第 5章 本研究のま とめ と今後の課題
第 1節 本研究の総括 と成果
1.本
研究 の 総括第
1章
では,ま
ず,「答 申」 にお ける言語力育成 の重要性 について述べた。 そ こでは, 各教科 において 「他者 に分か りやす く伝 える」晩峯釈や説明,評
価や論述 をす る」といつた 言語活動 を重視 し,児
童 の言語力育成 の必要性 について示 した。 また,学
習指導要領改訂 に伴 い,算
数科では,算
数 的活動 として 「説 明す る活動」が強調 され てい るこ と,数
学科では
,改
訂 の基本 的 な考 え方 の一つ として 「説 明 し伝 え合 う活動」 の重要性 が示 されてい るこ と,そ
れぞれ につ いて述べ た。次 に
,PISA調
査 と全 国学力・学習状況調査か ら,そ
れぞれ の調査 問題 の例 を紹介 し,日本の児童・生徒 の 「説 明す る力」 に関す る課題 を述べた。 これ らの調査問題 の結果か ら は
,
日本 の児童 。生徒 には,判
断 した理 由を数学的 な表現 を用 いて説 明す るこ と, 目的 に 応 じて数学的 な表現 を使 い分 け,他
者 に分か りやす く説 明す るこ とに課題 が あ るこ とを示した。
以上 よ り
,算
数科 において求 め られてい る 「説 明す る力」 とは どの よ うな力 で あるか, その 「説明す る力」 を育成す るた めの方策 につ いて講 じてい くこ ととし,以
下の2′点を本 研 究の 目的 と した。①
算数科 において育成すべ き 「説 明す る力」 とは
,
どの よ うな こ とで あ るか を明 らか にす る。②
算数科 で 「説 明す る力」 を育成す るための教材 と学習指導法 を開発す る。
第
2章
では,「説 明す る力」 に関す る先行研 究 を概観 し,「説 明す る力」 に関す る観 点や その構成要素 につ いて述べ た。第1節
では,「説明す る力」 に関す るい くつ かの観 点 とし て,「説 明の手段」,「分 か りやす い説 明の条件」,「説 明す る力 の指導」につ いて述べ た。第の 「数学的な表現力」
,金
本 ら (1998)の「数学的 コミュニケーシ ョン能力」を考察 し,「説 明す る力」 に関す る構成要素 を,大
き く次 の[表 5。1]のよ うに4つ
に整理 した。[表
5.1]
「説 明す る力」 の構成 要 素(1)他
者 との交流を行 うための適切な態度が形成されている。(態度)根拠や合理性 を問いなが ら他者 の考 えを聞 く力 をつ けた り,自分 の表現 を分 か りやす く, 的確 に した りす るた めには
,他
者 と交流 をす るこ とに価値 が あ る とい う意識 を もつ こ とが できる。(2)算
数 日数学の 多様 な表現が使 え=そ
れ らの よさが理解 で きる。(表現)①算数 口数学の多様な表現が使える。
自分の考えを
,式
。記号 。図・グラフ等の数学的表現を用いて表す ことができる。②数学的表現のよさが理解できる。
説明に用いた数学的表現の長所 。短所に気づき
,状
況に応 じてそれ らを使いわけるこ とができる。(3)他
者へ 自分の解法や考えの根拠を説明することができる。(発信)自分の考えた解法や
,そ
の解法が正 しいことの根拠を,伝
えよ うとす る相手の理解力に 配慮 しなが ら,数
学的表現を適切 に使用 して説明す ることができる。(4)集団での交流ができ
,個
人や集団の考えを,数
学的に価値があるものに高めてい くこ とができる。(交流・ 改良)①解釈
,理
解することができる。集団での交流の中で
,他
者の説明の意味を解釈,理
解す ることができる。②批判
,評
価することができる。集団での話 し合いの中で
,他
者の説明をそのまま鵜呑みにす ることな く,本
当に正 し いのか疑間をもつて批判的に聞 くことができる。また,用
い られた例の適切 さや話の順 序など,説
明の分か りやす さ,簡
潔 さといった説明の良否 を評価できる。③改良
,改
善することができる。集団での交流 を通 して
,個
人や集団での考 えを,よ
り数学的に価値があるものへ と改 善 してい くことができる。第
3章
で は,②
の 目的のために,「説 明す る力」育成 のた めの教材 開発 とその実践授業 につ いて述べた。第1節
