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測定不変性と PLS-MGA 及び仮説検定

第5章 分析

5.6 測定不変性と PLS-MGA 及び仮説検定

測定不変性の評価は、PLS-MGAを実施する上で前提条件である。測定不変性の評価は、

MICOM(Measurement Invariance of Composite Model)を用いて評価され、 3

段階を通過 しないといけない。図

16

は、MICOMの手続きを示した図である。

図 16 測定不変性の評価においての

MICOM

手続き

5.6.1 2011

年度と

2017

年度の

ICT

産業の比較

(1)

測定不変性の評価

まず、2017年度

ICT

産業と

2011

年度

ICT

産業との

PLS-MGA

を実施する。この理由は、

両方のデータは、測定不変性を評価する

MICOM

3

段階すべてを満たすと、データの統合

(Pooling)が可能であるからである。 Matthews(2017)は、 PLS-MGA

を行うためには、比較 するグループのデータサイズが同じくらいでないと、正しい比較ができないと述べた。

2011

年度非

ICT

産業のデータは

195

個で、

2017

年度

ICT

産業は

105

個、2011年度

ICT

産業のデータは

101

個である。そのため、2011年度と

2017

年度の

ICT

産業のデータが統 合できれば、

ICT

産業の特性を明らかにすることができる。

MICOM

1

段階は、形態不変性(Configural Invariance

)を確保することである。同一

なアンケート項目、同じデータ処理方法、同じ分析アルゴリズムを使用することである。

形態不変性を確保するため、測定モデルの評価において、妥当性及び信頼性の評価基準に 満たさなくても

2017

年度の測定モデル評価に合わせる。2011年度

ICT

産業の「新規性の

程度」の外部負荷量が

0.4

以下にも関わらず、測定変数を除去しなかった。MICOMの

1

段 階の形態不変性は確保できた。

MICOM 2

段階は合成不変性(Compositional Invariance)を確保することである。この 段階では、ノンパラメトリック方法である

permutation

アルゴリズムを用いて検定を行う。

permutation

の回数を

5,000

回実施する。

33

は、MICOM 2 段階の結果である。

Original Correlation

が、5%の値より大きいか または同一の場合は、2段階を通過したことになる。ということで、

2017

年度

ICT

産業と

2011

年度

ICT

産業のデータは

2

段階を通過したため、3段階に移ることができる。

表 33 2011年度及び

2017

年度

ICT

産業の

MICOM 2

段階の結果

Original Correlation Correlation

Permutation Mean 5.00% Permutation

p-Values 市場不確実性の低減活動 0.999 0.996 0.990 0.909

新規性の程度 0.893 0.919 0.791 0.212

初期計画 0.998 0.997 0.992 0.474

技術不確実性の低減活動 0.998 0.999 0.998 0.136

効果 0.997 0.997 0.989 0.442

効率 0.993 0.992 0.975 0.454

MICOM 3

段階は、平均・分散の均等性を評価する段階で、表

34

は、

MICOM 3

段階の結

果である。3段階では、「平均

-Original

差異」と「分散

-順列平均差異」の条件をすべて

満たされれば、完全な測定不変性(Full Invariance)が成立され、データの統合が可能で ある。しかし、2011 年度

ICT

2017

年度

ICT

産業は「平均

-Original

差異」において

「新規性」と「効率」、「効果」が

2.5%

から

97.5%の範囲内に存在しないため、「部分的

測定不変性(partial invariance)」が成立された。測定不変性が部分的に成立されたが、

PLS-MGA

を実施する基準は通過したことで、PLS-MGAは可能である。

表 34 2011年度と

2017

年度の

ICT

産業における

MICOM 3

段階の結果

平均 - Original

差異 (‘11 –

‘17ICT)

平均 - 順列 平均差異

(‘11 – 17ICT)

2.50

%

97.50

%

順列 p-値

分散 - Original

差異 (‘11 –

‘17ICT)

分散 - 順列 平均差 (‘11 –

‘17ICT)

