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研究5 親密な友人よりも優れていることに対する感情 反応と個人の適応との関連

(1)問題と目的

 本研究の目的は、親密な友人関係を対象に、他者よりも優れていることに対する感情反 応と個人の適応との関連を検討することである.自己評価維持モデルで予測される個人の 自己評価維持機}illと個人の適応との関連を示した研究では、親密な他者との関係において 自己評価維持モデルに沿って個人の自己評価を維持できているほど、学級への適応ができ ていること(磯崎,1994a,1997,2001b)や精神的健康が高い(Kamide&Daibo,2009)

といった個人の適応との関連が示されてきた,しかし、これらの研究は自己評価維持モデ ルの観点から自らの自己評価維持の側面に焦点を置いた研究である。拡張自己評価維持モ デルの観点からすれば、自らの自己評価維持だけでなく、親密な他者の自己評価も維持で

きていることが個人とその関係性の両方に適応的な状況であると考えられる,Mendolia,

Beach,&Tesser(1996)においては、拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応を 示す夫婦は、夫婦間の問題解決場面において建設的な議論を行うといった互いの関係性へ の適応との関連が示されている.このことから、個人の適応に関しても、親密な他者との 関係において、互いの自己評価を維持するように反応できていることが個人の適応に結び つくと考えられる,そこで本研究では第一の目的として、親密な友人関係を対象に、研究

3、研究4で検討された他者よりも優れていることに対する感情反応を用いて、それらの 感情反応と個人の適応との間に関連がみられるかどうかを検討する。個人の適応指標とし て本研究では、個人の精神的健康に着目する。また、本論文を通じて、これまで行ってき た研究において、自己の感情反応や他者の感情推測は、自己報告尺度を用いており、特に 研究3、研究4では、より具体的な感情内容を示す項目を用いてきた。このような方法の 問題点として、それらの反応が「親密な友人」にはそのように反応すべきであるといった 社会的望ましさ反応の影響が関連している可能性が挙げられる。そこで、本研究では、第

1の目的として、親密な友人に対する感情反応にっいて、社会的望ましさ反応との関連に ついても検討を行う。

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(2)方法

1)研究デザインおよび鯛査手続き

 本調査は、他者関与度(高/低)条件のシナリオによる2種類の質問紙を用いて、集合調 査形式によって実施された.本研究では、他者関与度条件を被験者内要因とし、それぞれ 第1調査、第2調査として同一対象者に2週に分けて実施された.それぞれの調査は、講 義の最初の時間に実施されたc第1調査、第2調査で、どちらの順序になるかは調査対象 者間でランダムに決められた.また、主観的幸福感尺度(伊藤・相良・池田・川浦,2003)

と社会的望ましさ反応尺度(谷,2008)については、第2回目の調査を実施した後、別の 研究目的と称して講義時間の終わりに実施したeそれぞれの実施時間は、10~15分間程度 であった

2)鯛査対象者

 教養科日として心理学の授業を受講している大学生98名を対象に質問紙調査を行った.

そのうち、分析に必要な質問項目に回答していないもの、および、回答に不備のある17 7、を除いた、81名(男性59名、女性22名、平均年齢18.26歳、SD=0.47)を分析の対

象とした.

3)実施時期

 本調査は、2010年6月中旬に実施した,

4)質問紙構成

 1.対象人物(親密な友人)の選定

 「現在最も親しいと思う同性の友人」(親密な友人)を1人挙げ、その人物のイニシャ ルを記入するように求めた。以降の質問にはここでイニシャルを記入した対象人物にっい て回答するように教示した。

※ 第2調査の質問紙(他者関与度高もしくは低)で、第1調査で挙げたN物と同一人物 を挙げるように教示した.ここで記入されたイニシャiレで同一人物かどうかを確認し、同

’人物であることが確認できなかったデータを除外した.本研究の分析対象者81名は、

全て同・人物を挙げていることが確認された。

 2.シナリオの提示

 対象人物と大学のある授業のテストを受けた状況のシナリオを提示したcシナリオは、

[自己にとって重要な授業のテストを自己と対象人物が受ける状況」に関するものであり、

その試験の結果が「対象人物よりも自己の方が優れていた」という内容で構成されていたc kた、このシナリオにおいて、対象人物のテストに対する関与度(他者関与度)が操作さ れた.他者関与度高条件と低条件の2種類があり、それぞれの回答者は、いずれか一方の 質問紙に回答した後、 週間後残りの一一方に回答した.他者関与度高条件と低条件のどち

らを先に回答するかは、調査対象者間でランダムに実施した。提示したシナリオを図5・1 に小す

あなたと『○○さん』※1は、大学のある授業で学期末テストを受けました。

このテストの結果は、授業の成績に関係していました。

あなたも『OOさん』も、この 業の単位をどうしても取りたいと思い、

一生懸命勉 していたので、

あなたも『OOさん』もこのテストをとても重要だと思っていました。※2

一週間後、テストの結果が配布されました。

授業の後に、あなたは『○○さん』とテストの結果をお互いに見せ合うことになりました。

あなたのテストの結果は、『○○さん』よりもとても良い点数でした。

※1.『○○さん』と記述された箇所は、イニシャルを記入した対象人物であることを教示し

た.

