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本研究のまとめと意義、限界と今後の課題

ドキュメント内 老障介護家庭 (ページ 197-200)

第1節 本研究のまとめ

現在、国内では自宅で生活している知的障害者の高齢化に伴って、知的障害の ある子どもの生活を支えている家族の高齢化が進んでいる。本研究は、この知的 障害者福祉が直面している今日的課題を踏まえ、老障介護家庭で知的障害者が自 立を実現していくうえで必要なソーシャルワーク実践の視点と、その方策の示唆 を得ることを目的とした。そのために、母親と知的障害者それぞれの視点から、

複眼的に老障介護家庭における知的障害者の自立をめぐる経験プロセスを可視化 し、そのプロセスでの自立にまつわる行動や認識、それらに影響を与えた社会的 な要因を明らかにした。

第1章では、在宅生活を送る知的障害者の高齢化が顕著に進み、老障介護家庭 が増加している現状を、統計的データを用いながら整理した。経済的にゆとりの ない生活を送っている知的障害者家族が多いこと、単身世帯の知的障害者よりも 親子が同居している世帯のほうが支援は届きにくくなるため、孤立死などのリス クが高まる傾向にあることなどについて、先行研究を用いながら示した。

増加傾向にある老障介護家庭を対象にしたソーシャルワーク実践が必要とされ る中、未だ国内における老障介護家庭を取り上げた研究は乏しく、その実態解明 が望まれた。その際、知的障害者本人の声や経験を収集することで、知的障害者 主体のソーシャルワーク実践に繋がっていくだろうという考えを示した。

第2章では、まず、国内における知的障害者の概要として、本研究で用いる知 的障害者の定義、知的障害者の人数、そして、障害程度の割合を記述した。また、

知的障害者を調査対象にして行われてきた国内外の先行研究を概観し、第6章の 第2調査で行う知的障害者への実証的調査に求められる調査方法や工夫の足がか りを得た。知的障害者を調査対象にした研究では、「知的障害者が何を、どのよう に語るのか」のみならず、調査者側が「何を、どのように伝えるか」という側面

も必要で、知的障害者の障害ゆえに生じる言語理解や言語抄出の課題を補ってい くことで、調査は可能になっていくものと考察した。

この第2章の後半では、まず、社会福祉全体からみた自立概念、障害者福祉か らみた自立概念、そして、知的障害者福祉からみた知的障害者の自立概念につい て、政策や先行研究それぞれを踏まえながら整理した。戦後から今日に至るまで に、かつては不可能とみなされてきた知的障害者の自立は、職業的自立や経済的 自立、人間本来の生き方を尊重した自立や、自己決定権の行使を保障した自立、

地域生活によって実現可能となる自立というように、時代とともに自立概念に拡 がりがみられるようになっていた。

次いで、国内における知的障害者を対象としたグループホーム制度の成り立ち を概観した。1989 年の制度化から現行の障害者総合支援法の施行に至るまでに、

法制度の改正を繰り返しながら利用対象者の拡大が図られ、グループホームで生 活している知的障害者の数が飛躍的に増加していた。一方で、3年未満の退所者 が退所者全体の半数に上ることを示した。そのほか、多くの知的障害者は、経済 的に余裕のない生活を送っている実情を把握した。また、グループホームで生活 している知的障害者の日常生活や、グループホームでの生活を継続させる要因、

阻害させる要因についても先行研究を用いてみていった。

そして、知的障害者を対象にしたソーシャルワーク実践について整理した。ま ず、知的障害者の日常生活全般を支えるためのソーシャルワーク実践として、知 的障害者の知的障害ゆえに抱える日常生活上の制約を示し、障害程度とその障害 に対する支援の必要度に応じた個別的なソーシャルワーク実践の必要性を整理し た。また、2000 年以降、障害者福祉施策は施設福祉から在宅福祉へと転換し、そ の中で障害者ケアマネジメント体制の整備が行われた。とくに、知的障害者を対 象にしたケアマネジメントでは、知的障害者の個別的なニーズに対応するための 社会資源の活用が謳われた。さらに、知的障害者へのソーシャルワーク実践に必 要な視点は、これまでに親が担ってきた「親の役割」を社会に委ねだれるように する支援とその保障、知的障害者の自己決定や自己選択という権利の尊重であっ た。また、障害者自立支援法施行以降に図られた三障害一元化では対応しきれな い知的障害ゆえの日常生活上の課題の克服を支援していく必要性をまとめた。

これらを踏まえながら、本研究では「知的障害者の自立」を「親元から離れ、

社会福祉サービスを活用しながら、グループホームでの生活を継続していくこと」

と定義づけた。

第3章は、国内の障害者家族の親子関係や自立、老障介護家庭の実態について、

国内外の先行研究を用いながら整理した。その結果、まず、国内では老障介護家 庭が増加しながらも実態解明は立ち遅れている課題を指摘した。また、国外の先 行研究も、その多くは老親の視点で知的障害者の自立を捉えた研究であるため、

知的障害者の視点を取り入れた知見は十分に得られていないという研究上の課題 を挙げた。

こうした先行研究の課題を踏まえ、本研究では、国内での老障介護家庭におい て、老親と知的障害者の「知的障害者の自立」をめぐる経験を把握し、その経験 が社会と関わりを持ちながら変容していく事象を実証的調査によって明らかにす ることにした。

第4章は、第1調査と第2調査の目的と調査方法、分析方法、分析手順、そし て倫理的配慮を記述した。第1調査では、知的障害のある子どもの第一義的な介 護者は母親で、かつ、父親が調査対象に加わることの難しさもあったことから、

老親のうち母親を対象にして調査を行った。第2調査では、知的障害者本人を対 象に行った。

これら母親と知的障害者本人を調査対象にした2つの実証的調査は、老障介護 家庭での適切なタイミングで知的障害者の自立を促すために求められるソーシャ ルワーク実践の示唆を得ることを目的に行った。調査協力者はⅩ都市の母親 11 人 と知的障害者8人で、うち6組は親子関係であった。半構造化面接によるインタ ビューを通して得られたデータの分析には、複線径路・等至性モデル(TEM)

の手法を用いた。

本調査では、質的調査法を採用した本研究では、量的調査法のような妥当性を 検討することが難しいため、質的調査法に精通した研究者や障害者福祉を専門に する研究者による客観的な助言を得ながらデータを分析し、妥当性を高めていっ た。

第5章は、高齢の母親を調査にした第1調査にあたる。老障介護家庭において 知的障害のある子どもを自立へと導いた 11 人の母親の視点を通して、老障介護家 庭における知的障害のある子ども自立をめぐる一連の行動や認識の変容と、その

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