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3.3 北極圏の輸送ネットワーク

3.3.2 海上輸送

(1)北極圏の海上輸送ネットワーク

北極海に面する港湾都市はわずかしかなく、その規模も大きくはなく、主にロシアの沿 岸に分布する。カナダ側の沿岸拠点は極めて小規模で、数も少ない。これらの都市を結ぶ 海上ネットワークには、大きく分けてロシア沿岸を通る北東航路ルートと、カナダ側の多 島海を通る北西航路ルートがある。これらのルートは、冬期には海面が海氷で覆われるた め、基本的には夏期で海氷が少なくなった時期のみに利用される。

ロシア沿岸を結ぶ海上ネットワークは、旧ソ連時代以来、大河の河口部の拠点港湾や、

その中流・上流域で陸上輸送ネットワークから取り残された地域に向けた物資の輸送に利 用されてきた。またレナ、オビ、エニセイなどの大河では、上中流域に位置し、シベリア 鉄道や幹線道路網と接続する拠点都市と、河川舟運を介して海上輸送ネットワークと接続 される。

北極海航路は、ロシア政府の定義による、北東航路の中のノバヤゼムリヤ島東岸とベー リング海峡の間の約 2,400NM の区間の名称である。この区間は、冬期に厳しい海氷に覆 われ、夏期でも海氷が残存する海域が存在してきたことから、ロシアは原子力砕氷船団お よび耐氷貨物船団を整備し、原子力砕氷船の支援のもとで、ロシアの北極海沿岸拠点への 貨物輸送を行ってきた。その活動は主として夏期に限定されてきたが、近年はカラ海での 原油生産ならびにエニセイ川中流域の資源開発サイトであるドゥディンカの貨物輸送の ため、通年での海上輸送も行われている。また、近年の夏期海氷勢力減退を背景に、北極 海航路を東西に横断して大西洋地域と太平洋地域の間での貨物の輸送にも利用されるよ うになってきた。さらには、カラ海に臨むヤマル半島において LNG開発が進められてお り、2017 年の生産開始に伴い、2018年からは通年で夏期にはアジア市場、冬期には欧州 市場にLNGが輸送されることになっている。一方北西航路は、北東航路に比べると海氷 状況が厳しく、現在も貨物船の商業運航は限定的である。

近年の北極海における夏期海氷勢力減退によって、貨物輸送だけでなく、観光クルーズ への関心が高まっている。ロシアは、原子力砕氷船を使って北極点に到達する観光クルー ズを提供している。またすでに客船による北極海航路および北西航路の横断クルーズが複 数例実施されている。ヨットによる冒険としての横断航海も実施されるようになった。

図-3.3.3 北極航路

http://www.thearcticinstitute.org/2012/11/the-future-of-arctic-shipping-along.html

(2)ロシアにおける港湾取扱い貨物の動向

ロシアの港湾は連邦政府の部局である Rosmorport を通じて管轄・管理・整備・運営が 実施されている。Rosmorportは全土を西部海域(バルト海)、南部海域(アゾフ・黒海)、

北部海域(北極海)、極東海域に分け、16 の支所を通じて海洋の港湾を管轄する。なお ロシアでは、海の港湾のほかに、多数の河川港が存在する。表-3.3.1に2014年における取 扱貨物量上位10港を示す。また表-3.3.2にロシア全体の港湾取扱い貨物量を示す。

表-3.3.1 ロシアにおける2014年の港湾貨物量上位10港

港 湾 海 域 貨物量(1,000ton) 前年比(%)

ノボロシースク アゾフ・黒海 121,592 108.0 ウスチ・ルガ バルト海 75,668 120.3 サンクトペテルブルグ バルト海 61,185 105.5

ボストーチヌィ 極東 57,778 119.7

プリモルスク バルト海 53,656 84.1

ワニノ 極東 26,249 110.4

トゥアプセ アゾフ・黒海 22,123 124.7

ムルマンスク 北極海 21,866 69.6

ナホトカ 極東 20,738 113.0

ヴィソツク バルト海 17,428 107.9

表-3.3.2 ロシアの港湾貨物量の推移(103ton)

貨物種別 2011年 2012年 2013年 2014年 全貨物 535,590 567,052 589,768 623,570

液体バルク 300,998 315,254 333,545 331,157 ドライバルク 234,592 251,798 256,223 292,413

ロシアの総計港湾取扱い貨物量は2011年以降、安定して増大してきた。ただし2015年 は、西側諸国の対露経済制裁や原油価格の急速な下落などのため、この増加傾向が続くか どうか、注意が必要である。ロシアの貿易は原油・天然ガス、石炭およびその他の天然資 源の輸出を主体としており、港湾取扱い貨物もこの特徴を示している(図-3.3.4)。今日 の海上物流の主役である海上コンテナ輸送は、50万TEUを超える港がサンクトペテルブ ルグ、ウラジオストク、ノボロシースクの3港のみ、10万TEU以上としてもボストーチ ヌィ、カリニングラード、ウスチ・ルガの3港が加わるにとどまる。

図 100 200 300 400 500 600 700

港湾取扱い貨物量(103ton)

-3.3.5 ロシ

出典:Обз Р 0 0,000 0,000 0,000 0,000 0,000 0,000 0,000

図-3.3.4

シア港湾にお

ор, пере оссии, Б

2013

ロシアの港

おける2014

евозок Балтии, Украин

港湾貨物構成

年コンテナ

грузов через м ны, за 2014

2014

ナ取扱量(T

морские порты 4 г.

