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森林・泥炭地火災の影響

ドキュメント内 成果報告書 (ページ 55-58)

第 5 章 泥炭地における火災予防の体制/システム構築

5.3. 森林・泥炭地火災に関する基礎知識

5.3.3. 森林・泥炭地火災の影響

(1)生態学的影響

森林・泥炭地火災が環境に及ぼす影響は非常に幅広く、生物多様性とその生態系機能の 低下によって生態系被害を引き起こし、大気質も低下させる。詳細に言えば、森林・泥炭 地火災の影響は以下のとおりである。

a. 炭素排出

泥炭地は、植物バイオマスや森林土壌下の腐葉土、泥炭層、泥炭下の鉱物土層(下層土)

に大量の炭素を貯蔵している。森林が伐採されて劣化すると、貯蔵されていた炭素がた ちまち大気中に放出される。火災後の伐採搬出活動は、泥炭林のバイオマスからの放出 過程を加速させる。森林・泥炭地火災は大量の二酸化炭素を排出させ、地球規模の気候 パターンに影響を与える。

張り出し部分

泥炭土

3段階

地下水 表層泥炭火災

燃焼方向

平均 20~60cm

深層泥炭火災 突出部分

平均 20~60cm

b. 泥炭の物理的性質の変化

泥炭の重要な物理的性質は含水量の多さであるが、不可逆的な乾燥傾向もその1つであ る。排水によって干魃に見舞われた泥炭地は体積が減少するので、土壌表層が下がる(沈 下)。森林・泥炭地火災が発生すると、悪影響がはるかに大きくなる。泥炭を燃やすだ けでなく、高温のために未燃焼の泥炭層も乾燥し、回復が困難になるからである。

c. 泥炭の化学的性質の変化

泥炭土は一般に酸性レベルが比較的高く、pH3~5である。燃焼によって泥炭のpHが高 まるが、有機炭素量は減少する。燃焼後に泥炭の化学的性質を変化させる主因の1つは、

燃焼によって発生する大量の灰である。この変化はその後、地表植生の成長に影響を及 ぼす。

d. 火災で微生物が死滅するため、泥炭の分解プロセスが阻害される。

e. それまで泥炭層の下に埋もれていた自然植生の種子も燃えてしまうため、植物 種の発達・再生や森林植生の構成が攪乱され、変化して生物多様性が低下する。

f. 水循環の損害

森林・泥炭地火災は土壌への雨水吸収を妨げ、土壌の水分量を減らして表面を流れ る水の量を増やし、堆積に影響を与えて水質を変化させる。このような条件が原因 で泥炭地が乾燥し、森林・泥炭地火災が発生しやすくなる。海の近くの泥炭地では、

泥炭地の水循環が損なわれる結果、海水がさらに内陸まで侵入することにもなる。

(2)人的健康に対する影響

森林・泥炭地火災によって発生する煙霧は、ガスや小粒子の形で、健康に有害な成分を いくつか含んでいる。人的健康に影響を与えるガス成分として、一酸化炭素(CO)、二酸化 硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)、アルデヒドが挙げられる。オゾン(O3)、二酸化炭素(CO2)、 炭化水素など、その他いくつかの化合物も肺に破壊的な影響を与える。これら各種の亜硝 酸塩・有機窒素化合物グループは遠くまで飛散し、オゾンなど他のガスによって、微小な 粒子や有機亜硝酸塩に転化されることがある。燃えている木から発生する煙粒子の大きさ は、ほぼすべてが1μm未満で、主として0.15~0.4μmであるi

煙霧で汚染された空気が人体に入ると肺や気道に影響を与え、健康であろうと病気であ

ろうと、すべての人々を害する恐れがある。免疫システムが弱い高齢者や子どもは(特に 慢性病の人も)、健康被害を受ける可能性がより高くなる。煙霧吸入の結果、感染症に対処 する肺や呼吸器系の能力が低下し、病気にかかりやすくなる。免疫システムの不均衡、バ クテリアやウイルスのパターン、不十分な環境的要因が大きな原因で、呼吸器疾患がはる かに急速に悪化するようになる。森林・泥炭地火災に関連する病気には、呼吸器感染症の ほかに肺炎や喘息、目の炎症、皮膚炎などがある。

インドネシアは、汚染基準指標(PSI)という用語を使って、空気中の汚染物質濃度を毎 日報告している。PSIの大気質データの出所は、保健省や地域環境管理機関、地域保健研究 所、民間企業が所有するその他の監視施設である。すでに政府は、PSIに基づいて森林・泥 炭地火災の危険レベルを分類し、表5.1に示すように各カテゴリーに必要な予防策を決定し ている。

表 5.1 PSI に基づく森林火災危険カテゴリーと予防策

ISPU カテゴリー 健康への影響 安全対策

> 400 非常に危険

 すべての人、特に子ど も、妊婦、高齢者、呼吸 器系の病気を抱えてい る人々にとって危険で ある。

 すべての人が家から出ないように し、ドアと窓を閉めておかなけれ ばならない。

 子ども、妊婦、高齢者、呼吸器系 の病気を抱えている人々など、危 険にさらされた人々を、大気が汚 染されていない場所に直ちに避難 させる。

300-399 危険

 病気を抱えている人は 症状が悪化する。

 健康な人々は疲れを感 じやすくなる。

 病気の患者は、大気が汚染されて いない地域に移動させる。

 事務所や学校ではエアコンか空気 清浄 器を利用し なければな らな い。

200-299 非常に 不健康

 呼吸器感染症、肺炎、心 臓病の患者は症状が悪 化する。

 屋外 での活動を 制限すべき であ る。

 病院や医療センターなどで、急性 呼吸器感染症や重症肺炎を抱えて いる人々の治療用に特別室を用意 する必要がある。

 心臓病を抱える人々の活動をさら に減らす。

101-199 不健康

 気道の炎症を引き起こ す場合がある。

 心臓病患者は症状が悪 化する。

 屋外で活動するときには、マスク などを利用して鼻と口を覆う。

 心臓病を抱える人々の活動を減ら す。

51-100 中程度  健康への影響なし

<50 良好  健康への影響なし

(3)社会的・経済的影響

森林火災は社会的・経済的側面にも影響を与える。以下のような例が確認されている。

a. 森林資源や農耕、畜産、狩猟、漁獲に依存している人が、生計手段を失う。

b. 煙霧のせいで視界が悪くなり、輸送活動が混乱する。これにより経済活動も混乱する。

c. 田畑などの農地が燃えると作物も消失し、不作による深刻な経済的圧力をもたらす。

d. 先端技術を使用すれば消火コストが高くなる場合があるため、政府その他の機関の支出 が増え、企業や地域社会にとっての損失も増える。

e. 近隣村落間で誤解が生じ、ひいては水平的紛争の原因になることがある。

f. 煙霧の影響により、他国からの抗議や賠償要求等、近隣諸国との外交問題に発展する。

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