第 3 章 インドシナ地域における国際連系送電線プラン
3.3.6 国際連系送電線を活用した地方電化
ステムを構築することを目的としている。しかしながら、地方電化への適用といっても、
需要密度の低い山間地の電化に適用すると仮定すると、福祉施策の一環として行う場合に は必要コストが回収できず、補助金などの何らかの支援が必要となる。また、超高圧大容 量の送電線からの電力供給は、系統の安定性の観点からもきわめて非効率かつ不安定な結 果をもたらす可能性がある。
そこで、本検討では国際連系送電線活用による地方電化を安定的かつ効率的な電力ネッ トワークの構築という本来の目的に合致するもの、すなわち、規模の経済が作用し、コス ト回収が可能であり、経済発展に寄与することが可能な「地方開発電化」と考え、その適 用可能性を検討する。
具体的には、対象4カ国内に政策的に産業振興を行い、一定の電力需要規模を確保する ことが可能な地域(経済特別区など)に国際連係送電線から電力供給を行った場合のコス トと平均小売単価と比較し、費用対効果の観点から適用可能性を検討するものとする。
(2)対象地域44
第1回現地調査から上記条件に適合する地域として、ラオス国内の「サバナケット経済 特別地区」を検討対象地域とする。同地域は、
1)インドシナ半島における地域的な中心地となるための、流通、製造、貿易・商業、
サービスなどの戦略的セクターの開発 2)雇用促進と地域における生活水準の向上
3)国際的なビジネス慣行、市場の概念、品物やサービスの品質意識の導入 4)工業・商業水準の向上
5)地域企業水準の向上 を目的とし、
A)自由通過地域、B)輸出加工区、C)自由貿易地域 の3つの機能をもつ。
経済特別区の位置については、人口、経済活動など社会的要因やアクセスや基盤整備状 況などの技術的要因を勘案して、県内新メコン橋の北側など 2 カ所が選定されている。
JICA(2001)によると、2010年断面における経済特別区の電力需要は25.2MWと想定さ れている。(表3-57参照)その業態から需要種別を業務用とみなし、日本における負荷率
30.3%45と同一と仮定し、電力需要量(kWh)を算出する。
また、国際連系送電線整備プランにもとづく連系送電線から経済特別地区までの送配電 線ならびに変電設備の建設コストを算定し、上記電力需要量で除すことでコスト回収可能 なレベルの供給単価を算出し、平均小売単価と比較する。
44 国際協力事業団(2001)
45 日本電力調査会(1997)p192
表3-57 サバナケット県および経済特別区の電力需要量
(MW)
1999 2004 2005 2006 2007 2010 サバナケット
経済特別区 − 3.5 3.7 3.8 4.0 25.2 サバナケット県
他地域 13.4 37.7 54.5 57.0 59.5 67.0
合計 13.4 41.2 58.2 60.8 63.5 92.2
出所:JICA(2001)「ラオス国サバナケット経済特別区開発調査」
(3)検討結果
①予想電力需要量は
25.2(MW)×8,760(時間)×30.3(%)= 66,900(MWh)
②予想契約口数は、今後の業務用増加口数がすべて経済特別区に集中すると仮定して、
1,181(サバナケット県内の経済特別区予定地以外の企業数46)
×5(67.0 [2010年の県全体の需要] / 13.4 [1999年の実績]47)
=5,905(口)
∴ 5,905 – 1,181 = 4,724(口)
③上記設定から回収できる金額は以下のとおりである。(1$ = 8,000 kipで計算)
1)基本料金分:月当たりの商業用基本料金を4,500 kip48とすると、年間で
4,500(kip)×12(ヶ月)×4,724(口)/ 8,000(kip)= 32,000($)
2)従量分:kWh当たりの商業用従量単価160 kipとすると、年間で
66,900(MWh)×160(kip / kWh)/ 8,000(kip)= 1,338×103($)
3)基本料金分と従量分を合計すると、
1)+ 2)= 32×103 + 1,338×103 = 1,370×103($)
④ kWh当たりに換算すると
1,370×103($)/ 66,900(MWh)
= 0.020($ / kWh)= 2.0(¢/ kWh)
コスト計算に際しては連系送電線下に配電用変電所を建設するケースを想定した。建設 単価については、前項の検討で使用したものを本検討で必要な30MVA相当に変更して計 算した。
図3-28に示すとおり、ラオスの標準小売料金のうち最も高い商業用料金単価を用いて算 出した場合、当該地域における平均小売価格は、連系送電線を用いた場合(Case 2を想定)
の供給単価に対して5割程度であるが、連系送電線を利用しない場合と比べて1割程度廉 価となった。ちなみに分散型電源49の供給単価に対しては、平均小売単価は2%程度という ことになり、連系送電線を利用した方が有利である。
46 国際協力事業団(2001)p26
47 企業数が電力需要の増加率と同一の増加率であると仮定。
48 ADB. 2001a. p78
49 ここでは太陽光発電を例に検討した。詳細は本項参考1参照。
以上より、本検討で定義した「地方開発電化」であっても、補助金などの何らかの支援 がなければ、全てのコストを回収することは不可能であるが、そのレベルについては分散 型電源を用いた場合よりも、極めて低コストで電力を供給することが可能である。
図3-28 供給単価と平均小売単価の比較 2.0
4.1
170.0
4.6
0.0 5.0 10.0 15.0
回収単価 Base Case 2 分散型電源
(¢/ kWh)170.0
180.0
(参考1:分散型電源コスト算出について)
JICA 報告書「ラオス 太陽光発電地方電化 MP」を参考に供給単価(発電原価)を 算出した。
太陽光発電システム単価:15,000(US$ / kW)
検討対象地域 :ラオス サバナケット地区 2010年予想需要 :25.2(MW)
負荷率 :30.3(%)
予想電力量 :8,760(h)× 25.2(MW)× 30.3(%)= 67(GWh)
利用率 :12(%)
必要設備量 :67(GWh)/(12(%)× 8,760(h))= 64(MW)
資本回収係数 :0.11746(耐用年数20年、割引率10%)
建設費 :64(MW)× 15,000(US$ / kW)= 960(MUS$)
960(MUS$)× 0.11746 = 113(MUS$)
発電原価 :113(MUS$)/ 67(GWh)= 170(¢/kWh)