近年、北極海の海氷減少が進んでいる。北極海の海氷面積は、元来季節によって拡大・
縮小の年間サイクルを繰り返しているが、近年の海氷面積の減少は特に、海氷が縮退する 夏に顕著である。上図は、衛星観測による海氷面積の計測が開始されて以来、最小の面積 を記録した2012年9月16日の北極海の海氷分布である。白色部分が海氷存在域であり、
オレンジの線は1990年代の平均的な海氷縁位置を示す。1990年代に比べてロシア沿岸海 域及びボーフォート海における海氷が大きく減少している。この日の海氷域面積は、1990 年代の平均値が6.59×106 km2であるのに対し、3.18×106 km2である。
図-4.3.1 観測史上の最小面積を記録した2012年9月16日の海氷密接度分布。
図中の線は1990年代の平均的氷縁。(JAXA Arctic Data Archive System)
図-4.3.2 北極の海氷域面積(左)と体積(右)の経年変化
(Overland and Wang, 2013. “When will the summer Arctic be nearly sea ice free?”, GRL, Vol. 40, doi:10.1002/grl.50316.)
上2図は、北極海の海氷面積が年間の最小値を記録する9月における北極海の海氷の面 積・体積の経年変化を示した図である。それぞれの図中の直線は全体的傾向を示す線であ り、その上下のシェード部は標準偏差の1倍・2倍の領域を示す。海氷域面積は、衛星観 測結果であり、海氷体積はPIOMAS(Pan-Arctic Ice-Ocean Modelling and Assimilation System) モデルによる計算結果である。1980年代から海氷の面積・体積ともに減少しているが、
体積減少の速度がより速く、北極海の海氷の面積のみならず厚さも減少していることが示 唆されている。
図-4.3.3 北半球の海氷面積についてのCMIP5モデルによる計算結果
(IPCC AR5気象庁翻訳,気候変動2013 自然科学的根拠 政策決定者向け要約)
北極海の海氷面積については様々なモデルによる計算が行われたが、その多くが近年の 海氷面積の減少を再現できずに過小評価する結果となった。IPCC AR5 では、CMIP5 の GCMの中から、1979年から2012年の間の海氷面積の減少を再現に成功したGCMを用い、
その結果を上図の様に取りまとめた。図中の実線はこれらのモデルによる計算結果の平均 値であり、その上下のシェード部分が不確実性の幅を示す。点線はCMIP5の全てのGCM による計算結果である。図中の数字は計算を行った GCM の数であり、( )内は海氷面 積の減少傾向の再現に成功し図中の実線のデータを計算するのに使用されたモデルの数 である。計算結果は、現在と同様の人為的二酸化炭素排出が継続するシナリオ(RCP 8.5、 図中赤色で表示)と2050年までに現在の排出レベルから70%削減されるシナリオ(RCP 2.6、 図中青色で表示)について示されている。この結果より AR5 では、現在と同様の人為的 二酸化炭素排出が継続された場合(RCP 8.5)、今世紀中盤には9月の北極から海氷が消 滅する(海氷域面積が少なくとも5年間にわたって100万km2以下となる)可能性が高い
(likely)としている。