杭・上部構造物と地盤を一つの2次元有限要素モデルに組み込んで耐震解析を行う、い わゆる一体解析を行う際、杭-地盤相互作用における3次元効果を考慮するために、杭と 地盤を切り離し、その間を非線形ばねで結ぶ方法を採用する。そのばね特性を定めるため に、平面ひずみプログラムの解析面を水平面に一致させて、杭の断面(円形断面)とその 周辺の土をモデル化し、土と杭の間に相対変位を生じさせる解析を、各種条件下で実施し たことは既に述べた。ここでは、その結果である杭荷重-相対変位関係を参照して、杭-
地盤系の一体解析において必要となる杭-地盤相互作用ばねを提案する。
4.4.1 ばねの静的特性とばね値算定法
まず、杭径1m、長さ1mの杭に対する静的水平載荷解析により得られた杭荷重-相対変 位特性を整理して、杭-地盤相互作用ばねの静的な特性の算定法を組み立てる。次にこれ を任意の杭径と杭長の場合に拡張する(小堤ら, 2003a)。
(1) 破綻荷重
土要素に対して過剰間隙水圧モデルを適用しない場合、従ってダイレタンシーの影響を 考慮しない場合は、杭に対する単調載荷解析において荷重を次第に増加させて行くと、そ れ以上の荷重を負担出来ないという荷重レベルの上限値(以下、破綻荷重)が存在する
(図 4.3-4参照)。破綻荷重を、杭周辺の土の初期せん断強度で正規化した値は、特徴的 な傾向を示す(図 4.4-1参照)。
すなわち、不飽和土を除き、正規化した破綻荷重は、杭間隔が2.5D では11.5 のごく近 傍に、5Dと10Dでは12.6のごく近傍に集中する(この量は、後述するように無次元量で ある)。なお、不飽和土の場合も、破綻荷重として、解析結果とは若干異なるが、初期せん 断強度の11.5倍か12.6倍の値を採用する。ダイレタンシーの影響を考慮する場合は、土に 大きなせん断力が作用すると、正のダイレタンシーの影響で、明瞭な破綻荷重は認められ ないが、ここでは、同様に、初期せん断強度τm0の11.5倍~12.6倍として算定することに する(これらについては、特に、根拠がある訳では無いが、このようにすると、後の整理 において都合がよい)。
従って、どのような条件下の土についても、杭-地盤からなる全体系を解くまでも無く、
"破綻荷重"を、初期せん断強度τm0の11.5倍~12.6倍として算定することが可能である。
破綻荷重=(11.5~12.6)×初期せん断強度τm0 (4.4-1) (2) 杭荷重-相対変位関係と応力-ひずみ関係
図 4.4-3には、不飽和砂(N65=10、σm0'=24.5kPa)の場合について、杭への繰り返し載荷 解析結果である杭荷重-相対変位(循環境界基準)関係を、各杭間隔(2.5D, 5D, 10D)に ついて示す。また、同図には、図 4.4-2に示すように、同じ条件の土の 1 要素を取り出し
4.4 杭-地盤相互作用ばねによる3次元的挙動のモデル化 て、等方圧密後に繰り返しせん断解析を行った場合の、せん断応力τxy-せん断ひずみγxy 関係を示す。この1要素の解析(以下、要素シミュレーション)のせん断応力振幅は、5D の場合の荷重片振幅から次式で算定した値を用いた。
せん断応力片振幅 =(荷重片振幅/破綻荷重)×初期せん断強度τm0 (4.4-2)
=荷重片振幅/12.6 (4.4-3) 同様に、図 4.4-4~図 4.4-7には、飽和砂(N65=10、σm0'=98kPa、過剰間隙水圧モデル適用)
の場合の図を示す。図 4.4-4、図 4.4-5、図 4.4-6、図 4.4-7は、それぞれ、液状化フロント パラメータS0が1.0、0.5、0.05、0.005の場合に対応する。この時の、せん断応力片振幅と しては、やはり、5Dの場合の荷重片振幅を参照して、(4.4-3) 式により算定した。さらに、
図 4.4-8には、飽和正規圧密粘土(σm0'=98kPa)について、同様の図を示す。
これらの図に示したように、5Dの場合の杭荷重-相対変位関係と、対応する要素シミュ レーション結果である応力-ひずみ関係は、相対変位軸とひずみ軸のスケールを調整すれ ば相似にすることができる。相似になるためのひずみと相対変位の変換関係があらかじめ 分かれば、杭-地盤からなる全体系を解くまでもなく、杭近傍の土の構成則に基づいて描 いた応力-ひずみ関係から杭荷重-相対変位関係を求めることができる。この場合、応力 は、(4.4-3) 式と同様の次式により、荷重に変換することができる。
荷重=αp×せん断応力 (4.4-4) ここに、αpは応力-荷重変換係数で、杭間隔と図 4.4-1より定まる11.5~12.6の範囲の値 である。また、ひずみと相対変位の変換関係は次項で取り上げる。
図 4.4-5~図 4.4-7においては、初期載荷時の杭荷重-相対変位関係が、荷重片振幅のレ ベルにより異なる。すなわち、荷重片振幅が大きいほど、同一荷重で変位が出やすくなる。
これは、どのケースでも、1荷重サイクルを 200ステップに分割して解析を実施したため に、荷重片振幅が大きいと、1 ステップの荷重増分が増えて、精度が落ちるためである。
