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水平方向通信用送受波器

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 47-71)

第4章 広帯域送受波器

4.2.1. 水平方向通信用送受波器

水平方向用の送受波器は,海面ブ イを持つ係留系に向かって,多層流向流速計(ADCP:

Acoustic Dopplar current profiler)のデータを伝送することを目的に開発された(Fig.4-1)[22]。水平 方向へ最大 4,000 mのデータを伝送することを目標とした。中心周波数 20 kHzは,係留ブイシス テムの音響切離し装置が 10.5 kHzから 15.5 kHzを使用することに伴い,この帯域を避けるためと,

「しんかい6500」システムの画像伝送装置によって数千mの伝搬の実績のあることから選定した。ブ イを用いて観測する研究者サイドからの要求は,1 kbps 程度の伝送速度で数kmの距離を伝送が 可能であることというものであった。送受波器の試作としては,余裕を持たせるために帯域幅 4 kHz ( 20 kHz± 2 kHz)を目標として開発した。また,半二重通信とすることで,双方向で同一周波 数を使用することとし,送受切換え装置を装備することにより,送受波器は兼用する。本送受波器 は,中心周波数 20 kHzに対して帯域幅 4 kHzと,中心周波数の 20 %である。このため,本研究 で定義した「ブロードバンド」とは呼べないが,最初の送受波器の開発として,この数値を目標とし た。

Fig.4-2に,本送受波器の外観写真と,内部接続図を示す。本送受波器は内部にセラミックのリン

Horizontal range:

4,000m ADCP

TRITON buoy

Communications satellite

Acoustic data transmission system

Acoustic data transmission system

Fig.4-1. Horizontal underwater data communication system.

の位置誤差等様々な要因により,必ずしも送信機・受信機の設置深度が同一になるとは限らない ことによる配慮である。基本的には,マルチパスを避ける意味からも,指向性利得を得る意味からも,

指向性を強くすなわち狭ビームにしたほうが有利である。本送受波器においては,接続する素子 の数により,次のような指向幅を持つように設計した。

狭ビーム(Narrow beam): 指向幅20°,端子A, B, C全て並列に接続する。

中ビーム(Middle beam): 指向幅30°,端子A, Bを並列に接続する。端子Cは接続しない。

広ビーム(Wide beam): 指向幅40°,端子Aのみを使用する。端子B, Cは接続しない。

水中コネクタへの接続の変更で指向幅を変えられるように配線を出してあるので,同一係留期間 中に指向幅を変更することはできないが,係留系投入時の状況により,その時に合わせた指向幅 に設定できるようにしてある。

指向特性の計測は,JAMSTECの超音波水槽[43]で実施した。Fig.4-3は,送波電圧感度(TVR:

Transmitting voltage response)の指向特性を計測する時の計測ブロック図である。JAMSTECでは,

指向特性及び周波数特性を計測するために,自動校正装置を運用しており,これを用いて計測を 行った。器間距離は 3 m,設置深度も 3 mである。送受波器を送波器として用い,これに各周波 数のトーンバースト波を印加し,水中を伝搬した音波をリファレンスハイドロフォンで受波することに より,式(4-1)を用いて送波電圧感度を求める。

q º 1

2 3 4 5

Return A B C

(a) Overview. (b) Wiring layout.

Fig.4-2. Transducer for horizontal communication.

- 38 -

V V

S

T TL M AG R

S = - + -

0

- +

(4-1)

ここで,SS:送波電圧感度 [dB re mPa/V at 1m]

TV:送波電圧 [dB] (20 log E:Eは電圧[V])

TL:伝搬減衰 [dB](20 log r:rは器間距離[m]) M0:受波電圧感度(既知)[dB re V/mPa]

AG:プリアンプゲイン [dB]

RV:受信電圧 [dB] (20 log V:Vは電圧[V])

である。すべての要素はdBに換算して計算を行う。また,器間距離は 3 m程度と極めて短 いため,伝搬減衰は拡散減衰のみを考慮し,吸収減衰は無視している。受波電圧感度を計測 する場合には,Fig.4-3 のリファレンスハイドロフォンに,試験信号を印加し,本送受波器 を受波器として使用し,音波を受波することにより,同様に,式(4-2)で求められる。

V V

S

S T TL M AG R

M = -

0

- + -

0

- +

(4-2)

Voltage measurement

Transducer Hydrophone

OKI ST-1005

Acoustic wave Acoustic

calibration system

Input test signal

Rotater controll

Rotater

3m

3m

Anechoic tank 9m x 9m x 9m Voltage

measurement

Fig.4-3. Block diagram for measuring of the directivity pattern of the transducer.

