平成 26 年度
非エネルギー起源温暖化対策海外貢献事業
(途上国における森林の減少・劣化の防止等への我が
国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業)
中部カリマンタン州における
二国間クレジット制度 REDD+プロジェクト
実現可能性調査
委託業務完了報告書
平成 27 年 3 月
経済産業省
委託先
丸紅株式会社
目 次 第 1 章 序論 ... 1 1.1. 本調査の概要 ... 1 1.1.1. 背景 ... 1 1.1.2. 本調査の必要性 ... 1 1.2. 本調査の目的 ... 3 1.3. 調査内容 ... 3 1.4. 調査体制 ... 7 1.5. 調査スケジュール ... 8 第 2 章 対象国の気候変動を巡る情勢と政策及び対象プロジェクトが対象とする市場、政策等 の現状分析 ... 9 2.1. 調査内容 ... 9 2.2. 国際的な REDD+の動向 ... 9 2.3. インドネシアにおける REDD+検討状況 ... 12 2.3.1. インドネシア国家 REDD+戦略 ... 12 2.3.2. 国、州、プロジェクトの各レベルにおける REDD+に関する MRV/方法論の検討・進 捗状況 13 2.4. インドネシアにおける温室効果ガス排出削減に関する国家活動計画 ... 15 2.4.1. REDD+関連規則の制定(林業大臣令) ... 16 2.4.2. REDD+タスクフォース設置、REDD+庁 ... 18 2.4.3. RAN-GRK(インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画) ... 19 2.5. ドナー国による REDD+準備活動 ... 20 2.5.1. 主要先進国による REDD+基金への出資状況 ... 20 2.5.2. インドネシアへの出資および取組状況 ... 23 2.6. 民間企業による REDD+事業への投資 ... 24 第 3 章 対象プロジェクトの事業性評価及びその実現に必要なファイナンス等投資環境整備に 関する検討と課題の抽出 ... 26 3.1. 調査内容 ... 26 3.2. インドネシアでの REDD+における投資環境整備に関する検討と課題の抽出 ... 26 3.2.1. 法令面の検討... 26 3.2.2. REDD+プロジェクト実施に向けたプロセス ... 26 3.2.3. プロジェクト申請者の権利と義務および主要ステークホルダー間の利益配分 ... 27 3.2.4. REDD+に係る税務/会計上の取扱いについて ... 29 3.3. 対象プロジェクトの事業性評価およびその実現に向けた課題の抽出 ... 30 第 4 章 方法論を用いた削減見込量及び対象プロジェクトを通じて得られる経済効果に関する 検討 ... 32
4.1. 調査内容 ... 32 4.2. 調査結果 ... 32 第 5 章 泥炭地における火災予防の体制/システム構築 ... 36 5.1. 調査内容 ... 36 5.2. はじめに ... 37 5.2.1. 背景 ... 37 5.2.2. 地域密着型の総合的な森林・泥炭地火災予防管理システムの必要性 ... 38 5.2.3. 政策 ... 39 5.2.4. 森林火災防止システムの目標と対象者 ... 40 5.3. 森林・泥炭地火災に関する基礎知識 ... 41 5.3.1. 森林・泥炭地火災の原因と発生助長要因 ... 41 (1)森林・泥炭地火災の原因 ... 41 5.3.2. 森林・泥炭地火災の種類 ... 43 5.3.3. 森林・泥炭地火災の影響 ... 45 5.3.4. 森林・泥炭地火災を最小限に抑えるための努力 ... 48 5.4. 地域密着型の熱帯林・泥炭地火災予防管理システム ... 51 5.4.1. 準備と情報普及 ... 53 5.4.2. 火災予防戦略... 62 5.4.3. 消火戦略 ... 66 5.4.4. 火災後の戦略... 72 5.4.5. 設備とインフラ ... 74 5.4.6. RSA モニタリング計画 ... 84 5.4.7. まとめ ... 89 第 6 章 課題の抽出と対応策の検討 ... 90 6.1. 課題の抽出と対応策の検討 ... 90 6.2. 今後に向けて ... 90
表番号一覧 表 1.1 インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画(RAN-GRK) ... 2 表 2.1 COP19 時点での決定事項 ... 10 表 2.2 リマ REDD+情報ハブ ... 11 表 2.3 インドネシア国家 REDD+戦略の概要 ... 12 表 2.4 各レベルにおける REDD+方法論検討および REDD+戦略 ... 13 表 2.5 インドネシア主要 REDD+政策 ... 16 表 2.6 インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画(RAN-GRK) ... 20 表 2.7 主要先進国による REDD+基金への出資状況 ... 21 表 2.8 国際基金の位置付け ... 22 表 3.1 林業大臣令 P.36 が定める REDD+クレジット収益配分比率 ... 29 表 5.1 PSI に基づく森林火災危険カテゴリーと予防策 ... 47 表 5.2 能力強化ニーズ評価チェックリスト ... 59 表 5.3 掘削設備・材料のリスト ... 74 表 5.4 RSA が必要とする器具の種類と最小数量 ... 82 表 5.5 RSA 用の補助器具リスト ... 83 表 6.1 アクションプラン ... 91
図番号一覧 図 1.1 プロジェクトサイト図 ... 3 図 5.1 森林・泥炭地火災の仕組み(第 1 段階) ... 44 図 5.2 森林・泥炭地火災の仕組み(第 2 段階) ... 44 図 5.3 森林・泥炭地火災の仕組み(第 3 段階) ... 45 図 5.4 地域密着型の火災予防管理システムの仕組み ... 52 図 5.5 消防隊(RSA)の組織構造 ... 54 図 5.6 連絡・連携および報告の流れ ... 57 図 5.7 防火帯の種類 ... 61 図 5.8 防火帯設置の例 ... 62 図 5.9 地下水測定パイプ ... 64 図 5.10 直接的方法(1) ... 67 図 5.11 直接的方法(2) ... 68 図 5.12 二線法... 70 図 5.13 平行法(1) ... 70 図 5.14 平行法(2) ... 71 図 5.15 平行法(3) ... 71 図 5.16 準備(1) ... 75 図 5.17 掘削(1) ... 76 図 5.18 掘削(2) ... 77 図 5.19 掘削(3) ... 77 図 5.20 深井戸掘削作業における器具と揚水設備の配置 ... 79 図 5.21 井戸の深さと泥炭地の土層 ... 80
略語一覧
LANDSAT :米国所有の衛星。光学センサー搭載
ALOS :日本所有の衛星。光学センサー及びレーダーセンサー搭載
AVNIR :ALOS 搭載の光学センサー
PALSAR :ALOS 搭載のレーダーセンター
LAPAN :インドネシア国立航空宇宙研究所(National Institute of Aeronautics and Space)
VM0004 :VCS 承認方法論(Methodology for Conservation Projects that Avoid Planned Land Use Conversion in Peat Swamp Forests)
VM0006 :VCS 承認方法論(Methodology for Carbon Accounting in Project Activities that Reduce Emissions from Mosaic Deforestation and Degradation Sectoral Scope 14)
VM0007 :VCS 承認方法論(REDD Methodology Module)
REDD :Reducing Emissions from Deforestation and Degradation in Developing Countries(森林減少と森林劣化による排出の削減)
REDD+ :Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries(森林減少・劣化による排出 削減、森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強) REL : Reference Emission Level(参照排出レベル)
RL : Reference Level(参照レベル)
