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第 6 章 本質的学習環境に基づく第 1 次調査と第 2 次調査

第 2 節 第 1 次調査

本節においてはルサカ州ルサカ郡の

L

基礎学校で実施した授業開発の内実を論じ る.授業分析結果から授業の全体的な発話の傾向を論じたあと,全授業における教 師,生徒,教材の相互作用の変遷過程を論じる.それに関連して基礎的能力と高次 的能力に関わる生徒の学習過程を記述する.最後に授業目標の達成と三者間の相互 作用についてまとめる.

なお,授業の内実を論じていくにあたり,予備調査と同様に生徒間の学習差を考 慮する.授業前の学習達成度や授業態度といった情報をもとに教師と話し合い,ク ラスの生徒を上,中,下位に分けた.それにより異なる学習段階の生徒たちの差異 が明確化し,それぞれの学習の特徴,変容や目標達成,課題が明らかになると考え る.

6-2-1.授業の定量的分析 6-2-1-1.第 1 次調査の結果

授業1 授業2 授業3 授業4 授業5 授業6 授業7 授業8

生徒に対する応答(Ans-S) 0.0 0.0 1.3 0.0 7.5 0.0 0.0 0.0

教師に対する応答(Ans-T) 97.0 89.7 88.8 100.0 77.3 89.6 89.0 83.7

無回答・困惑(Na) 1.9 10.2 5.5 0.0 6.3 9.2 11.0 16.2

質問(Qst) 0.9 0.0 1.3 0.0 8.7 1.0 0.0 0.0

意見(Op) 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

その他(Oth) 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

教師A 教師B 教師C 教師D

128

1

次調査の一授業における教師の発話コードの平均割合20を表

6-10

と図

6-1

に示す.

教師の発話コードで「閉じた質問(CQ)」(23.02%)の割合が最も高く,次いで「指 示(Inst)」(16.20%),「確認(Cmf)」(15.87%),「説明(Xpl)」(14.72 %)の割合 が高かった.「閉じた質問」では計算の答えを生徒にたずねる質問が为要であった.

「指示」は問題内容や学習について指示する発言と,前に出て説明する生徒に対し て発表の仕方を指示する場合などが挙げられる.「確認」は問題を解いた際に「彼(彼 女)は正しいですか?(Is she/he right?)」「答えは正しいですか?(Is the answer

correct?)」と正誤を聞くものが为であった.

表 6-10:第 1 次調査 一授業における教師の発話コードの平均割合(%)

(出典)筆者作成.

(出典)筆者作成.

図 6-1:第 1 次調査 一授業における教師の発話コードの平均割合(%)(グラフ)

次に一授業における生徒の発話コードの平均割合を表

6-11,図 6-2

に示す.

20 ルサカの授業は1,3回目のビデオは音声の乱れから聞きとり不可能で分析できなかったため除いた.し

たがって全23回のうち21回分の授業分析をおこなった.

全体(%) 数の石垣(%) 美しい包み(%)

CQ 閉じた質問 23.02 22.06 24.28

Inst 指示 16.20 16.55 15.73

Cmf 確認 15.87 16.14 15.53

Xpl 説明 14.72 16.81 11.97

Agr 同意 6.93 5.45 8.89

OQ 開いた質問 5.72 6.12 5.20

Po 生徒の指名 5.40 4.36 6.77

Enc 賞賛や励まし 3.45 4.93 1.50

Jst 生徒の発言への批判や正当化 3.42 2.23 4.99

Oth その他 3.10 2.44 3.97

Cl 拍手や歌 1.80 2.49 0.89

Imp 聞き取り丌能 0.35 0.42 0.27

100 100 100

コード

合計

0.00 10.00 20.00 30.00

CQ Inst Cmf Xpl Agr OQ Po Enc Jst Oth Cl Imp

全体(%) 数の石垣(%) 美しい包み(%)

129

表 6-11:第 1 次調査 一授業における生徒の発話コードの平均割合(%)

(出典)筆者作成.

(出典)筆者作成.

図 6-2:第 1 次調査 一授業における生徒の発話コードの平均割合(%)(グラフ)

際 立 っ て 高 い 割 合 の 生 徒 の 発 話 コ ー ド は 「 教 師 に 対 す る 数 や 単 語 へ の 返 答

(Num-T)」(35.56%)と「教師に対する『はい』『いいえ』の返答(Yn-T)」(32.72%)

の二つであった.Num-Tは教師の発話タイプの「閉じた質問(CQ)」に対する返答 である.たとえば次のプロトコルでのやりとりに

Num-T

がみられる.

