第 2 章 SCM 戦略構築の理論体系に関する研究
2.3 SCM 戦略論の展開
2.3.3 戦略展開論と設計論
SCM
戦略の展開に際しては, 経営戦略の一環として展開する方法とSCM
戦略システム設 計論の立場から接近する方法とがあるが, 両者は目標設定の段階で同一になる(図2.29)。
戦略の基礎理論とは
SCM
戦略論を個々に支える理論であり, システム設計論とこれに 拘わる理論をベースとしたものであり, SCM戦略の構造とは, 経営戦略論の一環としての 本源的かつ理論的な戦略論である。31
図
2.29 二つの接近方法
2.3.3.1 SCM
プロジェクト戦略フレームワークSCM
戦略の遂行に際して肝要な事は, 上位戦略及び関連戦略との関係を時には配慮し, 又時には無視するという臨機応変ないしは柔軟な戦略的発想である。具体的には,プロジ ェクト計画として既存概念に捉われない, 自由な発想に基づく戦略的思考こそが期待さ れているからである。特に, SCM戦略の中核となるチャネル戦略と共同化戦略の遂行に際 しては, 既存概念に捉われない新機軸且つ大胆な戦略が要請されるからである(図2.30)。
図
2.30
経営重点課題分析とSCM
戦略SCM
戦略のフレームワークを示すと図2.31
及び図2.32
の通りである。既述の戦略フレ ームワークにて指摘しているので重複を避けるために本項では簡述するに留める。即ち,・SCMプロジェクト戦略は総合経営戦略を配慮して戦略策定を実施する。但し, 総合経営 戦略の制約に縛られずに, 独自の戦略を策定し, しかる後に調整する。
・SCM戦略のフレームワークは経営戦略のフレームワークに準拠する。但し, 手法や発想 は制約されない。
ここで提案する戦略フレームワークはあくまでも一つの提案であって絶対的なもので はない。著者が経営戦略, 特に多国籍企業の戦略論を展開しているフレームワークをベー スに
SCM
戦略論に応用し, 新しく戦略論として理論を展開したものである。従って, フレ ームの中心は, 環境分析, 目標設定, 戦略策定であり, これに内外環境の変化が当該フ32
レームワークに影響を及ぼす因子である影響要因, 更には当該戦略遂行上内部組織内で 解決しなければならない隘路事項, 戦略遂行上必要となる諸資源の検討, 及び従来とは 異なる分野の業務等についてをフレームワークに取り入れたことである。
図
2.31 SCM
プロジェクト戦略フレームワーク出典:陳玉燕, 唐澤豊, 若林敬造, 井上敬介, 生島義英, 豊谷純, SCM戦略論の基本的研究と戦略フ レームワークの提案, 日本ロジスティクスシステム学会誌, Vol.14, No.1, p.80, 2014年
12
月図
2.32 SCM
プロジェクト展開フレームワーク出典:唐澤豊著, 情報システムの分析と設計, p.37, 1988年
4
月, 唐澤豊著, 物流概論, 有斐閣, p.287,1989
年4
月, 陳玉燕, 唐澤豊, 若林敬造, 井上敬介, 生島義英, 豊谷純, SCM戦略論の基本的研究と戦略フ レームワークの提案, 日本ロジスティクスシステム学会誌, Vol.14, No.1, p.80, 2014年12
月33 2.3.3.2
戦略展開の基本プロセス(1)環境分析
環境分析を要約すると表
2.9
の通りである。主たる要素としては, チャネル類型, 支配 類型(流通), 推進主体類型, 発展類型であるが, 推進する中核として, 調整機能と共同 化機能が特に重要な機能である。一例を示すと, 問屋等を経由して商取引が行われる伝統 型チャネル, 子会社である直販会社を経由商取引が展開される販売会社型チャネルなど のチャネル特性, 共同化等を推進する際に重要となる川上・川中・川下チャネルで指導権 を発揮している型を示す支配類型或は主導類型等である。(2)目標設定
環境分析によって目標設定は明確になる。つまり, 目標設定に必要な
SCM
の目標が洗い だされるからである。一般に, 目標は定量目標と定性目標の二つから構成されている。定 量目標とはコスト削減や収益目標の様に, 数値目標を設定できる領域の項目であり, 定 性目標は定量化できない目標で提携目標, 調整目標 , 組織目標, 制度目標である (表 2.10)。
目標と戦略の関係は相互作用するものである。つまり, 目標が高すぎて戦略の手の打ち ようがない場合などは設定された目標を修正するし, 設定された目標が戦略から見て低 過ぎる場合には目標数値を高めに修正する。
