる.Tongら

は,粒径45 µm以下のTi粉末とCH4ガスを23.4 kWのDCアークプラズマで処理すること

により,TiCナノ粒子を合成した[227].CH4とTiの割合を1:1,原料供給量を5 g/minとす ることで粒径100 nm以下のTiCナノ粒子を合成することができた.また,AlドープTiCナ ノ粒子の合成例も報告されている[228].

(c) WCナノ粒子の合成

WCの結晶構造は空間群P6m2の六方晶系である.WCは超硬工具の材料として実用化さ れているが,電子構造がPtと類似していることから,燃料電池などの触媒として期待され ている.1μmより大きいWC粒子の硬度はサイズと共に直線的に増加するが,100nmより 小さい粒子に関しては指数関数的に増加することが知られている.さらに,撓み強度もまた ナノスケールで向上する.したがって,WCナノ粒子の合成は特に興味深いものである.

1981年のRonsheimらによる最初の研究以来,粒子-粒子反応,粒子-ガス反応およびガス

-ガス反応によるWCの多数の熱プラズマ合成が今日までに報告されている[229].

Kameyamaらは,2 段トーチシステム高周波熱プラズマを用い,WC1-xナノ粒子を合成した

[230].プラズマ出力は1段目が10 kW,2段目が21 kWとし,プラズマガスとしてAr,H2

ガスを用いた.また,原料としてW,WCあるいはWO3粉末を用い,キャリアガスとして Ar,CH4ガスを使用した.原料にWO3を用い,CH4/WO3の比を15以上にすることで,粒径

5~20 nmのWC1-xナノ粒子を90~95 wt %の高い収率で合成することができた.Ryuらは,

非移送式DCアークプラズマによりWC1-xナノ粒子を合成した[231].原料としてWCl6粉末 を用い,3.5 g/minで供給した.また,プラズマ出力を8~13 kWとし,キャリアガスとして Ar,H2,CH4ガスを使用した.生成物は20 nm以下のWC1-xが主生成物であったが,WCお よびW2Cも少量生成していた.また,生成物はCを過剰に含んでいたが,アニーリング処 理を行うことで,過剰な Cを完全に除去することができた.他にも,原料としてパラタン グステン酸アンモニウムを用いた合成例[232]や,移送式 DC アークプラズマによる合成例 [233]なども報告されている.

ほとんどのWC生成物は,安定なWCおよび準安定なW2CまたはWC1-xなどの W化合 物の相と未反応のW粉末との混合物からなっている.熱プラズマ中ではWC1-xが優先的に 生成される.生成したW2CおよびWC1-xナノ粒子は、900℃で5時間の後H2処理によって WC 相形成の浸炭処理が可能であるが,最終的な粒子サイズは熱処理中に 20 nm から 100 nmに増加する.熱プラズマによるWCナノ粒子の一段階位相制御合成は,依然として挑戦 的な課題である.

最近では,上記の課題を解決するため,スパークプラズマ焼結を用いて WC ナノ粉末を 高速で焼結する試みや密度,構造パラメータおよび機械的性質についての研究が行われ生

42 成機構がモデルされ始めている[234-237].

(d) TaCナノ粒子の合成

TaCの結晶構造はTiCと同様の空間群Fm3mの立方晶系である.TaCナノ粒子は,切削工 具の腐食耐摩耗性を向上させるためのコーティング材として実用化されているが,一方で 触媒性能も高く,NH3の分解反応やH2の解離反応の触媒として期待されている.Ishigakiら

は,40 kWの高周波熱プラズマによりTaCナノ粒子を合成した[238].原料としてTa(OC2H5)5

ガスを3.0~6.5 L/minで供給し,Ar-H2プラズマによる還元雰囲気下で合成を行った.平均

粒径7.8~12.3 nmのTaCナノ粒子が主生成物として生成したが,TaおよびTa2O5も僅かに

生成していた.クエンチガスを導入することで,ナノ粒子の粒径を小さくすることができ,

また副生成物であるTa2O5の生成も抑制することができた.H2モル比が増加すると,水素原 子による固体炭素不純物の選択的なエッチングにより,TaCの収率が97.4wt%に改善される ことが注目された.しかしながら,過剰な水素はTaCのTa相への分解を促進することが確 認された.また,53 kPaの低圧化および追加のHeクエンチングガスを使用することにより 反応場の急速な冷却が生じ,平均粒径分布は狭くなった.Raiらは,SiCナノ粒子は,シリ コンと炭素粉末を用い非移行型アーク熱プラズマ処理により合成した[239].遊離したケイ 素含有量は,反応時間および炭素モル比の増加とともに減少していた.走査型電子顕微鏡か ら合成したSiCの形状および大きさは,炭素源の形状と大きさに依存することを示した.合 成したSiCの粒子径は500nm以内のナノ粒子であり,活性炭およびグラファイトは(~5μm) であった.