第 4 章 国際連系送電線実現に向けての条件・課題
4.2 国際連系送電線実現に向けての条件・課題
4.2.1 検討結果の評価と課題
(1)連系送電線による効果の妥当性
今回の検討で得られたメリットは、大別すると二つに分けられる。第一は各国(系統)の 電源設備開発量の削減が可能となることによって得られるもの(第一のメリット)であり、
第二はラオスの潜在水力(自国の需要をまかなってもまだ余る分)を有効に活用することに より得られるもの(第二のメリット)である。
1)電源設備開発削減効果(第一のメリット)が有効に機能するための課題
このメリットは連系送電線が存在しさえすれば得られるもので、連系送電線の建設が終了 して運用開始した時点で、このメリットを享受する権利を有することとなる。しかしながら、
このメリットを現実のものとするためには、各国(系統)の関係者がこのメリットを認識し、
各国(系統)において電源設備の建設を繰り延べする必要がある。もし、繰り延べを実施し なければ、その系統の供給信頼度が向上するという効果は得られても、連系送電線の建設・
運営にかかる費用は余分に必要となる。
2)潜在水力の有効活用による効果(第二のメリット)が有効に機能するための課題 ラオスは水力開発を積極的に行う計画であり、国内需要は全て水力で賄う計画である。ま た、IPP方式で開発し、他国に売電することも考えている。
IPP 方式による場合には、直接発電所から需要地までの送電線を敷設し、PPA にしたが って発生電力の全てを売電するため、仮に余剰電力が発生したとしても他系統のための電力 融通が可能となる可能性は少ない。一方、国内需要を賄うために開発された水力発電所につ いては、他国の系統との連系送電線がない場合には、常時、需要に合わせた発電量にする必 要があるため、相当大きな調整能力を持つ貯水池がない場合には、結局発電に利用されない 水は、そのまま放流されることとなる。つまり、他国の系統と連系する送電線があれば、こ の無効放流分50を有効活用して発電し、他国の系統に送電することによって収入を得られる だけでなく、受電側では火力の焚き減らしが可能となり、燃料費の削減というメリットが発 生する。
50 今回の検討ではラオスだけでなく、カンボジアやベトナムでも時期・時間によって、この無効放流が発 生している。
ラオスやカンボジアの新規開発予定水力地点については、今回詳細なデータが得られなか ったため、他地点の特性からデータを類推するしかなかった。しかしながら、水力発電所は 火力発電所と異なり、地点特性による影響が非常に大きく、他地点の特性から推定したデー タを利用した場合、推定誤差が最終結果に影響を及ぼしている可能性がある。このため、詳 細検討を実施する際には、より詳細な地点特性を踏まえた確かなデータが必要である。
(2)供給信頼度レベルの整合
今回の検討においては、全ての系統の供給信頼度目標は同じとして検討を行っている。つ まり、全ての国が供給信頼度目標として、LOLE値で年間24hrを確保するように電源設備 を開発することとしたが、現在の各国の供給信頼度は異なっている。
極端に供給信頼度が異なる系統同士が連系されると、供給信頼度が低い(LOLE 値が大 きい)系統にメリットが集中するため、連系によって系統全体としての供給信頼度は向上す るが、元々供給信頼度が高い系統では、供給信頼度が低い系統からの影響を受けて、結果的 に供給信頼度が低下するという事態が発生する可能性がある。このため、各国の系統間を連 系する場合には、極力各国の供給信頼度を合わせるように努力する必要がある。
(3)電源開発計画の最適化
各国から提供された開発計画は、年間の需給状況から見ると、電力融通をしなくても供給 力が不足するという問題は生じないように計画されている。しかしながら、今回の燃料費削 減効果の検討において、各国における時間毎の各発電所の運用状況をシミュレーションした 結果からも確認できたことであるが、日々の運用を考慮すると水力電源の多い国においては、
乾季の発電能力が大幅に減少するため、時間帯によっては供給力が不足し、他国からの応援 融通が必要となる場合がある。
特にベトナムでは、非常に大規模の水力発電所であるHoa Binh水力発電所を有しており、
その上流部にSon La水力発電所の計画もある。このように大規模水力発電所の開発が多く 進むと、最大需要発生時期である雨季の供給力は十分にもかかわらず、需要があまり大きく ない乾季であっても供給力が不足するといった問題が生じる。この問題は系統連系によって ある程度は回避可能であるが、今後の電源開発計画の策定の際には、この問題も十分考慮す る必要がある。
(4)今後の送電線整備計画との整合性 1)電源開発に伴う送電線整備計画との整合
