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時間メタファーの新分類: A、B シリーズの時間概念が共存できるタイプ

第 3 章 日本語の「前(まえ)」 ・ 「先(さき)」と中国語の「前(qian)」との比較

4. 日本語の「前(まえ)」 ・ 「先(さき)」と中国語の「前(qian)」の時間的な意味

4.1 時間メタファー理論

4.1.4 時間メタファーの新分類: A、B シリーズの時間概念が共存できるタイプ

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観への現象を「脱主観化」とも呼んでいる)。例えば、(35)における 3 つの例文では、主体 性がaからcへ行くに従って、主体(図3-18では、Cで示されている)との関与する度合い、

すなわち主体性が低くなる。具体的に言えば、aのような主体性が高い段階では、認知主体 は、事態を概念化する者であると同時に、事態に参加する者でもある。b の段階に入ると、

認知主体は、aの段階と同じく事態の参加者であるが、傍観的な立場から事態を捉えている。

そして、さらにcの段階に入ると、認知主体の主体性がさらに減少し、もはや事態の参加者 ではなくなり、ほとんど中立で傍観者の視点から、事態を言語化している。

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12 月」といった時間的な名詞である。この場合では、事態と事態との関係は、共同体の全 員に共有されている知識として、直示性と関与しなくても、成立している。

篠原 (2008: 188-189)は、positional termsという用語を「時間配列語」と訳したうえで、ク リスマスや年号のような年中行事及び歴史事件といった共同体により共有される知識も、

時間配列語のカテゴリーに属すと指摘している。ここで指摘したいのは、本論文では、篠原 に従って時間配列語をこの拡大された意味で用いることにする。

(36a) における冬と春は時間配列語であり、冬の次が春だという順序が内在的に規定され

ているというところまではFillmoreと篠原に同調するが、本論文では(36a)のみが、純粋の Bシリーズ時間概念であると主張する。一方、(36b)における歓迎会と演説は時間配列語で はなく、互いの順序を示す際に、発話の状況に依存して、A、Bシリーズの時間概念にも関 与していると主張したい。

本論文は、A、Bシリーズの時間概念ともに共起している時間メタファーについて、本来 の時間メタファー理論を踏まえ、主体性の変化という視点を加味して、さらに次の二種類を 提案することにする。すなわち、事態外視点の時間移動メタファーと事態外視点の主体移動 メタファーという 2 つの分類である。新たに提案した二種類の時間メタファーの構成を示 せば、以下の図 3-19と図 3-20のようになる。

第一種類の A、B シリーズの時間概念が共存するメタファーの構成については、図 3-19 のように示すことができる。この場合では、Front (前方)はEarlierに対応し、Back (後方)は

Laterに対応する。Langacker (2010)にならい、図 3-19 における点線のISという四角形は、

直接的にプロファイルされた領域を示すものであり、また、MSという四角形は、文に直接 的に言語化されていないが、喚起できる内容を示すものである。点線のISの四角形に位置 しているのは、文に直接的に出現したLM (前件の事態)とTR (後件の事態)である。また、

事態と事態の間における矢印は、事態と事態との順序、すなわちEarlier・LaterというBシ リーズの時間概念である。また、認知主体 (C)が ISの外、MSの中に位置しているのは、発 話時または現在といった A シリーズの時間概念も部分的に反映されている、ということを

3-19 直示性に関与するFront-Back Moving Time Metaphor (その1)

124 示すものである。

A reception is following the talks.における時間関係がまさに図 3-19 に当たる。日本語の例 で言えば、「会議の前に話したように」のような文は、前件の「話す」という動作が、後件 の「会議」より Earlier であると同時に、いずれも現在より過去の時間帯で発生したという 認知主体の直示性も反映されている。

第二種類のA、Bシリーズの時間概念が共存する時間メタファーの構成を図で示せば、図 3-20のようになる。この場合では、Front (前方)がLater、またBack (後方)がEarlierに対応し ている。すなわち、「修論諮問は修論提出のまだ先だよ」という文に反映されているように、

「諮問」という事態は、もう 1 つの「提出」という事態の前方にあるということで、「諮問」

が「提出」よりLaterだ、ということである。この場合は、図 3-19 と同様に、認知主体の直 示性が部分的に反映されているので、点線のISの四角形の外であるが、認知主体は実線の MSの四角形の中に位置している。

3-20 直示性に関与するFront-Back Moving Time Metaphor (その2)

3-21 Front-Back Moving Time Metaphor

(Front=Earlier) 3-22 Front-Back Moving Time Metaphor (Front=Later)

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また、時間配列語どうしの時間関係を示す時間メタファー、つまり純粋な B シリーズ時 間概念を示す時間メタファーの構成は、上の図 3-21 と図 3-22 が表している。この 2 つの 図では、時間の認知主体の位置は、ISの外側のみならず、MSの外部に位置している。それ は、時間配列語と時間配列語とのEarlier・Laterの関係を捉える際に、時間認知主体の直示 性(現在・発話時)と関わらないからである。

本論文の時間メタファーの分類とMoore、Lakoff & Johsonの分類法の特徴について、それ ぞれ示すと、次の表 3-1 のようになる。次節の4.2節から4.4節では、本論文に提唱されて いる新たな時間メタファーの分類に基づき、「前(まえ)」、「先(さき)」、「前(qian)」の時間的な 意味を詳しく論じることにする。

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表 3-1時間メタファーの分類

時間概念の種類例文本論文Moore(2001,2014)Lakoff & Johson(1980,1999) 我々は新世紀に入りました。 Moving Observer MetaphorMoving Ego MetaphorMoving Observer Metaphor クリスマスが近づいてくる。 Moving Time Metaphor The Ego-centered Moving Time Metaphor Bシリーズの時間概念Spring follows winter.Front-Back Moving Time Metaphor 懇親会の前に説明したように、明日 会議があります.

修論諮問は修論提出のまだ先だよ。

Aシリーズの時間概念 Moving Time Metaophor 直示性に関与する Front-Back Moving Time Metaphor (その1) Aシリーズの時間概念+ Bシリーズの時間概念 Front-Back Moving Time Metaphor 直示性に関与する Front-Back Moving Time Metaphor(その2)

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