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第4節 本研究の目的と方法

3 本研究の方法

以上から、本研究は、次のように論を進める。

すなわち、第1章では、まず、「千成提言」の経緯とそれに関連する教科論等を検討する。

そして、千成提言に同調して理論を展開した八木正一、吉田孝の学力論や教育内容論、授 業構成論について述べ、教育内容論が確立していく過程について明らかにするとともに、

千成提言をめぐって起きた論争の対立点を明らかにする。さらに、1982年の日本音楽教育

学会において「教育内容」という用語の定着が見られたことを明らかにする。図0-1の

①にあたる部分である。

日本音楽教育学会において用語の定着が見られる頃からは、教育内容を中心とした授業 構成による具体的な授業プランが次々に発表されて、一般に周知され、また実践された。

そのことをもって、音楽科において教育内容論が成立したと見ることができる。また、授 業構成論や具体的な授業プラン開発が行われるようになって、教育内容の定義は様々に変 化した。また授業の実際に応じて、授業プラン自体もその構成や長さに変化が見られるよ うになっている。このような1980年代における教育内容の定義や授業構成の変化について は第2章で明らかにする。図中の②にあたる部分である。

学習指導要領においては、戦後初期に推奨された単元構成から1958(昭和 33)年告示の 学習指導要領の実施時期には題材構成にかわり、音楽科において教育内容論が提起された 1980年代にいたって、「主題による題材構成」が着目されはじめた。主題による題材構成 は、教材を構成する形で示され、その点で、教育内容を中心とする授業構成と形式上に類 似点が見られる。しかし、学習内容は大きく異なっており、教育内容論をとる立場の研究 者らから、戦後初期の単元とあわせて、単元論・題材構成論が展開されている。また、こ の当時、千成らの教育内容論を批判した山本らは、創造的音楽学習研究の立場で教育内容 について論じるようになっている。図中の③に当る部分である。その一方で、授業研究の 中心が授業過程研究に移ってきた 1990年代あたりから、八木らの研究は、教師の意思決定 や学習者レベルの研究から授業システムをとらえるようになっている。図中の④の部分で ある。3章では、これらの単元論・題材構成論の授業構成や創造的音楽学習の立場からの 教育内容研究を考察し、そのような状況下における、千成らの教育内容論の新たな展開を 検討する。

2000年になって、八木によって授業パラダイムの転換が提唱されはじめると、教育内容 は関係論的にとらえられるようにもなった。これは、当初の千成らの教育内容論からする と大きな転換である。一方、学習指導要領においては〔共通事項〕が示され、実体的にと らえる教育内容が広く現場で追究されるようにもなってきた。この時期から現代にいたる 新しい教育内容論とその授業構成については第4章でまとめる。そして、現状の音楽科の 授業から、教育内容の設定と授業構成の関係を分析する。図中の⑤の部分である。

終章では、以上をふまえ、音楽科における教育内容研究の成果と課題を考察し、教育内 容について新しい定義づけを試みる。そして、教育内容の設定による授業構成を提案する。

図0-1 (作図:著者)

1 千成俊夫が日本音楽教育学会第11回大会のシンポジウムにおいて行った提言は、下の

154-155頁に収録されている。

「シンポジウム 教材の条件 司会 愛知教育大学 水野久一郎、パネラー 国立文化研 究所 柿木五郎、パネラー 大阪教育大学 柳生力、パネラー 広島大学 千成俊夫」(日本 音楽教育学会『音楽教育学』10巻, 1980, 148-159)

2 本稿で述べる学習指導要領とは、昭和 33年以降においては、小学校学習指導要領、中 学校指導要領を指す。

3 文部科学省HP「学習指導要領等の改訂の経過」(文部科学省 HPより 2014/10/24ア クセス)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/__icsFiles/afieldfile/2011/03/30/1304372_001.pdf

4 島崎篤子は、「ブロック方式」に関して、「B活動自体を開放的・感動的なものにする と友に、子どもの創造性や自主性を生かす活動にする必要がある」として宮城サークル が提案したと述べている(島崎:2013, 121)。

5 これは、1981年には 25段階80ステップに改訂されている(山本:1981, 130-134)。

6 『音楽指導クリニック』シリーズは、『音楽指導クリニック 100のコツ』(八木正一編

著、学事出版、1990)に始まり、『音楽指導クリニック10 音楽授業のおもしろ教材・

教具』(八木正一、山田潤次、学事出版、1997)まで続いた。その後、『新・音楽指導 クリニック1 新しい発想でつくる音楽授業・教材-新学習指導要領を活かす』(八木正 一編著、学事出版、1999)につながっていき、『新・音楽指導クリニック10 クイズ教 材でたのしむ日本音楽の授業』(田中健次・八木正一, 学事出版, 2011)まで出版され ている。

7 藤岡信勝が提唱した用語である。以下のように定義されている。

「発問、指示、説明から始まって、教具の提示や子どもの討論の組織におよぶ、現実に

子どもと向かう場面での教師の子どもに対する多様な働きかけとその組み合せ」(藤岡 信勝「教材を見直す」, 岩波書店『岩波講座 教育の方法3 子どもと授業』, 1987, 178-179)

8 たとえば「授業における教師の意思決定モデルの開発」(吉崎静夫、日本教育工学学会

『日本教育工学雑誌』12(2),1988, 51-59)、『教師の意思決定と授業研究』(吉崎静夫, ぎょうせい, 1991)などがある。

9 課題研究のまとめは、以下に掲載されている。

・「授業研究の『方法』を創る-93年度のまとめ-」(日本音楽教育学会『音楽教育学』

23(2), 1993, 61-72)

・「授業研究の『方法「授業研究の『方法』を創る-課題研究のまとめ-」(日本音楽教 育学会『音楽教育学』24(3),1994, 72-83)