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実験結果

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 98-120)

第 6 章 80kHz 帯を用いた通信実験

6.2.2. 実験結果

本実験時の典型的な通信路特性をFig.6-3に示す。Fig.6-2のAブロックで送波したチャー プパルスの送信信号と受信信号との相互相関を取ったものである。横軸は時間,縦軸は相関 値である。上側の図はCh. 1での受信波形の相関値,下側の図はCh. 2での受信波形の相関値 を示している。ただし,それぞれのチャンネルの相関値の最大値を1として規格化している。

図中の矢印は,Ch. 1及びCh. 2の受波器に到達した直接波の位置を示している。直接波は,

A: Chirp pulse [sweep frequency: 70-80 kHz, pulse width: 10 ms]

B: Random sequence [200 symbols]

C: Barker code [13 symbols]

D: M-sequence [1024 symbols, for training]

E: Data [12,029 symbols]

A B C D E

Fig.6-2. Composition of a transmitted data packet.

- 88 -

約 0.25 ms のずれで到達している。これは行路差 37.5 cm に相当し,Fig.6-1の配置どおり ほぼ真下からの信号を受波しており,送信機・受信機が傾いていないことを示している。また,

反射波は,2 ms 程度以内に受波器に到達している。

Fig.6-4~Fig.6-6は復調結果の例である。Fig.6-4は通信速度 16 ksps,入力 SNR = 31.8 dB の 場合,Fig.6-5は20 ksps,入力 SNR = 31.1 dB の場合の結果である。また,Fig.6-6は通信速

度20 ksps,入力 SNR = 22.8 dB において,8シンボルのエラーが発生した時の結果を示して

いる。SNRは,パケット開始前の無信号時間内40,000サンプルの平均エネルギをノイズレベ ルとし,パケット開始後 100,000 サンプルの平均エネルギを信号レベルS として算出してい る。各サブプロットにおいて,右上はトレーニング期間中のスキャッタプロットであり,右 下は本来のデータ,すなわち受信機側にとっては未知のデータを復調した結果のスキャッタ プロットである。また,左側の上段と中段はトレーニングシーケンスも含めた判定器入力ス キャッタをI成分,Q成分に分けて時系列表示したものであり,収束の状況を示している。

左下はMSEの時系列表示である。縦軸は誤差信号の2乗の dB 表示であり,誤差が信号点 間距離の1/2の時,すなわち1の時を 0 dB としている。なお,左側の3つの時系列表示の 図中の矢印で示した時刻(Time = 1,020 Symbols)は,トレーニングが終了し,未知のデータ に切り替わるタイミングを示している。Fig.6-4,Fig.6-5の2つのケース共トレーニング期間 中にMSEが –20 dB 以下になっており,誤差は信号点間距離の 1/10 以下と十分な収束が得 られ,エラー無しで復調されたことを示している。Fig.6-6のケースでは,右下のスキャッタ プロットが,Fig.6-4,Fig.6-5のケースと比較して分布が広がっており収束の程度が悪くなっ

Fig.6-3. Channel response.

ていることが分かる。このケースでは,12,029 シンボルを伝送した時に,結果として8シン ボルのエラーが発生している。そして,入力SNRがFig.6-4,Fig.6-5に比して低く,それに 伴ってMSEの値が大きく,収束状況が悪くなっている。

Fig.6-4. Example of demodulation. Rate: 16 ksps (80 kbps) Error: 0.

Fig.6-5. Example of demodulation. Rate: 20 ksps (100 kbps) Error: 0.

- 90 -

Fig.6-6. Example of demodulation. Rate: 20 ksps (100 kbps) Error: 8.

