「加盟国は、独自に創作された新規性又は独創性のある意匠の保護について定める」と
する TRIPS 協定第 25 条第 1 項第 1 文を踏まえている。
また、 意匠法第 4 条 (c) は、 公知意匠又はそれらの組合せから明確に区別できない ( not significantly distinguishable )意匠の登録はできないとしている(意匠法第4条 (c) ) 。 同規定が「明確に区別できない意匠」とする部分は、その文言上、既知の意匠又は既知 の意匠の主要な要素の組合せと「著しく異なるものでない場合」には、当該意匠を新規 性又は独創性のある意匠でないとすることを定めることができる」とする TRIPS 協定 第 25 条 (1) 第 2 段落を踏まえた法制度を導入していると理解することができる。
なお、意匠法第 22 条は、意匠権の効力について定めており、保護の範囲について定
める TRIPS 協定 26 条 (1) との関係は次のように整理される。 製造と、 販売用の公開・開
示については、第三者にそれをさせる場合にも、意匠権の効力が及び違法とされる点ま で定めている。
<意匠権の効力と TRIPS 協定 26 条 (1) との関係>
意匠法第22条上の規定 TRIP協定第26条上
の規定 (1)(a)製造 (1)(b)輸入 (1)(a)販売用の公開・開示
承諾を得ていないこ と
意匠所有者のライセンス 若しくは書面による同意 のある場合を除く
登録意匠所有者の同意の ないこと
登録意匠所有者の同意の ないこと
保護されている意匠 の複製又は実質的に 複製にあたること
登録物品区分の物品に意 匠又はその不正の明らか な模倣
登録物品区分の物品に意 匠又はその不正の明らか な模倣
登録物品区分の物品に意 匠又はその不正の明らか な模倣
商業上の目的がある こと
販売目的 販売目的 販売目的
製造、販売又は輸入し ていること
製造および製造させるこ と30
輸入 物品の販売用に公開若し
くは開示し、又は公開若 しくは開示させること
29 The Patent Office Technical Society, Registration of Designs, p19では、例として、インド鉄道が自社の 物品に使用している標章は、所有者を容易に識別するために使用される財産標章であると説明されている。
30 「登録物品区分の物品に意匠又はその不正の明らかな模倣を適用し若しくは適用させること,又は当該意 匠をそのように適用されることを可能ならしめる意図で何事かをなすこと」(意匠法第22条(1)(a))
意匠法第2条 定義
本法において、主題又は内容に相反する事項がない限り、
(a) 「物品」とは、何らかの製品又は物質であって、人工のもの、又は部分的に人工で部分的に天然の ものを意味し、かつ、製造して個別に販売することができる物品の何らかの部品を含む。
(b)〜(c) <略>
(d) 「意匠」とは、手工芸的、機械的、若しくは化学的の如何を問わず、又は分離若しくは結合の如何を 問わず、工業的方法又は手段により、2次元若しくは3次元又はその双方の形態かを問わず、物品に適 用される線又は色彩の形状、輪郭、模様、装飾若しくは構成の特徴に限られるものであって、製品にお いて視覚に訴え、かつ、視覚によってのみ判断されるものを意味する。ただし、構造の態様若しくは原 理、又は実質的に単なる機械装置であるものを含まず、1958年商標及び商品標法第2条(1)(v)において 定義された商標、インド刑法第479条において定義された財産標章、又は1957年著作権法第2条(c)に おいて定義された芸術的作品も含まない。 (以下略)
第4条 一定の意匠の登録禁止
次の意匠は、登録することができない。
(a) 新規性若しくは独創性のないもの、又は
(b) 登録出願の出願日前又は該当するときは優先日前に、有形の形態の公開により若しくは使用により又 は他の何らかの方法でインドの何れかの場所又は何れかの外国において、公衆に対して開示されたもの、
又は
(c) 公知意匠又は公知意匠の組合せから有意に識別できないもの、又は (d) 中傷的な又はわいせつな事項を包含し又は含むもの
TRIPS協定第25条 保護の要件
