• 検索結果がありません。

3.4 改良型非線形反復計算法の適用性

ここでは、前節で示した各時間ステップ内で状態変数 S の変動による骨格曲線の変動に 追随する非線形反復計算法(以下、改良型非線形反復計算法)の応答加速度時刻歴に見ら れる異常振動の解消効果と、非線形反復計算法の違いによる変位などへの影響を調べる。

3.4.1 要素シミュレーション

等価N値(有効上載圧65kPaに換算したN値)が10である砂を対象に要素シミュレーシ ョンを行った。要素シミュレーションでは、まず、完全排水条件下で、有効拘束圧 98kPa で等方圧密し、その状態を引き継いで、非排水条件下で、片振幅 25kPa の繰り返し単純せ ん断(準静的)を行った。その際、水平成層地盤と同様、水平方向の直ひずみは生じない ように拘束を与えた。解析ケースは以下の通りである。

① 従来型非線形反復計算法。

② 改良型非線形反復計算法で、接線剛性行列は対称とする。

(d{σ'}~d{ε}関係に(3.3-35)式使用)

③ 改良型非線形反復計算法で、接線剛性行列は非対称とする。

(d{σ'}~d{ε}関係に(3.3-33)式使用)

上記②と③のケースについては、状態変数 Sの収束判定は、(3.3-83)式により行い、許容 誤差はtol=1.0×10-5とした。

等価N値10の砂は、細粒分を含まないものとして、その解析地盤定数は、森田ら(1997)

の簡易設定法により決定した。解析地盤定数を表 3.4-1および表 3.4-2に示す。変相線を超 えた領域における塑性せん断仕事の負のダイレタンシーへの寄与係数の設定法として従来 モデルを使用した。

解析結果である、過剰間隙水圧比上昇曲線、せん断ひずみ増大曲線、せん断応力-せん 断ひずみ関係および有効応力経路に関する各ケースの比較を図 3.4-1に示す。改良型非線形 反復計算法のケース②と③は、曲線が重なっていて判別できないが、従来法と比べると、

ほぼ同じ傾向ではあるが、ひずみが若干抑えられている。また、従来見られていた、せん 断応力-せん断ひずみ関係のピーク付近で曲線が小さなループを描く現象も、改良型非線 形反復計算法の両ケースでは解消された。

このことから、通常行われるような砂の要素試験に対応した要素シミュレーションにお いては、非線形反復計算法の違いによる応答の差異は顕著ではないことが分かった。

第 3 章 地盤・構造物系の数値解析法

表 3.4-1 等価N値10の砂:多重せん断機構モデルなどのパラメータ 変形特性

湿潤 密度

間隙 初期

せん断 剛性

体積 弾性 係数

基準化 拘束圧

ポアソン

拘束圧 依存 係数

内部 摩擦

粘着

履歴 減衰 上限値 等価

N

ρt n Gma Kma σma' ν m φf C max 土質

(N65) (t/m3) (kPa) (kPa) (kPa) () (kPa) 砂質土 10 2.00 0.45 84490 220300 98.0 0.33 0.50 39.7 0.0 0.24 ※ mG=mK=mとする。

表 3.4-2 等価N値10の砂:過剰間隙水圧発生モデルのパラメータ 液状化特性

変相角 液状化パラメータ 等価

N

φp 1121 S1

土質

(N65) ()

砂質土 10 28.0 3.76 0.50 1.01 1.60 0.005

3.4 改良型非線形反復計算法の適用性

図 3.4-1 等価N値10の砂の要素シミュレーション結果:従来型非線形反復計算法(破線)

と、改良型非線形反復計算法2ケース(重なっている実線)との比較

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

cycle

過剰間隙水圧比

①従来法

②改良後:対称行列

③改良後:非対称行列

-0.20 -0.15 -0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

cycle せん断歪γxy

①従来法

②改良後:対称行列

③改良後:非対称行列

-30.0 -20.0 -10.0 0.0 10.0 20.0 30.0

-0.20 -0.15 -0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 せん断歪γxy

せん断応力τxy

①従来法

②改良後:対称行列

③改良後:非対称行列

-30.00 -20.00 -10.00 0.00 10.00 20.00 30.00

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

平均有効応力-σm'(kPa) せん断応力τxy(kPa)

