第 5 章 泥炭地における火災予防の体制/システム構築
5.2. はじめに
5.2.1. 背景
インドネシアでは、乾季になるとほぼ毎年、森林・泥炭地火災が発生し、全国で広大な 泥炭地や森林が焼かれている。泥炭層が乾燥すると、1回の火災が最大数カ月にわたって根 や地下の有機物質を焼き尽くし、地表下で非常に急速に広がることがある。火災は、人の
健康や野生生物に差し迫った脅威をもたらすだけでなく、火災から発生する煙霧によって 交通機関や数百万人の経済活動にも混乱が生じている。煙霧汚染はしばしばマレーシアや シンガポールなどの近隣諸国にまで及び、各国政府との間で緊張が高まっている。さらに、
泥炭地や森林の燃焼はインドネシアの温室効果ガス(GHG)排出の主要原因である。1997 年にはカリマンタンとスマトラで広範囲の森林・泥炭地火災が発生した結果、0.81~2.57ギ ガトン(Gt)の二酸化炭素(CO2)が大気中に放出された。これは化石燃料からの世界年間 平均炭素排出の13~40%に相当する。
インドネシアには1億3,617万ヘクタール(ha)の森林があり、うち2,000万haが泥炭地 で、約300万haが中部カリマンタン州にある。同州では過去20年間にほとんど毎年、森林・
泥炭地火災が発生している。消火の努力が続いているが、泥炭地における消火の難しさが 原因で、これらの努力は効果を上げていない。火災は農場や森林、土地など、多くの資産 を破壊している。しかし、人々は森林火災を定期的に起こる出来事と考える傾向があるの で、再発防止に向けた積極的な取り組みは行われていない。
したがって、人々がこれらの火災、その原因、人間の生活に対する影響について、もっ と理解することが重要である。火災を理解することによって、まず第一に火災を防止する ことの重要性に対する認識が高まるだろう。
5.2.2. 地域密着型の総合的な森林・泥炭地火災予防管理システムの必要性
インドネシアの泥炭・森林火災の頻度と規模は、効果的な火災予防策と早期管理システ ムがまだ導入されていないことを示している。この一因は、破壊的な森林・泥炭地火災の 防止・緩和を任務とする、村落レベルの管理機関がないことである。さらに、泥炭地の地 理的条件と特徴的な地形が連絡道路の不備と相まって、パトロールや早期消火の実施にあ たって大きな難題をもたらすことが多い。泥炭地火災の原因や影響に対する認識の低さと、
地方自治体や企業、地域社会間の連携不足も、適切な土地管理に向けた取り組みを妨げて いる。
火災が制御不能なほど広がる原因は多くの場合、不明瞭な土地保有権(すなわち、入り 組んでいる村の境界や未登録の土地所有)、効果的な泥炭地・森林火災管理システムの欠如、
森林・泥炭地火災対応への地域社会参加の不足である。さらに、特にこれらの頻発する森 林火災の予防や消火にあたって、官民が重要な主導的役割を果たすためにより深く関与す る必要がある。
地中火災の鎮圧は極めて困難であり、いったん火が広がると、何千リットルもの水を投 入して消火するか、ただ雨を期待するしかない。したがって、そのような火災が広がる前 の予防管理を優先しなければならない。地域社会は山火事の影響を真っ先に受けており、
泥炭地・森林火災に対処するために総合的アプローチを社会環境に深く組み込む必要性が 高まっている。さらに、現地の人々は、地域規模で火災を管理または予防するにあたり、
最も適切な活動主体になる場合が多い。
地域密着型の火災予防管理システムの構築に至れば、以下の成果・貢献が期待できる。
火災とホットスポットの減少
森林・土地火災が発生する村落の減少
土地放火犯の減少
視界の確保
大気汚染基準指標(PSI)値<100
汚染による呼吸器疾患患者の減少
温室効果ガス排出の減少
5.2.3. 政策
(1)法的根拠
インドネシアの森林に関する法的枠組みは、土地の利用と森林の管理を規制するととも に、関連法規を通して森林・泥炭地火災にも取り組んでいる。次のような法律がある。
a. 森林法(1999年第41号)
b. 森林または土地火災に関連する被害対策または環境汚染に関する政府規制2001年第21 号(インドネシア共和国官報2001年第10号、インドネシア共和国官報補遺第4078号)
c. 森林保護に関する政府規制2004年第45号(インドネシア共和国官報2004年第147号、
インドネシア共和国官報補遺第4453号)
d. 森林火災管理に関する林業省規制2009年第12号
e. アブラヤシ栽培のための泥炭地管理のガイドラインに関する農業省規制 2009 年第 14/Permentan/PL.110/2号
f. 環境保護および管理に関する法律2009年第32号(インドネシア共和国官報2009年第
140号、インドネシア共和国官報補遺第5059号)
g. 森林または土地火災に関連する公害防止または環境損害の仕組みに関する環境省規制 2010年第10号
h. インドネシアの持続可能なパーム油(ISPO)のガイドラインに関する農業省規制 2011 年第19/Permentan/OT.140/3号
i. 農園営業許可のガイドラインに関する農業省規制2013年第98/Permentan/OT.140/9号 j. 森林および土地火災に関する中部カリマンタン州地域規則2003年第5号
k. 泥炭地生態系の保護および管理に関する政府規制2014年第71号 l. 農園に関する法律2014年第39号
(2)現地法および実定法の施行
中部カリマンタン州では、火災を含む社会問題への対応において、今なお実定法だけで なく現地法も重要な役割を果たしている。これらの問題に取り組むために、以下の推奨事 項を検討すべきである。
a. 法施行は、現地法を参照し、現地コミュニティーの代表によって判断されるべきである。
火災を引き起こしたことが判明した者には、「Jipen」罰金が課せられる。この罰金は資 産(例:農園、圃場、住宅)の算出損害額と同額になる。
b. 現地法を施行できない場合は、警察、特に地区警察署が実定法を施行すべきである。
c. 村落消防署のメンバーは、カデマンガンまたは実定法公聴会で専門家証人になることが できる。
5.2.4. 森林火災防止システムの目標と対象者
(1)目標
森林火災防止システム構築の目的は、森林・泥炭地火災に関する基礎知識を与え、地域 密着型の熱帯林・泥炭地火災予防管理の実用的な指針を提供することである。地域密着型 火災予防管理とその実施・組織への取り組み方を紹介する。さらに、予防から消火段階ま で、森林・泥炭地火災の早期発見とモニタリングをどのように実施できるかについて説明 する。
(2)対象者
この森林火災防止システムにおいて構築されるガイドブックは、地域社会の人々が、熱 帯泥炭地の地域密着型火災予防管理システムの参考資料として使うためのものである。加 えて、地方政府や周辺のコンセッション所有者も、泥炭地火災予防管理への地域社会参加 を確保するための促進ツールとして利用することができる。