第 3 章 事例分析
3.5 アンケート調査データの分析
3.5.6 定量的調査データの分析結果のまとめ
定量分析の結果、調査目的(3.4.2参照)に対する回答を、以下に記載する。
日中間で、プロジェクト管理項目に対する考え方の違いはあるか?
日中間でプロジェクト管理知識、特にスコープと基準に対する考え方の違い がある。気づきの時期には日中差があり、違いが明確な「開始時」「構築・テス ト時」は、日中とも違いに気づくが、中国に関しては、少数ではあるが「最終」
局面においても違いに気づく傾向があり、これは、経験が短いメンバーが経験 を積むことによって最後に理解をしたことを示唆している。経験が短い場合、
「違いが不明確」と「共通理解がもてない」、「違いが明確」と「共通理解がも てた」の関係がある点から、「共通理解」は経験と関係し、違いが明確な場合は 獲得されることがわかる。また、全般的に日本は、暗黙知の違い(不明確な違 い)を違いとしており、中国は、形式知の違い(明確な違い)を違いとしてい る傾向が強い。日本は、不明確な違い(何となく感じる曖昧な違い)をそのま ま許容することもあるが、明確化する場合もある。また、気づきの時期と明確 化の時期の境界は極めて曖昧である。
日中間で、考え方の違いに対する明確化方法は異なるか?
日本は、不明確な違い(何となく感じる曖昧な違い)をそのまま許容し、明 確化しない場合もある。中国は、違いは不明確であったため、明確化したと出 ている。これには、文化(曖昧さへの耐性)の影響、経験の影響が見て取れる。
明確化方法は、以下のとおりである。
日本:リアル傾向(暗黙知)、集団的明確化(ただし、中国のメンバーに対し ては、個人的な明確化方法)
中国:バーチャル傾向(形式知)、個人的明確化
リアルか、バーチャルかは、まずは、物理的な制約で決まるように思われる。
(問い合わせる相手が近くにいればリアルになる。)ただ、中国においては、イ ンスタントメッセージングを多用しているためバーチャル傾向があり、これは、
面子を重んじる文化の影響であると思われる。また、形式知が多い中国はバー チャルでのやりとりが多く、暗黙知が多い日本は、リアルな環境での移転が多 くなると思われる。
日中間で、知識の共有方法は異なるか?
中国の方が、共有化の割合が高い傾向がある。日本は、暗黙知としての違い であるため、共有がしにくく、一方、中国は形式知であるため、共有が容易な のではないか、と推測できる。共有化方法に関しては、以下のとおりである。
日本:リアル、個人化戦略、中国との比較において「個人的・集団的共有方 法」(暗黙知)
中国:バーチャル、コード化戦略、集団的・組織的共有方法(形式知)
日本は暗黙知の共有が含まれるため、文書化しにくいことと、伝達する内容 が多いため、文書化するのに労力がかかるため個人化戦略、個人的共有になっ ていると思われる。ただ、中国ほどではないが、日本も集団、組織データベー スでの文書による共有は行ってはいる。バーチャルか、リアルかは、物理的な 制約、文化影響、知識のタイプ(形式知の共有か、暗黙知の共有か)と関係す る。
日中間で、プロジェクトにおける共通理解を持つことができたか?
あまり、明確な回答が得られなかったが、中国のほうが、共通理解をもてた という傾向がある。
プロジェクトにおける知識はどのように変わったか?
違いの明確化時期に関しては、日本は、「開始時」、「要件定義」、「構築・テ スト」局面で明確化した傾向があり、中国は、「開始時」「構築・テスト」局面 で明確化した傾向がある。日本の明確化対象は、暗黙知の場合があり、糊しろ としての「スコープ、基準値の認識」の可能性が高く、そのため、初期段階で の明確化が必要であったと推測される。プロジェクト後半~終了時にかけては、
共有化が進むが、中国の方が共有化傾向は高い。全体として、「気づき」⇒「明 確化」⇒「共有化」という流れで変化が進む。
文化は上記すべての項目に対して、どのような影響を与えているか?
文化影響は、明確化方法および共有化方法の「知識経営スタイル」に影響を 与えていると思われる。特に明確化では、曖昧さへの耐性の影響があると出て いる。しかし、定量分析からは、それ以上の文化影響は把握できていない。
上記より、さらに分析が必要と思われる部分として、以下が挙げられる。
「日中間で、プロジェクトにおける共通理解を持つことができたか?」
「プロジェクトにおける知識はどのように変わったか?」
「文化は上記すべての項目に対して、どのような影響を与えているか?」
アンケート分析の結果のトライアンギュレーションとしての確認および、これ らの分析を行う目的で、インタビュー調査の結果を分析する。
図 3-30. アンケート分析結果のまとめ