①従来法

②改良後:対称行列

③改良後:非対称行列

第 3 章 地盤・構造物系の数値解析法

3.4.2 1次元地盤モデル

港湾地域強震観測網の釧路港観測施設付近の地盤を対象に、1993 釧路沖地震の際の挙動 の従来型および改良型非線形反復計算法を用いた再現計算を行った。同地点の土層区分図 を図 3.4-2(Iaiら, 1995a)に示す。地盤は地表からG.L.-77mの地中地震計設置位置まで主 に砂層で構成され、わずかにシルト層を挟む。地表からG.L.-23mまでは粗砂層であり、地 表面付近を除きN値は30以上ある。その下のG.L.-52mまでは細砂層を主体とし、シルト 層や礫混じり砂層を挟む。N値は10以下から50以上と幅がある。その下は、細砂が主体で あり、N値は50以上である。

この地盤を対象に1次元の地盤モデルを作成した。各土層の多重せん断機構モデルのパ ラメータを表 3.4-3(Iaiら, 1995a)に示す。Layer2と3のみ過剰間隙水圧モデルを適用し、

深部などで液状化が発生しないと判断した土層に対しては過剰間隙水圧モデルを適用せず、

多重せん断ばねモデルのみでその挙動を表現する。

この1次元地盤モデルを用いて、まず、完全排水条件下で初期自重解析を行い、重力が 作用した状態を引き継いで、非排水条件下で地震応答解析を行った。入力地震動は、1993 釧路沖地震の際に同観測施設の地中(GL-77m)の地震計で記録された NS 成分の加速度時 刻歴(最大加速度 204gal)とし(図 3.4-3)、固定境界とした解析モデル底面に入力した。

また、地表で記録された対応する加速度時刻歴を図 3.4-4に示す。

従来型非線形反復計算法では、時間積分間隔Δtを小さくすると、応答加速度時刻歴にス パイク状のピークが多発する傾向があるので、それに対する改良型非線形反復計算法の効 果を確認するために、以下に示す①~③の非線形反復計算法のそれぞれに対して、時間積 分間隔を0.01秒、0.005秒、0.0025秒とした場合の解析を実施した。

① 従来型非線形反復計算法

② 改良型非線形反復計算法で、接線剛性行列は対称とする。

(d{σ'}~d{ε}関係に (3.3-35)式使用)

③ 改良型非線形反復計算法で、接線剛性行列は非対称とする。

(d{σ'}~d{ε}関係に (3.3-33)式使用)

上記②と③のケースについては、状態変数 Sの収束判定は、(3.3-83)式により行い、許容誤

差はtol=1.0×10-5とした。また、変相線を超えた領域における塑性せん断仕事の負のダイレ

タンシーへの寄与係数設定法としては従来モデルを使用した。

地表における水平応答加速度時刻歴および水平応答変位時刻歴(いずれも解析値)を、

それぞれ、図 3.4-5 と図 3.4-6 に示す。また、GL-3.5m(Layer2)における過剰間隙水圧比

(=1-σm'/σm0')の時刻歴、有効応力経路図およびせん断応力-せん断ひずみ関係を、それ

ぞれ、図 3.4-7、図 3.4-8、図 3.4-9に示す。

これらの図によれば、改良型非線形反復計算法(②と③)では、応答加速度時刻歴にス パイク状のピークが多発する傾向は改善された。また、接線剛性行列を対称としても、非

3.4 改良型非線形反復計算法の適用性 対称としても、応答に差異はほとんど見られなかった。

図 3.4-4に示した同地震の際に地表で記録された加速度波形と図 3.4-5の各波形を比較す ると、観測記録に見られる鋸歯状の波形は、Δt=0.01 秒の場合は、従来型非線形反復計算 法がよく再現している。改良型非線形反復計算法では、Δt=0.01 秒の波形は、減衰が効き すぎるのか、特徴的なスパイク状のピークがなまってしまうが、Δt=0.0025秒では、観測記 録と同様のスパイク状のピークが見られる。時間積分法として、Wilson θ法(θ=1.4)を 用いたが、それによる人工減衰が働いた結果である。このことは、表 3.4-4に示した時間積 分法と時間積分間隔に応じた、人工減衰が働くための振動数の下限値との関係を見ると分 かる。

