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知的障害者とグループホーム

ドキュメント内 老障介護家庭 (ページ 57-66)

第2章 知的障害者と自立

第4節 知的障害者とグループホーム

第1項 グループホーム制度の成り立ち

国内における戦後の知的障害者福祉は、1960 年に施行された精神薄弱者福祉法 のもと、知的障害者を入所施設に収容して指導や訓練するところに重点が置かれ てきた。1960 年代からの急速な経済成長のあおりを受け、都市部への人口流出や 地域経済の低迷に直面した地方の自治体の中には、人口増加や地域経済を活性さ せようと、大規模な入所施設の誘致に乗り出すところもあった。1970 年に施行さ れた心身障害者対策基本法第 24 条では、「心身障害者の父母その他心身障害者の 養護に当たる者がその死後における心身障害者の生活について懸念することのな いよう」にと親たちの死後に触れ、障害者施策の策定と実施に関する配慮事項が 明記された。この親なき後の公的保障によって、終生保護機能を持つ入所施設が 自宅に代わる知的障害者の居住施設として、中核的な役割を担ってきた。

1970 年代以降、欧米諸国で広まっていたノーマライゼーションの考えが徐々に 国内にも浸透し始め、その影響を受けながら、例えば 1978 年に東京都では生活 寮、神奈川県ではミニ通勤寮といった、国のグループホーム制度に先駆けて独自 の制度を創設した自治体もみられるようになった。国による知的障害者を対象に したグループホームの制度化は、1989 年に厚生省児童家庭局長通知「精神薄弱者 地域生活援助事業の実施について」(平成元年5月 29 日児発第 397 号)の別紙に 定められた「精神薄弱者地域生活援助事業実施要項」を端緒にするが、入所施設 の整備と在宅対策が並行する形で拡充していく時期がしばらく続いた。施設福祉 から在宅福祉への障害福祉施策の転換は、2002 年に策定された「新障害者基本計 画及び重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)」で、入所施設は「真に必要な ものに限定する」と明記されてからのことである。

この間に、1995 年に厚生省児童家庭局障害福祉課長が通知した「知的障害者生 活援助事業(グループホーム)におけるバックアップ施設の要件緩和について」

(平成7年 10 月2日児障第 48 号)で、夜間等の緊急時の対応に配慮して、入所 施設を運営する法人に限られていたグループホームのバックアップ施設の要件が 緩和され、通所施設のみ運営する法人もグループホームの設置が可能になった。

また、2000 年に改正された「知的障害者地域生活援助事業の実施について」(平 成元年5月 29 日児発第 397 号)で、利用対象者の就労要件の撤廃とホームヘル パーの派遣が認められたことに加え、2002 年の再改正では身辺自立や収入による 入居要件も撤廃され、利用対象者の拡大が図られた。さらに、2004 年には厚生省 児童家庭局長名で「知的障害者援護施設等入所者の地域生活等への移行の促進に ついて」(平成5年4月1日児発第 309 号)が通知され、国だけではなく都道府県 や指定都市、中核市でもグループホームや生活寮などの地域生活の場の確保が進 められていくことになった。

障害者自立支援法が施行された 2006 年になると、それまで身体障害・知的障 害・精神障害と障害種別ごとに提供されてきたサービスの一元化が図られるとと もに、介護を必要としない障害者を対象にしたグループホーム(共同生活援助)

と、介護を必要とする障害者を対象にしたケアホーム(共同生活介護)の2つの サービスが規定された。

第2項 障害者総合支援法におけるグループホームの位置づけ

2013 年に成立した障害者総合支援法で、グループホームに関連するところでは 2014 年4月に次のように改正施行された。

第一に、「グループホームとケアホームの一元化」である。グループホームを利 用する障害者の高齢化や重度化が進む実態を踏まえ、介護が必要になっても本人 の希望によってグループホームを継続して利用できるようになった。

第二に、グループホームにおける支援が、日常生活上の支援や個別支援計画の 作成といった基本サービスと、利用者の個々のニーズに対応した介護サービスを 提供する2段構えに改められた。介護サービスの提供形態によって、生活支援員 を配置し介護サービスを提供する「介護サービス包括型」と外部の居宅介護事業 所にサービス提供を委託する「外部サービス利用型」に分類された。

第三に、単身生活を望む障害者のニーズに応えつつ、地域における多様な住ま いを増やしていく観点から「サテライト型住居」が創設された。これは、本体住 居との連携を前提にした新しい住居形態である。

第四に、グループホームの利用者の重度化や高齢化への対応という観点から、

利用者がグループホームで日中を過ごせるよう、「日中支援の加算」が設けられた。

第3項 グループホームの運営形態

2013 年に厚生労働省(2013b)の調査によれば、ケアホームを含むグループホー ムの利用建物の形態は、「戸建住宅」が 62.6%、「集合住宅」が 31.5%で、所有状 況は「自己所有」が 29.0%、「賃貸」が 71.0%である。「民家転用を含む既存の建 物を活用したグループホーム」は 74.9%を占め、「新築」は 25.1%である。

また、公益財団法人日本知的障害者福祉協会(以下、「日本知的障害者福祉協会」

とする。)(2016)の調査によれば、グループホームの利用建物の形態は、「一戸建 て」が 73.1%を占め、「集合住宅」は 23.5%である。運営主体が所有するグルー プホームの場合、「グループホーム用に新築」が 62.2%を占め、「転用」が 32.7%

である。一方、民間賃貸住宅を借用し運営しているグループホームのうち、「グルー プホーム用に改築」が 17.8%、「改築」が 22.2%、「ほぼ現状のまま使用」が 60.0%

