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3.2 キーパーソンの影響分析
3.2.1 キーパーソンの影響度
研究目的の第2は「中退者の中学校段階での進路選択・決定時,および高校 での中退決定時を中心に,中退規定要因としてのキーパーソンの関わりの 実際を把握し,その影響を明らかにする」である。
つまり,1)中学時代の進路選択・決定に至るまで,2)高校入学から中退に至るまで,3)
中退から現在に至るまでの3時期について,中退者が,誰と,どのように関わったの か,この点をアクセル要因とブレーキ要因から検討する。
図3−24,図3−25,図3−26は,先述した3時期における,アクセル要因およびブレー キ要因についてのキーパーソンから受けた影響度の分析結果を示している。
東中の影響度は,以下のような手続で算出した。
1.全サンプルについて,アクセル要因およびブレーキ要因の出現頻度,すなわち中 学時代の進路選択・決定時,高校入学から中退決定時,中退から現在に至るまで の,各時期における出来事への,キーパーソンからの実線の数および破線の数を 単純集計し,両要因ごとの総数を算出する。
2.全サンプルについて,各時期におけるアクセル要因およびブレーキ要因をキー パーソン別に単純集計し,総数で除した比率を算出し,それを影響度とした。な お,比率については,小数点以下は四捨五入した。
3.2.2 分析結果と考察
この図より,各時期におけるキーパーソンの影響は,以下のような特徴を示している。
なお,中学時代の学級担任は中学担任,中学時代の担任以外の教師は中学教師,高 校のホームルーム担任は高校担任,高校のホームルーム担任以外の教師は高校教師と
する。
77
1)中学時代の進路選択・決定時(図3−24)
1.中学担任
進路選択・決定時における,進路相談などの関わりや指導・援助の中心的存在で ある。肯定的関与つまりブレーキ要因としての影響度は48%と最も高く,否定的 関与つまりアクセル要因としての影響度は38%と,保護者に続いて高い数値を示 している。
ブレーキ要因がおよそ5割を占めることから,中学担任が生徒の意志を尊重し,
何とか希望校に行けるようになってほしいという姿勢はうかがえる。しかし,ア クセル要因の影響度も38%と比較的に高い数値を示していることから,納得した 進路選択・決定ができていない場合も少なくないことがうかがえる。このことか ら,進路選択・決定時において,担任個々の関わりや考え方や指導の内容が,生 徒の進路選択に大きく影響を与えていることが指摘される。
2.中学教師
中学担任に比べて,アクセル要因としての影響度は15%,ブレーキ要因としての 影響度は7%と,やや否定的関与としてのアクセル要因の影響度が高いものの,ど ちらとも低い数値を示している。
進路選択・決定の際に,中学教師はあまり関わりを持っていなかった,もし くは持とうとしなかったことを示している。このことは,中退者の声を考慮する ならば,進路選択・決定について,生徒の自主的な判断に任せているというより も,むしろ中学担任のみの指導に依存している傾向が強いと捉えた方が妥当では ないか。
3.養護教諭
養護教諭は,肯定的関与としてのブレーキ要因の影響度が11%であり,否定的関 与についてのアクセル要因の影響度は0%である。
78
このことは,養護教諭は進路選択・決定時において重要な相談者になれるもの の,ほとんど関わりを持っていない状況であったことを示している。
4.保護者
最も身近な相談相手であるが,否定的関与としてのアクセル要因の影響度は46%と 最も高い数値を示しており,肯定的関与としてのブレーキ要因の影響度は19%で ある。
進路選択・決定時において,中退者本人と保護者との話し合い不足や,意見の 食い違いで,納得した結果が出ていなかったことが指摘される。また,希望校へ の進学の反対,保護者が希望した高校への強引な説得などにより,保護者に対す る反感が強く残っていることにも影響されていると推測される。
5.友達
進路決定時において,肯定的関与としてのブレーキ要因の影響度は15%である。
アクセル要因としての影響度は0%であり,進路選択・決定時には,さほど影響 を受けていないことがわかる。