2.50

%

97.50

%

順列 p-値

市場不確実性 0.177 0.000 -0.268 0.277 0.207 -0.38 -0.008 -0.529 0.508 0.159 新規性 -0.331 0.000 -0.282 0.279 0.020 -0.266 -0.001 -0.304 0.316 0.093 初期計画 0.122 -0.003 -0.273 0.266 0.383 0.112 0.000 -0.345 0.35 0.527 技術不確実性 0.184 0.001 -0.273 0.274 0.179 -0.403 -0.004 -0.494 0.473 0.112 効果 0.540 0.000 -0.280 0.274 0.000 -0.013 -0.006 -0.388 0.378 0.944 効率 0.442 -0.001 -0.274 0.276 0.002 0.049 -0.004 -0.335 0.326 0.763

(2) 2011

年度と

2017

年度の

ICT

産業の

PLS-MGA

35

は、2011年度と

2017

年度における

ICT

産業の

PLS-MGA

の結果である。MGAアルゴ リズムを通じて検定した経路係数に差異が提示された。PLS-MGAにおいては、経路係数の

p

値が

0.05(*)より小さいまたは 0.95(#)より大きい場合は、グループ間に差異があると

判断できる(

Henseler et al., 2009; Sarstedt et al., 2011)。

このことから

2011

年度と

2017

年度の

ICT

産業において、「新規性の程度」から「市場 不確実性の低減活動」と「技術不確実性の低減活動」への経路係数に、統計的に有意な差 異が明らかとなった。

表 35 2011年度と

2017

年度の

ICT

産業の

PLS-MGA

結果

仮説 経路係数の差異 経路係数 p-Value

Parametric Test p-Value

Welch-Satterthwaite Test p-Value

[H1] 新規性 → 初期計画 0.163 0.148 0.348 0.350

[H2] 新規性 → 市場不確実性 0.337 0.991(#) 0.017 0.017

[H3] 新規性 → 技術不確実性 0.230 0.967(#) 0.064 0.065

[H4] 初期計画 市場不確実

0.004 0.491 0.967 0.967

[H5] 初期計画 → 技術不確実 0.113 0.910 0.185 0.188

[H6] 初期計画 → 効率 0.245 0.927 0.147 0.146

[H7] 初期計画 → 効果 0.236 0.117 0.233 0.231

[H8] 市場不確実性 → 効率 0.273 0.081 0.168 0.170

[H9] 市場不確実性 → 効果 0.190 0.127 0.266 0.267

[H10] 技術不確実 → 効率 0.044 0.410 0.835 0.835

[H11] 技術不確実 → 効果 0.037 0.584 0.848 0.848

[H12] 効率 → 効果 0.172 0.843 0.359 0.356

*p<0.05, **p<0.01,***p<0.001, #p>0.950

(3)

2017

年度

ICT

産業の仮説検定

2017

年度

ICT

産業の構造モデルが適合であると判定できたことから、ブートストラッ ピング(5,000回)を通して仮説の有意性検定(significance testing)を行う。