255 T Xpl

数のパターンはね,ここで,答えをここに入れてね,そして次のように言うん ですよ,数の…

256 S Num-T (教師に続き)パターンは…

257 T CQ 数の…何?

全体(%) 数の石垣(%) 美しい包み(%)

Num-T 単純な応答2(数や単語)教師に対して 35.56 33.99 37.57

Yn-T 単純な応答1(はい・いいえ)教師に対して 32.72 34.32 30.67

Num-S 単純な応答2(数や単語)生徒に対して 6.58 7.11 5.90

Qst-S 生徒に対する質問 5.55 5.67 5.39

Wri-T 教師の問いや指示に対する記述やジェスチャー 4.62 5.93 2.95

Op-T 教師に対する意見 4.29 4.61 3.88

Rd 反復や読み 2.59 0.66 5.05

Na-T 教師に対する沈黙 2.40 2.11 2.78

Cl 拍手と歌 2.14 3.16 0.84

Oth その他 1.33 0.53 2.36

Imp 聞き取り丌能 0.81 0.86 0.76

Op-S 生徒に対する意見 0.55 0.59 0.51

Inc 丌完全な解答 0.44 0.40 0.51

Qst-T 教師に対する質問 0.33 0.07 0.67

Na-S 生徒に対する沈黙 0.04 0.00 0.08

Po 生徒の指名 0.04 0.00 0.08

Yn-S 単純な応答1(はい・いいえ)生徒に対して 0.00 0.00 0.00

Writ-S 生徒の問いや指示に対する記述やジェスチャー 0.00 0.00 0.00

100 100 100

コード

合計

0.00 10.00 20.00 30.00 40.00

Num-T Yn-T Num-S Qst-S Wri-T Op-T Rd Na-T Cl Oth Imp Op-S Inc Qst-T Na-S Po Yn-S Writ-S

全体(%) 数の石垣(%) 美しい包み(%)

130

258 S Num-T パターンは…

259 T CQ 数パターンは何で始まるの?

260 Ss Num-T 24.

(注)第18時限プロトコルより.

また,Yn-Tは教師の「確認」,「指示」,「同意」に対する返答であった.それに次 いで「生徒に対する数や単語の忚答(Num-S)」が

6.58%,

「生徒に対する質問(Qst-S)」

5.55%であった.これら二つのコードは前で発表する教師役の生徒が計算式を読

みあげ(Qst-T),残りの大部分の生徒が答える(Num-S)で,両者は対の関係であ った.ここから生徒同士で質問し,答えるやりとりがなされたと確認された.そし て生徒同士の会話は教師と生徒による「閉じた質問(CQ)」と「数や単語の単純な 忚答(Num-T)」のやりとりとほぼ同じ内容であった.

さらに「教師の問いや指示に対する記述やジェスチャー(Wri-T)」が

4.62%,

「教 師に対する意見(Op-T)」が

4.29%で,教師からの質問に対して一問一答以外の方

法で生徒たちは答えていた.Wri-T は計算式を筆算で書いて解き,見つけた数列を 書く場合に該当した.

Op-T

は計算の順序や理由について説明する際に「この数がこ ちらにあったから(現地語)」(第

13

時限),計算の仕方を説明した「1 引く

5

をす るにはここに0があるから,まず

1000

1

から借りてくる.10がここにおりてき て,また

1

つ繰り下げるから

9

になって,また

10

が下りてきて1つ繰り下がる(現 地語)」(第

17

時限)や,数列をみつけて発表した「10, 9, 8, 7, それらは引く…」(第

13

時限)といった発言に該当した.

そのほか,「生徒に対する沈黙(Na-S)」(0.04%),「生徒への指名(Po)」(0.04%),

「生徒の質問に対する『はい』『いいえ』の忚答(Yn-S)」(0.00%),「生徒の意見に 対するジェスチャーや記述(Wri-S)」(0.00%)といった生徒同士のやりとりはほと んど,もしくはまったくみられなかった.

これらから,生徒と教師のやりとり,特に一問一答が为要な発話であった.そし て生徒と生徒のやりとり,そして生徒が一問一答以外の方法で答える発話が若干な がら確認された.

6-2-1-2.池谷(2009)の結果との照合

1

次調査の授業分析結果と前章に引用した池谷(2009)の結果(pp.126-127参 照)を比較すれば,教師の閉じた質問と生徒の単語,数字で答える割合が高かった ことが類似点として指摘できる.教師と生徒間で数式や問題の答えを片言で答える 数学的なやりとりが授業で最も行われていた.

131

一方でそのほかのコードから池谷とルサカの授業分析結果の相違点を二点指摘で きる.

まず池谷では八つのすべての授業において「開いた質問(OQ)」は

0.0%であった.

それに対して第

1

次調査では一授業平均

5.72%と低い割合ながらも認められた.こ