(1) 加盟国は、独自に創作された新規性又は独創性のある意匠の保護について定める。加盟国は、意匠が 既知の意匠又は既知の意匠の主要な要素の組合せと著しく異なるものでない場合には、当該意匠を新規性 又は独創性のある意匠でないものとすることを定めることができる。加盟国は、主として技術的又は機能 的考慮により特定される意匠については、このような保護が及んではならないことを定めることができ る。
インド意匠法における具体的対象物毎の保護について現地代理人に確認した結果に ついて、具体的な対象物についての意匠登録の可否については、一般論としては、日本 との間にさほど相違がないように思われる。
<具体的な対象物における日本の場合との比較>
インド 日本
①(アイコン、GUI) 登録できない 一部登録可31
②(タイプフェイス) 登録できない 登録できない(物品ではない)
③ピ クトグラ フ(絵文 字)、シンボルマーク
登録できない(意匠法第2 条(d)で 商標権による保護対象となり意匠登録 できない)
物品の模様として形状に施された模様 としてであれば、保護を受けることが できるが、単独では登録できない
④不動産(ゴルフ場のコ ースデザイン、建築物な ど)
登録できない(著作権の保護対象とな る)
登録できない
⑤椅子、長椅子、テーブ ルか らなる「 応接セッ ト」など、組み合わされ た複数物品のデザイン
登録できる 登録できる(意匠法第8条の組物の意 匠として保護される。ただし、規則別 表第2に掲げる組物の品目に該当する ものに限られる)
⑥絵画、彫刻等のような 芸術的性質のデザイン
登録できない(意匠法第2 条(d)が 芸術的作品は意匠に含まないとする)
登録できない(意匠法第3条1項の工 業上の利用可能性が認められない)
31 GUIについては「意匠法等の一部を改正する法律(平成18年6月7日法律第55号)」により一定の条件
の下、保護されることとなった(平成19年4月1日施行予定)
(2) 先願主義の担保状況
インドでは、審査の段階ではなく、異議の段階で先後願を判断している。すなわち現 地代理人に先願主義の担保状況について問いあわせたところ、以下の回答を得ている。
なお、審査の段階において後願を排除する制度が整備されていないことについては、現 在の出願情報の管理体制にも起因するもののようであるが、現地代理人によれば実務上 大きな混乱は生じていないとの認識のようである。
< Vadehra 氏からの回答>
「審査の段階において、 後願の意匠の権利化を排除することはできない。 意匠法は、
こうした場合に、登録前に主張することを定める規定はない。ただし、意匠法第 19
条 (1)(a) に基づいて、 先願の意匠と後願の意匠が共に特許庁により登録された場合には、
当該意匠がすでにインドで登録されているとの理由により、関係者は後願の意匠の取 消しを求めることができる。
インドでは、出願情報を管理するデータベースが十分ではなく、そのため、異なる 審査官に審査が係属した場合、先願および後願の双方に対して権利が与えられる可能 性がある。もっとも、そのような混乱が頻繁に生じるということではない。
先行技術、先行文献ないし事実の調査のためのデータベースは完全にはコンピュー タ化されていないのであって、そのような場合インドでも手動で調査を行っている状 況にある。しかしながら、出願日と出願人に関する事実についてのデータベースにつ いては、きちんと管理され、更新されている。そのため、出願が先になされたかどう かを確認する上での混乱はめったに生じない。 」
また、自己の先願と、類似する自己の後願が、同じ審査官に審査が係属した場合につ いては、以下の回答を得ている。
< Vadehra 氏からの回答>
「一方の出願についての問題があることが通知され、出願人が取り下げることにな るか、拒絶査定について、意匠局においても解決がみられなければ、裁判において争 われることになる。 」
意匠法第19条 登録取消
(1) 利害関係人は、次に掲げる理由に基づき、意匠の登録後いつでも、意匠登録の取消申請を長官に提出 することができる。すなわち、
(a) 当該意匠が先にインドで登録されている。又は (以下略)