36

は、2017年度

ICT

産業の仮説検定の結果をまとめた表である。

表 36 2017年度

ICT

産業の仮説検定の結果

仮説 経路係数 t-value p-value 仮設検証

(H 1)新規性 → 初期計画 -0.209 1.896 0.058 棄却

(H 2)新規性 → 市場不確実性 -0.041 0.374 0.708 棄却

(H 3)新規性 → 技術不確実性 -0.076 0.857 0.392 棄却

(H 4)初期計画 → 市場不確実性 0.497 5.723 0.000 支持***

(H 5)初期計画 → 技術不確実性 0.658 12.049 0.000 支持***

(H 6)初期計画 → 効率 0.573 4.249 0.000 支持***

(H 7)初期計画 → 効果 -0.215 1.308 0.191 棄却

(H 8)市場不確実性 → 効率 -0.039 0.290 0.772 棄却

(H 9)市場不確実性 → 効果 0.320 2.559 0.011 支持*

(H10)技術不確実性 → 効率 -0.035 0.230 0.818 棄却

(H11)技術不確実性 → 効果 0.068 0.443 0.657 棄却

(H12)効率 → 効果 0.257 1.654 0.098 棄却

(注)有意水準 *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001

「新規性の程度」が「初期計画」、「市場不確実性の低減活動」、「技術不確実性の低 減活動」に負の影響を与えるという[H1]、

[H2]、 [H3]は、各々 -0.209(p=0.058)、 -0.041

p=0.708)、 -0.076(p=0.392)で、有意水準 p<0.05

のため、支持されなかった。

FFE

段階における「初期計画」が「市場不確実性の低減活動」、「技術不確実性の低減 活動」、「効率」に、正の影響を与えるという仮説[H4]は

0.497(p=0.000

***

)、[H5]は 0.658( p=0.000

***

)、 [H6]は 0.573( p=0.000

***

)で支持されたが、「効果」に正の影響を与

えるという仮説[H7]は、-0.215(

p=0.191)で支持されなかった。

FFE

段階における「市場不確実性の低減活動」が新製品開発プロジェクトの「効率」に 正の影響を与えるという仮説[H8]は、

-0.039(p=0.772)で支持されなかったが、「効果」

に正の影響を与えるという仮説

[H9]は、 0.320(p=0.000

***

)で支持された。

FFE

段階における「技術不確実性の低減活動」が「効率」及び「効果」に正の影響を与 えるという仮説[H10]は、

-0.035(p=0.818)、仮説 [H11]は -0.068(p=0.657)で両方とも支

持されなかった。

新製品開発プロジェクトの「効率」が「効果」に正の影響を与えるという仮説[H12]は、

0.257、 p< 0.05

を満足しなかったため、支持されなかった。

2017

年度

ICT

産業の経路係数において、影響関係が一番大きいのは、「初期計画」か ら「技術不確実性の低減活動」への経路で、経路係数は

0.658、「初期計画」から「効率」

への経路係数は

0.573、「初期計画」から「市場不確実性の低減活動」への経路係数は

0.497、「市場不確実性の低減活動」から「効果」への経路係数は 0.320

の順である。

2017

年度

ICT

産業において「初期計画」が「

FFE

での活動」に大きい影響を与えること が明らかとなった。

37

は、2017年度

ICT

産業の特定間接効果(Specific indirect effect)の分析によ り媒介効果を検定した表である。特定間接効果の経路係数と有意性を見ると、媒介効果の ある潜在変数が分かる(

Shin, 2018, pp.267)。総間接効果(Total Indirect Effects)だ

けでは、仮説経路に対する媒介効果検証(mediation test)ができないため、具体的にど

の仮説経路に対して、媒介効果があるかどうかを検証するためには、ブートストラッピン グを実行して、特定間接効果の結果を確認する(Shin, 2018, pp.266)。

特定間接経路の中で、統計的に有意性のある経路係数は「初期計画」→「市場不確実性 の低減」→「効果」であった。「初期計画」と「効果」の間には「市場不確実性の低減活 動」が媒介効果のあることがわかる。

表 37 2017年度

ICT

の特定間接効果分析による媒介効果検定の結果

特定間接経路 経路係数 標準偏差 t-value p-value 有意性 新規性 → 初期計画 → 市場不確実性 -0.104 0.062 1.683 0.092 新規性 → 初期計画 → 技術不確実性 -0.138 0.074 1.853 0.064 新規性 → 市場不確実性 → 効果 -0.013 0.040 0.335 0.737 初期計画 → 市場不確実性 → 効果 0.159 0.076 2.108 0.035 YES*

新規性 → 初期計画 → 市場不確実性 → 効果 -0.033 0.031 1.071 0.284 新規性 → 初期計画 → 効果 0.045 0.051 0.876 0.381 新規性 → 技術不確実性 → 効果 -0.005 0.020 0.259 0.795 初期計画 → 技術不確実性 → 効果 0.044 0.101 0.438 0.661 新規性 → 初期計画 → 技術不確実性 → 効果 -0.009 0.029 0.325 0.745 新規性 → 市場不確実性 → 効率 → 効果 0.000 0.005 0.082 0.934 市場不確実性 → 効率 → 効果 -0.010 0.039 0.256 0.798 初期計画 → 市場不確実性 → 効率 → 効果 -0.005 0.021 0.234 0.815 新規性 → 初期計画 → 市場不確実性 → 効率 → 効果 0.001 0.006 0.184 0.854 初期計画 → 効率 → 効果 0.147 0.098 1.501 0.133 新規性 → 初期計画 → 効率 → 効果 -0.031 0.030 1.020 0.308 新規性 → 技術不確実性 → 効率 → 効果 0.001 0.006 0.121 0.904 技術不確実性 → 効率 → 効果 -0.009 0.044 0.205 0.838 初期計画 → 技術不確実性 → 効率 → 効果 -0.006 0.030 0.202 0.840 新規性 → 初期計画 → 技術不確実性 → 効率 → 効果 0.001 0.008 0.161 0.872 新規性 → 市場不確実性 → 効率 0.002 0.018 0.093 0.926 初期計画 → 市場不確実性 → 効率 -0.020 0.072 0.272 0.786 新規性 → 初期計画 → 市場不確実性 → 効率 0.004 0.020 0.202 0.840 新規性 → 初期計画 → 効率 -0.120 0.078 1.535 0.125 新規性 → 技術不確実性 → 効率 0.003 0.019 0.142 0.887 初期計画 → 技術不確実性 → 効率 -0.023 0.103 0.227 0.821 新規性 → 初期計画 → 技術不確実性 → 効率 0.005 0.029 0.170 0.865