AFOLU : Agriculture, Forestry, and Other Land Use ANR : Assisted Natural Regeneration
BAU :Business-As-Usual
C :Carbon
Co :Alluvial sediment CO2 :Carbon dioxide
DBH :Diameter at breast height (1.3 meter) DF : Deforestation
DG : Forest Degradation
DM : Dry Matter
DNPI :National Council on Climate Change (Dewan Nasional Perubahan Iklim) EF :Emission Factor
ERC :Ecosystem Restoration Concession FAO :Food and Agriculture Organization
FS :Feasibility Study GHG :Greenhouse Gas
GIS :Geographic Information System GoI :Government of Indonesia GPS : Global Positioning System GWP : Global Warming Potential
Ha :Hectare
HCV :High Conservation Value
IPCC : Intergovernmental Panel on Climate Change ITTO :International Tropical Timber Organization
JCM :Joint Credit Mechanism(二国間クレジット制度) LULC : Land Use and Land Cover
LULUCF :Land Use, Land-Use Change and Forestry MSR :Mazars Starling Recoureces
MDD :Methodology Design Document MoF :Ministry of Forestry Indonesia
MRV :Monitoring, Reporting and Verification
MT :Metric Tonne
tCO2e :Metric tonne of Carbon Dioxide equivalent NER : Net Greenhouse Gas Emission Reductions RAN-GRK
RAD-GRK
: National GHG Emission Reduction Action Plan : Regional GHG Emission Reduction Action Plan RePPProt :Regional Physical Planning Program for Transmigration SOC : Soil Organic Carbon
SOP :Standard Operation Procedure TM :Landsat Thematic Mapper TOd :Dahor formation
UNFCCC :United Nations Framework Convention on Climate Change VCS : Verified Carbon Standard
第1章 序論
1.1. 本調査の概要
1.1.1. 背景 IPCC によれば世界の温室効果ガスの排出量の約 17%が途上国の森林減少・劣化等に由来 する排出量と言われている(IPCC, 2007)が、この問題は現在の京都議定書では対象となっ ていないため、「森林減少・劣化からの排出削減及び森林保全、持続可能な森林経営、森林 炭蓄積の強化」(REDD+)は、平成 19 年に開催された第 13 回気候変動枠組条約国会議 (COP13)において、次期枠組みの構築に向けた検討課題の一つとして位置づけられた。 我が国は、気候変動問題の解決に向け、海外での温室効果ガス排出削減に貢献できる優 れた技術や製品を多く持っている。しかし、現在これらの技術や製品の普及等を通じた途 上国での貢献を唯一制度的に後押しする「クリーン開発メカニズム(CDM)」は、我が国が 得意とする低炭素技術(省エネルギー技術、新エネルギー技術、高効率石炭火力等)に対 する適用が比較的少ない状況にある。また、難易度の高い手続を要することや審査プロセ スが複雑であること等から、中小規模の途上国にとっては活用が難しいものとなっており 我が国が低炭素技術・製品を通じて途上国において広く貢献していくことを後押しするに は不十分な状況にある。 そこで、日本国政府は、我が国が世界に誇る低炭素技術・製品の途上国への普及等を積 極的に推進して、世界規模での地球温暖化対策を進めていくため、CDM を補完する制度と して、「二国間クレジット制度(JCM)」の構築を行っている。JCM は、既に、アジアやア フリカ諸国との間で制度に関する二国間文書に署名し、そのうち数カ国との間で具体的な 運用を開始しており、JCM と我が国の低炭素技術の普及に期待が寄せられている。JCM の 署名国からの REDD+に対する関心も高く、JCM において REDD+分野に関するプロジェク トを行うことは、世界をリードする取組となることが期待されるところである。 インドネシアは、泥炭地及び LULUCF からの排出を含めると米国、中国に次ぐ世界第 3 位の温室効果ガス排出国であり、2005 年に約 20 億トンであった排出量が、2030 年には約 33 億トンにまで達すると言われている。一方で、泥炭地と LULUCF における排出削減ポテ ンシャルは 2030 年までに約 18 億トンで、全体の 75%超を占めると推定されている(DNPI, 2010)。事業者は、特にインドネシアにおける泥炭地を含む熱帯雨林減少・劣化による世界の温 室効果ガス排出量、地球温暖化及び気候変動に対する影響度が大きいことを鑑み、平成 22 年度から平成 25 年度まで、経済産業省「地球温暖化対策技術普及等対策推進事業」等を通 して、REDD+調査事業を進めてきた。 本調査は、インドネシアおける REDD+分野に関するプロジェクトの具体的協力可能性、 プロジェクトを実施した場合に適用可能な排出削減方法論の検討、プロジェクト実施に向 けたファイナンス面その他の環境整備の在り方等について調査することにより、REDD+分 野における我が国企業の貢献可能性を可視化することを目的とする。 平成 22 年度から平成 25 年度の調査を通して選定した REDD+プロジェクトを計画してい るサイト、並びに調査概要を下記に示す。 プロジェクトサイト
Katingan Peat Restoration and Conservation Project
所在地: インドネシア中部カリマンタン州
カティンガン及び東コタワリンギン地方 事業候補者: PT Rimba Makmur Utama
コンセッションの種類: ERC:Ecosystem Restoration Concession(生態系回復コンセッション)
面積: 203,570 ヘクタール1 同プロジェクトサイトの優位点 1. 広大なプロジェクトエリア(203,570ha) 2. バウンダリーが明確(Natural バウンダリー、および Legal バウンダリー) 3. コンセッション内に村は無し(バウンダリー周辺に 34 村が存在) 1 H23 年度事業報告書では 217,755 ヘクタールとしていたが、2012 年 5 月、生態系保全業許 可(Ecosystem Restoration Concession)の申請過程においてインドネシア林業省によってプロ ジェクトエリアの境界線が引かれ、正式に 203,570 ヘクタールと決定した。
平成 22~25 年度調査概要 平成 22 年度 平成 23 年度 平成 24 年度 平成 25 年度 1)現状分析 1)JCM のための方法 論構築 1)森林および泥炭地の 調査分類 1)JCM 方法論開発ガイ ドラインに基づく方 法論の改善 2)プロジェクト計画 の策定 2)社会セーフガード の実施 2)フルカーボンストッ ク量の検討・分析 2)同方法論を用いた削 減見込量、及び経済 効果に関する検討 3 ) プ ロ ジ ェク ト ス キ ー ム の 検 討 / 経済性分析 3)環境セーフガード の実施 3)排出係数の特定およ びネット GHG 削減 量の検討・分析 3)コミュニティ開発に 向けた既存経済活動 の分析に基づく開発 支援活動(社会セー フガード) 4)MRV 方法論の分 析・検討 4 ) ネ ス テッ ド ア プ ローチの検討 4)コミュニティ・マッ ピング(土地利用計 画の分析) 4)荒廃森林地の生態系 回復及び生物多様性 の向上に向けた計画 策 定 ( 環 境 セ ー フ ガード) 5)課題の抽出・対応 策の検討 5)事業性評価/投資 ス ト ラ ク チ ャ ー /法務・税務面の 検討 5)持続可能な農業体系 および土地利用方法 の検討 1.1.2. 本調査の必要性 インドネシアの熱帯泥炭地は、地球上の熱帯地域に分布する泥炭湿地の面積の半分以上 を占め、多量の炭素が蓄積している。1990 年代からこの地域の開発が急速に進み、それに 伴う地下水位の低下と乾燥化、さらには泥炭火災により、インドネシアの熱帯泥炭地は膨 大な CO2 の排出源となりつつある。この現状を踏まえ、インドネシア共和国は 2020 年まで サイト選定 方法論開発 の方向付け 方法論の 構築 GHG 排出削減 量試算 方法論の改善 セーフガードの 拡充