Fig.6-7は,伝送速度 20 ksps 時のシンボルエラーレート-入力SNR特性である。実線は,

雑音がAWGN時の 32-QAM の上界である[38]。M値QAMのシンボル誤り確率PMは,式(6-1) でタイトに抑えられることが知られているので,式(6-1)の等号の場合をプロットしたものが 実線である。

( )

( )

÷÷øö

çç è æ

£

-úú û ù êê

ë é

÷÷ ø ö çç

è æ -

0

2

0

1 4 3

1 2 3

1 1

N M Q E

N M Q E P

av av M

(6-1)

ここで,Eav /N0 はシンボルあたりの平均SNRを示す。また,Q(x)はQ関数と呼ばれ,式(6-2) で定義される。

( )

, 0

2

1 22 ³

=

ò

¥e- dt x

x Q

x t

p

(6-2)

パケット内にエラーが発生しなかった場合は,シンボルエラーレートを 10-5 としてプロッ トしている。パケット内のシンボルエラーが1シンボルだけであった場合のシンボルエラー

レートは,8.3×10-5となる。無指向性ハイドロフォン1チャンネルで受波して復調を行った

場合は,AWGN の時の性能に比べて約 3~4 dB 悪くなっているが,2チャンネルで受信す

ることにより,約 3 dB 改善されて AWGN 時の性能とほぼ同等の性能が得られた。Fig.6-8 は,2チャンネル受信時の伝送速度が 16 ksps(80 kbps)及び 20 ksps(100 kbps)のシンボ ルエラーレート-入力 SNR 特性である。入力 SNR は,22~33 dB 程度であったが,23 dB 以上の場合に 12,029 シンボルの範囲内では,多くても 1 つのエラーしか見られなかった。

距離 90 m においてフルパワーで送信した時の入力 SNR は約 32 dB であった。SNRが 23 dB 程度になるとエラーが発生する頻度が高くなるので,本装置では 9 dB 程度の余裕があ ると考えられる。このため,拡散減衰及び吸収減衰(20 dB/km at 80 kHz [1]) を考慮して,本 装置を用いてフルパワーで送信を行った場合,約 200 m の距離まで通信が可能であると言 える。

10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100

15 20 25 30 35

Symbol error rate

Average input SNR [dB]

1

2 channels Single channel Calc.

Fig.6-7. Symbol error rate - average input SNR characteristics.

- 92 - 10-5

10-4 10-3 10-2 10-1 100

15 20 25 30 35

16ksps 20ksps Calc.

Symbol error rate

Average input SNR [dB]

1

Fig.6-8. Symbol error rate - average input SNR characteristics.

以上,本節では,鉛直方向の 80 kHz帯高速伝送実験について述べた。中心周波数 80 kHz の コニカルビームパターンを持つ広帯域送波器を用いて,32-QAM 変調方式により,実海域で 音響通信実験を行い,約 90 m の伝搬距離において 80 kbps 及び 100 kbps の通信速度で良 好な通信結果を得た。ソフトウェアによる後処理ではあるが,これまで 十数 m での実験結 果しか報告されていなかった 32-QAM 方式について,広帯域送波器と2チャンネル DFE を 用いることにより,実海域での通信を実証した。100 kbpsの伝送速度は,QVGA (Quarter video graphics array,320×240 pixels,VGAの1/4のサイズ),256色の非圧縮カラー画像( 75 KBytes) が約6.1秒で伝送できる速度である。JPEGなどでこれを約1/6の12 KBytesまで圧縮すると 約1秒で1枚の画像が伝送できる速度となる。

本実験は,送信機と受信機をナイロンロープで接続しているため,船舶の動揺が伝わるだ けで比較的相対的な位置関係が安定した条件下で行った。今後は,無人探査機の遠隔制御等 実際の応用に近づけるために,送信機を海底に設置し,受信機を水上船舶から吊下する設定 で検討及び実験を行ってくことが必要である。

6.3. 80 kHz帯斜め方向通信実験

無人探査機の音響遠隔操縦や,海底設置型の大容量データを扱う海洋観測機器(地震計等)か らのデータ回収等を目的とした高速通信の実験として,ドップラの影響を低減するために,斜め方向 の通信実験を行った。(航海番号:KY06-06,KY07-02,KY07-13)本実験は,何回かの航海に分け て海域実験を実施したので,それぞれの航海番号を用いることとする。JAMSTECの運航する調査 船の航海には,それぞれ一意の航海番号が付けられている。先頭の 2 文字のアルファベットは,