※2.ド線の箇所が、他者関与度条件として操作された。他者関与度低群では、’あなたは、こ の授業の単位をどうしても取りたいと思い、一生懸命勉強していたので、このテストをとても

重要だと思っていkしたL.一方で、『○○さん』は、この授業の単位を取りたいとはそれほど 思っておらず、このテストをあなたほど重要だとは思っていませんでした。」と記述された。

図5・1研究5において提示されたシナリオ(他者関与度高条件)

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 3、自己の感情反応

 シナリオの状況において自分の方が優れていたことに対して、自分自身がどのように感 じると思うかを16項日5件法(「1.あてはまらない」~「5.あてはまる」)で評定さ せたt.項目は研究4と同じものを用いた,

 4.他者の感情反応推測

 シナリオの状況において自分の方が優れていたことに対して、他者はどのように感じて いたと思うかを5件法(「1.あてはまらない」~「5.あてはまる」)で評定させたc  項日は、研究3で用いられた他者のポジティブ感情推測、ネガティブ感情推測の10項

目に他者のポジティブ感情推測1項目(’嬉しさを感じる。Dと他者のネガティブ感情推測 1項目C不愉快に感じる.Dを加えた計12項目で構成された,

 5.親密な友人との親密度

  1.対象人物(親密な友人)の選定」で挙げられた親密な友人との親密度を測定する ために、その人物とどのような関係であるかについて、10項目5件法で評定させた.項目 は、研究3、研究4で用いられた項目と同じもので構成された(e.g.,「協力的な関係」、

「親密な関係」、r誠実な関係」).

 6.シナリオの想像度

 提示したシナリオの状況にっいてどのくらい良く想像できたかにっいて、’1.全く思 い出せなかった」~「5.とても良く思い出せた」までの5件法で評定させた.

 7.主観的幸福感

 伊藤・相良・池田・川浦(2003)によって作成された主観的幸福感尺度に回答を求めた

(15項目4件法),この尺度は、精神的健康を測定する尺度であり、Subjective Well-Being Inventory (SUBI)(Sell&Nagpal,1992;大野・吉村・山内・百瀬・水島・浅井,1995;

藤南・園田・大野、1995)の項目内容をもとに作成されたものである,

 8.社会的望ましさ反応

 Paulhus(1991)によって作成された社会的望ましさ反応尺度の邦訳版(谷、2008)に 回答を求めた。この尺度は、「私は自分で決めたことを後悔しない」、”私は目分の判断をい つも信じている1など、回答者が本当に自分の自己像であると信じて無意識のうちに社会 的に望ましい回答をする傾向である自己欺晒因子と、「他人には言えないようなことをした

ことがある(したことがない)」、「人をののしったことがない」などの故意または意図的に 回答を良い方向、あるいは悪い方向に歪め、真実の自己像を偽る見せかけの回答を行う傾

向である印象操作因了の2因子(各因子12項目ずつの計24項目,7件法)からなり、そ れら2因rを合算した得点を社会的望ましさ反応得点としている(谷,2008).本研究では、

谷(2008)の因r一分析結果において、各因子の因f一負荷がti位7項目(.4以上)の14項

目を用いた.

※ 1、観的十・福感尺度および社会的望ましさ反応尺度への回答は、第2回目の調査実施後、

講義時間の終わりに、別の研究目的と称して実施されたc全ての調査が終了した後、調査 対象者に対し、実際の調査目的について説明したc

(3)結果

1)シナリオの想像度

 シナリオの想像度の平均値は、他者関与度高群で3.68(SD=1.01)、他者関与度低群で 3.60(SDニO.82)であった,理論的中間値(3)を加えて、1要因被験者間計画の分散分 析をhった結果、他者関与度高群、低群ともには理論的中間値よりも有意に高く、他者関

与度高群、低群で有意差が示されなかった(F(2,160)=24.97,p<.OOI, partial n2ニ0.24)、

この結果から、シナリオの想像度は十分に高いと解釈された.

2)対象人物(親密な友人)との親密度

 対象人物(親密な友人)との親密度の10項目について、主成分分析を行った。共通性 の低い2項目(「衝突σ)多い関係」F競争的な関係」)を除外した8項目の第1主成分が抽出

された(α=.75)cこれら8項目を平均化し、親密度」とした,一親密度」の平均値は、

4.38(SLX・O.44)であった.理論的中間値(3)との1サンプルのt検定を行った結果、’親 密度」は理論的中間値よりも有意に高いことが示された(t(80)=90.40,pく.001,d=4.48)c この結果から、対象人物(親密な友人)が適切に挙げられていると解釈された。

3)自己の感情反応

 本研究では、他者関与度が被験者内要因であるため、他者関与度ごとに自己の感情反応 16項目に対し、因子分析を行った(主因子法・varimax回転)cその結果、表5・1、5-2で 示されるように、他箭関与度高、低ともに、研究4と同じ3因子が抽出され、それぞれ「共 感的ネガティブ感情(aニ.90,91)」、r高揚的ポジティブ感情(α=.88,.90)」、「賞賛的ポ ジティブ感情(α=.85,.89)」と解釈された。3因子それぞれを平均化し、平均値と標準偏

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