に 1990 年比で 26%(海外からの支援がある場合は最大 41%)の温室効果ガス削減目標を 打ち出している。2011 年には国家 GHG 削減企画(RAN-GRK)が大統領令として策定され、 2012 年末までに全土 33 州の削減計画(RAD-GRK)の策定が義務付けられ、このうち泥炭 からは削減枠の4割が期待されている。 途上国における森林減少・劣化対策(REDD+)の分野では、既に二国間イニシアティブ によって米国、欧州(ノルウェー、ドイツ等)、豪州等、多国間イニシアティブによって世 界銀行が南米(ブラジル、ペルー等)、アフリカ(コンゴ、ガーナ等)、アジア(インドネ シア、パプアニューギニア等)での REDD+実証プロジェクトを積極的に進めている。 これに付随する形で、民間レベルでも、REDD+実証プロジェクトの組成、経済的インセン ティブとしてのボランタリー市場における排出権クレジットの検討並びにクレジット化に 向けた取組みが行われており、欧州では CSR 目的で REDD+クレジットを利用する企業も一 部存在している。次期気候変動枠組みにおける REDD+の位置づけ、並びに当該事業からの 排出権クレジットの取扱い等は現在のところ不透明ではあるものの、各国政府及び民間事 業者は、次期枠組みにおける目標遵守(コンプライアンス)としての REDD+クレジットも 視野に入れて REDD+事業を推進していると思われる。 日本政府が推進する JCM において、インドネシアと 2013 年 8 月 26 日に合意締結に至っ ており、今後、大規模な温室効果ガス排出削減が見込める REDD+プロジェクトの実施に向 けた具体的な動きが期待される。 *インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画(RAN-GRK)を下記に示す。(表 1.1) 表 1.1 インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画(RAN-GRK) 分野 削減目標(Gton CO2e) 26% 41% 森林・泥炭地 0.672(88%) 1.039(87%) 農業 0.008(1%) 0.011(1%) エネルギー・運輸 0.036(5%) 0.056(5%) 工業 0.001(0%) 0.005(0%) 廃棄物 0.048(6%) 0.078(7%) 計 0.767(100%) 1.189(100%)
1.2. 本調査の目的
事業者は、平成 22 年度から平成 25 年度の調査結果を踏まえ、本事業において、以下項 目を含む貢献を達成及び可視化することを最終目標としており、当該目標を達成するため の手段を本調査事業で検証するものとする。 ・インドネシアに対する環境面での国際協力(森林保全、生物多様性保全、持続可能な 森林管理、炭素貯蔵の強化を通じた温室効果ガス削減、森林に依存する地域コミュニ ティの生活改善) ・日本が掲げる温室効果ガス削減目標の貢献 ・インドネシアが掲げる温室効果ガス削減目標への貢献 ・REDD+プロジェクトのビジネスモデル構築、知見の共有 ・国内民間投資の促進を通じた、オールジャパンとしてのREDD+分野での対欧州、 米国、豪州等へのキャッチアップ ・日本のREDD+戦略策定への貢献1.3. 調査内容
上記の背景、プロジェクトの必要性を踏まえ、本調査は、REDD+事業実現化に向けて、 以下の項目の調査・検討を実施する。 ①対象国の気候変動を巡る情勢と政策及び対象プロジェクトが対象とする市場、政策等の 現状分析 インドネシアにおける温室効果ガス排出削減に関する国家活動計画と関係機関における REDD+検討状況、国、州、プロジェクトの各レベルにおける REDD+に関する MRV/方法 論の検討・進捗状況、ドナー国による REDD+準備活動、民間企業による REDD+事業へ の投資、NAMA と REDD+の関連性に関するインドネシア国内政策等について情報のアッ プデートを行う。 ②対象プロジェクトの事業性評価、及びその実現に必要なファイナンス等投資環境整備に 関する検討と課題の抽出。 過去の調査事業の検討結果をレビューし、インドネシアでの最新の REDD+事業に関する 情報を反映し再検討及び課題の抽出を行う。具体的な活動内容は下記のとおりである。 REDD+事業の主要なステークホルダー間の利益分配
REDD+機関や REDD+事業として認められるためのプロセスや REDD+に関する規制
REDD+事業に関する法令面における要確認事項 現状と将来の REDD+プロジェクトに関する税制 ③方法論を用いた削減見込量、及び対象プロジェクトを通じて得られる経済効果に関する 検討 過年度で特定した方法論に基づき、GHG 削減見込量の算定及びその算定された GHG 削 減見込量に基づくクレジット収益を推計し、本事業における経済効果に関する検討を行 う。なお過年度においては、事業性評価のパラメータとなる、クレジット価格、利益分 配比率、法令・税制面に大きなアップデートが無かったため、年度毎の大きな変化は見 られなかったが、平成 26 年度(2014 年度)は、インドネシア・REDD+庁の主導による 同国制度整備の活動が本格化すると推測されるため、各パラメータの変化を着実に反映 させ、事業性評価を実施する。 ④泥炭地における火災予防の体制/システム構築 熱帯における泥炭地では、泥炭の自然分解による温室効果ガス排出量はほんの僅かであ り、一方で泥炭火災による排出量が極めて大きい。 インドネシアでは、周期的に訪れる異常乾季に伴って大規模森林火災が発生してきたが、 特に 1997~1998 年にかけてスマトラ、カリマンタンで、数百万 ha にのぼる森林が焼失し、 オランウータンなどへの影響も懸念されている。この大規模森林火災の要因としては、 エルニーニョ現象による異常乾季に加え、アブラヤシなどのプランテーションの造成や 産業造林のための火入れなど、人為的活動も原因ともいわれている。さらに、火災から 発生した煙霧(ヘイズ)がシンガポールやマレーシアなどの近隣諸国にまで及び、広範 囲で気管支炎など健康被害や道路交通障害、空港閉鎖などの煙害までも引き起こしてい る。また、泥炭火災により、コミュニティの生計活動基盤(主に農業)に多大なる損害 が生じる。泥炭火災は、地下部からも広がるため、一度点火すると、地下部を通り農村 部へと広がる可能性があるためである。 農作物への損害、火災スモッグによる健康被害、また、消火活動の為生計活動が行えな くなり、また、消火活動費用のために資金的にも重荷を背負う事になる。 このように、森林火災は莫大な温室効果ガス排出だけでなく、多くの問題を引き起こす 重要な問題である。
上記のような背景より、本事業の対象プロジェクトエリアにおいても、平成 24 年度の事 業性調査において課題として挙げた通り、泥炭火災を早急に感知するためのシステム構 築、泥炭火災の防止やコントロールが早急に必要であり、火災予防、火災発生時の早期 鎮火と延焼防止は REDD+プロジェクトを進める上で最も重要となる活動である。 本調査では、対象プロジェクトエリアにおける、コミュニティベースの統一化された火 災防止システムの作成とその実現可能性を調査する事を目的とし、主な活動内容は以下 とする。 1) 泥炭地における森林地帯と非森林地帯向けの、コミュニティベースの統一化 された火災防止システムの構築 2) ローカルコミュニティ参加型の火災防止チームの設立と能力向上 1)泥炭地における森林地帯と非森林地帯向けの、コミュニティベースの統一化された 火災防止システムの構築 ローカルコミュニティ-エキスパート間の協議や現地観測の実施 既存の火災防止に関する方法論をレビューし、本プロジェクト向けの方法論の コンセプトを開発、対象プロジェクトエリアの統一化された火災防止システムの ドラフトを作成 特定のエリア(例:主要な運河に近い非森林地帯、ゴム農園、火災の発生しやす い地域)を選択し、開発した方法論と対策を実証テストにて実施する 火災防止チームを構成し、選択されたエリアにおいて、統一化された火災防止 システムを実施する 実証テストによって発見された課題の把握と、統一化された火災防止システム のモニタリングプランの開発 2)ローカルコミュニティ参加型の火災防止チームの設立と能力向上 開発された火災防止システムに基づいた、火災防止チームに必要なキャパシティ ビルディングの評価 火災防止チームのトレーニング・キャパシティビルディングの実施
