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第 7 章 結論

7.1 成果のまとめ

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92 で,分析結果の理解に長けている分析者よりも,要因の特定率が高く,ARの表 示効果が認められた.

また,作業者へのヒアリングから,ARの直感的な表示の効果が認められた.

これまで作業者自身が,通常の作業の中で気付いたときに改善を行っていたが,

分析結果の理解の難しさから分析結果を使った定期的な改善作業としては管理 者が行っていた.しかし,ARで直感的に分析結果を提示することで,作業者自 身が時間のかかっている場所を把握することができ,作業者自身で定期的な改 善が行えるようになる.また,その際には,目的の間口以外についても自発的 に改善活動ができ,より高い効果が期待できる.管理者についても,これまで テキストでのロケーション番号と数値で分析を行っていたが,よりストレスな く改善箇所の把握ができると期待できる.

以上より,タブレットにより,分析結果を AR により可視化する倉庫内可視 化ツールの実用性が認められた.

(2). ピッキング作業指示へのAR活用

物流倉庫におけるピッキング作業の作業効率向上のため,透過型 HMD を用 いて AR で直感的にピッキング作業指示を行う AR ピッキングシステムを開発 した.透過型 HMDを用いた ARによるピッキング指示では,ハンズフリーに よる作業生産性の向上や,AR による直感的な指示による作業者のストレス軽 減が期待できる.

その際,現状の透過型 HMDを用いた ARピッキングの実用化のために,検 証実験を通して抽出した課題に対して,処理速度の改善,表示位置の調整,UI の改善を行い,すべての課題に対して改善効果が認められた.

改良した AR ピッキングシステムを用いて,模擬ピッキング環境で,複数の 仕分け先への商品を一度にピッキングするマルチピッキング作業を行った.そ の際,ARによる指示及びテキストによる指示を実施し,作業生産性,作業ミス,

疲労度や表示画角について,比較評価した.

AR を用いた指示による作業生産性は,テキストによる指示の半分程度であ り,作業生産性の向上には至らなかった.また,作業ミスについては,ARとテ キスト間で有意差は認められなかった.疲労度については,アンケートから 4 名中3名の被験者において AR 指示の疲労度が高く,注視時間を減らす工夫が 必要であることが分かった.被験者は,AR指示の際に,指示表示をディスプレ イ領域に入れるため,棚から離れて表示を確認しており,画角の狭さが障害に なっていることが明らかとなった.このときに離れた距離と,透過型 HMD の 表示画角から,本来必要な表示画角を算出した結果,透過型 HMD の表示画角

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(対角)は約70度必要であることが示唆された.使用した透過型HMDは,中程

度の棚でのピッキング作業では,表示領域が狭く十分な条件を満たせていない ことが明らかとなった.現状の市販の透過型 HMD をピッキング作業に活用す る場合は,表示画角の観点から部品のピッキングなどの小さな間口を対象にす るのがよい.

(3). 透過型HMDにおける画角の影響の分析

(2)のピッキング指示へのAR活用のためのARピッキングシステムの検証によ

り,表示画角が生産性への障壁の一つとなっていることが明らかとなった.そこ で,透過型HMDの表示画角の物流ピッキング時の生産性への影響について,よ り具体的に明らかとするため,検証実験を行い,分析を行った.

そのために,描画遅延などの画角以外の影響を排除した AR ピッキングシステ ムを再現した VR ピッキングシステムを開発した.VR ピッキングシステムによ り,テキスト指示および複数の表示画角での AR指示によるピッキング作業を行 い,比較検証した.

比較検証を行う表示画角(対角)は,一般的に市販されている AR 向け透過型 HMD同等の 23度,市販されている AR向け透過型 HMDの最大画角の 40度,

(2)でピッキングに必要と推測された 70度,実験に使用した不透過型 HMD で再

現できる最大画角である110度とした.また,物流倉庫で扱われる商品の保管棚 のサイズは様々であるため,3サイズの間口をVR環境で再現した.

その結果,ARによる作業指示のピッキング作業生産性には,HMDの表示画角 が影響していることが明らかとなった.テキスト指示を上回る作業生産性を実現 するためには,HMDの表示画角は 40度,ピッキングの作業生産性を更に向上さ せるには,70度必要であることが明らかとなった.

現状の市販の透過型 HMDでは,表示画角 70度を満たすものはなく,ハードウ ェアの進化が望まれる.

また,AR 指示は作業場所の指示に効果的であることも明らかとなった.一方 で,場所の特定が容易な作業では,AR ではなくテキストが有効であることも明 らかとなり,適材適所での活用が必要である.

以上の取り組みから,実用化の範囲を整理した.

タブレットは,分析データの可視化による分析作業支援では効果が認められ AR 実 用化の可能性が明らかとなった.このようなハンズフリー機能が求められない分析や 教育などの作業には,タブレットでのAR活用が可能である.

一方で,ピッキング作業のようなハンズフリー機能が求められる作業については,

94 直感的な把握の観点から,透過型HMDを用いた AR活用が望まれる.しかし,ピッ キング作業は,移動を伴うため作業範囲が広く,透過型HMDの表示画角などの観点 から,AR表示ではなく,テキスト表示などのAR以外の指示表示を行う必要がある.

また,作業スピードやハンズフリー機能が求められる作業であっても,梱包・検品 作業や移動を伴わない狭い範囲でのピッキング作業などの,現状の透過型HMDの画 角に収まる範囲での作業であれば,透過型HMDを用いた AR活用の実用化が可能で ある.