(注)有意水準 *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001

(4)

2011

年度

ICT

産業の仮説検定

38

は、2011年度

ICT

産業の仮説検定の結果である。

表 38 2011年度

ICT

産業の仮説検定の結果

仮説 経路係数 t-value p-value 仮設検証

(H 1)新規性 → 初期計画 -0.046 0.361 0.718 棄却

(H 2)新規性 → 市場不確実性 -0.379 4.505 0.000 支持***

(H 3)新規性 → 技術不確実性 -0.306 3.668 0.000 支持***

(H 4)初期計画 → 市場不確実性 0.502 8.277 0.000 支持***

(H 5)初期計画 → 技術不確実性 0.545 8.332 0.000 支持***

(H 6)初期計画 → 効率 0.328 3.222 0.001 支持**

(H 7)初期計画 → 効果 0.021 0.202 0.840 棄却

(H 8)市場不確実性 → 効率 0.233 1.658 0.097 棄却

(H 9)市場不確実性 → 効果 0.510 4.169 0.000 支持***

(H10)技術不確実性 → 効率 0.009 0.061 0.951 棄却

(H11)技術不確実性 → 効果 0.031 0.244 0.807 棄却

(H12)効率 → 効果 0.085 0.831 0.406 棄却

(注)有意水準 *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001

「新規性の程度」が「初期計画」に、負の影響を与えるという仮説

[H1]は、弱い負の影

響(-0.046)であったが

p=0.718

のため、支持されなかった。「市場不確実性の低減活動」

と「技術不確実性の低減活動」に負の影響を与えるという仮説

[H2]と [H3]は負の影響で、

-0.379( p=0.000

***

)、 -0.306( p=0.000

***

)で、両方とも支持された。

FFE

段階における「初期計画」が「市場不確実性を低減活動」、「技術不確実性を低減 活動」および「効率」に、正の影響を与えるという仮説

[H4]、 [H5]、 [H6]は支持されたが、

「効果」に正の影響を与えるという仮説

[H7]は、支持されなかった。

また、「市場不確実性の低減活動」が新製品開発プロジェクトの「効率」に正の影響を 与えるという仮説

[H8]は、支持されなかったが、「効果」への仮説 [H9]は支持された。

「技術不確実性の低減活動」が、新製品開発プロジェクトの成功「効率」と「効果」に 正の影響を与えるという仮説[H10]と[H11]は、両方とも支持されなかった。

そして「効率」が「効果」に正の影響を与えるという[H12]も支持されなかった。

2011

年度

ICT

産業の経路において、影響関係が一番大きい経路係数は「初期計画」か ら「技術不確実性の低減活動」への値で

0.545、「市場不確実性の低減活動」から「効果」

への値で

0.510、「初期計画」から「市場不確実性の低減活動」への値で 0.502、「初期

計画」から「効率」への値は

0.328

の順で、「初期計画」が「FFEでの活動」において大 きい影響を与えることが明らかとなった。

「効率」が「効果」に肯定的な影響を与えるという仮説[H12]は、弱い正の経路係数

0.085)で、 p<0.406

のため、支持されなかった。

39

は、2011年度

ICT

産業の特定間接効果の分析による媒介効果を検定した表である。

特定間接経路の中で、統計的に有意性のある媒介効果があるのは「新規性の程度」→「市 場不確実性の低減活動」→「効果」および「初期計画」→「市場不確実性の低減活動」→

「効果」である。

「市場不確実の低減活動」は「新規性の程度」と「効果」の間に、また「初期計画」と