本調査の成果として、下記の成果物を作成する。
① コミュニティベースの森林火災システムの方法論
② コミュニティベースの統一化された火災防止システムのモニタリングプラン
③ 対象プロジェクトエリアにおける統一的な森林火災防止の実施に関するト
1.4. 調査体制
事業者が組成するコンソーシアムの調査実施体制は以下のとおりである。 関係事業者 実 施 項 目 ① ( 気 候 変 動 政 策 ・ 市 場 調 査 ) 実 施 項 目 ② ( 事 業 性 評 価 ・ フ ァ イ ナ ン ス 等 検 討 ) 実 施 項 目 ③ ( 削 減 見 込 量 ・ 経 済 効 果 分 析 ) 実 施 項 目 ④ ( 火 災 予 防 の 体 制 / シ ス テ ム 構 築 ) 丸紅株式会社 ◎ ◎ ◎ ○ 外注先①:PT.Moores Rowland Bali ○ ◎ 外注先②:Yayasana Puter Indonesia ○ 幹事法人 丸紅株式会社 【プロジェクト統括者】外注先① PT. Moores Rowland Bali 【現地調査統括者】
インドネシアにおいて、天然資源の管理 に関するソリューション提供を行 うコンサルティング会社。 外注先② Yayasana Puter Indonesia 【技術パートナー】
インドネシアにおいて、地方コミュニティの生 活環境や質の改善及び向上を目指 して活動を行う非政府組織。
1.5. 調査スケジュール
調査事業項目 2014 年 2015 年 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 ①対象国の気候変動を巡る情勢と政策及び 対象プロジェクトが対象とする市場、政策 等の現状分析 ②対象プロジェクトの事業性評価、及びそ の実現に必要なファイナンス等投資環境整 備に関する検討と課題の抽出 ③同方法論を用いた削減見込量、及び対象 プロジェクトを通じて得られる経済効果に 関する検討 ④泥炭地における火災予防の体制/システ ム構築 a.泥炭地における森林地帯と非森林地帯向 けの、コミュニティベースの統一化された 火災防止システムの構築 b.ローカルコミュニティ参加型の火災防止 チームの設立 c.ローカルコミュニティ参加型の火災防止 チームの能力向上 最終報告書作成 最終報告書提出第2章 対象国の気候変動を巡る情勢と政策及び対象プロジェクト
が対象とする市場、政策等の現状分析
2.1. 調査内容
インドネシアにおける温室効果ガス排出削減に関する国家活動計画と関係機関における REDD+検討状況、国、州、プロジェクトの各レベルにおける REDD+に関する MRV/方法論 の検討・進捗状況、ドナー国による REDD+準備活動、民間企業による REDD+事業への投 資、NAMA と REDD+の関連性に関するインドネシア国内政策等について情報のアップデー トを行う。2.2. 国際的な REDD+の動向
途上国における森林減少・劣化は世界の温室効果ガス排出量の 1~2 割を占める大規模排 出源であり、気候変動の緩和を進める上で森林減少・劣化の抑制は欠かすことのできない 要素であると認識されている。 しかしながら、現時点で国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で森林減少・劣化の抑 制を直接的に取り扱った方策は存在しておらず、森林分野については専ら先進国における 森林経営活動等(京都議定書第 3 条 3、4)や途上国における植林活動(CDM)が注目を浴 びてきた。 こうした中、2005 年の UNFCCC 第 11 回締約国会議(COP 11)において、パプアニュー ギニアとコスタリカを中心とする途上国が、途上国における森林減少・劣化の抑制にイン センティブを付与する方策について検討すべきと提案し、REDD+に関する国際交渉が始 まった。当初、パプアニューギニアとコスタリカの提案は先進国、途上国を問わず数多く の国に好意的に迎えられ、2006 年 10 月に作成された「スターン・レビュー(気候変動の経 済学)」や 2007 年 11 月に作成された「IPCC 第 4 次評価報告書」においても費用対効果の高 い気候変動緩和策として高く評価された。こうした流れを受けて、2007 年の COP 13 では REDD+が次期枠組みの下での緩和策として位置づけられ、2 年後に開催予定の COP 15 まで に REDD+の実施ルールについて国際的に合意することとなった。 しかし、議論が具体化すると次第に各国間の意見対立が表面化し、国際交渉は停滞する こととなった。その結果、COP 15 での国際合意は先送りとなり、翌 2010 年の COP 16 において基本的なアプローチが採択されるとともに、今後検討すべき技術的課題とその作業計 画が提示されることとなった。 国際交渉が停滞する一方で、森林減少・劣化問題に対する危機感、あるいは REDD+に対 する関心は各国・機関の間で根強く、UNFCCC の議論に先行する形でプロジェクトベース の REDD+事業が進むこととなった。これらの活動は UNFCCC と直接関係しないものの、 ホスト国との関係強化、実施体制の構築、具体的な方法論の作成等が前進することとなり、 UNFCCC の議論に大きな影響を及ぼすこととなった。
UNFCCC の下で国際合意に達したのは 2013 年の COP 19 である。COP 16 以降に特定され た主要な技術的・政策的課題に結論が出され、REDD+の実施枠組みが決定された。しかし、 ここで合意に至ったのは国・準国ベースを前提とする REDD+の基本的なフレームワークで あり、REDD+の実施当事者にとってより重要となる具体的な方法論については、UNFCCC の枠の内外を問わず継続的に議論されることとなった。すなわち、REDD+については UNFCCC の下で国際合意に至ったものの、具体的な方法論の作成はこれからの課題であり、 引き続き UNFCCC の枠外で進められているプロジェクトベースの知見や経験が非常に大き な意味を持つことになった。 (1)COP19 での決定事項につき、以下に示す。(表 2.1) 表 2.1 COP19 時点での決定事項 議題 COP19(SB39)時点 SBSTA 1. 国家森林モニタリングシステム 採択 2. 森林減少・劣化のドライバー 採択 3. セーフガード 採択 (時期/頻度) 4. MRV(測定・報告・検証) 採択 5. REL/EL(参照レベル) 採択 6. 非炭素便益 未 7. 非市場型アプローチ 未 SBSTA /SBI 8. REDD+実施の支援調整 採択 9. 結果に基づくファイナンス 採択
(2)COP19(SB39)の決定事項・概要 COP16 からの課題であった技術課題の指針(国家森林モニタリングシステム、MRV、 森林減少・劣化の原因への対処、セーフガードの情報提供の時期・頻度、森林参 照(排出)レベルの技術評価)、および「REDD+実施の支援調整」、「結果に基づく ファイナンス」を含む 7 つの決定文書が合意され、REDD+実施に係る基本的な枠 組みが決定。 他方、ペンディングとなる議題もあり、今後、「セーフガード」、「非炭素便益」、「非 市場型アプローチ」等については、検討が続く見込み。 COP19 において合意に至ったのは、あくまで「UNFCCC の下での基本的なフレー ムワーク」であり、事業者にとって重要である「方法論」の細則や UNFCCC 枠外 の取組みとの関係性・互換性等については、UNFCCC の枠内・枠外を問わず、継 続的に議論が行われる見込み。 (3)COP20 での決定事項 COP19(ワルシャワ)に続く、2014 年の COP20(リマ)では、REDD+に関する成果とし ては、COP19 で合意した「REDD+のためのワルシャワ枠組み」に基づく情報を掲載するウェ ブサイト「リマ REDD+情報ハブ」の開設に留まっており、COP21 に向けた、「セーフガー ド」、「非市場型アプローチ」、「資金メカニズム」等の議論継続が望まれる。 リマ REDD+情報ハブの概要を以下に示す。(表 2.2) 表 2.2 リマ REDD+情報ハブ 「リマ REDD+情報ハブ」に入れられる情報 MRV レポートによる各期間の実績(CO2 トン)、評価レポート 森林参照排出レベルまたは森林参照レベルおよび技術アセスメントチームによる報告書 セーフガードがどのように対処・配慮されているかに関する情報の要約 国家 REDD+戦略または国家 REDD+行動計画へのリンク 国家森林モニタリングに関する情報 【期待される効果】 各国の REDD+の取組みの進捗が把握でき、透明性が向上。 各国の取組みに対する支援や結果へのインセンティブ付与の公平な取扱いが期待。 課題の特定が可能となり、効果的な支援や、リスクへの対処・低減が期待。
2.3. インドネシアにおける REDD+検討状況
