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第 3 章 仮説の設定及び研究モデル

3.2 仮説の導出及び研究モデル

3.2.4 技術不確実性の低減

技術不確実性とは、新製品開発プロジェクトの決定に関して技術環境の一部分を完全に 予測する、または正確に予測できないことを意味する(Milliken, 1987; Song and

Montoya-Weiss, 2001)。いくつかの先行研究によると、技術不確実性を新製品開発の初期

に低減するとプロジェクトの成功に肯定的な影響を与えることが明らかになっている

(Cooper and Kleinschmidt, 1986; Dwyer and Mellor, 1991; Moenaert et al., 1995;

Song and Parry, 1996, Verworn et al., 2008)。

Cooper and Kleinschmidt(1986)は、成功的なプロジェクトは、技術の予備評価がより

熟練に遂行される傾向があることを発見した。また

Dwyer and Mellor(1991)もオースト

ラリアの

75

95

個の新製品プロジェクトに関する研究で、技術の予備評価は新製品開発

において先決すべきな活動として、この活動を熟達に遂行すると販売量の側面で成功的な 成果と関連のあることを明らかにした。

Cooper and Kleinschmidt(1987)及び Song and Parry (1996)によると「技術不確実性」

は、開発前において「必要技術の理解の程度・技術的仕様・技術的な問題の予測」にある と論じている。また、他の先行研究では、「技術不確実性の低減」を「新製品の仕様の明 確さ・技術的な要求事項・技術的に実現可能性・技術的な問題を解決する明確さ・技術の 理解」などで定義している(Verworn et al., 2008; Kim and Yoon, 2011; Nagahira et

al., 2015; Ruslan and Nagahira, 2015b; 尹・長平・石田, 2016)。先行研究を踏まえて、

以下のように仮説を導出した。

(H10) FFE

での技術不確実性の低減活動は新製品開発プロジェクトの効率に正の影響

を与える

(H11) FFE

での技術不確実性の低減活動は新製品開発プロジェクトの効果に正の影響

を与える

3.2.5

効率及び効果

「新製品開発の成功」は、「効率(efficiency)」及び「効果(effectiveness)」と操 作的定義する。Cooper(

1993)及び Tessarolo(2007)は、新製品開発プロセスで開発のリ

ードタイムの短縮と開発の日程を遵守することにより、企業の競争力を維持または増加さ せると論じている。そして

Cooper( 1984)は、新製品成果を単一次元で測定することを批

判し、財務的な成果だけが、新製品成果を代表できる最も重要な尺度ではないと述べてい る。また、財務的な成果だけを追求することは、革新的な新製品の成功においてかえて害 を与えると提示している。新製品開発の成果を財務的成果、市場占有率、新しい市場機会 として定義し、財務的成果とは、収益性、売上高、売上高成長率である(Cooper and

Kleinschmidt,1987; Cooper, 1994)。 Griffin and Page( 1993)は、77

個の論文と

50

社 で、広く使用されている成果の尺度を明らかにしたうえで、多様な成果の尺度を発表した。

また

Anderson(2010)は、原価の 80%は、開発段階の中で概念( concept)設計段階とデザ

イン段階で決定されると主張している。

上記の先行研究から「効率」は、投入資源、すなわち資金と人員の減縮、上市時間の短

縮(マイルストーン

)に操作定義し、「効果」は、上市後の利益、売上、市場シェア、競

争優位性、顧客満足度とする(Cooper, 1987; Cooper and Kleinschmidt, 1987; Dvir

and Lechler, 2004; Ernst, 2002; Kim and Yoon, 2011; Ruslan and Nagahira, 2015b;

Nagahira et al., 2015; Pinto and Slevin, 1988; Verworn et al., 2008; 尹・長平・

石田,

2016)。

「効率」を意味する資金と人員の減縮は、費用を抑えることから結果的に収益の向上、

すなわち「効果」に肯定的な影響を与えることから以下のような仮説を導出した。

(H12) 新製品開発プロジェクトの効率は効果に正の影響を与える

3.2.6

産業及び企業規模別に「FFEでの活動」は異なる

Barczak( 1995)は、新製品の持続的な成功は、新製品戦略、組織的構造及び新製品開発

プロセスの適切な組み合わせの選択によるものであり、この要因の選択とその効果は業界 の固有の特性に依存する可能性があるという仮説を設定し、ハイテク産業である通信

Telecommunication)企業のみに焦点を当て、分析を行った。 Barczak

の研究結果は、先 端産業の場合、アイデア創出及びアイデア選別をたくさん遂行する企業が高い成果を示し ていると報告している。韓国の

Choi et al.(2003)も、先端産業と非先端産業との新製品

開発プロセスでの活動に差異があることを発見し、韓国の先端企業は、新技術を社外から 導入するため、新製品開発のアイデア創出活動が活発ではないと提示している。また中小 企業においては、事前開発活動が重要であるが、大企業においては、製造関連活動が重要 であると主張している。先行研究を踏まえて以下のような仮説を設定する。

