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3.3 中退要因連関分析

3.3.1 中退要因連関

  研究目的の第3は「高校に入学してから,中退に至るまでの中退要因連関   を,時間の経過にそって個人別に明確にする」である。

 つまり,中退者個々の中退までの中退規定要因の連関が,どのように構成されてい るのか,また,その規定要因は何か,この点を中退要因連関分析によって明らかにす ることである。

 中退規定要因の抽出の手続きは,以下の通りである。

 1.中退者の出来事連関図(図3−2から図3−23)をもとにして,図3−27から図3−48に   示すような,高校入学から中退に至る過程において,中退に影響をおよぼした規   定要因の因果連鎖を示した,中退要因連関図を作成した。

 2.中退規定要因の因果連鎖に関しては,出来事連関図に加えて,再度インタヴュー   を実施し,本人による確認をとりながら作成している。

 3。各図の中退規定要因上にある時期は,その要因が生起したと指摘された時期であ   る。また,実線矢印は因果連鎖とその関係性を時系列的に示したものである。

 4.各図のセンターライン上に位置する規定要因は,最も強い影響を与えた中核的な   規定要因である。また,センターラインより上段に位置する規定要因は,中退に   強い影響を与えており,下段は上段よりも弱い影響を与えている規定要因である。

  これらの要因の強弱関係は,すべて調査時における中退者本人の判断によるもの   である。

 5.全サンプルの属性と中退規定要因の分類・整理は表3−1に示す通りである。

87

3.3.2 分析結果と考察

 この中退要因連関図および中退規定要因整理表より,以下の点が指摘される。なお,

括弧内の比率は,当該関係のサンプル数を集計し,総サンプル数で除した比率を表わす。

 1.単一の中退要因で中退している事例は皆無であり,3要因から5要因(平均3.7要   因)にわたって,規定要因が出現している。

   中退を規定する要因は複数であり,単一の要因ではないことが示された。また,

  事例の中には問題行動を繰り返すというような,規定要因が重複しているものも   少なくなく,中退の複雑さがうかがえる。

 2.中退時期で最も多い学期は,1年3学期(45%)であり,次いで1年2学期(36%),2   年2学期(14%),2年3学期(5%)と続いている。

   1年2・3学期でおよそ8割を占めることは特徴:的である。

 3.中退の発端となる要因(各図の左端に位置する要因)が生起した時期で最も多いの   は,入学以前および1年1学;期(86%)である。

    このことから,不本意入学のように,高校入学以前において中退の発端が出   現しているか,もしくは,入学後すぐに生起するような状況であったと推測でき   る。入学直後の学校側の対応が課題となろう。

 4.中退に直接的に結びついた要因(中退に直接実線が結ばれている要因)が生起した   時期で最も多いのは,入学以前および1年1学期(68%),次いで1年2学期(32%)

   となっている。

 5.中退規定要因として,次の12の要因が確認される。

 なお以下で,鈎括弧内は要因名,丸括弧内の数字は中退者が指摘した頻度の比 率,おもな中退者の声を示している。

88

(1) 「学校嫌い(64%)」

 学校やクラスの雰囲気が嫌いになった。学習内容が自分の思っていたこと   と違った。学校で何をするのかわからなくなった。学校に対して興味がなく  なった。学校で叱られたりすることが嫌になった。学校がつまらないかった。

(2)「問題行動(59%)」

 喫煙,バイクの無免許運転,飲酒,シンナー,喧嘩,深夜俳徊などをした。

 いじめをした。

(3) 「仲間集団(41%)」

 同じ学年の友人や上級生,無職少年に誘われて行動していた。いつも友達と  一緒に行動していた。

(4) 「学業不振(36%)」

 成績不振で進学できない。テストの成績が悪い。学習内容が理解できない。

(5) 「進路変更(32%)」

 早く就職したい。自分の入りたい専修学校に行きたい。自分にあった学校が  あると思った。

(6) 「不登校(32%)」

 学校に行けない。学校に行きたくない,行かない。学校を欠席した日数が多  すぎた。

(7) 「不本意入学(27%)」

 最初から入りたくない高校だった。無理やり行かされた。仕方なく行った。

 希望高校が不合格となった。

(8)「教師不信(27%)」

 教師が信用できなくなった。教師に信用してもらえなかった。教師にやめう   と言われて嫌になった。教師に反感を持った。教師と対立することが多く  なった。教師が冷たかった。

      89

(9) 「放任家庭(23%)」

  家に帰っても両親がいない。自分の行動に両親が無関心である。家で好き勝   回していた。

(10) 「仲間はずれ(18%)」

  クラスに友人がなく,孤立していた。仲間はずれにされた。友達と信頼関係   ができなかった。

(11) 「別居生活(5%)」

  下宿生活になじめなかった。不規則な生活がきつかった。

(12) 「病気・けが(5%)」

  病気をして欠席が続いた。

6.中退の中核となった規定要因(中退要因連関図のセンターラインにある規定要因)

 の中で,最も多かった要因は,「問題行動(32%)」であり,「学校嫌い(18%)」,「進  路変更(14%)」および「仲間はずれ」,「学業不振(9%)」および「教師不信」,「不  本意入学(5%)」と続いている。また,「仲間集団」,「不登校」,「放任家庭」,「別居  生活」,「病気・けが」については指摘されていない。

  97年度における文部省の中退に関する調査で,最も高い割合を示した「進路  変更(43.3%)」が,ここでは低い数値を示している。つまり,中退者は,在学中  に明確な自己の進路計画を持って中退しているわけではないことが明らかとなつ  た。そして,同調査で低い数値を示した「問題行動(4.7%)」が,逆に,高い数値  を示していることは特徴的である。

