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 本節では、研究者による人物学習論のうち、小原友行を取り上げて、その人物学習

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論を吟味する.なぜ、特に彼を取り上げたかというと、彼が1987年に著した「意思 決定力を育成する歴史授業構成一「人物学習」改善の視点を幅に一暗rr人物学

習」研究に長い間取り組んで来た小原個人の到達地点を示すとタもに、広●範なレごユ ーに基づいて書かれているという点から、これ以前の「人物学習」研究の総決算とみ なすことができる」(1)ということと、r小原の論文が発表された2年後、・すなわぢ平 成元年に発表された文部省学習指導要領は(引用者中略)従来以上に小学校歴史教育 における「人物学習」の強化を図った.そのため、学会誌あるbは研究紀要に「人物 学習」をテーマとするものが登場するようになった。小原の論文はこうした研究動向 のさきがけと見ることができる・(引用者中略)研究者たちにと?て・小聯文1ま無視 できない存在となっている。 ・(2)ということがあげられる。

1.意思決定力とは

 小原は社会科の究極的目標をr社会認識を通して市民的資質を育成する∫こととし、

その市民的資質の中核をなすものとして「意思決定力」を考えている.小原の言づ意 思決定力とは、「問題場面でQ自己の行動を選択・決定するために必要な能力であり、

問題を解決するために考えられる実行可能ないくつかの解決案』(行動案) 0の中から、

より望ましいものを選択・決定することのできる能力である。・また、科学的な事実認 識と反省的に吟味された価値判断に基づいて行われる実践的な判断能力である。」(⑳ としている。そして、歴史教育においてもこの意思決定力の育成を目指すべきだとし、

それがこれからのr人物学習」の新しい視点となると述べてい資。

2.意思決定力の育成とr人物学習」

なぜr人物学習」が意思雌力の育成を可能1こするのだろうわ・・小原は歴史的論争

場面に立った人物の問題鰍的行為は・非選択的な行動(衝動断動・習慣的行動・

強制された行為)ではなく、意識的・主体的な意思決定を伴う選択的行為であると考 え、それを以下のようにモデル的に説明する。(4)

(1) 吉田正生「新しい「人物学習」の構想一制度・しくみを構想する力を育成するために一,−『社会科研究書 第58号 全国社会科教育学会 2003年 p.1

(2)前掲(1)p.1

(3) !∫・原友行「意思決定力を育成する歴史授業構成一「人物学習」改善の視点を中心に一」『史学研究』177

号1987年pp.45−46

(4)前掲(3)P.47

①ある時代の歴史的な状況の中での問題場面に人物が直面すると、問題を解決しよ

 うとする意識が生じ、何が問題なのか、なぜ問題が生じたのかを明確にする。

②問題を解決することにようて、何を実現するのかという目的・目標を設定する。

③目的・目標の実現を可倉巨にするための手段・方法の中で、その時代の摩史的状況  の中で実行可能なもの(行動案)をリストアップする。(その際に、問題の原因究  明が重要な指針となる。)・

④リストアップされた手段・方法(行動案)の評価を行う1。評価は、評価基準であ  る達成すべき目的・目標と、行動案を実行した場合に生じる結果、あるいは得られ  る成果の予測に基づいて行われる。

⑤評価の結果に基づいて、.もっとも望ましいと判断できる行動案を選択し、実際の  行動を行う。

⑥行動の結果として、歴史的状況に変化が生じる。生じた変年が目的・・目標を実現  するものでなければ、新たに他の行動案を選択し、実行することが必要になる。

 このような歴史上の人物の問題解決的行為の原因・過程・結果を認識レ、その行動 を学習者の価値判断に基づき評価したり、他の行動案を設定したりするなかで、学習 者自身の中に意思決定力が育成されると考えるのである.

3.人物の問題解決的行為の認識のための3つの活動

 このような歴史上の人物¢〉問題解決的行為を、学習者はどのように認識するのだう うか.それについて小原は①r記述」、②「説明」(「目的論的説明」と「因果的説明」)、

③「判断」(「価値的判断」と「実践的判断」)の3つの活動にようて説明する.以下、

それぞれがどのようなものか説明する。

 「記述」とは、r人物の行為に対してrどのような」rどのように」と問い、資料か ら人物の行為に関連する知識を抽出する活動」(5)を意味している。例えば、人物の性 格や社会的地位、直面した問題やその歴史的背景、問題を解決するために とった行動 やその結果などについての問いに回答していくことが必要になる。

 「説明」とは、「人物の行為に対して「なぜ」「どうして」と問い、推論によってそ れに回答していく活動」(6)を意味しているが、そこでは、「目的論的説賜」と「因果 的説明」の2つが必要となる。

 r目的論的説明」は、rrなぜそのような行為がなされたのか」を、人物の目的・意

(5) 小原友行「人物を取り入れた歴史学習」朝倉隆太郎編r現代社会科教育実践講座第10巻 日本の歴史   学習② 歴史的内容の授業Hゴ現代社会科教育実践講座刊行会 1991年 p.9

(6) 前掲(5)p.9

図・動機とそれを実現するな1めの手段の関係から説明しよラとするもの」(7)である?