2.3.1. インドネシア国家 REDD+戦略 現在、インドネシアにおいて明確に打ち出されている REDD+に関する戦略は、2012 年 6 月に策定された、インドネシア国家 REDD+戦略がある。その概要を以下(表 2.2)に示す。 表 2.3 インドネシア国家 REDD+戦略の概要 ビジョン:天然林と泥炭地の持続的経営・国民の繁栄 REDD+戦略 5 本の柱 ①組織と手続き ・REDD+庁 ・資金メカニズム ・MRV 庁 ②法令・規制の枠組み ・土地権限と土地利用計画 ・法執行の改善と汚職防止 ・森林・泥炭地のデータ、許認可システムの改善 ・民間セクターに対するインセンティブ ③戦略プログラム 【保全と復旧】: ・保護エリア機能の確立 ・森林・泥炭地の転用抑制 ・森林の回復と泥炭地の復旧 【持続的農業、林業、鉱業】 ・農地・プランテーションの生産性向上 ・森林の持続的経営 ・生産性の高い土地の露天掘り鉱山への転用抑制 ・森林・泥炭地の火災の防止と抑制 【ランドスケープの持続的経営】 ・付加価値の高い下流産業の育成 ・持続的な代替生計向上の拡大 ・多目的ランドスケープ管理 業務パラダイムと 職場文化の変革 ・森林・土地利用にかかるガバナンス ・持続性規範に基づく地域経済の活性化 ・国キャンペーン「インドネシアの森林を救え」多様な関係者の 参画 ・多様な関係者(国、地方政府、民間、NGO、先住民、地 域住民等)の参画推進 ・社会・環境セーフガードの確立 ・公平な利益配分の確保 2.3.2. 国、州、プロジェクトの各レベルにおける REDD+に関する MRV/方法論の検 討・進捗状況 インドネシアにおける、国家レベル、州レベル、プロジェクトレベルの各レベルにおけ る REDD+に関する MRV/方法論の検討および REDD+戦略を以下(表 2.4)に示す。 表 2.4 各レベルにおける REDD+方法論検討および REDD+戦略 <レベル/分野> <主要な戦略の内容> 国家レベル(NATIONAL LEVEL) 1、森林減少・劣化の進行への 対処 ・保護地域:保護地域の一層効果的な保全・管理の開発 ・森林生産: 1)一層効果的な森林生産の効果的な管理の開発、 2)パルプ・製紙産業の必要なものを供給する森林収穫や管 理の選択肢の検討 ・パーム油:パーム油産業の必要なものを供給する選択肢 の検討 ・泥炭地:泥炭地を回復するための戦略の検証 2、REDD 規制 ・REDD を実施するための技術的・制度的なガイダンスの 開発 ・国家 REDD 委員会/REDD 国家ワーキンググループの 創設
3、方法論 ・国家レベルの参照排出レベル(REL)の創設 ・国家レベルの MRV システムの創設 4、制度 ・国家登録簿の創設 ・REDD を実施するための制度的な環境整備 ・インセンティブ/報酬分配メカニズムの設置 ・ステークホルダーによるコミュニケーション/調整/協議 ・能力構築および制度の強化 州レベル(PROVINCIAL LEVEL) 1、方法論 ・州レベルの REL の創設(国家レベルの REL との整合性を はかる) ・州レベルの MRV システムの創設 2、制度 ・ステークホルダーによるコミュニケーション/調整/協議 ・能力構築および制度の強化 3、実証活動 ・28 州(内、4 州で実施中:東カリマンタン、中央カリマン タン、南スマトラ、東ジャバ)において異なる生物/社会/ 地理的条件を示す実証活動を強化 ・REDD 活動を通じた森林管理に従事する地方アダット※ のあるコミュニティをふくめた地方コミュニティの能 力強化 県レべル(DISTRICT LEVEL)
1、方法論 ・地方レベルの REL の創設(国家レベルの REL との整合性 を図る) ・地方レベルの MRV システムの創設 2、制度 ・ステークホルダーによるコミュニケーション/調整/協議 ・能力構築および制度の強化 3、実証活動 ・地方レベルもしくは管理単位で実証活動を実施(可能な 限り地方レベルで束ねる) ・REDD 活動を通じた森林管理に従事する地方アダットの あるコミュニティをふくめた地方コミュニティの能力 強化 全レベル(ALL LEVELS) 関連分析 ・代替的な土地利用の費用分析 ・REDD の環境・社会・経済的な影響分析 ・REDD の潜在的な追加的利益の評価 ・持続可能な開発に対する REDD の取引とリスクの評価 ・REDD 戦略のリスク評価
2.4. インドネシアにおける温室効果ガス排出削減に関する国家活動計画
インドネシアにおける主要 REDD+政策を以下(表 2.5)に示す。表 2.5 インドネシア主要 REDD+政策
2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 COP13 バリ
REDD+Readiness 戦略の策定(林業省) INCAS(Indonesia Carbon Accounting System)
の開発 REDD+関係規則の制定(林業大臣令) G20 ユドヨノ大統領による 2020 年自主 削減目標 ノルウェー10 億ドル REDD+支援の合意 REDD+タスクフォース設置 RAN-GRK(インドネシア温室効果ガス 削減国家行動計画)策定 国家 REDD+戦略策定 REDD+庁の設立 2.4.1. REDD+関連規則の制定(林業大臣令) インドネシアの REDD+関連法令の概要として、2009 年 5 月 1 日に、林業大臣は、林業大 臣令 P.30/2009(森林減少・劣化からの排出削減の為の手順)に署名。P.30 は REDD プロジェ クト実施、炭素クレジットの発行・取引に関する世界で最初の国家法体系である。 続いて、2009 年 5 月 29 日、林業大臣は、林業大臣令 P.36/2009(生産林と保護林における 炭素隔離と固定の為の利用免許の承認手順)に署名。P.36 は、一般的にボランタリー市場に 基づく REDD プロジェクトに適用されると捉えられる。 インドネシアにおける REDD+プロジェクトに関する法的フレームワーク構築の動きは以 降も継続されるものの、後述の REDD+庁設立およびその機能開始にて、大きな進展を待っ ているとの状況。 ちなみに、P.30 と P.36 の間の関連性に関し明確な見解が存在しない。P.36 は、森林減少・ 劣化からの排出削減による炭素固定を規定(所謂、REDD+ではなく、REDD を規定してい る)しており、A/R CDM プロジェクトを通じた炭素隔離は、P.36 では規定されない形になっ ている。また、P.36 は主としてボランタリーベースの REDD+プロジェクトの為の法規と捉
えられている。
P.30 と P.36 は共に REDD+プロジェクトを行うための適格性をもつ森林地域を定めてい る。そのうちいくつかは民間企業が保有できる森林コンセッションであり、例えば木材林 産物利用業許可(Wood Forest Product Utilization Concessions, 現地略称:IUPHHK)、及び、 生態系保全業許可(Ecosystem Restoration Concession、現地略称:IUPHHK-RE)等がこれに 該当する。これらのコンセッションを保有するものは関連法令に従い REDD+プロジェクト を開始する事ができる。
また、P.30 と P.36 は REDD+プロジェクト実施するにあたり、対象森林地域において承 認済の民間が保有する森林コンセッションが存在しない場合も想定している。例えば、中 央政府がある生産林地域に森林管理ユニット(FMU:Forest Management Unit)を設置する 場合、その森林管理ユニットの長は、P.30 と P.36 に基づき REDD プロジェクトを実施する 事ができる。
P.30 は将来の UNFCCC 下国際的な REDD+フレームワークとインドネシア REDD+枠組 みがリンクする事を想定して作られている。P.30 は、国際枠組みが成立するまでは、以下の REDD+活動を認めている。 REDD+実証プロジェクト キャパシティビルディング及び技術移転 ボランタリー市場におけるボランタリークレジットの売買 P.30 は、明確な REDD+プロジェクト実施の為の枠組みを定めているが、前述の P.30 と P.36 の重複に加えて、以下の不確定要素が挙げられる。 REDD+プロジェクト実施の仕組みが明確に定義されていない。 収益分配の比率が明確に定義されていない。 これら不確定要素については、後述する REDD+庁の本格活動により、明確化されることが 期待される。
2.4.2. REDD+タスクフォース設置、REDD+庁