インドシナ地域においては、IPPによる電源開発が多く計画されているが、発電所と需要 地を結ぶ送電線も含めて計画されていることが多く、その送電線の容量を増加することによ って、連系送電線としての機能を付加することが可能であれば、建設費を大幅に削減できる ことは先述したとおりである。その点を踏まえると、今回検討したモデルケースの中でも経 済性比較の結果が優位であったCase2、5、7、10は電源線活用ケースであることから、こ れらのプランを実現するためには電源開発に伴う送電線整備計画との整合を図る必要があ る。具体的には、今後予定されている電源および送電線の開発計画策定にあたっては、将来 の連系送電線への活用の可能性を考慮して送電線容量を決定する必要がある。
特に、IPPによる電源開発計画が先行しているラオスとタイ間ならびにラオスとベトナム
間について、既計画との整合を早期に行った場合(2010年断面)の系統連系によるメリッ トについて試算すると以下とおりとなった。なお、試算にあたっては、タイ−ラオス−ベト ナム連系で最も効果の大きいCase 2を用いた。
供給信頼度向上による電源設備開発削減量は、連系送電線容量1,000MWで飽和し、この ときの電源設備開発削減量の合計は260MW程度となる。(図4-1)
0 50 100 150 200 250 300
0 500 1000 1500 2000
Capacity MW
Reduction MW
LaoPDR Thailand Vietnam Total
図4-1 2010年における電源設備開発削減量(Case 2)
続いて、連系送電線容量1,000MWにおける年経費削減効果、発電電力量の変化を表4-3、
4-4に示す。
この開発繰り延べによる固定費の削減量は連系された系統全体で11MUS$/yrである。ま た、燃料費はラオスの水力の潜在能力を活用することなどで、全体で47MUS$/yr削減可能 となる。
表4-3 2010年における各系統の年経費削減効果(Case 2)
Unit: MUS$/yr
Laos Thailand Vietnam Total
固定費 0 0 -11 -11
燃料費 0 -48 +1 -47
電力購入費 -13 +18 -5 -
合計 -13 -30 -15 -58
融通送電ロス - - - +4
需要(TWh) 1.8 184.2 70.4 256.4
表4-4 2010年における連系による各系統の発電電力量の変化(Case 2)
Unit: TWh
Fuel Type Laos Thailand Vietnam Total
Hydro +0.9 0 +0.6 +1.5
Pumped Hydro - +0.0 0 +0.0
Coal - -0.9 +0.1 -0.8
Gas - -0.1 -0.2 -0.3
Oil - -0.2 +0.0 -0.2
Diesel - 0 +0.0 +0.0
Total +0.9 -1.2 +0.6 -0.3
Purchase -0.9 +1.5 -0.6 -
2)国内系統整備計画との整合
今回の検討では、各国の国内系統中での地域間電力輸送に関して制限がないと仮定し、各 国間の連系送電線は、将来計画上で最も国境に近い変電所間を連系すると仮定している。し かしながら、現時点ではラオスやカンボジアの国内系統は全く未整備の状態であり、ベトナ ム系統においても南北間を連系する送電線容量に問題が生じている。今後、各電力セクター の規模が大きくなるにしたがって、国内系統の整備も進展していくものと推測されるが、国 内系統の整備状況次第ではメリットの値も変化することとなる。したがって、今後の国内系 統整備計画を策定する場合には、将来における国際連系送電線としての活用の可能性も踏ま えて、国内系統内の問題によって支障が生じないように配慮する必要がある。
(5)需要の不等時性(Divergence)
2000年の需要実績を見ると、各国の最大電力発生月および発生時間は、各国ごとに異な っている。最大電力の発生月を見ると、カンボジア、タイ、ラオスは 4 月、ベトナムでは 11月である。また、最大電力の発生時間は、タイは昼間の14時頃発生し、カンボジア、ベ トナム、ラオスは夕方の19時頃発生している。
今回使用したタイとベトナムの最大電力発生日の日負荷曲線(図 4-2)からもわかるとお り、両系統間には大きな需要の不等時性が存在している。
0 10,000 20,000 30,000 40,000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112131415161718192021222324 hour
MW
Thailand Vietnam
図4-2 タイとベトナムの最大電力発生日の日負荷曲線