応力-ひずみ関係の計算でも、一律に、1サイクル200分割としたために、同様の誤差が 生じている。図 4.4-9には、飽和砂(N65=10、σm0'=98kPa、S0=0.05)に対する要素シミュ レーション結果を示す。左図が、1サイクル当たり 200荷重ステップに分割した場合の応 力-ひずみ関係であり、右図が2000ステップとした場合の応力-ひずみ関係である。左図 は、図 4.4-6に示した要素シミュレーションによる応力-ひずみ関係の再掲である。この 図によれば、荷重分割を細かくすると、初期載荷の経路は、応力レベルによらずに重なる ことが分かるが、全体的には概ね同じ傾向を示す。
第 4 章 地盤・構造物系の3次元的挙動を支配する主要因とそのモデル化
単調載荷 全17ケース×杭間隔3ケース 破綻荷重/初期せん断強度τm0
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0
2.5D 5D 10D
杭間隔
正規化した破綻荷重
不飽和砂N10:σm0'=24.5kPa 不飽和粘土:σm0'=24.5kPa 飽和砂N10:σm0'=24.5kPa 飽和砂N10:σm0'=98kPa 飽和砂N10:σm0'=196kPa 飽和砂N15:σm0'=24.5kPa 飽和砂N15:σm0'=98kPa 飽和砂N15:σm0'=196kPa 飽和砂N20:σm0'=24.5kPa 飽和砂N20:σm0'=98kPa 飽和砂N20:σm0'=196kPa 正規圧密粘土:σm0'=24.5kPa 正規圧密粘土:σm0'=98kPa 正規圧密粘土:σm0'=196kPa 過圧密粘土:c=98kPa
過圧密粘土:c=196kPa 過圧密粘土:c=294kPa
図 4.4-1 単調載荷時の(破綻荷重/初期せん断強度τm0)の分布
図 4.4-2 要素シミュレーション σm0'
σm0'
τ
1m 1m
①等方圧密する。 ②所定のせん断応力振幅で、
繰り返しせん断を行う。
4.4 杭-地盤相互作用ばねによる3次元的挙動のモデル化
図 4.4-3 不飽和砂(N65=10、σm0'=24.5kPa、)を対象とした、水平断面モデルを用いた 繰り返し載荷解析による杭荷重-相対変位曲線(2.5D, 5D, 10D: 循環境界基準)と 5Dの繰り返し載荷解析に対応する要素シミュレーションの応力-ひずみ関係(左上の図)
5D 要素試験
-15 -10 -5 0 5 10 15
-0.0015 -0.0010 -0.0005 0.0000 0.0005 0.0010 0.0015 γxy
τxy (kPa)
片振幅3.17kPa 片振幅6.35kPa 片振幅9.52kPa 片振幅10.71kPa
5D
-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200
-0.003 -0.002 -0.001 0.000 0.001 0.002 0.003 相対変位(m)
荷重(kN)
40kN 循環境界基準 80kN 循環境界基準 120kN 循環境界基準 135kN 循環境界基準
2.5D
-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200
-0.003 -0.002 -0.001 0.000 0.001 0.002 0.003 相対変位(m)
荷重(kN)
40kN 循環境界基準 80kN 循環境界基準 120kN 循環境界基準 135kN 循環境界基準
10D
-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200
-0.003 -0.002 -0.001 0.000 0.001 0.002 0.003 相対変位(m)
荷重(kN)
40kN 循環境界基準 80kN 循環境界基準 120kN 循環境界基準 135kN 循環境界基準
第 4 章 地盤・構造物系の3次元的挙動を支配する主要因とそのモデル化
図 4.4-4 飽和砂(N65=10、σm0'=98kPa、S0=1.0)を対象とした、水平断面モデルを用いた 繰り返し載荷解析による杭荷重-相対変位曲線(2.5D, 5D, 10D: 循環境界基準)と 5Dの繰り返し載荷解析に対応する要素シミュレーションの応力-ひずみ関係(左上の図)
5D要素試験
-60 -40 -20 0 20 40 60
-0.003 -0.002 -0.001 0.000 0.001 0.002 0.003 γxy
τxy (kPa)
片振幅15.9kPa 片振幅31.8kPa 片振幅47.6kPa 片振幅55.6kPa
5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.004 -0.002 0.000 0.002 0.004 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
2.5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.002 -0.001 0.000 0.001 0.002 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