ノルウェーによる 10 億ドル REDD+支援合意に基づき、UKP4(Presidential Working Unit for Supervision and Management of Development/開発監査規制・大統領執務室)のクントロ長官 を ヘッドとして、2010 年 9 月 20 日付けで、REDD+タスクフォースが設置される。目的は、 REDD+国家戦略、MRV、Finance のフレームワーク組成を推進すること。 REDD+タスクフォースの第一次活動期間として、「2010 年 9 月~2011 年 6 月」。その後、 「REDD+庁」設立の為のタスクフォース(第二次活動期間)として、「2011 年 9 月~2012 年 12 月」にて活動。2013 年 8 月時点で、REDD+タスクフォース次官であった、Heru Prasetyo 氏を REDD+庁長官に据え、REDD+庁の設置に至っている。 REDD+タスクフォース(第一次)メンバー Kuntoro Mangkusubroto (Head) UKP4(UKP4 長官)
Heru Prasetyo(Secretary) UKP4(UKP4 次官)
Anny Ratnawati Finance(財務省次官)
Lukita Dinarsyah Tuwo Bappenas(Bappenas 次官)
Joyo Winoto Land Agency(国土庁長官)
Hadi Daryanto Forestry(林業省官房長)
Masnellyarti Hilman Environment(環境省次官) M.Iman Santoso Cabinet Secretary (内閣府)
Agus Purnomo DNPI(DNPI 事務局長)
Nirarta Samadhi UKP4
関連機関との役割
REDD+タスクフォース: REDD+に関する統括、REDD+機関や MRV 組織体制の設計 Bappenas(National Planning and Development Agency): REDD+国家戦略策定、気候変
動アクションプランの策定、NAMA、国家開発計画との関連事項
林業省: 森林資源モニタリング(MRV システム開発)、FMU(Forest Management Unit)、 Demonstration Activity、コンセッションの適切な運用
農業省: オイルパーム農園等の Deforestation Driver への対応
DNPI(NCCC:National Climate Change Council): 気候変動全般に関する調整、REDD+ に関する調整、MRV
REDD+庁の概要/方向性については以下の通り。 REDD+庁 法律に基づく大統領直属の閣僚級期間を想定 国レベルでの REDD+政策を統括すると共に、各省庁、地方政府等の関連機関を調 整 MRV 機関、資金メカニズムの総合調整 MRV 機関 UNFCCC および IPCC ガイドラインに即した MRV 確率の為の政策、基準の策定 REDD+に係る GHG インベントリの取り纏め REDD+活動による排出削減の認証情報を資金メカニズムに提供 資金メカニズム 国予算から独立した法律に基づく信託基金として設立 排出削減に繋がる REDD+諸活動の実施支援 適切な利益配分、セーフガードの確立 当初はノルウェー資金を核に無償資金により運営、将来的には投資資金の受入れ を視野に
REDD+庁については、2014 年 2 月調査時点では、長官のポストに Heru Prasetyo 氏が決まっ ている以外、その他メンバーは選定中との状況であったが、2014 年 10 月に発足したジョコ・ ウィドド政権による省庁再編の折、2015 年 1 月 28 日発表の追加の省庁再編の結果、JCM や UNFCCC のフォーカルポイントでもある DNPI(National Council on Climate Change –
Indoneshia)、および REDD+庁が解体され、環境・林業省の一部局に組み入れられるとのこ
ととなった。前述のインドネシア国家 REDD+戦略、林業大臣令、および REDD+の主管省 庁については、省庁再編後の今後の動向次第との状況にある。
2.4.3. RAN-GRK(インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画)
G20(2010 年)にてユドヨノ大統領が発表した温室効果ガス自主的削減目標を達成すべく、
2012 年に RAN-GRK が BAPPENAS(国家開発計画庁:Ministry of National Development Planning / National Development Planning Agency )により策定される。
分野別目標計画は以下(表 2.5)の通りであるが、2014 年 2 月調査時点、まだ州レベル、 プロジェクトレベル等、詳細/個別/での削減目標は策定中との段階。2013 年 9 月に以下ガイ ドラインが策定・公表されるに至っている。
General Guidline for Monitoring, Evaluation and Reporting (MER) of Implementation of RAN-GRK and RAD-GRK
Technical Guidline for Monitoring Evaluation and Reporting (MER ) of RAD-GRK Implementation
※ RAN-GRK: National GHG Emission Reduction Action Plan ※ RAD-GRK: Regional GHG Emission Reduction Action Plan
表 2.6 インドネシア温室効果ガス削減国家行動計画(RAN-GRK) 分野 削減目標(Gton CO2e) 26% 41% 森林・泥炭地 0.672(88%) 1.039(87%) 農業 0.008(1%) 0.011(1%) エネルギー・運輸 0.036(5%) 0.056(5%) 工業 0.001(0%) 0.005(0%) 廃棄物 0.048(6%) 0.078(7%) 計 0.767(100%) 1.189(100%)
2.5. ドナー国による REDD+準備活動
2.5.1. 主要先進国による REDD+基金への出資状況 国際基金として、先進国から主要な基金への現在の資金拠出額(合計)は約 12.5 億米ド ルと推定される。うち、ノルウェー(4.6 億米ドル)、英国(2.9 億米ドル)、ドイツ(1.2 億 米ドル)の拠出規模が突出。我が国は 77 百万米ドル。 国際基金への出資額は着実に増加傾向にあり、また、ノルウェー・インドネシア間、ノ ルウェー・ブラジル間等、二国間での取組みも促進されている。 基盤整備や実証活動等に対する資金支援
世界銀行・FCPF(Forest Carbon Partnership Facility:森林炭素パートナーシップファ シリティ)-準備基金
(1,400 万 US ドル、2008 年)
世界銀行・FIP(Forest Investment Program:森林投資プログラム) (6,000 万 US ドル、2010 年)
アフリカ開発銀行・CBFF(Congo Basin Forest Fund:コンゴ盆地森林基金) UN-REDD (320 万 US ドル、2011 年) クレジット取引制度の構築 世界銀行・FCPF-炭素基金 ‒ コスタリカからの炭素クレジット購入について本格交渉開始。 米国カリフォルニア州排出量取引制度
‒ 規則コード(Code of Regulation)が REDD+クレジットの活用可能性に言及(※
現時点では取扱対象外)。 主要先進国による REDD+基金への出資状況、および、国際基金の位置付けにつき、以下に 纏める。(表 2.6)(表 2.7) 表 2.7 主要先進国による REDD+基金への出資状況 国名 FCPF Readiness Fund FCPF Carbon Fund Bio Carbon Fund UN-RE DD Program me Forest Investm ent Program Congo Basin Forest Fund Amazon Fund 合計 (百万 USD) 日本 14.0 3.1 65.0 82.1 米国 9.0 14.0 25.0 168.0 216.0 カナダ 41.4 5.0 21.0 67.4 豪州 23.9 18.4 35.0 77.3 ノルウェー 30.2 61.0 135.0 141.2 146.0 82.5 1000,0 1595.9 ドイツ 38.9 70.1 27.0 136.0 オランダ 20.3 20.3 フランス 10.3 5.0 15.3
フィンランド 14.7 14.7 英国 5.8 22.9 120.0 159.0 82.5 390.2 スペイン 7.0 4.4 13.0 24.4 デンマーク 5.8 8.1 10.0 23.9 イタリア 5.0 5.0 スウェーデン 15.0 15.0 ルクセンブルク 2.7 2.7 スイス 8.2 10.8 19.0
出典:Climate Fund Update Web-site
