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杭基礎の耐震性検討において考慮すべき事項、一般に行われている杭-地盤相互作用の 各種モデル化方法、および、2次元一体解析における杭基礎のモデル化に関する既往の研 究内容をまとめる。

4.2.1 耐震性検討において考慮すべき事項

杭基礎の耐震性検討において考慮すべき事項を以下に述べる。

(1) 地震荷重

杭基礎に作用する地震荷重としては、まず、杭基礎が支える上部構造物の慣性力を挙げ ることが出来る。杭基礎の地震時挙動に関する実験としては、杭頭、あるいは、基礎版に 上部構造物の慣性力相当の水平力を静的に加えて、P(力)-δ(変位)関係を測定する ようなことが行われて来た。しかし、特に1995兵庫県南部地震以降は、上部構造物の慣性 力の他に、地震時の地盤変形も杭の地中部の破壊に大きく影響することが認識されるよう になり、地盤変形を与えつつ、杭頭にも慣性力相当の荷重を静的に作用させるような実験 も行われている(室野ら, 2001)。

解析においても、この両方の荷重を考慮すべきである。2次元、あるいは、3次元の有 限要素解析において、土を表す要素と杭を表す要素、および、上部構造物を表す要素を一 つの有限要素モデルに取り込んで、これらを一体として解析する方法では(以下、一体解 析)、上部構造物の慣性力や地盤の変形の影響は自然に考慮される。一方、一体解析でない 場合は(以下、分離解析)、例えば、Penzienモデル(Penzienら, 1964)のように、杭・構 造物系を1次元のばね・マスモデルで表し、自由地盤部の応答を、地盤ばねを介して対応 するレベルの節点に入力することにより杭基礎構造物の解析を行う場合は、地形の変化や 護岸などの存在に起因する地盤変形を考慮することが困難である。

(2) 地盤の非線形性

上述のように、地震による地盤変形は杭の健全性に影響を与える。1995兵庫県南部地震 の際に被災した杭基礎の被害に関する研究によれば(例えば、時松ら, 1999a)、杭頭部には 建物の慣性力によると見られる被害が認められるが、液状化層下部の被害は地盤変形によ るものである。従って、液状化に起因するものも含めた地盤剛性低下の適切な評価が必要 である。

上記(1)で述べたことと合わせると、盛土や護岸近傍の杭基礎を対象とする場合は、2次 元、あるいは、3次元の動的有効応力解析法による一体解析が望ましい。

(3)減衰力・慣性力の評価

杭近傍の土は、杭の動きに伴って、例えば、杭の側面に沿って回り込むような動きをす る。このような動きは、杭-地盤相互作用に伴って生じるものであり、地盤一般部の動き

4.2 杭-地盤系の地震被害推定に関する研究の現状 とは異なる。このような土の動きに応じて、慣性力や減衰力が生じるが、この効果も適切 に評価する必要がある。

Weaverら(1998)は、実物大の3×3に配置された9本の杭からなる群杭(杭間隔3D)

に対して、杭頭自由と杭頭固定の条件下で、動的水平載荷試験(Statnamic試験)を実施し、

静的載荷試験に対して、同一変位では、群杭の抵抗力が30%から80%増加することを見い だした。この増加分は、相互作用で発揮される主に減衰力に起因するものであるとされた。

この効果は、3次元的な杭-地盤相互作用によりもたらされると思われ、3次元有限要 素法による一体解析を行うことにより自然に考慮されるが、2次元一体解析では、この効 果を考慮するための工夫が必要である。

(4) 群杭効果

群杭基礎の場合は、杭の配置によっては、杭間地盤を通じた杭の相互作用の結果、各杭 の分担荷重が異なり、一般には、群杭は、単杭としての抵抗力を杭の本数分足し合わせた 抵抗力を発揮することは出来ない。分担荷重は、加振方向に並ぶ杭間でも異なり、加振直 交方向に並ぶ杭間でも異なる。

群杭効果を評価するための実験としては、例えば、Rollins ら(1998)の 3×3 に配置さ れた実規模の群杭(杭間隔3D、杭頭自由)に対する静的水平載荷実験があり、P-Multiplier

