1.業界環境
21. 空運
【要約】
2013
年度の旅客数は横這いが精々、貨物量も減少が見込まれるものの、大手2
社の業 績は国際線旅客事業の拡大により増収となろう。 2014〜2015
年度の旅客数は国内線が減少基調を辿るものの、訪日外国人数の増加により国際線が牽引し、全体ではほぼ横這いとなろう。貨物量は輸出入貨物(国際線)を 中心に増加する見込み。企業業績は好調な国際線旅客事業に支えられ、増収増益基調 で推移しよう。
(注)( )内は前年比伸び率。
(資料)国土交通省「航空輸送統計年報」「国土交通月例経済」「日本出入航空路線別貨物取扱実績」
日本政府観光局「統計報道発表資料(訪日外客数/出国日本人数)」をもとに 三菱東京UFJ銀行企業調査部作成
(単位:万人、万トン、%)
¾ 2013
年度の旅客数は横這いが精々、貨物量も減少を見込む。9
航空旅客数は横這いが精々となろう。国際線旅客数は、新興国を中心に訪日需 要が拡大するものの、年度前半に日中間の旅行需要が停滞するため、前年比1%
程度の小幅な増加にとどまろう。一方、わが国旅客数の
6
割を占める国内線旅 客数は、生産年齢人口の縮小もあって前年比▲1%強減少する見込み。9
わが国発着の貨物量は前年比▲1%強の減少を見込む。国際線ではコスト競争 力等に勝る海上輸送へ貨物のシフトが続くとみられ、前年比▲2%強の減少と なる一方で、国内線では宅配便など主要貨物の伸びが低位にとどまるため、前 年比横這い程度となる見通し。¾ 2014〜2015
年度は、低調な国内線を好調な国際線が補完する傾向が続き、旅客数はほぼ横這いとなろう。一方、貨物量は景気回復に伴い輸出入貨物(国際線)が 拡大するため、年率
1%程度の増加となる見通し。
2. 企業業績
◇2013〜2015年度は増収増益が続こう
¾ 2012
年度の航空大手2
社の業績は、増収減益の見込み(図表2)
。9
売上高は、供給を大幅に拡大している国際線旅客事業を中心に増収が見込まれ、前年比
3.5%の増収となろう。
9
損益面では、コスト削減が続くものの、燃油費の上昇や一時的に削減していた 人件費の正常化に伴い、前期比▲4.9%の減益となる見通し。¾ 2013
年度は国際線が牽引し、増収増益を見込む。9
売上高は、国内旅客事業において旅客数の減少により減収となる一方で、国際旅 客事業において乗り継ぎの利便性向上と供給拡大を並行させて海外航空会社か らのシェア奪取を図り、前年比2%程度の増収となろう。
9
損益面では、燃油費の上昇がコスト増嵩要因となろうが、増収効果が大きく、前期比
2%程度の増益を見込む。
¾ 2014〜2015
年度は首都圏空港の発着枠が拡大するなか、供給量を増加させる国際線が引き続き業績を押し上げ、増収増益基調を辿ろう。
図表
2:航空大手 2
社の業績(単位:億円、%)
(注)1.対象企業は、日本航空、全日本空輸。
2.( )内は前年比伸び率。
(資料)各社決算資料をもとに三菱東京UFJ銀行企業調査部作成
2007=100 とした水準
2007=100 とした水準
売上高 n.a. n.a. 26,163 27,081
n.a. n.a. - (3.5)
営業利益 n.a. n.a. 3,019 2,871
n.a. n.a. - (▲4.9)
営業利益率 n.a. n.a. 11.5 10.6 10%強 - 11%程度 -75 強 180程度
2010 2013
(予想)
+2%程度 +3〜5%程度 75程度
170程度
2014〜2015
(予想)
+2%程度 +1〜2%程度
(年度) 2009 2012
2011 (見込)
3. 成長分野の開拓に向けた動き
(1)海外展開
◇中長距離国際線の強化に向け、共同事業がより一層拡大する見込み
¾
わが国大手航空会社は、燃費効率に優れる新型機投入により日本−ボストン線な ど新路線を開設したほか、アライアンス先との共同事業(共同運航、共通運賃の 設定など)の拡大により、中長距離国際線を強化している(図表3)
