第 2 章 電力セクターの現状と将来計画
2.2 電力セクターの現状と将来計画
2.2.4 ベトナム
(6)設備運用33
EGAT の電圧の管理基準値は、常時で定格+5%、−2%、非常時で定格±8%である。周 波数については、定格(50Hz)±0.1Hzである。水力発電はピーク対応で運用しているが、
周波数の制御のためにも運用している。
翌日の発電計画は、前日(12:00)にEGATおよび IPPの各発電所から発電可能量の連 絡を受け中央給電指令所で作成(16:00)している。発電設備運用におけるプライオリティ は、①環境汚染防止、②安全性(予備率の確保)、③信頼度(系統電圧および周波数の維持)、
④経済性(最小コストによる発電)が基本となっている。
(7)国内電化率
国内電化に関しては、村などの集落単位では、ほぼ100%の電化率となっている。家屋単 位の電化率に関しては、図2-19に示す。
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
1987 1992 1997
年 電化率(%)
出所:Power Development Plan 99-02, May 2000, EGAT
図2-19 家屋電化率(タイ)
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
1988 1993 1998 2003 2008 2013 2018 年
最大電力(MW)
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000
発電電力量(GWh)
最大電力(MW) 発電電力量(GWh)
出所:THE MASTER PLAN ON ELECTRIC POWER DEVELOPMENT IN VIETNAM, 2001, EVN
図2-20 電力需要想定(ベトナム)
これまでの最大電力は5,500MWであるが、ピーク時には負荷制限を実施している。参考 までに、2000年のベトナムにおける最大電力発生日(11月28日)の日負荷曲線を図2-21 に示す。更に、2020年までの販売電力量の産業別の推移を図2-22に示す。
出所:EVNからの入手データより作成 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000
0 6 12 18
時刻
負荷(MW)
図2-21 日負荷曲線(ベトナム)
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000
1995 2000 2005 2010 2015 2020 年
販売電力量(GWh)
工業 家庭用 サービス 農業
出所:THE MASTER PLAN ON ELECTRIC POWER DEVELOPMENT IN VIETNAM, 2001, EVN
図2-22 産業別販売電力量の推移(ベトナム)
EVNによる第5次マスタープランによれば、需要想定手法は次のとおりである。
1)直接的手法
産業経済開発計画に沿って電力を多く消費する産業の生産計画を考慮し、直接的に将来の 需要(電力消費量)を想定するもので、3〜5 年の短期想定に利用している。この需要想定 手法は県別にも行われており、これによって負荷の分布状況や種別が分かることから、送電 線や配電線の計画に利用している。
2000 年から 2005年までの想定は、この直接法によりボーキサイトの開発、鉄鋼生産、
肥料生産など大規模な産業プロジェクトによる実際の投資額および情報を反映して作成さ れた。産業の種別は、工業、商業、農業、家庭用に分かれており、経済成長シナシリオは、
低成長シナリオ、ベースシナリオ、高成長シナリオの 3 つがあり、地域としては、北部、
中部、南部に分類して需要想定が行われている。
2)間接的手法
間接的手法とは、シナリオ・シミュレーション法によるもので2005年から2020年まで の中長期の想定を行っている。具体的には、中長期の社会経済開発についての想定シナリオ に基づき、GDP弾性値により最大電力(MW)および電力量(GWh)を想定している。弾 性値は以下の式によって算定される。
GDP弾性値についても、産業種別および地域別に算出しているが、以前から行ってきた 解析手法や80〜90年代のアジアの途上国における弾性値も参考にして決定している。
また、需要へ影響を与える他の要素として、電気料金および省エネルギーによる効果につ 電力需要成長率(%)
GDP成長率(%)
収入による弾性値 =
いても考慮している。電気料金について考慮しているのは、いくつかの産業においては補助 金が供与されているからである。省エネルギーについては、科学技術の進歩や DSM
(Demand Side Management)プログラムによる抑制効果を考慮している。
1991から1999年までのGDP弾性値の実績平均値は1.89であり、GDP弾性値は以下の とおり予想されている。