図 3.4-7によると、①の従来型非線形反復計算法では、Layer2の過剰間隙水圧が13秒付 近から急に上昇して、17 秒付近で上がりきるのに対して、②と③の改良型では、水圧上昇 が急では無く、17秒付近でも 50%程度の水圧上昇である。また、図 3.4-9に示すせん断応 力-せん断ひずみ関係を見ると、①の方法では、②と③の方法に比べて、どの時間刻みで も、大きなせん断ひずみが見られる。これを反映して、図 3.4-6に示す地表面の水平変位時 刻歴には、①の場合に数cmの残留変位が生じたが、②と③のケースについては、残留変位 は生じない。このように、応力-ひずみ関係が変動するような砂の力学モデルを使用する 場合は、各時間ステップ内で変動を追跡して、不平衡力を次ステップに持ち越さないこと が重要であり、そうしない場合には、非線形反復計算法に起因する誤差が累積して、変位 やひずみの応答にも影響を与えることになる。

第 3 章 地盤・構造物系の数値解析法

表 3.4-3 釧路港1次元地盤モデル:解析地盤定数(Iaiら,1995a)

Layer H ρ Vs Gmama' φf φ 液状化パラメータ

No. (m) (t/m3) (m/s) (kPa) (kPa) (度) (度) w1 p1 p2 c1 s1

1 2.0 1.54 249 106600 37 40 - - - - - -

2 7.0 1.72 249 106600 37 40 28 7.0 0.50 0.65 3.97 0.01 3 14.0 1.98 326 210400 98 48 28 3.5 0.50 0.40 3.68 0.01

4 9.0 1.73 265 121500 164 37 - - - - - -

5 4.0 1.76 341 204700 195 44 - - - - - -

6 8.0 1.70 286 139100 224 44 - - - - - -

7 8.0 2.00 302 182400 269 45 - - - - - -

8 25.0 1.73 341 201200 354 44 - - - - - -

図 3.4-2 釧路港1次元地盤モデル: 土層区分図(Iaiら(1995a)に加筆)

基盤面:底面固定境界 地表面 地下水面

3.4 改良型非線形反復計算法の適用性

図 3.4-3 1993釧路沖地震の際に釧路港二層観測地点の地中(GL-77m)地震計で記録された NS成分の加速度記録のうち、解析で用いた15秒から55秒までの40秒間の波形

表 3.4-4 時間積分間隔と人工減衰が働くための振動数の下限値との関係 Δt= 0.01秒 0.005秒 0.0025秒

Wilsonθ法(θ=1.4) 10Hz 20Hz 40Hz Newmark法(α=0.3025,δ=0.6) 3Hz 6Hz 12Hz

Newmark法(α=0.25,δ=0.5) 人工減衰は、発揮されない。

※1 表に示す振動数以上の現象に対しては人工減衰が発揮される。

※2 Zienkiewicz(1991)に基づいて算定した。

-200 -100 0 100 200

15 20 25 30 35 40 45 50 55 時刻(sec)

(gal)

図 3.4-4 1993釧路沖地震の際に釧路港二層観測地点の地表(GL±0m)地震計で 記録されたNS成分の加速度記録(縦軸の単位はm/s2, 横軸の目盛は10秒刻み)

図 3.4-5 釧路港1次元地盤モデルの解析結果:地表面における水平加速度時刻歴(縦軸:加速度-500gal~+500gal、横軸:時間(秒))

Δt ①従来型非線形反復計算法 ②改良型非線形反復計算法で、

接線剛性行列は対称

③改良型非線形反復計算法で、

接線剛性行列は非対称 0.01

0.005 秒

0.0025 秒