第 3 章 対象プロジェクトの事業性評価及びその実現に必要なファイナンス等投資環境整備に
3.2. インドネシアでの REDD+における投資環境整備に関する検討と課題の抽出
3.2.1. 法令面の検討
REDD+プロジェクトを長期的に実施するにあたり、インドネシアの森林管理に関する適 切な理解は不可欠である。特に、森林管理に関しインドネシアにおける 3 つの行政レベル
(中央政府、州政府、地方政府)のうち、どのレベルが森林コンセッション(Forestry-based
Concession)の発行権限をもつか、どの森林区分(Forest Classification)においてREDD+プ
ロジェクトが実施可能か、REDD+プロジェクト実施の為に必要な許認可(Forestry License
)は何かを正しく理解しなくてはならない。また、REDD+に対する外国企業による投資が 可能か、という点も大変重要である。
現在、既存の尼国REDD+関連法例(林業大臣令P.36/2009、及び林業大臣令P.30/2009)
に基づき、平成22年度調査事業にて定めたスキーム2Aを前提に組成を進めている対象プ ロジェクトにおいて、2.4.2.にて記述の2014年10月発足のジョコ・ウィドド新政権による 省庁再編後の動向を注視する必要がある。
3.2.2. REDD+プロジェクト実施に向けたプロセス
1)REDD+プロジェクト申請者
林業大臣令 P.30では、インドネシア当事者と海外当事者の両方が REDD+プロジェクト にかかるプロジェクト申請者になる事が求められている。ここでインドネシア主体につい ては、以下の通りとなる。
① 関連する森林コンセッション保有者(但し、コンセッションが REDD の適格性を有 している前提)
② 対象地域が森林コンセッションに基づくものではない場合、プロジェクト申請者は P.30に定められた特定地域の主体者となる(例:対象地域が保全林の場合、インドネ シア側当事者は、保全森林地域を管轄する中央政府の技術ユニット、国立公園が対 象の場合は、国立公園の理事会の長が対象となる)
海外当事者については、政府、民間企業、個人、国際機関、慈善事業団体を対象として おり、P.30にはこれらの当事者は REDDプロジェクトへ資金提供を行うこととされている
。このようにして、P.30 は REDD+プロジェクト実施に係る資金が国内からではなく、海 外から提供されるものである事を明確に認識している。
2)REDD+プロジェクトの承認と実施
林業大臣令 P.30 では、REDD+プロジェクトの承認にあたり、REDD+実施計画を含む REDD+プロジェクト提案書をインドネシア林業省に提出する事を要求している。林業省 は提案書を REDD+委員会(REDD+ Commission、現時点では設立されていない。以後、
REDD+庁により設置される見込み)の審査に提出するものとされており、もし大臣が承認 した場合、申請者は REDD+実施承認を受ける事になる。REDD+プロジェクトはこの承 認を受けて90日以内に実施計画に基づき開始されることとなっている。なお、JCMの下で
のREDD+実施にあたっては、今後の二国間合同委員会での協議次第であるが、既存の尼国
REDD+関連法例にも沿う形で定められるものであると推測される。
P.30に基づくREDD+プロジェクトの期間は当初30年間とし、その後延長が認められる
とされている(取扱いは不明)。一方で、P.36ではプロジェクト期間は最大25年とされて おり、別途将来見込まれる林業大臣令により期間の延長が可能とされている 。
3.2.3. プロジェクト申請者の権利と義務および主要ステークホルダー間の利益配分
林業大臣令P.30はREDD+プロジェクト申請者の権利を規定している。
① インドネシア側主体は、そのカウンターパートである海外主体より、REDD+プロジェ クトにおいて達成された温室効果ガス削減に関する支払いを受ける事ができる。
② 海外主体は、REDD+クレジットを温室効果ガス削減目標の達成に使用する事ができる。
③ REDD+プロジェクト申請者は(明確な記載はないがおそらく、インドネシア側、海外
側双方について)2013年以降の、先進国が温室効果ガス削減を行うための、REDD+を 含む国際的な炭素クレジット取引枠組みにおいて、REDD+クレジットの取引を行う事 ができる。
P.30は、先進国が温室効果ガスの削減義務を負う、ポスト京都における国際的な法的枠組 みとその中で REDD+クレジットが削減目標達成手段として適格性を持つ事を想定してい るが、これについては、今後の気候変動に係る国際交渉の動向、および、JCM における二 国間交渉の動向に依存するものである。
