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小規模多機能型居宅介護の利用類型 1) 小規模多機能型居宅介護事業の整備状況

ドキュメント内 - 社会関係性の視点から - (ページ 90-95)

第3章 小規模多機能型居宅介護にみる生活の継続性に重点を置いた認知症高齢者介護

第1節 小規模多機能型居宅介護の利用類型 1) 小規模多機能型居宅介護事業の整備状況

2006

4

月施行の改正介護保険法から、新たに創設された小規模多機能型居宅介護事業 は、通い、訪問、泊まりのサービスを柔軟に提供することによって、住み慣れた地域で暮 らし続けることを支援するサービスである。創設当初には、特別養護老人ホーム等の施設 入所希望者の増加に対応すべく、小規模多機能型居宅介護事業に対し、要介護

3~5

の中重 度者に対する在宅生活支援も政策的に期待された。そして、現在、医療と介護の連携強化 が謳われている地域包括ケアシステムにおいては、地域で暮らし続けるための重要なサー ビス拠点としての役割を担っている。

小規模多機能型居宅介護事業所は、2006年当初、全国で

298

ヶ所であったが、

2012

8

月末現在では、

3,818

ヶ所と増加しているi。小規模多機能型居宅介護事業は、地域包括ケア システムの中でも日常生活圏域サービス基盤の資源の一つとして、地域で暮らし続ける重 要なサービス拠点であるが、全保険者

1,580

のうち、小規模多機能型居宅介護事業所が

1

ヶ所もない保険者は

685

43.4%を占めている。

[図表3-2] 小規模多機能型居宅介護事業所数の推移

2006 12月現在

2007 12月現在

2008 11月現在

2009 10月現在

2010 7月現在

2011 11月現在

2012 8月現在 298ヶ所 1,332ヶ所 1,841ヶ所 2,223ヶ所 2,564ヶ所 3,279ヶ所 3,818ヶ所

いずれも WAM-NET に掲載されていた事業所数(休止・廃止は除く)

一方で、事業所数が最も多い保険者は、神奈川県横浜市で

82

ヶ所、次いで北海道札幌市

75

ヶ所、広島県福山市

66

ヶ所、愛知県名古屋市

65

ヶ所であり、

1

事業所あたりの要支援・

要介護認定者数が最も少ない保険者は、福井県おおい町

104.3

名、次いで鹿児島県知名町

156.3

名、北海道本別町

156.3

名であった。また、要支援・要介護認定者数の規模別に比較

してみると、要支援・要介護認定者数が

1,000

人未満の保険者において、小規模多機能型 居宅介護事業を整備していない保険者が圧倒的に多かった。

i 各年ともWAM NETに掲載されていた事業者数(休止・廃止を除く)を集計した。

WAM NET HP http://www.wam.go.jp/

91

[図表3-3] 要支援・要介護認定者数規模別にみる小規模多機能型居宅介護事業所数の 整備状況

要支援・要介護 認定者数規模

(保険者数)

小規模多機能型居宅介護事 業所を1ヶ所以上整備して いる保険者数とその平均事

業所数(2012年8月現在)

整備数の多い保険者 1事業所あたりの 要支援・要介護者認定者数の多い

保険者とその数 1,000人未満

(n=652)

154

(23.6%) 1.2±0.5

福井県おおい町 4ヶ所 他3ヶ所以下

福井県おおい町 4ヶ所104.3名 鹿児島県知名町 3ヶ所145.3名 北海道本別町 3ヶ所156.3名 北海道鷹栖町 2ヶ所203.5名 福井県美浜町 3ヶ所205.3名 1,000以上

5,000人未満

(n=690) 509

(73.8%) 2.4±1.8

栃木県那須塩原市 11ヶ所 栃木県大田原市 10ヶ所 京都府京丹後市 10ヶ所 熊本県山鹿市 10ヶ所 岐阜県各務原市 10ヶ所

鹿児島県垂水市 4ヶ所281.3名 埼玉県和光市 4ヶ所294.0名 石川県能美市 6ヶ所312.3名 栃木県大田原市 10ヶ所318.9名 京都府京丹後市 10ヶ所329.4名 5,000人以上

10,000未満

(n=127) 123

(96.9%) 5.9±4.2

鳥取県鳥取市 28ヶ所 福岡県大牟田市 24ヶ所 鹿児島県霧島市 15ヶ所 静岡県富士市 15ヶ所 島根県松江市 15ヶ所

福岡県大牟田市 24ヶ所317.2名 鳥取県鳥取市 28ヶ所328.5名 鹿児島県霧島市 15ヶ所356.9名 山形県酒田市 14ヶ所465.1名 北海道北見市 12ヶ所499.3名 10,000以上

