気候変動により地球全体の温度が上昇する中、1970 年以降では、北極域(図では北緯 60度以北)の気温上昇が顕著である。1980 年以降の北極における年間平均気温の上昇量 は、地球上のその他の地域の2倍に達し、この現象は北極温暖化増幅と呼ばれる。このよ うな北極の温度上昇は、20 世紀初頭にも観測されている。この時の温室効果気体の濃度 は徐々に単調増加していた。この時期の北極の温度上昇については、工場やディーゼルエ ンジンからの排気に含まれる硫酸エアロゾルやすすの影響であるという説もあるが、いま だ明確ではない。これに対して近年の北極を含む世界の気温上昇についてIPCCでは、第 4 次報告書 AR4 において人為的な温室効果ガスの排出によるものである可能性が非常に
高い(very likely)とし、第5次報告書AR5においてはさらに気候システムに対する人為
的影響は明らか(clear)であるとしている。
図-4.1.1 各緯度領域における表面気温の変化(北極読本)
図-4.1.2 2016年2月の地球表面温度の1951-1980年平均温度からの偏差
(上:偏差温度分布、下:各緯度領域における偏差、NASA GISS)
上2図は、2016年2月の地球表面温度について、1951年から1980年までの平均値をベ ースとした時の偏差を示した図である。上図は偏差温度の空間分布を、下図は緯度領域ご との偏差温度を示している。北半球高緯度領域において、大陸上を中心に、偏差温度が高 くなっていることが判る。
図-4.1.3 2035年における地球表面気温の2016年に対する偏差の推定結果
(CO2排出シナリオRCP4.5、IPCC, 2013. Climate Change 2013 The Physical Science Basis.)
上図は、CMIP5の GCM による計算結果として IPCC AR5 において報告された、2016 年をベースとした 2035年の地球表面温度の偏差の分布である。全球的に温度上昇が想定 されるいるが、北極域における温度上昇が特に大きいことが判る。現在までにすでに他地 域に比べて大きな温度上昇が観測されている北極域において、将来さらなる温度上昇が予 想されている。北極域の温度上昇は、冬季(左上の図のDJF)において顕著である。北極 域において温暖化が増幅される背後には様々なメカニズムが考えられているが、その代表 的なものがアイス・アルベド・フィードバックである。これは、温暖化による雪氷面積の 減少が更なる太陽放射熱の吸収を生ずる温度上昇メカニズムである。北極海においてこの メカニズムは、海氷面積の減少する夏に主に働くが、海洋に蓄えられた熱が秋から冬にか けて放出されることにより温度上昇をもたらす。
北極域における平均気温の上昇については、種々の整理が行われているので、主要なも のを以下の図に列挙する。
図-4.1.4 Arctic Climate Impact Assessment(ACIA), Chapter 1, pp.3
図-4.1.5 Arctic Climate Impact Assessment(ACIA), Chapter 1, pp.3
図-4.1.6 Arctic Climate Impact Assessment(ACIA), Chapter 1, pp.4
図-4.1.7 Arctic Climate Impact Assessment(ACIA), Chapter 1, pp.4
図-4.1.8 Arctic Climate Impact Assessment(ACIA), Chapter 2, pp.37
図-4.1.9 Arctic Climate Impact Assessment(ACIA), Chapter 2, pp.39