ただし, MS:受波電圧感度 [dB re V/mPa]

S0:送波電圧感度(既知) [dB re mPa/V at 1m]

超音波水槽で計測した本送受波器の送波電圧感度特性をFig.4-4に示す。黒は 18 kHz,青は 20 kHz,緑は 22 kHzの指向特性である。Fig.4-4(a)は狭ビームのとき,Fig.4-4(b)は中ビームのとき,

Fig.4-4(c)は広ビームのときのそれぞれ送波指向特性である。(a),(b),(c)の順に横方向の主ビー

ムの指向幅が広くなっていっている。狭ビーム及び中ビームにおいては,22 kHzの送波感度が比 較的高くなっているが,使用帯域の 18 ~ 22 kHzにおいて,ほぼ一様なビームが形成されている。

一方,広ビームのときには,周波数により指向幅が大きく変化している。また,広帯域の指向特性を 把握するため,角度 1°ごとに 14 k ~26 kHzにわたって 0.1 kHzステップで周波数特性を全周 360°にわたり,計測した。Fig.4-5~Fig.4-7にその結果を示す。Fig.4-5は狭ビーム,Fig.4-6は中

100 110 120

130 60

90

120

150 180

210 240

TVR [dB re mPa/

100 110 120

130 60

90

120

150 180

210 240

TVR [dB re mPa/

(a) Narrow beam. (b) Middle beam.

100 110 120 130 140 150 160

0

30

60

90

120

150 180

210 240

330 18kHz

20kHz 22kHz

TVR [dB re mPa/V at 1m]

(c) Wide beam.

Fig.4-4. Directivity patterns of the transducer.

- 40 -

ビーム,Fig.4-7は広ビームのときのそれぞれの特性である。各々,横軸に角度,縦軸に周波数を

とって,周波数及び指向特性の全体のパターンを見ることができる。なお,角度は,Fig.4-2に示し

[dB re mPa/V at 1 m]

-150 -100 -50 0 50 100 150

14 16 18 20 22 24 26

Direction [degree]

Frequency [kHz]

TOKIN 20kHz Transducer. (Narrow Tx)

120 125 130 135 140 145 150 155

Fig.4-5. Frequency-direction characteristics of the transmitting voltage response. All the elements are used, which makes narrow a beam. Measurements are done at 1 degree step

in direction and at 0.1 kHz step in frequency.

Fig.4-6. Frequency-direction characteristics of the transmitting voltage response. The inner three elements are used, which makes a middle beam. Measurements are done at 1 degree step in

direction and at 0.1 kHz step in frequency.

-150 -100 -50 0 50 100 150

14 16 18 20 22 24 26

Direction [degree]

Frequency [kHz]

120 125 130 135 140 145 150 155

[dB re mPa/V at 1 m]

た定義に従う。すなわち,ケーブルの接続される側を 180°としている。色表示は送波電圧感度を

示し,40 dBの範囲をレベルの低い場合に青色で表示し,レベルの高い場合に赤色で表示してい

る。Fig.4-5,Fig4-6より,5素子及び3素子の場合には,16 kHz~26 kHzにおいてほぼ一定のビー ム幅を達成できていることが分かる。Fig.4-7に示した1素子のみを用いた広ビームの場合は,16 kHzにおいてはピークレベルに対して 15 dB以上低下しているが,17 kHz以上の周波数において ほぼ一定のビーム幅を達成できている。5素子及び3素子を用いた場合には,大きな送波感度の落 ち込みのない,滑らかな特性を持っている。したがって,海域での使用において上下方向への放 射音圧が水平方向に比してよく抑圧された送波器であると言える。すなわち使用方向へエネルギ がよく集中し,効率のよい送波が可能である。また,Fig.4-8に受波電圧感度の計測結果を示す。

(a)は狭ビーム,(b)は中ビーム,(c)は広ビームの結果である。指向性パターンとしては,送波感度と ほぼ同じものが得られ,水平方向の受波感度は -195 ~ -180 dB re V/mPa が得られた。

Fig.4-7. Frequency-direction characteristics of the transmitting voltage response. The only centre element is used, which makes a wide beam. Measurements are done at 1 degree step in

direction and at 0.1 kHz step in frequency.