表 2.8 国際基金の位置付け 基金名 概要 フェーズ1 能力開発や REDD プラス 戦略作成の実 施 フェーズ2 REDD プラス戦 略に基づく実証 活動等の実施 フェーズ3 Result based に 基づき排出削減 量に応じてクレ ジットを発行 世界銀行FCPF Readiness Fund 世界銀行が運営し ている基金であり、 Readiness への支援 を行っている。
○
世界銀行FCPF Carbon Fund 世界銀行が運営し ている基金であり、 2014 年から本格運 用が開始される見 込みである。○
世界銀行 森林 投資プログラム (FIP) 世界銀行が運営し ている基金であり、 REDD+の Demonstration 活動 を進めている。○
UN-REDD FAO、UNEP、及び UNDP により取組 であり、Readiness○
○
を中心に支援を 行っている。 Amazon Fund アマゾン地域を対 象にした多国間基 金であり、ノル ウェーの拠出が特 出している。
○
○
○
コンゴ盆地森林 基金(CBFF) コンゴ盆地周辺国 を支援するための 多国間基金であり、 Readiness を中心に 支援を行っている。○
○
2.5.2. インドネシアへの出資および取組状況 途上国における REDD+実施に向けては、二国間イニシアティブによって米国、欧州(ノル ウェー、ドイツ等)、オーストラリア等、多国間イニシアティブによって世界銀行が南米(ブ ラジル、ペルー等)、アフリカ(コンゴ、ガーナ等)、アジア(インドネシア、パプアニューギ ニア等)での REDD+実証プロジェクトを進めている。 主だったインドネシアとの二国間での出資/取組み状況を以下に示す。 日本―インドネシア JICA・REDD+プロジェクト( IJ-REDD+:Indonesia-Japan Project for Development of REDD+ Implementation Mechanism )が 2013 年 6 月より、3 ヵ年計画にて実施中。 西カリマンタン州にてパイロット活動、中央カリマンタン州にて州レベルキャパ ビル活動を実施予定。 経済産業省・環境省の F/S 調査事業。JCM の下での REDD+実施を念頭に、2009 年度より 2013 年度までに、計 8 プロジェクトの F/S を実施。 オーストラリア–インドネシア 中央カリマンタン州の泥炭湿地を含めた地域での REDD プラスを実施中(30 百万 AUD )。
スマトラ島ジャンビ州で鉱質砂土(mineral sands)における REDD プラスを実施中 (30 百万 AUD)。
その他、インドネシアにおける森林分野の政策策定を支援する取組である。とく に、森林資源情報システム及び森林炭素計上システムの開発を支援中(10 百万 AUD )。 ノルウェー–インドネシア インドネシアでの REDD プラス実施に向けてノルウェーから 10 億米ドルが支援中。 米国・インドネシア
DNPI の組織下、米国支援による ICCC(Indonesia Climate Change Center)の設立。 米国カリフォルニア州 GCF(Governors Climate and Forest Task Force)にみられる、
REDD コンプライアンススキーム組成の動き。(ブラジル5州、インドネシア5州、 メキシコ2州、ナイジェリア1州と取組)準国家レベルのアカウンティングの下 での個別プロジェクトの”Nesting”検討、
2.6. 民間企業による REDD+事業への投資
途上国における REDD+プロジェクトを通じた民間投資を推進するスキームにおいては、 以下の点が重要である。 ① ボランタリーとコンプライアンス ② 非永続性とリーケージへの対応 現在、日尼両政府で進める JCM 以外の制度において、REDD+プロジェクト実施に関し具 体的な議論が進んでいるのは、VCS(Verified Carbon Standard)、及び、米国の GCF(The Governors Climate and Forest Task Force)が挙げられる。VCS は、所謂ボランタリースキームであり、VCS の下での REDD+プロジェクトから創出 される排出権は、目標達成に使用する事ができない。従い、主な買い手は CSR(Corporate Social Responsibility)目的の企業等に限られる為、REDD+実施の為の永続的な経済的インセ ンティブ創出は困難である。VCS は、REDD+に関して方法論を提供している為、現在世界 で多くのパイロットプロジェクトが VCS の REDD+方法論を参考に開発されている。しか しながら、目標達成に使用できないボランタリースキームであることから、VCS ベースの REDD+プロジェクトでは排出権に対する需要が限定的であり、安定的なバイヤーが存在せ ず、プロジェクト開発、運営が進んでいないのが現状である。 他方、米国の GCF は、カリフォルニア州の排出権取引制度に基づくコンプライアンスス
キームで、ブラジル、インドネシア、メキシコ、ナイジェリアの各州における REDD+を通 じた排出権をカリフォルニア州の制度における目標達成に使用する事を想定している。 2012 年 1 月に施行し、2013 年から第 1 遵守期間が始まった同制度では、目標達成に一定 割合の排出権を使用する事を認めており、2020 年までに 2 億トンを超える排出権需要が発 生するとされていたが、現在は供給過剰となる見込みにより、REDD+クレジットの使用は まだ認められていない状況である。、 日尼両政府が推進する JCM は、ポスト京都における国内削減目標の達成に使用すること を想定しており、コンプライアンススキームに該当する。コンプライアンススキームに基 づく、民間企業による REDD+事業への投資呼び込みにおいて、JCM の下での REDD+早期 実施が期待される。
第3章 対象プロジェクトの事業性評価及びその実現に必要なファイ
ナンス等投資環境整備に関する検討と課題の抽出
3.1. 調査内容
過去の調査事業の検討結果をレビューし、インドネシアでの最新の REDD+事業に関する 情報を反映し再検討及び課題の抽出を行う。具体的な活動内容は下記のとおりである。 REDD+事業の主要なステークホルダー間の利益分配 REDD+事業として認められるためのプロセスや REDD+に関する規制 REDD+事業に関する法令面における要確認事項 現状と将来の REDD+プロジェクトに関する税制3.2. インドネシアでの REDD+における投資環境整備に関する検討と課題の抽出
3.2.1. 法令面の検討 REDD+プロジェクトを長期的に実施するにあたり、インドネシアの森林管理に関する適 切な理解は不可欠である。特に、森林管理に関しインドネシアにおける 3 つの行政レベル (中央政府、州政府、地方政府)のうち、どのレベルが森林コンセッション(Forestry-based Concession)の発行権限をもつか、どの森林区分(Forest Classification)において REDD+プ ロジェクトが実施可能か、REDD+プロジェクト実施の為に必要な許認可(Forestry License )は何かを正しく理解しなくてはならない。また、REDD+に対する外国企業による投資が 可能か、という点も大変重要である。 現在、既存の尼国 REDD+関連法例(林業大臣令 P.36/2009、及び林業大臣令 P.30/2009) に基づき、平成 22 年度調査事業にて定めたスキーム 2A を前提に組成を進めている対象プ ロジェクトにおいて、2.4.2.にて記述の 2014 年 10 月発足のジョコ・ウィドド新政権による 省庁再編後の動向を注視する必要がある。 3.2.2. REDD+プロジェクト実施に向けたプロセス 1)REDD+プロジェクト申請者林業大臣令 P.30 では、インドネシア当事者と海外当事者の両方が REDD+プロジェクト にかかるプロジェクト申請者になる事が求められている。ここでインドネシア主体につい ては、以下の通りとなる。 ① 関連する森林コンセッション保有者(但し、コンセッションが REDD の適格性を有 している前提) ② 対象地域が森林コンセッションに基づくものではない場合、プロジェクト申請者は P.30 に定められた特定地域の主体者となる(例:対象地域が保全林の場合、インドネ シア側当事者は、保全森林地域を管轄する中央政府の技術ユニット、国立公園が対 象の場合は、国立公園の理事会の長が対象となる) 海外当事者については、政府、民間企業、個人、国際機関、慈善事業団体を対象として おり、P.30 にはこれらの当事者は REDD プロジェクトへ資金提供を行うこととされている 。このようにして、P.30 は REDD+プロジェクト実施に係る資金が国内からではなく、海 外から提供されるものである事を明確に認識している。 2)REDD+プロジェクトの承認と実施 林業大臣令 P.30 では、REDD+プロジェクトの承認にあたり、REDD+実施計画を含む REDD+プロジェクト提案書をインドネシア林業省に提出する事を要求している。林業省 は提案書を REDD+委員会(REDD+ Commission、現時点では設立されていない。以後、 REDD+庁により設置される見込み)の審査に提出するものとされており、もし大臣が承認 した場合、申請者は REDD+実施承認を受ける事になる。REDD+プロジェクトはこの承 認を受けて 90 日以内に実施計画に基づき開始されることとなっている。なお、JCM の下で の REDD+実施にあたっては、今後の二国間合同委員会での協議次第であるが、既存の尼国 REDD+関連法例にも沿う形で定められるものであると推測される。 P.30 に基づく REDD+プロジェクトの期間は当初 30 年間とし、その後延長が認められる とされている(取扱いは不明)。一方で、P.36 ではプロジェクト期間は最大 25 年とされて おり、別途将来見込まれる林業大臣令により期間の延長が可能とされている 。 3.2.3. プロジェクト申請者の権利と義務および主要ステークホルダー間の利益配分 林業大臣令 P.30 は REDD+プロジェクト申請者の権利を規定している。
