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日本経済と企業のパフォーマンスを巡って

第 2 章 日本の役員報酬の問題点とコーポレート・ガバナンス

2.2. 日本経済と企業のパフォーマンスを巡って

2.2.1. リーマンショック以降 2011 年までの状況

先に見た先行研究の多くは、概ねリーマンショック以前の実態を踏まえた分析が中心で あった。ここでは、その後の展開を検討する前提として、それ以降の日本経済の実態を簡単 に整理しておく。

日本経済は、リーマンショック(2008年9月)の影響を受けて、2008年度および2009 年度はマイナス成長、その後2010年度は回復をみせるも、2011年度には名目GDP成長率 は再びマイナスに転落したが、2012年度以降、名目GDP成長率はプラスを維持している。

我が国経済は2012 年11月を底に 2017年頃まで緩やかな景気回復基調が続いた。こう した景気の回復基調の背景には、

①アベノミクスの取組みの下、企業活動の回復や労働参加の高まり等によって雇用・所得 環境が改善してきたこと、

②企業収益が過去最高水準まで上昇したこと、

③物価面では、日本銀行の取組もあってデフレからの脱却に向けて進展していることな どがある。加えて、2014年半ばからの原油価格の下落によって交易条件が大幅に改善し、

原油輸入国である我が国は大きな恩恵を受けてきた。

2014年4月の消費税率引上げ後は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減(異時

表2-5 経済成長率の推移 (%)

年度 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

名目GDP成長率 -4.1 -3.4 1.4 -1.1 0.2 1.7 2.0 2.7 1.1 1.7

実質GDP成長率 -3.5 -2.2 3.2 0.5 0.9 2.0 -0.5 1.2 1.2 1.6

GDPデフレーター -0.5 -1.3 -2.0 -1.7 -0.9 -0.3 2.5 1.5 -0.2 0.1

(出所)内閣府、大和総研

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点間の代替効果)や価格上昇による実質所得の減少に伴う効果(所得効果)に加えて、消費 者マインドの弱さや、世界金融危機以降の各種施策に伴う耐久財の買い替え需要の先食い もあり、個人消費は横ばい状態を続けている。また、設備投資については、2015年度には 持ち直しに向かったが、高い水準にある企業収益に比べるとやや力強さに欠けている。

2015年12月に米国で金融引締めが始められる中、2016年初めには、新興国・資源国経 済の不振もあって原油価格の一層の低下や国際金融市場の大きな変動が生じた。その後の 米国の利上げペースが予想よりもゆっくりしたものになるとの見方が広がる中、円相場は 円高方向で推移したほか、株価も18,000円台から一時期 14,000円台へ下落するなど、我 が国の金融資本市場も大きな変動を経験した。

加えて、2016年4月に発生した熊本地震によって、家屋や企業の生産拠点などのストッ クが広範にわたり毀損し、最大18万人以上が避難生活を余儀なくされるなど、熊本地方を 中心に甚大な被害が発生した。政策面では、消費税率10%への引上げを2019年10月まで 延期することや総合的かつ大胆な経済対策が2016年6月に取りまとめられた。

2.2.2. 日本経済の問題点

リーマンショック以降の日本経済の問題点としては、物価が上昇しなかったこと、上昇し ないどころか物価の下落が続いたことが挙げられる。2009年は物価がマイナスとなり、そ の後2012年まで物価の上昇がマイナスとなるデフレ経済が続いた。2013 年から消費者物 価上昇率はプラスに転じるも、上昇率は低位で安定した。2012年、日銀の黒田総裁はイン

表2-6 実質経済成長率に対する寄与度(前年同期比) (%)

