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これまでに示した相互作用ばねの特性は、杭への水平力載荷の際に杭周辺土の上下方向 の移動が無視出来るような深部でのものである。また、加振方向には単杭である場合を対 象とした。この相互作用ばねを地表面付近での相互作用を模擬するために使用したり、あ るいは、加振方向に群杭である場合の相互作用を表現するために使用したりすることが可 能かどうかは自明ではない。この検討を行う目的で、別途、杭への載荷実験を対象に相互 作用ばねを用いた実験解析が複数行われた。本節では、これらの検討結果を参照して、杭・

地盤系の解析における相互作用ばねの取扱い方針を述べる。

4.5.1 地表面の影響

川中ら(2003)は、砂質地盤における杭長 4m(短杭)と 12m(長杭)の場所打ちコン クリート杭(D=0.8m)に対する杭頭固定条件下での静的水平載荷実験(佐藤ら, 2002)を 対象とした解析を行った。地盤は表層に層厚 1m のシルト層があり、その下は、N 値が 7

~15の細砂層がG.L.-25mまで続く。また、地下水位はG.L.-1mである。単杭であるので、

地盤モデルの奥行き方向幅は十分広くとり(10D)、この地盤モデルと非線形はり要素で表 した杭モデルの間を杭-地盤相互作用ばねで結んだ。地盤モデルとしては多重せん断機構 モデルを用いたが、載荷は十分にゆっくり行われたので、過剰間隙水圧の上昇は考慮して いない。

地表面付近では杭前面の楔状のすべり土塊が押し上げられる受働破壊を、地盤深部では 杭に直交する面内における水平方向の支持力破壊を仮定すると、地表から両者による極限 地盤反力度が等しくなる限界深さまでの範囲に対して地表面の影響を考慮する必要がある

(小竹ら, 2003)。従って、該当部分(ここではGL-5.8m以浅)においては相互作用ばねの 地盤反力を低減係数により変化させた解析も行われた(低減係数=1.0の場合が前項までに 提案したばね)。短杭および長杭の荷重-変位関係の実験値と解析値の比較を図 4.5-1に、

低減係数が 0.9 の場合の短杭の水平変位分布図と曲げモーメント分布図の比較を図 4.5-2 に、同様に長杭での比較を図 4.5-3に示す。川中ら(2003)は、杭-地盤相互ばねをその まま適用しても、砂質地盤において単杭の静的な挙動をよく表現でき、地表面の影響を考 慮する低減係数(=0.9)を導入することにより解析精度はより向上したとしている。

吉川ら(2003)は、粘性土地盤において実施された杭頭固定条件下での杭の静的水平載 荷実験(佐藤ら, 2002)を対象とした解析を行った。土質が異なる点を除けば、上述の川 中ら(2003)と同様の検討を行った。土層構造は、G.L.-2mまでがN値3~6の盛土、G.L-13.9m までがN値3~9のシルトでその下はN値50以上の固結シルトである。また、地下水位は

G.L.-1m である。短杭および長杭の荷重-変位関係の実験値と解析値の比較を図 4.5-4に、

水平変位分布図の比較を図 4.5-5に、曲げモーメント分布図の比較を図 4.5-6に示す。これ らの結果は低減係数が1.0の時の結果であり、解析値は実験値をよく説明した。

これらの結果から、地表面付近の杭前面地盤の土塊滑りは、一体解析の地盤を表す有限 要素の挙動により自動的に考慮されると考え、本研究における検討では、地表面付近の相 互作用を表現する場合にも、前節までに定式化を示した相互作用ばねをそのまま適用する。

4.5 地表面の影響および群杭効果について

図 4.5-1 杭頭での荷重-変位関係の実験値と解析値の比較(川中ら, 2003)

左図は短杭、右図が長杭の結果

図 4.5-2 短杭の変位分布(左図)と曲げモーメント分布(右図)の実験値と解析値の 比較(解析値は低減係数0.9の場合)(川中ら, 2003)

図 4.5-3 長杭の変位分布(左図)と曲げモーメント分布(右図)の実験値と解析値の 比較(解析値は低減係数0.9の場合)(川中ら, 2003)