自分の将来や進路計画に関して,友達どうしで話し合ったり,相談したりする ことが少なく,進路は生徒個々の問題であるとして捉えていることの現れである と考える。また,このことは先程述べた,生徒の進路については担任まかせであ るという中学校の進路指導に対する教師の姿勢も少なからず影響しているのでは ないか。
79
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図3−24中学時代の進路選択・決定時のキーパーソンとの関わりの影響度
80
2)高校入学から中退決定時(図3−25)
1.高校担任
中退前の時期に,前サンプルとも高校担任との教育相談や進路相談をしており,
それが中退の抑止力となって働いたことがわかる。ブレーキ要因としての影響度 は44%とキーパーソンの中では最も高く,また,中退の促進力となって働いたア クセル要因としての影響度は,12%と低い数値を示している。
高校担任が中退者にとって,最も影響を受けるキーパーソンであることが明ら かである。そして,高校担任として,中退させたくないという気持ちから,援助 的な立場で関わりを持っていることが多いことが示されている。
2.高校教師
高校担任に対して,高校教師,具体的には生徒指導担当の教師などは,中退の促 進力となって働いていることがわかる。アクセル要因としての影響度は35%と,
友達に次いで高い数値を示している。また,抑止力としてのブレーキ要因につい ての影響度は6%と低い。
高校教師の関わりが,中退への契機をつくっているといっても過言ではない。
つまり,担任以外の高校教師にとって,問題があり,しかも直接関係がない生徒 とは,関わりを避けるような傾向がみられるのではないか。もっと言えば,問題 行動などを起こすような生徒は,学校で援助・指導していくことよりも,むしろ,
辞めた方が本人の為であるというような姿勢を示している場合も少なくないので はないか。一部の高校教師との関わりについての問題は大きいと推測される。
3.養護教諭
養護教諭は,中退の抑止力として働いているものの,ブレーキ要因についての影 響度は4%と非常に低い数値を示した。また促進力としてのアクセル要因につい ての影響度は0%である。
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中退の岐路に立っている生徒にとって,養護教諭は,ほとんど関わりのない存 在であったことが示されている。
4.保護者
最も身近な相談相手として,中退の抑止力として働いており,ブレーキ要因につ いての影響度は25%である。また,アクセル要因としての影響度は5%と低い数 値を示している。
中学時代の,否定的関与としてのアクセル要因についての影響度が46%と高い ことを考慮するならば,せっかく入学した学校であるから,せめて卒業はしてほ しいという気持ちと,中退してからの苦労はさせたくないという姿勢の現れであ ると推測される。
5.友達
友達は,中退の促進力,つまりアクセル要因としての影響度が最も高く49%を示 している。また,抑止力としてのブレーキ要因についての影響度は8%と低い。
これは,問題行動が多くの場合,友達との集団化によって生起しているためで あると考えられる。中退の岐路に立つ生徒は,友達関係において不安定であるこ とが多く,友達どうしの関わり方に問題のある生徒が多いか,もしくは,家庭の 環境や先輩との付き合いなどで,集団化せざるを得ない状況にあったことが推測 される。仲間関係や集団を,どのように作っていくのかが課題となろう。
6.中学担任
中学校時代の学級担任については,抑止力,つまりブレーキ要因としての影響度 が,高校担任,保護者に次いで高く,13%を示している。
中退時期で最も多い学期が,1年の2学期から3学期頃であることを考慮する ならば,中退者の拠りどころとして,高校に限らず,むしろ中学校にあるとも考 えられる。したがって,中学校時代の学級担任の人的な影響力は,中退の分岐に 影響を与えていると考えられる。
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ドキュメント内
高校中退者のライフコース分析による中退規定要因に関する研究
(ページ 79-86)