第 4 章 積雪荷重時における挙動と進行性ポンディングの検討 ・・・・
4.2 積雪荷重時の問題点と進行性ポンディング現象
することで、そこに雨水の滞水が生じる進行性ポンディングによる崩壊の懸念もある。
近年、レンズ状二重空気膜構造が多く採用され、また、規模拡大の需要が高ま ることで、上述のような偏った荷重分布が生じるリスクが多くある。岡田らはホルン型 張力膜構造の進行性ポンディング現象に関する基礎的研究4.1)、河端らは四角形パ ネルの進行性ポンディングの研究4.2)を行っているが、密閉型のレンズ状二重空気 膜構造については、このような現象に対する検討はあまりなされていないのが現状 である。
よって本章では、ETFEフィルムの材料非線形性を考慮しながら、全面正圧載荷 だけでなく半面正圧載荷について、実験および数値解析による比較検証を行う。ま た数値解析により、荷重の載荷範囲の違いに関する検討を行い、載荷範囲と膜面 変位の関係の把握を目的として検討を行う。
4.2.2 進行性ポンディング現象
進行性ポンディング現象の定義は、下記の2つがある。
(1)空気膜面への付加荷重により、荷重の増加がないままで膜面が変位し、座 屈するような性状で変位が急速に進行する現象(主に高ライズの空気膜)
(Finite Deformation and stability behaviour of spherical inflatables subjected to axi-symmetric hydrostatic loading, W.Szyszkowski and P.G.Glockner
4.3))
(2)フィルム面が積雪、融雪水および雨水等の荷重によって変形して滞留を生 じ、さらなる変形と滞留水等の増加が継続的に進行する現象(図4.2.1)
海外において当初(1)の現象を膜面のポンディング現象と呼んでいたが、日本 にポンディングの概念が入り、(2)の内容においてもポンディングという言葉が使わ れるようになった。2つの現象を区別する上で、(2)の現象を「進行性ポンディング現 象」と呼んでいる。
図4.2.1 進行性ポンディング現象
また張力膜構造は、常時状態で発生するリラクゼーション(応力緩和)と、付加 荷重によるクリープ伸びとが混在し、応力が減少する。これは、フィルム材料である 高分子材料特有の現象であり、ETFEフィルムにおいては顕著に見られる。
一般的な構造材料に比べ、ETFEフィルムは伸び剛性が小さく、経年時の応力 弛緩の影響が大きい材料である。そのため、積雪荷重時に局所的な変形が生じや すい。一般に進行性ポンディング現象は、パネル面を有効な水勾配とパネル境界 部に、水はけの機能が確保されていれば問題ないとされているが、レンズ状二重空 気膜構造では、荷重により周辺境界部以下に膜面の変位が進行することも懸念さ れるため、進行性ポンディング現象の発生が懸念される。図4.2.2は、進行性ポン ディングによるレンズ状二重空気膜の大変形を示す。
進行性ポンディングは貯水と変形が繰り返し生じることで、大きな荷重に成長す る可能性があるため、膜構造の設計では留意しなければいけない事項の1つである。
1999年には、建築会館中庭で建設された仮設建築物「Oval Dome」において、進行
性ポンディングによる構造体の崩壊事故も発生している(写真4.2.1)。集中豪雨(当日最高降水量46mm/h)により、構造体全体を覆っていたフィルム膜に生じた大
きな貯水の発生を基点として、主構造である張弦梁のストリング端部の破断を招い たことによる。
図4.2.2 進行性ポンディングによるレンズ状二重空気膜の大変形
写真4.2.1 仮設建築物の崩壊