1999〜2000 :1.82 2001〜2005 :1.62 2006〜2010 :1.48 2011〜2020 :1.39 1998〜2020平均 :1.50
既存の負荷特性(負荷曲線)の解析・評価については、典型的な週(平日、休日)の特性 分析を行い評価・想定が行われる。1999年の負荷率は0.655と評価され、2010年の負荷率
は 0.705 と予想されている。このように負荷率が大きくなる理由は、産業と民生需要の需
要構造の変化、昼間需要の増大、DSMによる負荷曲線の平坦化によるものと考えられる。
現在の日需要の最大値は図2-21をみても分かるように夕方の点灯時に表れているが、今 後、産業用(特に業務用)需要の伸びや冷房需要の伸びを考慮すると、近い将来には昼間時 と点灯時の二点ピークに移行し、さらには昼間時ピークへと移行していくものと考えられる。
よって、今後の需要想定時においては、この負荷形状の変化を的確に把握するとともに、タ イのところでも触れたが、冷房需要の増大に伴う気温 1 度当たりの感応度が増大し、需要 のふれ幅が大きくなることに対する考慮が必要である。
ベトナムについても、想定手法および想定結果について、特段指摘すべき事項はないもの 思われることから、提出された需要想定をそのまま今回の検討に使用した。ベトナムの検討 に使用した需要想定を以下に示す。(図2-23、24)
最大電力(MW):2010年、2015年の想定値で2000年の2.6倍、4.0倍 2000年〜2020年の年平均伸び率9.4%
電力量 (GWh):2010年、2015年の想定値で2000年の2.7倍、4.2倍 2000年〜2020年の年平均伸び率9.7%
負荷率 (%):2010年 69%、2015年 70%
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
2000 2005 2010 2015 2020 YEAR
最大電力(MW)
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000
2000 2005 2010 2015 2020 YEAR
電力量(GWh)
図2-23 ベトナムの需要想定(MW) 図2-24 ベトナムの需要想定(GWh)
(3)発電設備 1)現状
EVNの総発電設備容量は5,679MW(含むIPP)であり、電源構成としては水力が51%、
火力が42%、IPP(石油火力)が7%となっている。主要発電設備の概要を表2-6に示す。
表2-6 ベトナム国内発電設備
発電所名 設備容量(MW)
HYDROPOWER PLANTS 2,913
COAL-FIRED TPP 645
OIL-FIRED TPP 198
GAS TURBINE TPP 1,152
DIESEL PP 397
IPP 375
TOTAL 5,679
出所:EVN Annual Report 1999, 1999, EVN
ちなみに、石炭火力は全て北部、石油火力は全て南部に設置されている。ガスタービンは、
比較的短期間で投入できるため、電力需要が急増している南部地域(ホーチミンなど)に多 く設置されている。
北部は乾季に、南部は近年の急激な電力需要の伸びにより電力不足が発生しやすい状況に あり、ベース負荷を賄う大型発電所の開発が急がれている。
2)電源設備計画
2001年に運転を開始する予定の発電所は、6地点(2,580MW)あり、2002〜2005年の 計画が12地点(3,852MW)、2006〜2010年の計画が15地点(5,723MW)である。また、
2002〜2005年の間に、ラオスから700MWの電力輸入が計画されている(図2-25 および
表2-7参照)。現在の日負荷曲線は電化の普及促進に従って、家庭用電灯を中心とする夕方 の負荷が急増しており、最大電力と最低電力の差が2,000MW以上にもなっている。今後の
工業化によっては、負荷パターンは急激に変化することが考えられ、火力・水力のバランス の良い開発が必要となる。
3)供給信頼度基準と需給バランス
供給信頼度(LOLE)は、年間24hrを目標としており、現在の電力需給バランスは国内 全体で見た場合、需要予測に基づいて電源開発計画が策定され、比較的順調に開発が行われ ていることから、国全体の年間計画でみた場合、問題は生じないように思われる。
しかしながら、地域別に見ると南部では電力供給不足が生じており、特に乾季における電 力確保が重要となっている。また、天然ガスを燃料とする発電所が多いことから、天然ガス 開発も含めた形での電源開発計画の策定が必要である。
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000
2000 2005 2010 2015 2020
年 発電設備容量(MW)
水力 揚水式水力 輸入電力 石炭火力 ガス-石油火力 地熱 原子力
出所:THE MASTER PLAN ON ELECTRIC POWER DEVELOPMENT IN VIETNAM, 2001, EVN