である。

同じく日本知的障害者福祉協会(2016)の調査によれば、グループホームの支 援形態をみると、「介護サービス包括型」が 80.7%を占め、「外部サービス利用型」

が 7.7%である。また、土日祝日に「生活支援員等を配置し支援している」グルー プホームは全体の 68.0%で、「生活支援員等を配置しておらず支援していない」グ ループホームは 15.9%である。

第4項 グループホームで生活している知的障害者

(1)利用者の概要

障害者総合支援法第5条 17 項に基づくグループホームでは、地域で共同生活を 営むのに支障のない範囲の障害者を対象に、主に夜間帯に相談支援や日常生活上 の支援が提供されている。身体障害者がグループホームを利用するには年齢や障 害福祉サービスの利用歴による制限があるが、知的障害者や精神障害者は原則と して障害支援区分に関わらず利用することが可能である。

厚生労働省(2017b)によれば、グループホームで生活している知的障害者の障

害支援区分の内訳は、2016 年 12 月の時点で、「区分なし」が 20,306 人(構成比 19.0%)、「区分1」が 2,793 人(同 2.6%)、「区分2」20,609 人(同 19.3%)、「区 分3」が 24,041 人(同 22.5%)、「区分4」が 19,535 人(同 18.3%)、「区分5」

が 11,384 人(同 10.6%)、「区分6」が 8,260 人(同 7.7%)である。

また、日本知的障害者福祉協会(2016)の調査によれば、グループホームを新 規に利用した知的障害者の前居住地は、「家庭(在宅)」で生活していた知的障害 者が 38.8%と最多で、「障害者支援施設」が 23.3%、「他共同生活援助」が 12.2%

と続いている。

(2)利用者数の増加

厚生労働省(2017b)によれば、1989 年時点で 408 人に留まっていたグループ ホームで生活している知的障害者数は、2016 年 12 月時点で 71,571 人にまで増加 した。ここに身体障害者と精神障害者の利用者数も加えると 106,928 人で、グルー プホームで生活している障害者のうち、知的障害者が占める割合は全体の 66.9%

になる。

障害者総合支援法第 87 条に基づいて、国は目標期間を 2015 年から 2017 年度 に定めた第4期障害福祉計画を策定している。この計画によれば、2005 年度末の 施設入所者数 145,919 人を基準に、2014 年度末は 134,247 人、2017 年度末は 126,988 人にまで施設入所者数を削減する目標が掲げられた(厚生労働省 2014)。 さらに、2018 年6月 18 日に厚生労働省で行われた第 90 回社会保障審議会障害 者部会に提出された『第5期数値目標・サービス見込値(全国集計)』(厚生労働 省 2018b)では、2018 年度から 2020 年度にかけて、施設入所者の利用見込者数 を 2018 年度の 130,583 人から、その3%減にあたる 127,399 人にまで削減する 目標を定めている。

反対に、2020 年度のグループホームの利用見込者数は、2018 年度の見込者数 122,144 人の 11%増にあたる 136,019 人に定めている。いずれも現状を踏まえた 2020 年度中に目標とする利用見込者数ではあるが、1989 年にグループホームが 制度化されてから、グループホームの利用者数が施設入所者数を上回る数値目標 が設定されたのは初めてのことである。

このように、理念だけではなく実態としても、現行の障害福祉サービスを利用

した知的障害者の居住形態は、入所施設からグループホームに主軸が置き換わり つつあることがわかる。こうした障害者福祉施策の動向を踏まえ、小澤(2018)

は、「施設入所の大きな原因である『親亡き後』も地域で継続的に生活できる体制」

「緊急時に短期入所が利用できる体制」「家族と同居している生活からグループ ホームなどで家族から自立して生活する練習のできる体制」のシステム化を図る 地域生活支援拠点の整備を提唱している。

在宅福祉施策が着実に推進している状況の中で、知的障害者にとってグループ ホームがますます重要な障害福祉サービスの一形態になっていくといえよう。

(3)経済状況

まず、グループホームで生活している知的障害者の収入状況をみていく。

日本知的障害者福祉協会(2016)の調査によれば、工賃や給与などの受給金額 は「受給なし」が 12.1%、「0円から5千円未満」が 19.2%、「5千円以上1万円 未満」が 14.2%、「1万円以上2万円未満」が 18.3%で、月収2万円未満の知的 障害者は全体の 63.8%を占めている。2万円以上の工賃や給与を受給している知 的障害者は 33.6%で、そのうち「7万円以上」の受給者は 16.7%である。これに 加えて、年金などの受給状況は、「障害者基礎年金1級」が 30.2%、「障害者基礎 年金2級」が 54.9%、「生活保護」が 4.8%で、「受給なし」は 3.8%である。

次にグループホームを利用する際の支出の状況をみていく。グループホームを 利用するには、サービス利用料の1割負担のほか、訓練等給付費の対象にならな い家賃や水道光熱費、食費、日用品費などを負担することになる。

所得に応じた負担軽減措置がとられ、家賃など実費負担部分に助成金を支給す る自治体もある。家賃の助成額は生活保護世帯や低所得世帯を対象に国が支給す る上限1万円のほかに、日本知的障害者福祉協会(2016)の調査によれば、グルー プホームを利用している知的障害者の 66.5%が「1万円以上2万円未満」、23.4%

が「1万円未満」の支給を受けている。助成後の水道光熱費や食費などを含めた 実費負担額は「4万円以上5万円未満」が 27.3%と最も多く、次いで「5万円以 上6万円未満」が 24.3%、「3万円以上4万円未満」が 17.5%である。これら3 つの階級で全体の 68.2%を占めている。

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