。また、併せ て、LCC(*)子会社設立を通じて低価格戦略にも取り組んでいる(詳細後述)。¾
この背景には、わが国のオープンスカイ協定(*)締結国増加や成田空港・羽田空 港の発着枠拡大(*)に伴い、わが国航空会社大手のRPK
(*)のうち1〜2
割を占め る中国・韓国線などの近距離国際線において海外LCC
の参入・増便により競合激 化が予想されていることがある。¾
今後、わが国大手航空会社にとっては、LCC の就航が困難な中長距離国際線にお ける収益の維持・拡大がより重要となる見通し。このため、安定需要が見込まれ る新路線開設のほか、顧客利便性に優れた運航スケジュールの設定や増便など、アライアンス先との共同事業を深化させ、近隣国からの乗り継ぎ需要も獲得する ことで座席利用率を高めていく必要があろう。
(2)新規事業
◇ わが国向け需要の獲得、競合輸送手段からのシェア奪取に向けた動きが拡大
¾
海外LCC
の就航や国内線需要の頭打ちなどを背景に、わが国大手航空会社は2012
年にLCC
子会社を設立。成田空港や関西国際空港を拠点とし、低価格のサービス 提供を開始した。¾
従来比大幅に低い運賃に設定が国内消費者にも一定程度認知されるに至っており、価格志向の強い消費者の帰省・旅行需要等を発掘しているとみられる。また、各 社とも国際線への参入を計画している。
¾
今後は、LCC 子会社を通じて、国際線では低価格による日本発の旅行需要喚起の みならず、わが国向けの外国人需要取り込みに向け、各社便数を拡大していく公 算が大きい。同時に国内線では、新幹線など既存の競合輸送手段の利便性が高く、従来は航空会社が便数を拡大できなかった路線へ低価格で参入し、シェア奪取を 狙う動きが活発化するとみられる。
図表
3:成長分野の開拓に向けた取り組み
(資料)各種資料をもとに三菱東京UFJ銀行企業調査部作成
分野 企業名 概要
全日本空輸 欧米線では、ルフトハンザ航空、ユナイテッド航空との共同事業により顧客利便性を 高めるなかで、日本−シアトル線など新路線を設定し、需要を取り込む方針 日本航空 アメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズとの共同事業や、新機材による新路線設
定により、欧米線での需要獲得を図る
全日本空輸 マレーシアのLCCであるエアアジアなどと合弁で「ピーチ」、「エアアジア・ジャパン」を 設立し、LCC事業へ参入
日本航空 オーストラリアのLCCであるジェットスターと合弁で「ジェットスター・ジャパン」を設立 し、LCC事業へ参入
新規
・ 海外 海外
Appendix
付表
1:日本に就航中の海外 LCC
付表
2:世界の航空輸送量(旅客)の見通し
【用語説明】
LCC 格安航空会社(Low Cost Carrier)。従来の航空会社とは異なり、短距離の2地点間の直行 便を主体とした機材回転率の向上、単一の小型機の使用による整備費等の削減、着陸料 などの安い空港の利用などを通じ、低運賃の旅客輸送サービスを提供する航空会社。
オープン スカイ協定
両国の航空会社が自由に事業展開できるよう国家間で締結する協定。近年、わが国はオ ープンスカイ協定の締結を積極的に進めている。
羽田空港・成 田空港の発着 枠拡大
羽田空港の拡張や成田空港における管制方式の高度化により2012年度末〜2014年度に かけて両空港の発着枠が大幅に拡大する見通し。
・羽田空港…現状:39万回→2013年度末:44万回(国内線・国際線合計)
・成田空港…現状:25万回→2014年度末:30万回(同上)
(注)上記は2012年12月時点での見通し。
RPK 有償旅客キロ(Revenue Passenger Kilometers)。有償搭乗者が搭乗した距離。
(2012.12.20 木村 真也)
(注)1.アジアはAAPAに加盟するアジア・太平洋地域の航空会社の国際線旅客数が対象。
2.各地域の有償旅客キロ(RPK)。日本のみ旅客数。