10D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.004 -0.002 0.000 0.002 0.004 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
4.4 杭-地盤相互作用ばねによる3次元的挙動のモデル化
図 4.4-5 飽和砂(N65=10、σm0'=98kPa、S0=0.5)を対象とした、水平断面モデルを用いた 繰り返し載荷解析による杭荷重-相対変位曲線(2.5D, 5D, 10D: 循環境界基準)と 5Dの繰り返し載荷解析に対応する要素シミュレーションの応力-ひずみ関係(左上の図)
5D要素試験
-60 -40 -20 0 20 40 60
-0.006 -0.004 -0.002 0.000 0.002 0.004 0.006 γxy
τxy (kPa)
片振幅15.9kPa 片振幅31.8kPa 片振幅47.6kPa 片振幅55.6kPa
5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.008 -0.004 0.000 0.004 0.008 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
2.5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.005 -0.003 -0.001 0.001 0.003 0.005 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
10D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.010 -0.005 0.000 0.005 0.010 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
第 4 章 地盤・構造物系の3次元的挙動を支配する主要因とそのモデル化
図 4.4-6 飽和砂(N65=10、σm0'=98kPa、S0=0.05)を対象とした、水平断面モデルを用いた 繰り返し載荷解析による杭荷重-相対変位曲線(2.5D, 5D, 10D: 循環境界基準)と 5Dの繰り返し載荷解析に対応する要素シミュレーションの応力-ひずみ関係(左上の図)
5D要素試験
-60 -40 -20 0 20 40 60
-0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 γxy
τxy (kPa)
片振幅15.9kPa 片振幅31.8kPa 片振幅47.6kPa 片振幅55.6kPa
5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10
相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
2.5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
10D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.15 -0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
4.4 杭-地盤相互作用ばねによる3次元的挙動のモデル化
図 4.4-7 飽和砂(N65=10、σm0'=98kPa、S0=0.005)を対象とした、水平断面モデルを用いた 繰り返し載荷解析による杭荷重-相対変位曲線(2.5D, 5D, 10D: 循環境界基準)と 5Dの繰り返し載荷解析に対応する要素シミュレーションの応力-ひずみ関係(左上の図)
5D要素試験
-60 -40 -20 0 20 40 60
-0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6
γxy
τxy (kPa)
片振幅15.9kPa 片振幅31.8kPa 片振幅47.6kPa 片振幅55.6kPa
5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
2.5D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-0.6 -0.1 0.4
相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準
10D
-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800
-1.50 -1.00 -0.50 0.00 0.50 1.00 1.50 相対変位(m)
荷重(kN)
200kN 循環境界基準 400kN 循環境界基準 600kN 循環境界基準 700kN 循環境界基準