したがって、歴史上の人物の立場に立って、行為の理由を推論することが必要となる。,

「因果的説明」とは、「「なぜそのような行為をしなければならなかったか」を、原因 と結果の関係から説明しよ倒とするもの」(8)である。した炉っ七、観察者の立場に立 って、行為の理由を推論す資 ことが必要となる。

 このように、人物の行為の認識において、「目的論的説明」とf因果的説明」の両面 が必要となるのは・目的・童図・動機から生じる人物の行掃によって歴卑的状況は生 み出されるが、同時に、時代の歴史的状況によって人物の行為ほ規定されるからであ

る。

 「判断」とは、「価値的判断」と「実践的判断」の2つを行う活動を意味している。

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 「価値判断」とは、「人物の行為の結果として生じた変化(何が解決され、何が解決 されなかったのか)の事実に基づいて・人物の行為の価値ブけや評価を御もの」・(1)

であり、人物の行為に対してそれが適切なものであったかそう.ではなかったかという 判断が下されることになる。P「実践的判断」は、「歴史上の人物が行為の選択を迫られ たのと同じ場面に自分自身炉直面していたら、どのような選択ど行動を行,うか、そり ような問題場面ではどのような行動を選択すべきだったか、そむはなぜか、といラ問.

いに対する回答を求めていく活動」(10)である。その意味では、人物が庫面していた 問題場面で自分だったらどう行動するかという意思決定を行う活動でもある.

 小原は人物学習が意思決定力を育成し得る理由として、「歴史奥の人物がどのよづな 問題状況の中で、どのように意思決定を行い、その結果どうな6たのかを、追体験的 に学習させることが可能であり、そのことが意思決定力の育成を可能にする」(・1)と いう点と「歴史上の人物の行為の場合、行為の結果を事実として確認する,ことができ るため、人物の行為についぞの歴史的評価や、人物が直面していた問題場面での意思 決定を行わせることが可能であり、そのことが意思決定力の育歳を可能にする」(12)

という点の2点をあげている。

4.小原友行の人物学習の方法原理

 では、どうすればr科学的な事実認識と反省的に吟味された価値判断に基づく」 意 思決定力を育成することができるのだろうか。

(7)前掲(5)P.9

(8)前掲(5)P.9

(9)前掲(5)P.9

(・・)前掲(5)PP.9−10

(11)前掲(5)P.10

(12)前掲(5)p.10

 小原は、その問いに対して・r研究」という方法原理を提案し七いる。r研究」とは、

r意思決定を迫られた歴史上の論争的な問題場面における人物の問題解決的な行為の 事実の研究」(13)であり、r児童が歴史上の人物の問題解決的行為の事実をr記述」』・r説 明」「判断」する授業」(14)を意味する。以下に、具体的に説明する。

 意思決定力を迫られるような歴史上の論争的な問題場面での人物の問題解決的行

為についての研究では、最初に、人物が直面した問題場面と問題を解決するために行 った行為、その結果生じた変化にっいての記述が行われる。次に、なぜ人物がとった 行為についての目的や動機についいての目的論的説明と社会的背景についての因果的 説明が行われる.そして、人物の行為の結果として生じた変化の事実からそれが適切 であったかそうではなかったかという価値的判断と、自分だったらどうするか、それ はなぜかについての実践的判断が行われる.

 そして、小原はこの方法原理の利点として「歴史上の論争的な問題場面における人 物の意思決定に対する価値的判断を、事実認識に基づいて行うごとが可能である」(・5)

という点と、「児童自らが論争的な問題場面での実践的判断を、事実認識と価値的判断 に基づいて行うことができる」(16)という2点をあげ、これが..「科学的な事実認識と 反省的に吟味された価値判断に基づく」意思決定力を育成することにつながるとして いるのである。

5.方法原理に基づく授業構成

 以下に、小原の授業案である「開国か擁夷か」を例として、方法原理に奉づい牽授 業構成をみていくこととする・。

 小原は、授業構成に必要なものとして「教材構成」とr授業過程」の2『つをあげで

いる。

 「教材構成」とは、「学習内容」と「教材選択」の2つからなる。「学智内容」とし ては「記述的知識」、「説明約知識」、「技能」(資料から記述的知課を抽出し、まと醜発 表する能力)、「思考力」(人物の行為を目的一手段・原因一結果め関係から推論によづ て目的論的・因果的に説明する能力)、「価値判断力」、「意思決窺力」(歴史上の論争的 な問題場面での実践的判断を行う能力)の5つの要素をあげ、ごれを単元ごとに具体 的に設定することが必要としている。r開国か接夷か」における塁つの要素を具体的に すると、<表1>のようになる。(17)

(13)前掲

(14)前掲

(15)前掲

(16)前掲

(17)前掲

(3)P.61

(3)P.61

(3)P.61

(3)P,61

(3)P.62