Liqu Ro-R Ferr コン Gen Fore 粒状 Bulk

EU)

ы, uid bulk Ro ry ンテナ

neral cargoes estry produc 状の貨物

k

s cts

ロシア北極圏の港湾およびこれに関連する極東地域およびバルト海地域における港湾 別の貨物別取り扱い貨物量を図-3.3.6に示す。ウスチ・ルガ港は、NOVATEK社のガスコ ンデンセート基地ができたことなどから、液体バルクを主体としている。一方サンクトペ テルブルグは、大消費地を背後に控え、ロシアでは唯一コンテナを主体としている。

これに対して北極地域では、ムルマンスク港が2千万トン以上を取り扱うほかは、小規 模の港湾があるのみである。ムルマンスクは、コラ半島地域やノリリスクなどで算出され る天然資源を主体に、ペチョラ海やカラ海で生産された原油など取り扱っている。バラン デイ、ナラヤンマールでは、現地で生産された原油等の液体バルクが主要貨物となってい る。アルハンゲルスクは、これら資源開発サイトとの間の貨物輸送を担い、貨物種別は他 の港よりも多様である。ビチノは、NOVATEK社がガスコンデンセート基地をウスチ・ル ガに移したために、貨物量は低調である。なお、今後サベッタからのヤマルLNGが計画 通り生産されるようになると(計画では当初が1,650万トン/年)、北極海有数の貨物取扱 港となる。

極東の港湾では、ウラジオストクが総合的な港湾となっているほかは、ボストーチヌ ィを筆頭にワニノ、ナホトカ、プリゴロドノエ、デカストリは天然資源輸出にほぼ特化し た港となっている。なおボストーチヌィは、極東ではウラジオストクに次ぐコンテナ取扱 い港でもある。

図-3.3.6ロシアの港湾別取扱い貨物量(2014年)

図-3.3.7ロシア及び北欧地域の主要港湾

ロシア港湾別取扱い貨物量(2014年) ペベク ハタンガ ドゥディンカ

ビティノ マガダン

ベリンゴフスキー

エグベキノット アナディール

プロビデニヤ ペトロパブロフスク・カムチャツキー

ティクシ デカストリ ワニノ ソフガワニ ナホトカ ウラジオストクプリゴロドノエ

ホルムスク

ディクソン サベッタ ナラヤンマールアルハンゲルスク

プリモルスク ヴィソーツク ウルチルガ サンクトペテルブルグ

ムルマンスクキルケネスナルビク

(3)ロシアにおける港湾インフラの概要

2012年1月時点におけるロシアの港湾インフラ所有量を表-3.3.3に示す。海域別ではバ ルト海、アゾフ-黒海、極東地域に港湾施設が集中し、北極海はこれら海域の1/4程度のイ ンフラ規模となっている。またロシア全体での貨物取扱い能力は534百万tonと称してお り、これに対して 2014 年の総港湾貨物量は 623.6 百万トンに達した。個別の港湾インフ ラについては、各港湾情報の項に示す。

表-3.3.3ロシアの港湾輸送インフラ(2012年1月現在)

海域

港湾インフラ全体 専用施設

施設数 公称年間貨 物取扱能力 million ton

実貨物取扱

million ton 能力 施設数 公称能力 million ton

実貨物取扱 million ton 能力

北極海 138 81.7 40.8 9 51.3 20.7

バルト海 236 292.2 185.7 37 228.3 156.2 アゾフ・黒海 208 231 172.9 31 171.7 128.3

カスピ海 38 22.9 10.6 5 10 5

極東 301 162.7 124.3 22 106.9 93.3

ロシア全体 921 790.5 534.3 95 568.2 403.5

(4)結氷海域の港湾

バレンツ海は結氷しないが、その南の沿岸域となる白海からペチョラ海の沿岸域にかけ ては、1月頃から結氷が始まって5月下旬まで海氷が残る。しかしこの海域の主要港湾は 通年で活動している。その東に続くカラ海は北極海のなかでは比較的結氷期間が短く、10 月に入ると東側から徐々に結氷海域が西に拡大し、10 月下旬にはヤマル半島の西まで達 する。その後も徐々に結氷海域は西に拡大し、12 月下旬にはカラ海のほぼ全域が海氷に 覆われる。融解期に入ると、7 月初旬には沖合に無氷域が出現して急速に拡大し、8 月に は東側のセベルナヤ・ゼムリヤ島付近を除いてほぼ全域が無氷となる。この海域には、ロ シア北極圏の主要な港湾であるムルマンスク、アルハンゲルスクなどのほか、北極圏の天 然資源積み出し拠点であるバランデイ、プリラズロムノエ、ノビ、パヤハ、ノリリスクニ ッケルの輸送拠点港であるドゥディンカ、及び現在開発が進んでいるヤマル LNGの拠点 であるサベッタ港があり、いずれも通年で活動している。そのほとんどは、Rosatomflot が運航する原子力砕氷船、あるいは Rosmorport の砕氷船などの支援を受けての運航であ る。ただしNorilsk Nickel社が保有する砕氷貨物船団は、冬期でも単独での運航も実施し ている。

ラプテフ海の結氷は10月に始まり、11月には全域が海氷に覆われる。その後、6月に 入ると無氷域が出現し始め、7 月初旬には沿岸部を除くと沖合で無氷域が広がり、8 月に はほぼ無氷となる。この海域で活動する港湾には、レナ川河口のティクシおよびハタンガ