0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0

0 5 0 1 0 0 1 5 0

水平変位( m m )

頭荷重kN

低減係数=1.0

実験値 低減係数=0.7

低減係数=0.9

0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0

0 2 0 4 0 6 0

水平変位( m m )

杭頭荷重(kN

低減係数=1.0

実験値

低減係数=0.7 低減係数=0.9

- 4 - 3 - 2 - 1 0

- 1 0 0 1 0 2 0 3 0 4 0 水平変位 (m m )

深度 (m)

塗潰し:実験 白抜き:計算 杭 頭

10mm

杭 頭 35mm 杭 頭 25mm

- 4 - 3 - 2 - 1 0

- 5 0 0 0 5 0 0 1 0 0 0 モ ーメント (kN・ m )

深度 (m)

P=280kN

P=400kN

P=520kN 塗潰し:実験 白抜き:計算

- 1 2 - 1 1 - 1 0 - 9 - 8 - 7 - 6 - 5 - 4 - 3 - 2 - 1 0

- 1 0 0 1 0 2 0 3 0 4 0 水平変位 (m m )

深度 (m)

塗潰し:実験 白抜き:計算 杭 頭

10mm

杭 頭 35mm

杭 頭 25mm

- 1 2 - 1 1 - 1 0 - 9 - 8 - 7 - 6 - 5 - 4 - 3 - 2 - 1 0

- 5 0 0 0 5 0 0 1 0 0 0 モ ーメント (kN・ m )

深度 (m)

P=360kN

P=480kN P=560kN

塗潰し:実験 白抜き:計算

第 4 章 地盤・構造物系の3次元的挙動を支配する主要因とそのモデル化

図 4.5-4 杭頭での荷重-変位関係の実験値と解析値の比較(吉川ら, 2003)

図 4.5-5 変位分布の実験値と 解析値の比較図(吉川ら, 2003)

杭頭固定の長杭(左図)と杭頭固定の短杭

図 4.5-6 曲げモーメント分布の

実験値と解析値の比較図(吉川ら, 2003)

杭頭固定の長杭(左図)と杭頭固定の短杭

0 100 200 300 400 500 600 700 800

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

水平変位 (mm)

杭頭荷重 (kN)

長杭 杭頭固定 長杭実験 杭頭固定

短杭 杭頭固定 短杭実験 杭頭固定

短杭 杭頭自由 短杭実験 杭頭自由 

長 杭 杭頭固定

-12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

-20 変位 (mm)0 20 40

深度 (m)

計算  35mm 計算  25mm 計算  10mm 実験35mm 実験25mm 実験10mm

短杭 杭頭固定

-12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

-20 0 20 40

変位 (mm)

深度 (m)

計算  35mm 計算  25mm 計算  10mm 実験35mm 実験25mm 実験10mm

長   杭 杭頭固定

(P=550kN時)

-12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

-1000 -500 0 500 1000 曲げモーメント(kN・m)

深度 (m)

計 算 実 験

短   杭 杭頭固定

(P=550kN時)

-12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

-1000 -500 0 500 1000 曲げモーメント(kN・m)

深度 (m)

計 算 実 験

4.5 地表面の影響および群杭効果について

4.5.2 群杭効果

寿楽ら(2003)および川又ら(2003)は、3×3に配置された実物大群杭を対象に、杭頭 への静的および動的水平載荷実験(Peterson, 1996)の解析をそれぞれ行い、両者とも相互 作用ばねをそのまま適用した場合に、実験で認められた群杭効果を概ね再現したとした。

対象とした実験は、Salt Lake City空港内のサイトで実施された。地盤は主にシルトと粘 土の互層であり、砂質土層を一部含む。この土層に杭径D=0.308m、杭長9.1mのコンクリ ートが充填された鋼管杭が、杭間隔0.915m(=3D)で3×3の配置に打設された。