(同一変位の単杭の負担力を1.0とした場合の各杭の負担力)は、載荷方向第1列目の杭

が平均で0.6、第2列目と第3列目が0.4と言う結果を得ている。また、載荷直交方向に並

ぶ、同じ列の3本の杭には、分担荷重に関する明瞭な傾向は見られなかった。

また、直杭式桟橋のように護岸法線方向に同じ構造が繰り返し現れるような構造を護岸 法線直交方向に加振することを考えると、加振直交方向に並ぶ杭は平等であり、分担荷重 に差は無い。特に、加振直交方向に杭が等間隔に1列に並んでいる構造を考えると、杭の 間隔が十分離れている場合は、各杭は単杭と同じ抵抗力を持ち、杭が密になると、杭間地 盤を介して相互作用を行う結果、各杭のP-Multiplierは1.0より低下すると思われる。これ は3次元効果であり、2次元解析で考慮するには、工夫が必要である。

3次元有限要素法による一体解析では、群杭効果は自然に考慮され、杭一本ずつの荷重 分担が自動的に算定される。2次元の一体解析でも、加振方向第1列、第2列と言うよう な、列ごとの荷重分担率の違いは、一体解析の地盤を表す有限要素により自動的に考慮さ れる可能性がある。

分離解析の場合では、例えば、群杭を1次元のばね・マス系で表した場合には、群杭効 果を考慮に入れた地盤ばねを取り付けて、そこに自由地盤部の応答を入力するようなこと をして群杭効果を表現することが出来る(例えば、福岡ら(1995))。

(5) 地表面の影響

地盤に設置された杭が水平力を受けると、地表付近では、上載圧が小さいこともあって 地盤は杭の前方および上方に向かう動きを示すが、ある程度深い所では、土の上載効果の ために、水平方向にのみ動くと考えられる(岸田ら, 1979)。解析においてもこのような深 度による破壊メカニズムの相違を考慮に入れる必要がある(小竹ら, 2003)。

上述の地表面の影響は、3 次元有限要素法による一体解析を行うことにより自然に考慮

第 4 章 地盤・構造物系の3次元的挙動を支配する主要因とそのモデル化

される。2 次元一体解析でも、一体解析の地盤部分を表す有限要素の挙動により自動的に 考慮される可能性がある。

(6) 杭体の非線形性

1995兵庫県南部地震以降、設計において考慮すべき地震動が大きくなったので、杭体の モデル化に当たっては、材料非線形性を考慮するのが適当である場合もある。

4.2.2 2次元一体解析の研究の現状

前項で見たように、盛土や護岸近傍の杭を対象とする場合は、2次元または3次元有限 要素法による一体解析は、分離解析と比べて利点が多い。ただ、2次元解析の場合は、3 次元効果をどのように表現するかと言う問題がある。例えば、土木学会杭基礎耐震設計研 究小委員会が提案した杭基礎の耐震設計ガイドライン(案)(2001)によれば、2次元一体 解析の評価は、次の通りである。

「二次元 FEM 非線形解析にこだわりたい場合は、杭体を壁部材のように取扱っているこ と(解析仮定の限界)を十分認識し、その解析適用範囲を明示すべきである。二次元非線 形 FEM 解析は次元の単純化に相当の工夫が必要であり、解析結果に正しい保証が無けれ ば、混乱を避けるためにも使用しないことが望ましい。」

このような問題点があることを踏まえつつ、これまでにも、2次元一体解析の可能性が 研究されて来た。ここでは、このような既往の研究の成果を見渡して、問題点を拾い上げ、

新たな2次元一体解析の可能性を示す。

(1) 以前になされた努力

平面ひずみ状態を仮定した2次元解析において、杭と土の間の3次元的な相互作用を表 現するために、2次元解析における奥行き方向地盤幅を適切に定めようとする努力が、1980 年代には、大平ら(1985)により、また、1990年代には、石原ら(1994)によりなされた。

前者では、2次元解析における群杭全体の剛性を3次元解析のそれに等価になるように するだけでなく、加振方向の第1列目、第2列目と言うような杭列ごとの荷重分担率を調 整しようとした。そのために、奥行き方向地盤幅を杭列ごとに定めるようにして、群杭効 果を取り入れようとした。これらの検討では地盤や杭体の線形性が仮定されているが、非 線形性まで考慮するとなると、この方法の適用はかなり困難である。また、この検討は、

フーチングを静的に水平載荷して、その際に群杭が発揮する剛性に着目したもので、動的 な効果や地盤変形の影響は考慮されていない。

これに対して、石原らの検討は、構造物-杭-地盤系の動的相互作用解析(線形解析)

に基づいて行われた。例題として取り上げられた構造・地盤系については、3次元解析結 果と同程度の建物の加速度応答が得られるような、2次元地盤の奥行き方向幅を決めるこ とが出来たが、任意の構造・地盤系に適用するには、また、地盤の非線形性を考慮するた めには、さらに検討が必要である。