20,000未満

(n=69) 67

(97.1%) 10.3±8.9

長崎県佐世保市 48ヶ所 福岡県久留米市 30ヶ所 宮崎県宮崎市 28ヶ所 福井県福井市 27ヶ所 秋田県秋田市 26ヶ所 富山県富山市 26ヶ所

長崎県佐世保市 48ヶ所317.8 福井県福井市 27ヶ所412.7 福岡県久留米市 30ヶ所432.5 山形県山形市 24ヶ所444.5 沖縄県那覇市 23ヶ所 473.8名 20,000以上

(n=39)

39

(100.0%) 25.3±20.6

神奈川県横浜市 82ヶ所 北海道札幌市 75ヶ所 広島県福山市 66ヶ所 愛知県名古屋市 65ヶ所 岡山県岡山市 46ヶ所

広島県福山市 66ヶ所340.7 愛媛県松山市 35ヶ所697.9 岡山県岡山市 46ヶ所714.5 熊本県熊本市 42ヶ所773.7 新潟県新潟市 43ヶ所 816.6名

(n=1,577) 892

(56.6%) 4.3±7.4

※事務連合、福島県大熊町・富岡町・楢葉町は除く

小規模多機能型居宅介護事業は、制度化当初、特別養護老人ホーム等の施設入所希望者 の増加に対し、要介護度が中重度となっても、在宅での生活が継続できるように支援する 役割を、政策的に期待されていた。全国の介護保険給付費iiをみてみると、

2009

4

月時点 では、要介護

3~5

の被保険者に対する全サービス給付費のうち

3

施設給付費(介護老人福 祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)の占める割合は、平均

58.6%であった

が、2012年

4

月には、平均

55.4%と全体でも 3.2

ポイント減少している。全国の介護保険 の保険者を、

3

施設給付費によって、「A.施設サービス給付費割合減少保険者群」、「B.施 設サービス給付費割合維持・平均程度減少保険者群」、「C.施設サービス給付費割合増加保 険者群」に分けたところ、小規模多機能型居宅介護事業所の整備は、全体的に増加傾向に

ii厚生労働省介護給付費実態調査報告(2009年度4月、2012年度4月)のデータを使用 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/45-1b.html

92

あったが、「A.施設サービス給付費割合減少保険者群」は

14.0

ポイント上昇しており、他 の群より整備している保険者割合の増加が高く、一方で、「C.施設サービス給付費割合増 加保険者群」の高齢化率は平均

30.3%に上り、小規模多機能型居宅介護事業所の整備も 11.6%の上昇にとどまっていた。さらに、要支援・要介護認定者数規模別にみてみると、要

支援・要介護認定者数が

1,000

人以上

5,000

人未満の規模の保険者において、「C.施設サ ービス給付費割合増加保険者群」で整備している保険者が少なかった。

[図表3-4] 施設サービス給付費の割合による保険者の分類

施設サービス給付費割合 減少保険者群

施設サービス給付費割合 維持・平均程度

減少保険者群

施設サービス給付費割合 増加保険者群 保険者数(n=1,580) 2012年 600(38.0%) 642(40.6%) 335(21.2%) 要介護3~5の被保険者に

対する全サービス給付費 のうち3施設給付費の割合

2009年

2012年

60.4%

52.3%

57.2%

54.8%

58.1%

62.1%

高齢化率平均 2010年 27.0±6.6 27.4±6.5 30.3±7.8 平均要介護度 2009年

2012年

2.28±0.22 2.20±0.22

2.32±0.19 2.21±0.19

2.40±0.22 2.28±0.24 小規模多機能型居宅介護

事業所を1ヶ所以上整備し ている保険者の数

2009年

2012年

276(46.0%)

360(60.0%)

336(52.3%)

425(66.2%)

74(22.1%)

113(33.7%)

[図表3-5] 要支援・要介護認定者数規模別 1 ヶ所以上小規模多機能型居宅介護事業所 を整備している保険者数 (20128月現在の整備状況)

要支援・要介護認定者数規模

施設サービス給付 費割合減少保

険者群 (n=600)

施設サービス給付 費割合維持・平

均程度減少保 険者群 (n=642)

施設サービス給付 費割合増加保

険者群 (n=335)

全体

1,000人未満 (n=652)

整備なし 整備あり

164 (72.6%) 62 (27.4%)

137 (67.5%) 66 (32.5%)

178(79.8%) 45(20.2%)

479 (73.5%) 173 (26.5%) 1,000以上5,000人未満

(n=690)

整備なし 整備あり

71 (28.6%) 177 (71.4%)

78 (22.9%) 262 (77.1%)

43(42.2%) 59(57.8%)

192 (27.8%) 498 (72.2%) 5,000人以上10,000未満

(n=127)

整備なし 整備あり

4 (6.3%) 59 (93.7%)

1 (1.8%) 55 (98.2 %)

1(12.5%) 7(87.5%)

6 (4.7%) 121 (95.3%) 10,000以上20,000未満

(n= 69)

