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6.3 漁業

6.3.1 北極海の漁業

北極海沿岸には極めて少数の居住地しかなく、その多くは先住民族の居住地であり、こ のほかには資源開発のために拓かれた拠点や冷戦時代の軍事拠点などに限られる。また 其々の居住地は地理的にも隔絶されていることから、北極海で営まれている漁業は、当地 での食糧確保が主目的の、小規模で伝統的な漁業が主体である。同時に、先住民族に限ら ず、この地域に居住する人々は、食料をまわりの環境資源に依存することになり、漁業は 狩猟と並んで、重要な食料確保手段となっている。ただしロシアの北極海沿岸では、大河 の河口域に比較的大きな拠点が発達し、小規模ではあるが商業目的の漁業も行われ、漁獲 物は内陸部の居住地などに供給されている。

カラ海では、20 世紀前半に大西洋の温暖な海水が流入し、サケの漁獲増大を享受した ものの、全体として漁業はあまり盛んではなく、沿岸でのホワイトフィッシュを主体に、

カペリン、ニシン、チョウザメなどが漁獲されてきた。漁獲量は1950 年以降一様に減少 しており、近年の漁獲量は非常に少ない。沿岸域の顕著な環境汚染や乱獲がその原因と考 えられている。ラプテフ海沿岸は、ロシア内陸の経済活動地域から隔絶され、交通も限定 的であり、わずかに軍事拠点および資源開発拠点の街および先住民族の居住地があるにす ぎない。漁業は主として沿岸や河口の汽水域(レナ河、ヤナ河、ハタンガ湾)で、ホワイ トフィッシュ類を主体に行われており、年間3,000トン程度が水揚げされていると推定さ れている。東シベリア海も同様で、インジギルカ河・コリマ河の河口域付近でホワイトフ ィッシュ類を主体に、年間3,000トン程度が漁獲されていると推定されている。チュクチ 海では、サケ、カラフトマス、ギンザケ、ホワイトフィッシュ、ニシンなどが漁獲されて いる。漁獲量は1990年以降で500トン~1,500トンの間で年によって大きく変動し、全体 的な傾向は減少を示している。

上述のように、ロシア側北極圏においては、沿岸での漁業は限定的で、地元地域の消費 が主たる目的である。一方、より人口の多い内陸部では、オビ・エニセイ・レナなどの大 河とその主要な支流および湖沼で、内水面漁業が行われている。漁獲対象種は海水魚より

も多く、ホワイトフィッシュ類・コレゴヌス類(オームリ、シグ等)、グレイリング(ハ リウス)、リノック、タイメン、パイク、チョウザメなどとなっている。漁獲は主として 地元消費向けであるが、広大な地域に消費地が分散しているため、輸送される範囲は広い。

主として冷凍、燻製、干物のかたちで利用される。

ボーフォート海には沿岸に 3 か所(Tuktoyaktuk、Sachs Habour、kaktovik)および沿岸 に近い内陸に2箇所(Aklavik、Inuvik)の居住地があり、どちらもボーフォート海を利用 することができる。漁業は基本的には自給のためで、商業漁業活動はごくわずかである。

主にドリーバーデン(北極イワナの1種)、ホワイトフィッシュ(Coregonidae)などが漁 獲される。漁獲量は1960年の255トンをピークに減少し、2001年は約58トンと推定さ れている98

北極海(FAOによる漁業海域番号:18)における漁獲量は、1950年から2006年の期間

合計で、12,700トンと報告されている。しかし、この統計は関係国から報告された資料に

基づくものであるため、海域によっては信頼性が著しく低下する。特に北極海に関しては、

冷戦時代のソ連からのデータには問題がある。また米国・カナダからのデータについても、

明らかに実態とかけ離れている。最近の研究レポート99によると、1950 年から2006 年の 期間合計で、米国アラスカ州では 89,000 トン、カナダでは商業漁業および零細漁業によ

る漁獲が94,000トンあったと見積もられている。またロシアでは77万トンあったであろ

うと推算されている。これによれば、年平均 17,000 トン程度の漁獲が北極海で行われて きたことになる。

図-6.3.1 FAO the boundaries of the Arctic Sea(Major Fishing Area 18)100

一方、北極海に隣接する北大西洋北部および北太平洋北部は、豊富な基礎生産量に支え られた豊かな漁場が拡がり、多くの漁獲が揚げられている。北大西洋北部海域では、沿岸 国であるロシア、ノルウェー、アイスランド、グリーンランド、カナダのほか、国際漁場 ではEUメンバー国が操業する。また北太平洋北部では沿岸国であるロシア、米国、カナ

98 The UNEP Large Marine Ecosystems Report, A perspective on changing condition in LMEs of the world’s Regional seas., UNEP Regional Seas Report and Studies No.182., 2008.

99 Daniel Pauly, The University of British Columbia, UBC Public Affairs, Feb. 2011.

100 Food and Agriculture Organization of the United Nations

ダが主として操業する。両海域では、他の大漁場と同様に、20世紀にはいって漁具や漁 法の進化によって漁獲能力が飛躍的に向上、漁獲量を大きく拡大してきた。しかし有望魚 種資源が次々と乱獲や環境変化のために危機に瀕した。あるものは資源が崩壊したが、あ るものは国際および国内の漁業規制と資源管理の導入によって回復するか、低位であって も漁獲が続けられるようになった。

図-6.3.2 年間漁獲量密度分布(ton/km2

図-6.3.3 年間漁獲量分布