① インドネシア側主体は、そのカウンターパートである海外主体より、REDD+プロジェ クトにおいて達成された温室効果ガス削減に関する支払いを受ける事ができる。 ② 海外主体は、REDD+クレジットを温室効果ガス削減目標の達成に使用する事ができる。 ③ REDD+プロジェクト申請者は(明確な記載はないがおそらく、インドネシア側、海外 側双方について)2013 年以降の、先進国が温室効果ガス削減を行うための、REDD+を 含む国際的な炭素クレジット取引枠組みにおいて、REDD+クレジットの取引を行う事 ができる。 P.30 は、先進国が温室効果ガスの削減義務を負う、ポスト京都における国際的な法的枠組 みとその中で REDD+クレジットが削減目標達成手段として適格性を持つ事を想定してい るが、これについては、今後の気候変動に係る国際交渉の動向、および、JCM における二 国間交渉の動向に依存するものである。 主要ステークホルダー間における利益配分については、P.30 にて、インドネシア政府が REDD+プロジェクトに基づく利益分配を受ける事を想定している。利益分配の計算方法、 徴収方法は今後の法的決定に基づくものとされているが、P.30 のドラフト作成段階の議論で は、REDD+プロジェクトが創出する REDD+クレジットの 30%がインドネシア政府が受け 取ること、とされていたが、実際署名された P.30 ではその部分は削除されている。
他方、P.36 では、REDD+クレジット(ここでは、VER:Voluntary Emission Reduction と されている)は、「プロジェクト開発者(Project Developer)」(REDD+クレジットがインド ネシア側の民間のコンセッション保有者に帰属する事が示唆されている)が、バイヤーに 対し、林業大臣が承認する国内又は海外の排出権取引所(Carbon Stock Exchange)を通じて 販売する事が出来るとされている。この「林業大臣の承認権が含まれている事」は、プロ ジェクト開発者が REDD+クレジットを販売するにあたり、今後の規制に因る、不確定要素 と成り得る部分である。 P.36 は、REDD+クレジットの収益分配に関し、政府、コミュニティ、プロジェクト開発 者の三者による分配比率を定めている。以下(表 3.1)は、P.36 における REDD+プロジェ クトが実施される森林のタイプ毎の収益分配を示したものである。
表 3.1 林業大臣令 P.36 が定める REDD+クレジット収益配分比率
許認可保有者/開発者 分配比率
政府 コミュニティ 開発者
Timber Concession 20% 20% 60%
Ecosystem Restoration Concession 20% 20% 60%
Community Plantation Forest 20% 50% 30%
Community Forest 10% 70% 20%
Social Forest 20% 50% 30%
Adat Forest 10% 70% 20%
Village Forest 20% 50% 30%
Forestry Management Unit 30% 20% 50%
Special Forest 50% 20% 30% Protected Forest 50% 20% 30% 3.2.4. REDD+に係る税務/会計上の取扱いについて 2015 年 3 月時点、インドネシアにおいて REDD+事業に関する特定の税制は存在しない (但し、林業大臣令 P.36/2009 には、REDD+クレジットの収益分配の規定が存在する)。従 い、REDD+事業にかかる税務上の取扱いは、現行の一般的な税法上の取扱いに従うものと 考えられる。
現在の所得税法(General Income Tax Law(“ITL”)- Law No.36 /2008)及び付加価値税法 (Value Added Tax (“VAT”) Law-Law No. 42/2009)、また付随する実施規則は REDD+事業 に関し取り扱いを定めていない。特に、REDD+事業から創出される VER(Verified Emission
Reduction)についても税制上の取扱いを明確に定めたものは存在しないのが現状と言える。 前述の通り、林業大臣令 P.36/2009 は、REDD+クレジットの収益配分について規定してい るが、いくつか問題点が存在する。 プロジェクト開発者が得られる分配額がネットか、グロスか。 インドネシア財務省が、林業大臣令 P.36/2009 における収益分配の規定に対し、林業省 はそもそも本件を行う権限がないと指摘し、本規定はペンディングとなっている。 インドネシア財務省は、インドネシア林業省と本規定に関する議論を実施しているもの
の、現時点では明確な方向性は出ていない模様である。この点についても、前述の 2014 年 10 月発足のジョコ・ウィドド新政権による省庁再編後の動向を注視する必要がある。 REDD+に関する優遇税制の可能性については、インドネシア政府は、外国投資の促進を 目的として特定の産業若しくは地域に対し、税制優遇制度を実施(例;森林プランテーショ ン利用であれば、GR1/2007 及び GR62/2008 に基づき、加速度償却や配当厳選税率の低下、 欠損金の 10 年間繰り越し等)している。しかしながら、現状、REDD+プロジェクトに認め られる税制優遇措置は存在しない。また、通常このような優遇措置が認められる対象は、 VAT 課税可能な商品を生産する企業体が対象となっており、REDD+プロジェクトはこの分 類には入らないものと考えられている。本調査事業にて行った、インドネシア財務省の財 務政策室へのヒアリングの中では、REDD+プロジェクト特定の税制優遇措置は検討中との 事であったが、今後本点の進展につき注視する必要がある。
3.3. 対象プロジェクトの事業性評価およびその実現に向けた課題の抽出
日本国内の民間事業者が、インドネシア共和国内で REDD+事業に投資および実施する為 のスキームについては、平成 22 年度調査事業において、既存の尼国 REDD+関連法例(林 業大臣令 P.36/2009、及び林業大臣令 P.30/2009)に基づき、3つのオプションを立案し、各 スキームにおける、メリット・デメリット、潜在リスクの分析、および、事業性評価を行っ ている。 インドネシア林業省、現地法律事務所、インドネシアで REDD+事業に深く関わっている 民間企業等と協議の結果、以下の理由からインドネシア側現地パートナーとの「協業」に 基づくビジネスモデル(事業投資スキーム 2A)を前提に、現在までプロジェクト組成を進 めてきた。 インドネシアの既存 REDD+及びその他関連法令によると、REDD+実施の為に必 要な事業免許、所謂コンセッションは外国企業の保有を認めない可能性が高い。 林業大臣令 P.36/2009 は、REDD+事業の組成をインドネシア側企業と外国企業の パートナーシップに基づくもの、と想定。 インドネシアにおける REDD+を実施する為のプロジェクトサイトの早期確保。 2015 年 3 月時点において、現地協業パートナーPT.RMU 社が ERC コンセッション取得に 至っており、JCM を念頭に、早期 REDD+プロジェクト実施に向け、具体的協議を重ねてい る。早期 REDD+実施に向けた今後の課題を以下に示す。 JCM-REDD+制度構築 REDD+分野ガイドラインおよび方法論の策定・採択 尼国側 REDD+法令制度/規制の制定 日尼間における JCM-REDD+協議機会の増進。 尼国現地でのセミナー・ワークショップ実施による、ガイドライン、方法論採 択に向けた技術的意見交換の機会を増進。 日尼両国「2020 年削減目標達成」に向けて 2020 年削減目標への貢献、および、2020 年以降・新枠組みにおける意欲的目 標に貢献しうるREDD+プロジェクトの早期実施。