第 4 章 ピッキング作業指示への AR 活用
4.4 AR ピッキングシステムの開発
4.4.1 システムの改良
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52 図 4.10 表示位置ずれの原理
カメラ画像との表示位置のずれの幅は,近いものほど大きく,遠いものほど小さく なり,対象までの距離に応じて異なる(図 4.11).
図 4.11 表示位置ずれの大きさ
そこで,異なる 2つの距離でのずれの幅をあらかじめ測定し,ずれの幅を補正する ためのパラメータを作成するキャリブレーションを実施した.
キャリブレーションの手順を図 4.12 に示す.まず,視界の中にあるマーカーと,
透過型ディスプレイに表示されている矩形が一致して見えるように前後左右に移動し,
表示が一致したら一致したことを示すためマウスをクリックする(ステップ 1).内部 では,その際の撮影画像内で認識したマーカーの座標と,ディスプレイ上の矩形の座 標を一致させるパラメータを算出する.同様に,異なる大きさの矩形に対して同様の 手順を行う(ステップ 2).
53 取得したパラメータを用い,認識物の距離に応じてずれの幅を計算することで位置 の補正を行う.パラメータは個人により異なるため,事前に作業者からパラメータを 取得する必要がある.
図 4.12 キャリブレーション手順
(3). 表示UIの改善
課題 1-B ディスプレイ表示領域の狭さ,2-A表示が欠ける,2-B 作業位置の視界が 見づらい,の課題を解決するため,表示UIの改善を行った(図 4.13).
図 4.13 改善 UI
54 UIの詳細を説明する.
① ディスプレイ表示領域の表示
視界の中のどこが表示領域なのかが分かりづらく,そのために,狭い表示領域 内に認識対象を収めるのに時間がかかったり(課題 1-B),表示を不自然に感じた りしていた(課題2-A).そこで,表示領域を明示するため枠を表示した(図 4.14).
これにより,表示範囲が明確になり,表示範囲外の表示が欠けていても不自然さ を感じなくなる.また,ディスプレイ表示領域の端に見える間口について,間口 が作業対象であるが表示範囲内に入っていないために表示がされていないのか,
間口が作業対象外で表示がされていないのかの判別がつかず,本来のディスプレ イ表示範囲よりもさらに狭い範囲に確認したい対象間口(認識対象)を収めて,確 実に表示の可否を判別して時間がかかっていたと考えられる.表示範囲を明確に することで,確認したい対象間口をどこに収めるべきかが分かり,無駄な動きが 減る.
図 4.14 ディスプレイ表示範囲の提示
② ピッキング指示の表示
検証システムでは,ピック個数を作業棚に重畳した矩形の中央に表示していた.
そのため,認識対象(カメレオンコード)とピックすべき個数指示のどちらに注目 し,狭い表示領域内に収めるべきか混乱してしまい,時間がかかっていた(課題
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B).そこで,認識対象(カメレオンコード)とピック個数指示の表示位置を一致さ
せ て 重 畳 す るこ と で , 狭い 表 示 領域 に収 め る べ き 対 象 を 分 か りや す く する(図 4.15).
図 4.15 ピッキング指示の表示
③ ピッキング場所の指示表示
課題2-B作業位置の視界が見づらいという課題を解決するため,ピッキング場 所を配色した矩形から枠線の表示に変更した.これにより,作業位置に近づきす ぎた際に,作業位置を示すべた塗りの矩形表示がディスプレイを覆ってしまう問 題を解決した(図 4.16).
図 4.16 ピッキング場所の指示表示
④ 作業対象外の表示
課題1-Bで,狭い表示領域を使って,重畳表示の遅れもある中で,作業位置を 示すマーカーを探す際,全てのマーカーを順に確認していく必要がある.
このとき,情報が重畳されないマーカーなのか,重畳が遅れているために表示 されていないだけなのかを判断することができない.そのため,対象ではない間 口に対して,重畳表示があるか確認するため,重畳の遅れ以上の時間をかけて確 認する必要がある.そこで,作業対象に指定されていない棚位置に設置したマー カーには,対象外であることがわかるマークを表示し,対象でない場合の表示の 確認が,表示の遅れ以上にならないようにした.これにより,作業位置を見つけ る手がかりとする(図 4.17).
56 図 4.17 作業対象外の表示
⑤ ピッキング場所の方向の表示
表示領域の表示画角(対角)の 18-23度に対し,カメラの画角(対角)は43度と広 い(図 4.5).課題1-Bでは,狭い表示領域を使って,すべての間口を確認し対象物 を探し出すために時間がかかっていると考えられる.作業位置のマーカーを最短 の時間で探し出せるように,対象のマーカーの方向を矢印で表示し,作業位置を 見つける手がかりとする.このとき,マーカーが表示領域内に入っていないがカ メラの撮影範囲内であることを利用してマーカーの方向を認識して表示した(図 4.18).
図 4.18 ピッキング場所の方向の表示