実験は、杭頭自由の状態で、静的載荷は油圧ジャッキによる多サイクル方式で行われた。

動的載荷も杭頭自由の状態で、スタナミック水平載荷試験として実施された。この試験は、

載荷装置のシリンダー内にセットされたロケット推進用固形燃料に点火することにより、

継続時間120~150msecの急速に変動する力を加えるものである。

解析は、杭間隔 0.915m に等しい奥行き方向幅の地盤モデルとトリリニア型のM-φ関 係を設定した非線形の杭モデルを載荷方向に3本分(載荷直交方向には1本分)を用意し、

地盤モデルと杭モデルを杭-地盤相互作用ばねで結合した。地盤モデルとしては多重せん 断機構モデルを用いたが、過剰間隙水圧モデルは適用しない設定とした。

静的載荷時の各杭列の荷重-変位関係の実験値と解析値の比較を図 4.5-7に示す。また、

前列杭については、図 4.5-8に変位分布と曲げモーメント分布の実験値と解析値の比較を 示す。図 4.5-7によれば、前列杭と中列杭では、荷重-変位関係の解析値は実験値と一致 するが、後列杭のみ、負担する荷重は解析値が実験値を下回る。寿楽ら(2003)は、解析 で得られたこの荷重分担率の傾向と整合する既往の3列群杭の実験研究(Brownら, 1988)

があることから,一般論としての荷重の分担率に関しては,妥当な結果が解析により得ら れたと評価することもできるとしている。

スタナミック水平載荷試験は3回繰り返されたが、解析では、2回目と3回目を取り上 げた。2回目と3回目の荷重-変位関係の実験値と解析値の比較を図 4.5-9に示す。また、

後列・中列・前列杭の2回目と3回目の各杭列の最大曲げモーメント分布の実験値と解析 値の比較を図 4.5-10に示す。図 4.5-10を見ると、静的載荷解析と同様、前列杭と中列杭の 曲げモーメント分布は概ね実験結果と一致するが、後列杭のみ解析結果が小さめである。

全体的には、静的解析・動的解析とも実験結果を再現し、前列杭と中間杭の荷重分担割 合も実験結果を再現した。このことから、加振方向の群杭効果は、一体解析の地盤を表す 有限要素により自動的に考慮されると考え、本研究における検討では、加振方向に群杭で ある場合の相互作用を表現する場合にも、前節までに定式化を示した相互作用ばねをその まま適用する。

第 4 章 地盤・構造物系の3次元的挙動を支配する主要因とそのモデル化

図 4.5-7 群杭に対する静的載荷時の杭列ごとの荷重-変位関係の実験値と解析値の比較

(寿楽ら, 2003) 荷重は各列の載荷直交方向の3本の杭の平均値

図 4.5-8 群杭に対する静的載荷時の前列杭の変位分布(左図)と 曲げモーメント分布の実験値と解析値の比較(寿楽ら, 2003)

曲げモーメントは載荷直交方向の3本の杭の平均値

0 20 40 60 80 100 120 140

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

Average Deflection (mm)

Average Load Per Pile (kN)

Single Pile (実験) Front Row (実験) Middle Row (実験) Back Row (実験) Front Row (解析) Middle Row (解析) Back Row (解析)

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

0 20 40 60

Deflection at front row (mm)

Depth below ground surface (m)

35.6kN 48.9kN 66.7kN 84.4kN 97.9kN 36kN 48kN 66kN 84kN 99kN

Front Row (inclinometer)

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

-50 0 50 100 150 200

Moment, kN-m (Average Load per Pile)

Deptth, m

35.6kN 48.9kN 66.7kN 84.4kN 97.9kN 36kN 48kN 66kN 84kN 99kN

実験 実験

解析 解析

4.5 地表面の影響および群杭効果について

図 4.5-9 群杭に対する動的載荷時の荷重-変位関係の実験値(黒線)と解析値(赤線2 回目、青線3回目)の比較(川又ら, 2003) 縦軸の荷重は杭1本当たりの平均値

図 4.5-10 群杭に対する動的載荷時の左から後列・中列・前列杭の最大曲げモーメント 分布の実験値(黒線Exp.#1,#2,#3)と解析値(赤線Ana.#2,#3)の比較(川又ら, 2003)