90

表3−1 中退者の中退規定要因の分類および整理 8 中退規定要因

1番    号

2氏名 3性別 4現在の年齢 5校種 6中退の時期 7職業の状況 ①学校嫌い ②問題行動 ③仲間集団 ④学業不振 ⑤進路変更 ⑥不登校 ⑦不本意入学 ⑧教師不信 ⑨放任家庭 ⑩仲間はずれ ⑪別居生活 ⑫病築けが

1 A

19 専門 1年2学期 就 職

0

2 B

18 専門 1年2学期 専 修

3

C

19 専門 1年3学期 無 職

4 D

20 専門 2年3学期 就 職

5

E

18 専門 1年2学期 就 職

6 F

18 専門 2年2学期 バイト

● 7

G

19 専門 1年3学期 バイト

8

H

21 専門 1年2学期 無 職

○ 9

1

19 専門 1年3学期 就 職

10 J 男

19 専門 1年2学期 就 職

11

K

21 専門 2年2学期 就 職

● ○

12

L

20 専門 1年2学期 就 職

13

M

20 専門 1年2学期 バイト

14 N

19 専門 1年3学期 就 職

15

0

21 普通 1年3学期 就 職

● ○

16

P

20 普通 1年3学期 就 職

○ ○

17

Q

19 普通 1年3学期 無 職

18

R

18 普通 1年3学期 バイト

O

19

S

18 普通 1年2学期 無 職

20 T

19 普通 1年3学期 専 修

21 u

20 普通 1年3学期 就 職

22 V

20 普通 2年2学期 通 信

※○は中退者の指摘した中退の規定要因を示す。(●は中核となった要因である)

91

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

1 A

(男,19歳)

〈 専門 ,1年2学期, 就職  〉 1年1学期初期〜

 仲間集団

問題行動

1学期中期〜

入学以前〜

 放任家庭

学業不振

1学期中期〜

退

1年2学期後期

図3−27

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

2

B

(男,18歳)

〈 専門 ,1年2学期,専修学校 〉 2学期初期〜

仲間集団

問題行動

教師不信

退

1年2学期後期 1年2学期初期〜

図3−28

 92

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種  中退の時期,就職の状況〉

3

C

(男,19歳)

〈 専門 ,1年3学期, 無職  〉

1年1学期初期〜

仲間はずれ

学校嫌い

1学期初期〜

不登校

退

1年3学期後期

図3−29

No 氏 名

(性別,年齢)

〈 校門  中退の時期,就職の状況〉

4

D

(男,20歳)

〈 専門 ,2年3学期, 就職  〉 1年1学期初期〜

仲間集団

問題行動

2年1学期初期〜

入学以前〜

学業不振

放任家庭

1学期中期〜

退

2年3学期後期

図3−30

 93

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

5

E

(男,18歳)

〈 専門 ,1年2学期, 就職  〉 1年1学期中期〜

学校嫌い

1学期後期〜

進路変更

2学期初期〜

不登校

退

1年2学期後期

図3−31

晦  氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

6

F

(男,18歳)

〈 専門 ,2年2学期,アルバイト〉

2学期初期〜

仲間集団

問題行動

1年2学期初期〜

教師不信

学校嫌い

2年2学期初期〜

退

2年2学期三期

図3−32

 94

Nq 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

7

G

(男,19歳)

〈 専門 ,1年3学期,アルバイト〉

入学以前〜

 不本意入学

学校嫌い

2学期初期〜

不登校

1年1学期中 〜

学業不振

退

1年3学期中期

図3−33

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

8

H

(男,21歳)

〈 専門 ,1年2学期, 無職  〉

仲間集団

入学以前〜

問題行動

学業不振

放任家庭

1年1学期初 〜

学校嫌い

退

1年2学期中期

図3−34

 95

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

9 (男,19歳)

〈 専門 ,1年3学期, 就職  〉

1年2学期初期〜

 不本意入学 入学以前〜

学業不振

進路変更 3学期初期〜

退

1年3学期後期

図3−35

悔  氏 名

(性別,年齢)

〈 丁丁 ,中退の時期,就職の状況〉

10

J

(男,19歳)

〈 専門 ,1年2学期, 就職  〉

仲間集団

 放任家庭 入学以前〜

1学期初期〜

問題行動

退

1年2学期後期

図3−36

 96

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

11

K

(男,21歳)

〈 専門 ,2年2学期, 就職  〉 2年1学期中期〜

仲間集団       学業不振 1年2学期 期〜

問題行動

教師不信

退

2年2学期中期

図3−37

幡  氏 名

(性別,年齢)

〈 丁丁 ,中退の時期,就職の状況〉

12

L

(男,20歳)

〈 専門 ,1年2学期, 就職  〉 入学以前〜

 不本意入学

1学期中期〜

問題行動

1年1学期宅 〜 学校嫌い

教師不信

退

1年2学期後期

図3−38

 97

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 校種 ,中退の時期,就職の状況〉

13

M

(男,20歳)

〈 専門 ,1年2学期,アルバイト〉

1学期中期〜

1年1学期中 〜 問題行動

学校嫌い

仲間集団 教師不信

退

1年2学期後期

図3−39

Nα 氏 名

(性別,年齢)

〈 三種 ,中退の時期,就職の状況〉

14

N

(女,19歳)

〈 専門 ,1年3学期, 就職  〉 1年1学期初期〜

不本意入学

学校嫌い

入学以前〜

不登校 進路変更

退

1年3学期後期 2学期初期〜

図3−40

 98