年度 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

実質GDP成長率 -3.5 -2.4 3.1 0.3 0.6 2.1 -0.4 1.5 1.1

国内需要 -2.6 2.4 1.3 1.4 2.6 -1.1 1.0 1.1

 民間需要 -3.8 2.2 1.1 1.1 1.8 -1.0 0.8 1.0

  最終消費支出 -2.1 0.0 0.9 0.9 0.9 1.5 -1.6 0.4 0.5

  住宅投資 -1.5 -0.5 0.1 0.1 0.1 0.3 -0.3 0.0 0.1

  企業設備投資 -6.0 -2.1 0.4 0.5 0.1 0.5 0.4 0.4 0.3

  在庫品増加

 公的需要 1.1 0.1 0.2 0.3 0.8 0.0 0.2 0.1

  政府最終消費 -0.6 0.6 0.5 0.3 0.3 0.3 0.1 0.1 0.2

  固定資本形成 -4.1 0.5 -0.3 -0.1 0.0 0.5 -0.1 0.1 -0.1

  在庫品増加 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

財サービスの純輸出 -0.2 0.8 -1.0 -0.8 -0.5 0.6 0.5 0.0

 財サービスの輸出 -10.2 -1.4 2.3 -0.2 -0.2 0.7 1.4 0.9 0.3

 財サービスの輸入 -4.4 1.2 -1.5 -0.8 -0.6 -1.2 -0.8 -0.4 -0.4

(出所)大和総研 日本経済予測

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フレ目標として、年2%の上昇を目指したが、2016 年には再び消費者物価はマイナスに転 落している。

金利も低金利の状況が続いている。基準貸付金利は、2008年1月から9月まで

0.75%、2008年10月に0.5%、2008年12月に0.3%、その後2017年7月まで0.3%で 推移。長期金利(国債10年物利回り)各年の6月末の水準は以下の通り低水準である。

為替は2008年から2012年まで一貫して円高で推移したが、2013年から円安に軌道修 正された。2015年には121.04円とかなりの円安となり、輸出企業の業績が向上した。

リーマンショック以降、約4年間低迷していた株価は2012年以降、為替が円安に推移し たことで輸出企業を中心に業績が回復したこともあり、上昇に転じた。株価は2012年以降 アベノミックス効果も加わり2016年末まで上昇した。

2.2.3. 日本経済と株価

日本経済は、高度経済成長期、二度の石油ショック、プラザ合意を経て、1980年代末期 までは、紆余曲折はあったものの、結果的に見て順調に拡大してきた。日本経済のピークは

表2-7 消費者物価上昇率の推移 (%)

暦年 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

消費者物価上昇率 1.1 -1.7 -0.4 -0.1 -0.3 0.9 2.9 0.2 -0.1

(出所)総務省

表2-8 国債の利回り (%)

暦年 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

国債10年利回り 1.606 1.362 1.095 1.138 0.839 0.845 0.564 0.451 0.264 (出所)財務省

表2-9 US/円 為替レートの推移 (%)

 年 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

年間平均レート 103.36 93.57 87.78 79.81 79.79 97.60 105.94 121.04 108.79 (出所)日本銀行

表2-10 日経平均株価の推移 (円)

日経平均株価/年 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

1月末 13,592.47 7,994.05 10,198.04 10,237.92 8,802.51 11,138.66 14,914.53 17,674.39 17,518.30 12月末 8,859.56 10,546.44 10,228.92 8,455.35 10,395.18 16,291.31 17,450.77 19,033.71 19,114.37 (出所)日本取引所

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1989年で、当時は株価も最高値をつけた。1989年は、政局不安・ドル高など不安要因に悩 まされ続けながらも、株価も年初の3万272円から約28.5%上昇した。

市場関係者は日本経済の先行きや株式の展望について、強気一色であった。1989年末時 点において、翌年1990年の株価は、年間で20%程度の上昇が見込まれ、1990年の春先に は4万円を乗せるという見方が大半を占めていたのである。1989年当時、多くのエコノミ ストは、日米金利差縮小から、国内金利の一段の低下を予想し、更なる株価の上昇を見込ん でいた。

当時においては、為替レートについても1ドル140円台前半で比較的安定に推移すると 予想されていた。このような経済・金融環境を背景に、1990年代に入っても、日本経済は、

経済の先行きの指標の1つである株式市場が建設株や不動産関連株が主導するかたちで好 調を維持し続けることで、拡大が継続することを誰もが疑っていなかった38