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吸収損失の計測

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 33-36)

第2章 通信路特性

2.4. 海中の音波の減衰

2.4.3. 吸収損失の計測

実海域での計測を2007年2月5日に駿河湾奥部で実施した[26]。Fig.2-8に計測装置の配 置を示す。送信機の設置位置は,北緯35°2.9589’,東経138°39.9845’,水深は1,000 mで あった。送波器は,海底からの高度は約 9 mと,海底に極めて近い高度に設置した。受信 機は,水上船舶(海洋調査船「かいよう」)から鎧層付同軸ケーブルによって吊り下ろした。

この送受波器間を,トーンバーストパルス列を伝搬させることにより吸収損失の計測を 行った。パルス列は,60~100 kHzまで2 kHzステップで周波数を変化させた31パルスを1 組の列として伝送した。パルスの間隔は500 ms,各々のパルスの長さは1 msとした。Fig.2-9 に示すように,受信機は,送信機に対して鉛直から 67°の角度に沿って距離を変えながら 計測を行った。ほぼ一定の角度で計測を実施できたことから,送波器の指向特性の影響は 取り除くことができたと考えられる。Fig.2-10は,直距離350 mにおける周波数80 kHzの トーンバーストパルスの受信波形である。本図より,直接波から約5 ms遅れて海底反射波 が観測されていることが読み取れる。しかしながら,海底反射波は,明確に直接波と時間

数を算出した。さらに,受信機にはCTDセンサ(SeaBird SBE-9Plus)を併せて取付けてお り,各経験式による吸収減衰係数の値の計算には,このCTDセンサで計測された値を用い ている。なお,CTDセンサという名称は,C: conductivity,T: temperature,D: depthの3つ の物理量を計測するセンサであるということから一般的に用いられている名称である。

Transmission range:

270 - 580m Direction: 67 degrees from vertical direction

Water depth:

approximately 1,000m

Transmitter Receiver

R/V KAIYO

Fig.2-8. Experimental layout for the measurement of absorption loss.

Fig.2-9. Relative position of the receiver to the transmitter. X-Y origin, position of the transmitter, ◆, position of the receiver, solid line, 67degrees from vertical.

0 100 200 300

0 100 200 300 400 500 600

Vertical range [m]

Horizontal range [m]

- 24 -

0 2 4 6 8 10 12

-0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15

Time [ms]

Received level [V]

Fig.2-10. Example of received signals of a tone burst pulse. Slant range, 350 m, frequency, 80 kHz.

各経験式の計算に用いられた,実海域で計測されたパラメータをTable2-2に示す。本実 験の計測システムには,pHセンサは装備されていないので,pHの値は8.0と仮定した。各 式で算出された値と計測値をFig.2-11に示した。破線はThorpの式,点線はSchulkin-Marsh

の式,1点鎖線はFrançois-Garrisonの式,実線はFisher-Simmonsの式,及び□は計測値であ

る。この図より,周波数レンジ50~200 kHzは,各々の経験式で求められる値の差が,最も 大きくなる範囲であることが分かる。さらに,計測値は François-Garrison の式に最もよく 合っていることも分かる。計測時のパラメータが,François-Garrisonの式によるカバレッジ の範囲内であることが理由に考えられる。計測値はFisher-Simmonsの式のほうによりフィッ トしているように見えるが,この式では塩分濃度が35 ppt (Parts per thousand) と固定になっ ているので,これについては更なる検討が必要であると思われる。

上記より,80 kHz帯域においては,François-Garrisonの式を吸収減衰の推定に使用する ことが妥当であると言える。また,送波器の帯域内において,約8 dBの吸収減衰係数の偏 差がある。この結果から,広帯域音響通信システムを設計する際には,使用周波数帯域内 でのレベルイコライジングが必要であると言える。我々が広帯域通信システムの実用機を 製作する場合には,特に,送波器,受波器及び吸収減衰の各々の周波数特性を合成したも のをできるだけ正確に推定することが必要である。しかも,こうして推定された周波数特 性の逆特性を持つようなイコライザを検討する必要がある。

Table2-2. Measured parameters.

T [°C] S [ppt] D [m] pH

3.92 34.40 926.40

( 96.86 atm ) 8.0

1 10

10 100 1000

Frequency [kHz]

Absorption Loss [dB/km]

Fig.2-11. Measured and calculated characteristics of absorption losses.

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