図2-25 発電設備容量の推移(ベトナム)
表2-7 ベトナム国内発電所開発計画
年 発電所名 最大出力(MW)
Pha Lai 2 TPP 600
Yaly HPP 3&4 360
Ham Thuan HPP 1 150
Da Mi HPP 1 89
Phu My 1 ST 370
2001
Total 1,569
Ba Ria add-on 306-2 GT 56
Ham Thuan HPP 2 150
Da Mi HPP 2 89
Phu My 2.1 ST 143
Na Duong TPP 100
Phu My 4 GT 288
Can Don HPP 72
Phu My 2.1 ST extension 140
Cao Ngan TPP 100
Phu My 4 ST 143
Phu My 2.2 GT 480
Omon TPP #1 300
Phu My 2.2 ST 240
Cam Pha TPP #1 150
Uong Bi TPP extension 300
Omon TPP #2 300
Ca Mau gas turbine C/C #1 360
Dai Binh HPP 300
Rao Quan HPP 70
Geo-Thermal Power 50
2002〜2005
Total 3,831
Se San3 HPP 273
Cua Dat HPP 120
Ca Mau gas turbine C/C #2 360
Geo-Thermal Power 50
imported from Lao 300
Na Hang HPP(Dai Thi) 300
Thai Binh gas turbine C/C 360
A Vuong HPP 170
Hai Phong TPP #1 300
Ban Mai HPP(Ban La) 260
Dong Nai 3 HPP 240
Hai Phong TPP #2 300
Ca Mau gas turbine C/C #3 360
Dong Nai 4 HPP 270
imported from Lao 400
Cam Pha TPP#2 150
Ca Mau gas turbine C/C #3 360
Quang Ninh TPP #1 300
imported from Lao 300
Pleikrong HPP 120
Song Ba Ha HPP 200
Omon Gas-TPP #3 extension 300
2006〜2010
Total 5,793
(4)国際連系34 1)現状
現在ベトナムは、ラオスのHuaphan、 Savannakhet県へ、少量の電力を供給している。
送電線の電圧は35kVである。
2)今後の予定
ラオスとは、2009年までに400MW、2012年までに最大1,400MWの電力供給を受ける PPAを締結する予定である。最終的には2020年までに2,000MWとなる予定である。しか しながら、この電力輸入の原資はまだ確定していない。
連系送電線ルートとしては、ラオスの中部と南部の 2 個所からの2回線が考えられる。
ベトナムはまずラオスと連系送電線で接続し、最終的にはタイと電力融通が可能な状況を構 築したいと考えており、ベトナム‐ラオス間の総合的な連系送電線プロジェクトについての F/S調査を計画している。
カンボジアとは、2003年に220kV送電線で連系することを計画しており、2004年まで
は最大80MW、2005年以降は最大200MWの電力輸出を予定している。その他では、カン
ボジアとの国境近くの3地域で1.8MW程度の電力供給の計画もある。さらに中国の雲南省 との電力融通も計画されている。
これらの連系送電線の制御方法については、国内系統用の給電システムを利用して制御す る計画であるが、まだ先の話ということもあり、具体的な制御方法については確定していな い。
(5)送配電設備計画
南北縦貫500kV送電線の完成により、北部・中部・南部系統が連系運転されるようにな
った。基本的には旧ソ連の規格に従っていることから、主系統として220kV送電線、2次 系統として110kV送電線が使用されているが、一部南部系統については、米国および日本 が整備した 66kV 送電線などの古い設備が残っている。これらの送電線については順次
110kV 送電線へ昇圧中である。配電線については、現在のところは、各ドナーにより整備
された様々な電圧の送電線が存在するが、将来的には、都心部は22kV、山間部および地方 部は35kVに統一する計画である。
新規電源開発に伴う送変電設備整備としては、2010年までに500kV送電線を2,416km、
220kV送電線を4,414km、110kV 送電線を7,757kmおよびそれに伴う変電所が計画され ている。今後は、配電も含め、効率的な電力供給を意識した、最新のマスタープランが必要 であると考えられる。また、ベトナムの送配電ロス率については、現状では 15%以上ある が2012年頃には10%以下とするよう計画している。(図2-26参照)
34 EVNとのインタビューより。