船舶名を表し(KY:海洋調査船「かいよう」),それに続く数字 2 文字で年を表わし(06: 2006年),

ハイフンの後の 2 文字はその年内の何番目の航海かを表している。

海底付近の無人探査機や海底設置型の観測機器を模して,送信機は海底付近に設置した。実験 時の装置の配置をFig.6-9に示す。係留系回収用の音響切離し装置の長さ等があるもののできるだ け海底に近づけるようにして,送波器の海底からの高度を約 35 m (KY06-06),及び約 9 m

(KY07-02,KY07-13)とした。送波器は4.4節で記述したフリーフラッドリング方式によるものを用いた。

但し,KY06-06及びKY07-02では反射板を取り付けた状態,KY07-13では反射板を取り付けていな い状態で実験を行った。受信機は,各航海で,位置関係を水平方向や鉛直方向など,いくつかの パターンに従って変えていき,複数の通信データを記録した。特に,KY06-06及びKY07-02では,

送信機からある一定の角度に沿って送受波器間の直距離を変えてデータを記録することができた。

この時の海中部の外観写真をFig.6-10~Fig.6-12に示す。Fig.6.10はKY06-06航海時のもの,

Fig.6-11はKY07-02航海時のものである。Fig.6-10(b),Fig.6-11(b)に示したように,受信機のフレーム からアームを出して,その先に無指向性のハイドロフォン2個を取り付けている。Fig.6-12はKY07-13

Water depth:

approximatory 1,000m

Transmitter Receiver

R/V KAIYO

Fig.6-9. Equipment layout for experiments.

- 94 -

(a) Transmitter at KY06-06 . (b) Receiver at KY06-06.

Fig.6-10. Photos of a transmitter and a receiver for sea experiments.

(a) Transmitter at KY07-02. (b) Receiver at KY07-02.

Fig.6-11. Photos of a transmitter and a receiver for sea experiments.

(a) Transmitter at KY07-13. (b) Receiver at KY07-13.

Fig.6-12. Photos of a transmitter and a receiver for sea experiments.

航海時のものであり,Fig.6-12(a)のフレーム上側にあるように,送波器の反射板を取外して装着して いる。また,Fig.6-12(b)に示したように,受波器は,受信機のフレームから両側にアームを出し,片側 に2個の無指向性ハイドロフォンを取付け,4個がほぼ直線状に並ぶように配置した。

送波器には,各素子に印加する信号に 3.75ms の時間差を持たせ,受信機は水上船舶からアー マードケーブルウィンチで吊下した。送受信機がお互いに見込む角度を送波ビームの主軸方向に 入るように船舶の位置とアーマードケーブルの長さを調節しながら,スラントレンジを変化させ,伝送 データを記録した。

実験装置のブロック図をFig.6-13及びFig.6-14に示す。KY06-06及びKY07-02航海では,

Fig.6-13に示したような2チャンネルでの受信,KY07-13航海では,Fig.6-14に示したような

4チャンネルの受信を行った。SNRに対する誤り率を評価するため,本実験中に伝送したデー

タは,Fig.6-15に示した2枚のカラー画像を交互に繰り返し伝送した。これらは,JAMSTEC

の深海画像データベースから抜き出した深海で撮影された画像である。もとは,640×450画 素のものであるが,これを水平方向・鉛直方向それぞれに間引いて 1/2 の画素数にした 320

×225画素のカラー画像に対して,行列計算ソフトウェアMATLABのimwriteコマンドで画 質を40として,JPEG圧縮を行ない,7,510 Byte及び 8,460 Byteに圧縮したものを伝送デー タとした。JPEGは固定長の圧縮ではないので,圧縮後のデータ量の異なる画像 2 枚を伝送 データとして用いた。変調方式として QPSK を用いたので,1 シンボル当たり 2 ビットの

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