では,「説 明す る力」育成 のための教 材 を示 した。教材 作成 に際 しては,説
明の手段 を複数用 い る ことのできる題材 にす る,分
か りやすい説 明の条件 (「根 拠」「論理」「視覚 に訴 える資料」)の
中か ら 「根拠」「視覚 に訴 える資料」 が必要 な学習課 題 を設定す ることに配慮 した。 また,「説 明す る力」の構成要素 の うち,「(3)他
者へ 自分 の解法や考 えの根拠 を説 明す ることができる (発信)」 能力 を培 うために,学
習過程 の中で「説明コンテス ト」を行 うこととした。「説明 コンテス ト」とは
,児
童 が課題 に対 して考 え た ことを,ク
ラス全体の前 で説明 し,そ
の分か りやす さを採 点す る活動 である。第2節
で は,6年
生4ク ラス を対象 に行 った 「説 明 コンテス ト」 を用 いた二つ の実践授 業 について 述べた。実践授業 において児童 が説明す る課題 内容 は,授
業 Iでは 「どんな五角形 で も,五つ の角の大 きさの和 は540° になるか ど うか理 由を説明 しよ う」
,授
業 Ⅱでは「カ レンダ ーの数 について成 り立つ きま りとそ うなる理 由を説明 しよ う (図 5.1)」 とい うものであつ た。図
5.1
授 業 Ⅱで児童 に振 り分 けた3つ
の枠各 クラスにお け る 「説 明 コンテ ス ト」 の発表 の様子 を分析 し
,児
童 の 「説 明す る力」の 実態 として,以
下の ことが明 らか とな った。6
¨
■ 2¨0
7
¨
=
¨ 2︲
︲ 5
¨2 2
7
●
● 14 E●
0 こ
①
算数の用語 を正 しく使 うことに課題があるものの
,挙
げるべき理 由を抜かす ことな く「根拠」を示す ことができる。②
複数の事例を挙げて
,説
明 しようとする事柄の一般性 を示す ことができる。③
説明の評価 においては
,説
明の内容ではなく,声
の大きさや資料の見やす さといつ た表面的な説明の仕方に着 目して,分
か りやすい説明か どうかを判断す る。④
発表資料の準備
,班
での発表 と「説明コンテス ト」とい う学習活動に対 して,「難 し かった」 とい う感想 をもつ児童が多い。また,「説 明 コンテス ト」では
,説
明のた めの資料 の準備,発
表 の練習,発
表 の実演,発
表に対す る評価 (採点)といつた一連 の活動が展開 され,「説 明す る力」を育成す る学習指 導 としての一つの授業モデル を提案す るもので ある。さらに,「説 明 コンテ ス ト」とい う学 習活動 を取 り入れ るこ とで
,説
明その ものに児童 の意識 を向 け させ るこ とに一定の効果 が あった。第
4章
で は,算
数科 にお ける 「説 明す る力」 を育成す るた めの教材 案 を提案 した。 開発 した教材 は,「四角形 の4つ
のすみ を集 める と.… ?」,「四角形 を対角線 で分 ける と.… ?」,「グラフか ら未来の人 口を予想 しよう」の二つである。
「四角形の
4つ
のすみ を集 める と.… ?」 は,図
形 の性 質 を もとに面積 の関係 を提 え,判 断 の理 由 を言葉 や 式 な どを用 いて説 明 させ る教材 で あ る。「四角形 を対角線 で分 け る と.… ?」 は
,四
角形 を対角線 で分 けた際 にで きる,向
かい合 う三角形 の面積 が等 しくな る理 由を,図
形 の性 質 な どを利用 して、言葉や図,式
な どを用いて説 明 させ る教材 で ある。「グラフか ら未来の人 口を予想 しよう」は
,作
り上 げたグラフにな る理 由を,提
示 され たグラフの中の情報 をもとに
,言
葉や式 な どを用 いて説 明 させ る教材 であ る。以上の三つ を,算 数科 にお ける「説 明す る力」を育成す るための教材案 として提案 した。
2.本
研究の成果本研究の成果 として以下の
2点
を示す。(1)算数科における「説明す る力」の構成要素 として
,次
の4つ
の能力を明 らかにした。(2)算
数科 にお け る 「説 明す る力」 の育成 を図 るた めの教材・学習指導法 を提案 し,実
践授業 を通 して
,児
童 の 「説 明す る力」の実態 を明 らかにす ることができた。[表