3.( )内は前年比伸び率。
4.日本は年度。
(資料)U.S. Dept of Transportation、AEA、the Association of Asia Pacific Airlines (AAPA): www.aapairlines.org 、
CEIC、国土交通省資料をもとに三菱東京UFJ銀行企業調査部作成
(資料)各種資料をもとに三菱東京UFJ銀行企業調査部作成
会社名 チェジュ航空 エアプサン イースター航空 ジンエアー 春秋航空
国 韓国 韓国 韓国 韓国 中国
就航路線 中部-ソウルなど 成田-釜山など 成田-ソウルなど 新千歳-ソウル 茨城-上海など (就航年月) (2009年3月) (2010年3月) (2011年5月) (2011年7月) (2010年7月)
会社名 ジェットスター
・アジア航空 スクート エアアジアX セブ
パシフィック航空 ジェットスター航空 国 シンガポール シンガポール マレーシア フィリピン オーストラリア 就航路線
関西-シンガポールなど
成田-シンガポール
羽田-クアラ
ルンプールなど 関西-マニラ 成田-ケアンズなど (就航年月) (2010年7月) (2012年10月) (2010年12月) (2008年11月) (2007年3月)
単位 とした水準2007=100
米国 百万人km 1,643,824 1,714,482 1,770,899 1,818,460
% (▲ 4.7) (4.3) (3.3) (2.7)
欧州 百万人km 755,171 775,972 835,868 866,711
% (▲ 5.2) (2.8) (7.7) (3.7)
アジア・ 百万人km 645,822 702,917 731,017 771,954
太平洋(注1) % (▲ 3.2) (8.8) (4.0) (5.6)
中国 百万人km 337,524 403,900 453,696 505,626
% (17.1) (19.7) (12.3) (11.4)
日本 万人 12,959 13,208 12,688 13,684
(参考) % (▲ 5.9) (1.9) (▲ 3.9) (7.8)
2009 2010 2011
▲1〜0%程度 95弱 2012
(見込)
105強 115程度
+3%弱 2013
(予想)
120程度 200強
+4%程度
+6%程度
+12%程度
1. 業界環境
◇ 復興需要は
2014
年度以降逓減。全体の受注額も再び緩やかな減少に向かう見通し¾ 2012
年度の建設工事受注額(大手50
社)は前年比2.5%増の 11.1
兆円と、2期連 続で増加する見通し(図表1)
。9
民間工事は前年比▲0.5%減。製造業では、引き続き円高等を背景に新規建設投 資が低迷するなか、震災直後に応急復旧工事が突発した反動から同▲8%減を 見込む。一方非製造業では、都心部・中核都市での再開発案件や、着工が活発 化する物流施設等の受注増加を背景に、前期比微増が見込まれる。9
官公庁工事は同11.3%増。港湾・道路・除染工事等が被災地で徐々に発注され
るなど、震災復興需要が一段と顕在化している。9
海外工事は同▲1.1%減と、本体で受注する現地インフラ等大型工事は微減見込 み(次頁注1)。ただ、現地法人受注は日系企業の海外進出案件を中心に増勢が続く。¾ 2013
年度は、全体として横這い程度で推移する見通し。9
民間工事は前年比横這い。非製造業では住宅等の駆け込み需要もあり前年を若 干上回る一方、製造業では厳しい事業環境下での国内投資増強を期待し難い。9
官公庁工事は同▲2.8%減と増加は一服するものの、復興関連の街づくりが漸く 動き出すと予想されるなか、高台移転に伴う整地やインフラ整備、公共施設建 築等が見込まれるうえ、除染作業の発注も本格化し、堅調に推移しよう(次頁注2)。9
海外工事については、建設各社が受注拡大を目指す方向。ただ、施工能力が限られることから、大幅増加を見込み難い。
図表