[dB re mPa/V at 1 m]

-150 -100 -50 0 50 100 150

14 16 18 20 22 24

Direction [degree]

Frequency [kHz]

115 120 125 130 135 140 145

- 42 -

-230 -220 -210 -200 -190 -180

0

30

60

90

120

150 180

210 240

330 18kHz

20kHz 22kHz

OCV [dB re V/mPa]

-230 -220 -210 -200 -190 -180

0

30

60

90

120

150 180

210 240

330 18kHz

20kHz 22kHz

OCV [dB re V/mPa]

(a) Narrow beam. (b) Middle beam.

-230 -220 -210 -200 -190 -180

0

30

60

90

120

150 180

210 240

330 18kHz

20kHz 22kHz

OCV [dB re V/mPa]

(c) Wide beam.

Fig.4-8. Directivity patterns of OCV (Open circuit voltage receiving response).

4.2.2. 鉛直及び斜め方向通信用送波器

1990年に深海有人潜水船「しんかい6500」から水上の母船(「よこすか」)にカラー静止画像を伝 送する音響画像伝送装置を開発した[3-5]。このとき,伝送距離 6,500 ~ 7,000 mを確保するため,

及びFig.4-9に示すような,「しんかい6500」システムで使用されている他の音響機器との干渉を避

けるため,中心周波数を 20 kHzとし,帯域幅を 8 kHzと設定した。「しんかい6500」と「よこすか」の 位置関係は,安全上の理由から水中通話機を用いて交信可能な範囲,すなわちFig.4-10のような 範囲に制限されている[2]

この範囲内で使用可能な広帯域送波器が必要であったため,整合層付のTonpilzタイプの送波 器を開発した[44]。この送波器は,指向幅 60°で送波音圧 190 dBを達成するもので,現在も「しん かい6500」システムで使用されている。

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 kHz

Fig.4-9. Acoustic frequency layout of the manned submergence vehicle “SHINKAI 6500” system.

Mother ship

90°

4,000m6,500m

f 8,000m SHINKAI6500

Communication area of

"SHINKAI 6500" system

Fig.4-10. Relationship between the deep sea submergence vehicle “SHINKAI 6500” and the research vessel “YOKOSUKA”

-40 -30 -20 -10 0

10 dB

Fig.4-11. Wideband transducer with matching plates, left: photo, right: beam pattern at 20 kHz.

この送波器をベースに係留系間の斜め方向の通信に使用するための中心周波数 20 kHzの広 帯域送受波器を開発した。本送受波器は,係留系の係留間隔を広く取れるようにするため,指向

250 mm

[dB]

- 44 - 幅を広く取れるよう留意した。

試作した送受波器は,整合層付きのTonpilzタイプのものである。これは,深海有人潜水船「しん かい6500」に搭載されている画像伝送装置用のものを,指向幅を広く取れるように改造したもので ある。Fig.4-11に外観図と指向特性を示し,Fig.4-12に周波数特性を示す。 Fig.4-11の指向特性は 152 dB re mPa/V at 1 mを 0 dBとして相対値で表示している。20 kHz における送波電圧感度は 152 dB re mPa/V at 1 mであり,受波電圧感度は -186.5 dB re V/mPa である。Tonpilzタイプの素子 4個を方形に並べ,放射面に整合層を 2層取付けることにより,帯域幅 8 kHzを確保するようにし ている。

4.3. 80 kHz 帯用送波器

キャリヤ周波数 80 kHz,帯域 40 kHz用の送波器について製作の経緯と,特性についてまとめ る。これまで,数千mの海底付近から水上の船舶に向けて信号を伝送することや,中層の水平方向 の数千mの通信を目的としていたので,吸収減衰の影響を考慮し,キャリヤ周波数は 20 kHzを用 いていた。しかしながら,画像を高速に伝送することや海中に設置した観測機器から大量のデータ を回収したいというニーズが高まってきており,さらに広帯域の通信が可能な方式が必要になった。

超音波送波器は一般にQが大きく,帯域を広く取ることが難しいが,キャリヤ周波数に対する帯域 幅の比として考えると,同じ比率でも,キャリヤ周波数が高くなれば帯域幅は広げられることになる。

これまでキャリヤ周波数を決めていた主要因は,吸収減衰であったが,通信距離を数百mに限定 することにより,吸収減衰の影響を小さくし,通信への適用を検討することにした。

135 140 145 150 155

10 15 20 25 30

TVR [dB re mPa/V at 1 m]

Frequency [kHz]

-200 -195 -190 -185 -180

10 15 20 25 30

OCV [dB re V/mPa]

Frequency [kHz]

Fig.4-12. Frequency response, upper, transmit, lower, receive.

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