整備なし 整備あり

1 (2.5%) 39 (97.5%)

1 (3.6%) 27 (96.4%)

0(0.0%) 1(100.0%)

2 (2.9%) 67 (97.1%) 20,000以上

(n= 39)

整備なし 整備あり

0 (0.0%) 23(100.0%)

0 (0.0%) 15(100.0%)

0(0.0%) 1(100.0%)

0 (0.0%) 39(100.0%)

(n=1,577)

整備なし 整備あり

240 (40.0%) 360 (60.0%)

217 (33.8%) 425 (66.2%)

222 (66.3%) 113 (33.7%)

679 (43.1 %) 898 (56.9%) 1,000人未満 χ2=8.44, df=2, p<.05 1,000人以上5,000人未満 χ2=14.55, df=2, p<.005

93

神奈川県横浜市や福岡県大牟田市のように保険者施策の一環として小規模多機能型居宅 介護事業所の整備を積極的に進めているところもある。また、事業所の事業展開をみてみ ても多様化しており、認知症対応型共同生活介護事業所を併設している事業所やサービス 付き高齢者向け住宅といった住まいを併設している事業所、看取り介護を実施している事 業所や退院直後から在宅生活へ戻るための中間支援に取り組んでいる事業所もある(森本

2010、片山 2011、横浜市 2011、みずほ情報総研 2011)

小規模多機能型居宅介護が制度化された背景には、1980年代頃から始まった宅老所の実 践の継承がある。宅老所の実践については、前述(第

2

章)の通りであるが、宅老所は、

通い、訪問、泊まり、住居サービスを小地域で一体的に取り組んできた経緯があり、小規 模多機能型居宅介護の制度化にあたって、建物や人員が運営基準に満たないことや、対象 者を介護保険の被保険者に限定せずに広く必要な人にサービスを提供したい等の理由から、

介護保険指定事業者とならなかった宅老所もある(森本

2007)

。しかし、現在、小規模多機 能型居宅介護は、認知症高齢者の“Aging-in-place”を達成するサービスの拠点としての機能 を果たしつつあり(永田

2010)

、日常生活圏域という一定の地域において、通い、訪問、泊 まりのサービスを柔軟に提供しながら、利用者宅での生活を支援するサービス形態は、現 在の介護保険制度において、生活の継続性に重点を置いた認知症高齢者介護を検討するた めに最も適切であると考える。

そこで、本章では、全国の小規模多機能型居宅介護事業所におけるサービス提供に関す る調査結果から、小規模多機能型居宅介護の利用の類型化等を行い、生活の継続性に重点 をおいた認知症高齢者介護を提供する事業所の特徴について検討する。

94

2) 調査の目的および方法

a)

調査の目的

本節では、全国の小規模多機能型居宅介護事業所におけるサービス提供について、経年 的変化と特徴について明らかにすることを目的とし、全国の小規模多機能型居宅介護事業 所を対象に実施された実態調査の結果データについて

2

次分析を行った。同調査では、単 年度ごとに集計が行われているが、経年的な変化とその特徴について体系的には述べられ ていない。そのため、本研究は、利用状況調査が実施された

2007

年度、2009年度、2011 年度のデータについて分析を行い、利用者の基本属性および利用内容について経年的な変 化とその特徴について明らかにすることとした。

b)

研究方法と倫理的配慮

全国の小規模多機能型居宅介護事業所を対象に、立教大学および全国小規模多機能型居 宅事業者連絡会によって実施された調査結果のデータのうち、利用状況調査が実施された

2007

年度、2009年度、2011年度のデータについて

2

次分析を行った。各年の調査方法の 概要は、図表

3-5

の通りである。筆者は、立教大学で実施された

2007

年度および

2009

年 度の調査において、事務局および調査実施者の一人として関わった。また

2007

年度の調査 は、立教大学が受託した「平成

19

年度厚生労働省老人保健健康増進等事業未来志向研究プ ロジェクト 地域密着型サービスの今後の在り方に関する調査研究」、2009 年度の調査は、

「平成

21

年度厚生労働省老人保健健康増進等事業未来志向研究プロジェクト 小規模多機 能ケアにおける専門職連携のあり方に関する研究」によって実施され、

2011

年度の調査は、

全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会が受託した「平成

23

年度厚生労働省老人保健健 康増進等事業 地域包括ケアの実現にむけた小規模多機能型居宅介護の質の確保・向上のた めの調査研究」によって実施されたものである。

なお、倫理的配慮として、本調査では調査票に調査の趣旨が明記されていることを確認 し、利用者個々の基本属性および利用内容の記入表は匿名化し、集計前に事業所名が特定 できないようにコード化し分析を行った。また、2011 年度のデータの寄託者である全国小 規模多機能型居宅介護事業者連絡会に対しては、使用方法および管理に関する誓約書を提 出した上で利用承認を得た。

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