(H13) 韓国 ICT

産業と非

ICT

産業との新製品開発における

FFE

での活動は異なる

(H14)韓国 ICT

産業において企業規模により

FFE

での活動は異なる

仮説

13

及び

14

の仮説の検定は、部分最小

2

乗(Partial Least Square)アプローチの 多重集団分析(Multi-group Analysis)により明らかにする。

3.2.7

まとめ

4

は、研究仮説で使用する潜在変数と測定変数をまとめた表である。

表 4 本論文の潜在変数と測定変数

潜在変数 測定変数(Indicators) 先行研究

市場 不確実性

の低減

(a1) 新製品の開発前に、「想定される顧客のニーズ等」について十分理解していた (a2) 新製品のコンセプトの明確化に顧客の要求が集約された

(a3) 新製品を開発する前に市場規模についてよく理解していた

(a4) 新製品に対する顧客の「価格感応度」(どれくらの価格であれば買ってくれるか)について よく理解していた

(a5) 新製品の差別化又はセールスポイントについて認識していた (a6) 新製品の開発前に、当該製品の「競争者」についてよく知覚していた

Kim and Yoon (2011), Nagahira et al. (2015), Ruslan and Nagahira (2015a, b), Ruslan (2016), Song and Parry (1997), Verworn et al. (2008), Yoon et al. (2016)

技術 不確実性

の低減

(b1) 新製品の仕様が新製品の開発前段階に明確にされていた

(b2) 新製品に対する技術的な要求が新製品開発前段階に具体的に挙げられていた (b3) 新製品に関する技術開発可能性が新製品の開発前段階に徹底的に検討されていた (b4) 新製品開発の前段階において技術的な問題点を如何にして解決するかという点について 明確であった

(b5) 新製品のための技術について新製品開発の前段階においてよく理解していた

Cooper and Kleinschmidt (1987),

Kim and Yoon (2011), Nagahira et al. (2015), Ruslan and Nagahira (2015a, b), Ruslan (2016), Verworn et al. (2008), Yoon et al. (2016)

初期 計画

(c1) 新製品開発プロジェクト計画の策定は、社内的に明確な担当チームにまかされた (c2) 担当チームには十分な時間が与えられた

(c3) 経営資源 (人材、資金) が担当チームに割り当てられた (c4) 新製品開発プロジェクトについての詳細なコスト見積もりが行われた

(c5) 新製品開発プロジェクトの担当チームメンバーの責任が、プロジェクトの開始時点で明確にさ れていた

Cooper and

Kleinschmidt (1987), Kim and Yoon (2011), Maidique and Zirger (1984),

Pinto and Slevin (1988), Sourder (1987), Ruslan and Nagahira (2015a, b), Ruslan (2016), Nagahira et al. (2015), Verworn et at. (2008), Wheelwight and Clark (1992), Yoon et al. (2016)

新規性の 程度

(d1) 新製品・新商品のために必要な技術的知識は、当社にとって新しいものであった (d2) 新製品の技術的な構成は、当社にとっていままであまり経験のない領域のものであった (d3) 必要とされる製品製造ラインは当社の既存の生産ラインでは対応できないものであった (d4) 必要とされる製品の製造工程は、当社にとって経験のないものであった

(d5) 新製品・の目標とする市場又は顧客は当社の現在の市場や顧客とは異なるものであった (d6) 必要とされる販売チャネルは当社の既存のチャネルとはかなり異なるものであった (d7)新製品の広告宣伝において当社は経験がなかった

(d8) 必要な資金は、以前のプロジェクトより多く要した

(d9) 新製品のコンセプトを実現するために従業員にとって必要とされる能力や技能が当社の従 来のものと異なっていた

(d10) 新製品は当社の組織体制の変更を余儀なくさせた (d11) 新製品は当社の企業戦略を実質的に変更させるものであった

Griffin (1997),

Khurana and Rosenthal (1998),

Kim and Yoon (2011), Nagahira et al. (2015), Ruslan and Nagahira (2015a, b), Ruslan (2016),

Moenaert et al. (1995), Verworn et at. (2008), Yoon et al. (2016)

効果

(f101) 利益 (f102) 売上高 (f103) 市場でのシェア―

(f104) 競争優位性

(f105) 新製品についての顧客満足

Pinto and Slevin (1988), Ernst (2002),

Dvir and Lechler (2004), Kim and Yoon (2011), Ruslan and Nagahira

効率

(f2) 開発前段階で計画したマイルストーンに達した (f3) 開発前段階で計画した資金で十分であった (f4) 開発前段階で計画した人員で十分であった

(2015a, b), Ruslan (2016), Nagahira et al. (2015), Song and Parry (1997), Verworn et al. (2008), Yoon et al. (2016)

3

は、研究仮説をまとめて図式化した研究モデルである。

図 3 研究モデル