第 2 章 ETFE フィルム材料およびレンズ型二重空気膜構造の概説と
2.3 レンズ状二重空気膜構造の内圧制御方式の現状
図2.3.1に、内圧制御方式と体積・内圧変動の関係を示す。空気膜構造では、加 圧装置による内圧の制御が構造上不可欠な要素であるため、設計における内圧制御 の仮定はとても重要である。一般に、先に発展した構造形式である一重空気膜構造に おいては、常に内圧が設定値に維持されている状態(定圧型)を仮定している。これは、
東京ドームのような一重空気膜構造は内部体積量が大きいため、加圧装置の稼働・停 止や調圧ダンパーの開閉などの圧力制御に伴う内圧制御の時間的な遅れが無視でき るほど小さいという判断に基づいたものである2.25)。しかし実際には、完全に空気が密閉 された空間(密閉型)では、付加荷重時に内部空間の内圧P・体積Vが一定となるボイ ル・シャルルの法則が当てはまり、内圧変動が生じる。
レンズ状二重空気膜構造は、2枚の膜の間の空気量が他の空気膜構造と比べ小さ いという特徴を持つことから、定圧型の設計だけでは問題があると考えられる。そのた め1.1.4でも前述したとおり、密閉型による急激な内圧変動に対する評価が必要とな る。
図2.3.1 内圧制御方式と体積 ・ 内圧の変動の関係
さらに、外乱中において常に動的に変動する荷重・内圧に対して、圧力制御を行う ことは現実的ではない。また、パネルサイズに比べて空気供給用のダクトは細く、パネ ルを直列に連結して内圧制御を行う場合もあることから、内圧を常に一定と仮定するこ
P: 内圧 V: 体積
とは事実上困難である(写真2.3.1)。一時的な圧力指示値に対する制御措置は、内 圧の過多や過小を引き起こし、構造性能の低下に繋がる可能性も考えられる。よって、
レンズ状二重空気膜構造の強風時における設定内圧増加は、密閉の影響により過大 な加圧を生じさせる恐れがあり、膜材に対する負担の増大に繋がる可能性も考えられ る。
写真2.3.1 大型パネルへの細いチューブによる空気供給
密閉型の観点からは、岡田ら2.26), 2.27)により、強風時におけるレンズ状二重空気膜構 造の応答性状の把握と内圧設定手法に関する研究が行われ、密閉型でのレンズ状二 重空気膜構造の強風時における挙動を、実験および数値解析を用いて検証している。
また中井ら2.28)も、ETFEフィルムを用いた密閉型小規模空気膜に関する研究を行い、
実験および数値解析により検証をしているが、基本的に等分布荷重を想定したもので、
偏分布荷重に対する検証、進行性ポンディング現象、過大な負圧荷重のような終局時 に対する検証およびETFEフィルムの材料非線形性を考慮した密閉型の研究は、筆者 の知る限り報告されていない。
図2.3.2に、レンズ状二重空気膜構造の荷重時の状態と内圧制御(定圧型)を示 す。暴風時、積雪時は、常時設定内圧よりも高い内圧を設定することで、構造体の剛 性の増加を期待している。これは、内圧を上げることで直接的に荷重に対する抵抗圧 が上がるだけでなく、膜面曲率の増加により剛性が高くなることが要因である。
その他にも、野鳥などによる膜面の局所的な破損等も起こりうるため、デフレート状 態のような非常時を考慮した配慮が必要となる。
図2.3.2 レンズ状二重空気膜構造の荷重時の状態と内圧制御(定圧型)
(ETFE フィルムパネル設計 ・ 施工指針 ( 案 ) より2.1))