主要ステークホルダー間における利益配分については、P.30 にて、インドネシア政府が REDD+プロジェクトに基づく利益分配を受ける事を想定している。利益分配の計算方法、
徴収方法は今後の法的決定に基づくものとされているが、P.30のドラフト作成段階の議論で
は、REDD+プロジェクトが創出するREDD+クレジットの30%がインドネシア政府が受け
取ること、とされていたが、実際署名されたP.30ではその部分は削除されている。
他方、P.36では、REDD+クレジット(ここでは、VER:Voluntary Emission Reductionと されている)は、「プロジェクト開発者(Project Developer)」(REDD+クレジットがインド ネシア側の民間のコンセッション保有者に帰属する事が示唆されている)が、バイヤーに 対し、林業大臣が承認する国内又は海外の排出権取引所(Carbon Stock Exchange)を通じて 販売する事が出来るとされている。この「林業大臣の承認権が含まれている事」は、プロ ジェクト開発者がREDD+クレジットを販売するにあたり、今後の規制に因る、不確定要素 と成り得る部分である。
P.36は、REDD+クレジットの収益分配に関し、政府、コミュニティ、プロジェクト開発 者の三者による分配比率を定めている。以下(表3.1)は、P.36におけるREDD+プロジェ クトが実施される森林のタイプ毎の収益分配を示したものである。
表 3.1 林業大臣令 P.36 が定める REDD+クレジット収益配分比率
許認可保有者/開発者 分配比率
政府 コミュニティ 開発者
Timber Concession 20% 20% 60%
Ecosystem Restoration Concession 20% 20% 60%
Community Plantation Forest 20% 50% 30%
Community Forest 10% 70% 20%
Social Forest 20% 50% 30%
Adat Forest 10% 70% 20%
Village Forest 20% 50% 30%
Forestry Management Unit 30% 20% 50%
Special Forest 50% 20% 30%
Protected Forest 50% 20% 30%
3.2.4. REDD+に係る税務/会計上の取扱いについて
2015 年 3 月時点、インドネシアにおいて REDD+事業に関する特定の税制は存在しない
(但し、林業大臣令P.36/2009 には、REDD+クレジットの収益分配の規定が存在する)。従 い、REDD+事業にかかる税務上の取扱いは、現行の一般的な税法上の取扱いに従うものと 考えられる。
現在の所得税法(General Income Tax Law(“ITL”)- Law No.36 /2008)及び付加価値税法
(Value Added Tax (“VAT”) Law-Law No. 42/2009)、また付随する実施規則はREDD+事業 に関し取り扱いを定めていない。特に、REDD+事業から創出されるVER(Verified Emission
Reduction)についても税制上の取扱いを明確に定めたものは存在しないのが現状と言える。
前述の通り、林業大臣令P.36/2009は、REDD+クレジットの収益配分について規定してい るが、いくつか問題点が存在する。
プロジェクト開発者が得られる分配額がネットか、グロスか。
インドネシア財務省が、林業大臣令P.36/2009における収益分配の規定に対し、林業省 はそもそも本件を行う権限がないと指摘し、本規定はペンディングとなっている。
インドネシア財務省は、インドネシア林業省と本規定に関する議論を実施しているもの
の、現時点では明確な方向性は出ていない模様である。この点についても、前述の2014年 10月発足のジョコ・ウィドド新政権による省庁再編後の動向を注視する必要がある。
REDD+に関する優遇税制の可能性については、インドネシア政府は、外国投資の促進を 目的として特定の産業若しくは地域に対し、税制優遇制度を実施(例;森林プランテーショ ン利用であれば、GR1/2007 及びGR62/2008 に基づき、加速度償却や配当厳選税率の低下、
欠損金の10年間繰り越し等)している。しかしながら、現状、REDD+プロジェクトに認め られる税制優遇措置は存在しない。また、通常このような優遇措置が認められる対象は、
VAT 課税可能な商品を生産する企業体が対象となっており、REDD+プロジェクトはこの分 類には入らないものと考えられている。本調査事業にて行った、インドネシア財務省の財 務政策室へのヒアリングの中では、REDD+プロジェクト特定の税制優遇措置は検討中との 事であったが、今後本点の進展につき注視する必要がある。