現行商標法では、無効審査・審判の申請は、利害関係人が( any person aggrieved ) 、 登録官又は知的財産審判部に対し行なうことができる(商標法第 57 条) 。商標登録局の 判断に対し知的財産審判部へ審判請求できる期間は登録官の命令又は決定の通知を受 けてから 3 月である(商標法第 91 条)
50。
⑤ その他
特許意匠商標総局の年次報告書によると、 IPAB での審理は、 2004 年 4 月から 2005 年 3 月の間に、 39 件なされたと報告されている
51。
(9) 商標冒認出願への対抗手段
無権代理人又は権限のない代表者により登録された標章に対する異議申立について、
法律に規定されている(商標法第 146 条) 。パリ条約第 6 条の 7(3) は、権利を行使する ことができる相当の期間を法令で定めることができるとし、インドの商標法では行為を 知ってから 3 年以内にされなければならないとしており、日本の商標法が期間を設けて いないのと異なるので注意を要するだろう。
( Vadehra 氏からの回答 )
「同条は標章が登録されている分類に類似した分類の商品又はサービスについて権 限なく標章を登録しようとする代理人と、標章が登録されている分類とは異なる分類 に商品又はサービスについて権限なく標章を登録しようとする代理人の両方に適用さ れる。 」
商標法第146条 無権の代理人又は代表者により登録された標章
登録商標の所有者の代理人又は代表者が委任を受けずに自己の名義で標章を使用し、登録しようとし又 は登録するときは、当該所有者は、出願された登録に対して異議を申し立てる権利を有し、又は自己に
50 審判部の決定に対して不服がある場合の手続きについては、第1章、1−3商標、(2) 現行商標法における 主な改正事項、⑨知的財産審判部の設置を参照(p. 31)。
51 Office of the Controller General of Patent, Designs, Trade Marks and Registrar of Geographical Indication, Annual Report 2004-2005., p43.
対する譲渡により自己を前記標章の登録所有者になすべく、登録簿のその取消若しくは更正を確保する 権利を有する。
ただし、前記行為は、当該商標の登録所有者が当該代理人又は代表者の行為を知ってから3年以内にさ れなければならない。
<日米欧>
日本:正当な理由がなく、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理 人若しくは代表者等によってなされた登録については、その商標に関する権利を 有する者が、登録を取り消すために審判を請求することができる(日本商標法第 53 条の 2 ) 。
米国:出願の際に、 「真実宣言をする者が自己を又はそれを代表して自己が真実宣言を する法人を、登録が求められる標章の所有者であると信じる旨」の宣誓供述書を 提出する( 15 U.S.C. 第 1059 条) 。宣誓供述書における虚偽の陳述は特許商標庁 に対する詐欺となるため
52、取消の対象となる( 15 U.S.C. 第 1064 条) 。
欧州:代理人又は代表者の名義により登録された共同体商標の使用の禁止について規定 されている(共同体商標理事会規則第 11 条) 。
<参考条文>
パリ条約第6条の7 代理人、代表者による商標の登録・使用の規制
(1) 同盟国において商標に係る権利を有する者の代理人又は代表者が、その商標に係る権利を有する者の 許諾を得ないで、1又は2以上の同盟国においてその商標について自己の名義による登録の出願をした 場合には、その商標に係る権利を有する者は、登録異議の申立てをし、又は登録を無効とすること若し くは、その国の法令が認めるときは、登録を自己に移転することを請求することができる。ただし、そ の代理人又は代表者がその行為につきそれが正当であることを明らかにしたときは、この限りでない。
(2) 商標に係る権利を有する者は、(1)の規定に従うことを条件として、その許諾を得ないでその代理人 又は代表者が商標を使用することを阻止する権利を有する。
(3) 商標に係る権利を有する者がこの条に定める権利を行使することができる相当の期間は、国内法令で 定めることができる。
(10) 故意でない侵害行為
① 登録商標の使用が侵害となる場合
登録商標の使用が侵害とされる場合とは、商標法上以下の場合を指す。これらの行為 がなされた場合には、原則として差止めの対象となる。損害賠償の救済が認められるか 否かは、行為者の主観的要素(故意・過失)の有無による。ただし、損害賠償のうち、
名目的損害賠償(いわゆる法定損害賠償の救済)については、故意・過失がない場合で も救済として与えられる。 なお、 我が国の不法行為法は填補賠償を原則としているので、
そのような名目的損害賠償の制度は基本的に認められていない。
<商標侵害となる使用の類型>
行為の類型 該当条文
登録商標を自己の商号若しくは商号の一部として、又は指定商品若しくは役務を取り 扱う会社の社名若しくは社名の一部として使用する者
第29条(5)
52 Bryan, Fraud in Trademark Procurement and Maintenance, 61 TMR 1 (1971)参照。
商標を商品又は商品の包装に貼付する場合 第29条(6)(a) 登録商標の下で、商品を販売のため申出し若しくは展示し、市場に出し、又はそれら
の目的で貯蔵し、又は登録商標の下で役務を申出し若しくは供給する場合
第29条(6)(b) 商標の下で商品を輸入し、又は輸出する場合 第29条(6)(c) 登録商標を営業文書又は広告に使用する場合 第29条(6)(d) 登録商標を、営業文書として商品に貼付け若しくは商品を包装するため、又は商品若
しくは役務の広告のために使用することを意図する材料に適用する者。(※ )
第29条(7) 商標の広告が、(a)工業又は商業事項における善意の慣行を不当に利用し、かつ、それ
に反する広告、又は、(b)その識別性を損なう広告、又は、(c)当該商標の評判に反す る広告である場合
第29条(8)
文字商標の場合、その口頭使用、及び視覚的表現によって、侵害される場合がある 第29条(9)
(※ )ただし、「登録商標を、営業文書として商品に貼付け若しくは商品を包装するため、又は商品若し くは役務の広告のために使用することを意図する材料に適用する者」(商標法第29条(7))については、「そ の者が当該標章の適用時に、当該標章の適用が所有者又は使用権者により正当に授権されていないことを 知っていたか又はそのことを信じるに足る理由がなければならない」とされ(商標法第29条(7)但書き)、
このことが立証されなければ、そもそも、商標侵害の対象となる「使用」とならない。