従って, 一般に, 「目標数値は挑戦的な数値でなければならないが, 達成可能な数値で なければならない」と云われている。
表
2.9
環境分析要約表(注)環境分析は市場環境, 競合環境, 技術環境, 法環境等種々存在するが本表では流通環境の一例を示したに過ぎない。
出典:陳玉燕, 唐澤豊, 若林敬造, 井上敬介, 生島義英, 豊谷純, SCM戦略論の基本的研究と戦略フ レームワークの提案, 日本ロジスティクスシステム学会誌, Vol.14, No.1, p.81, 2014年
12
月34 (3)SCM
戦略策定目標設定の実現方法を思考するのが戦略策定である。換言すれば, 目標実現の爲の知恵 や叡智の提案である。経営戦略或は
SCM 戦略では戦略策定とその実現こそが主要課題で
ある事は云うまでも無い事である。①SCM戦略のフレームワーク
SCM
戦略のフレームワークを示すと図2.33
の通りである。即ち, 戦略立案のプロセス は, 戦略領域, マクロ戦略, 個別戦略, そしてミクロ戦略ともいえるパラメータ戦略へ と細分化される。戦略領域としては, 大雑把に分けて, グロ-バル戦略か, 国内戦略か, 或は両者を含むかを決定し, 次いで, スピード戦略等マクロ戦略に目を向ける。マクロ戦 略を確立し, 個別戦略に移行する。立地戦略, チャネル戦略等がそれである。当該プロセ スは一例であるが, 一般的にマクロからミクロへと細分化されれば良いのであるから, 当プロセスを遵守しなければならない事はない。戦略策定者が戦略展開に際して実現可能 プロセスであれば如何なるプロセスでも良い筈である。②SCM戦略策定の要素
SCM
戦略遂行の核となる要素を要約すると図2.34
の通りである。スピード・コストダ ウン・品質等を同時に又は個別に満足する事を前提に, チャネル・共同・標準化・開発・人事教育・ネットワーク・システム・最適化等を戦略のコアーとして推進し, 実現する事 である。又, 主要パラメータ(図
2.35)としては, コストミニマム・最小在庫・最小リー
ドタイム・アウトソーシング・JIT・最大能力・時間待ち最小・公害最小・ミックス等を あげる事が出来るが, SCMリードタイム最小や生産のリードタイム最小の様にリードタイ ム最小を目標関数として取り上げ, 結果としてコスト最小を期待する方法が注目されよ う。35
表
2.10 目標設定
図
2.33 SCM
戦略のフレームワーク図
2.34 SCM
の核と戦略要素出典:陳玉燕, 唐澤豊, 若林敬造, 井上敬介, 生島義英, 豊谷純, SCM戦略論の基本的研究と戦略 フレームワークの提案, 日本ロジスティクスシステム学会誌, Vol.14, No.1, p.81, 2014年
12
月36
図
2.35 SCM
の主要戦略パラメータ要素出典:陳玉燕, 唐澤豊, 若林敬造, 井上敬介, 生島義英, 豊谷純, SCM戦略論の基本的研究と戦略フ レームワークの提案, 日本ロジスティクスシステム学会誌, Vol.14, No.1, p.81, 2014年
12
月在庫最小型のパラメータは単に従来型のサービス率と在庫投資のトレードオフのみで はなくて, 在庫総費用と輸配送費のトレードオフをも配慮すべきであるし, システム的 には在庫レス方式も大きな戦略的な要素になる事を配慮すべきである。在庫費用を最小に すると云う事は在庫を前提としたシステムを考えている帰結に他ならない。在庫を零にす れば, トレードオフ理論は不必要になる。当にシステムがシステムである所以である。
(4)隘路事項・影響要因・諸資源の検討等
隘路事項とは
SCM
戦略遂行に際して関連部門を含め自部門で解決出来ない問題をリス トアップし, その問題解決を図る事を意味している。簡略的には, 戦略遂行上自己解決不 能な問題を整理し, 解決する事を意味している。他方, 影響要因とは, 例えば, 設定した環境条件が大幅に狂った際にその影響を可測 可能にし, 数値的に因果関係を解明出来る様にする事や役員交代等によって不測の事態 が生じるような場合に備えて事前に配慮する事を意味する斧である。
諸資源の検討とは, 目標や戦略が如何に優れたものであっても, 此れを安全に遂行す る資源を事前」に吟味しなければならない事は当然の事である。財的資源, 人的資源, 技 術的資源等経営資源の総括及び検討をし戦略実現に万全を期す要素である。
新規ビジネスは, 戦略期間中に既存ビジネスに新たに追加されるビジネスで, 物の流 れの戦略・計画・管理・運営は不可欠の要素である。従って, 新規ビジネスの