第 3 章 事例分析
3.5 アンケート調査データの分析
3.5.2 アンケート調査データの分析 1 (クロス集計とカイ2乗分析)
図 3-8. アンケート調査の対象 - 職種
「i-1_クロス(考え方の違い)」の分析
図 3-9から、品質とリスクに対しては日中ともに約半数が、違いがあると回答を している。品質とリスクは、基準が計測可能な時間に比較すると暗黙知が多い 項目であり、この回答結果は理解できる。この結果より、3.2.11に記載した「何 となく感じる違和感」が存在する可能性があることが推測される。しかし、日 本と中国の回答差に関しては、クロス集計からは違いを読み取れない。
「i-2_クロス(違いの気づきの時期)」の分析
図 3-10から、違いに気づく時期に関しては、日本、中国ともに、開始時と構築・
テスト時に気づく割合が多い。一方では、中国は最後になって気づいたという 人も若干見受けられる。気づきの時期に関しては、日中差が認められる。
図 3-9. 管理項目に対する考え方の違い(「i-1_クロス(考え方の違い)」)
図 3-10. 違いに気づいた時期(「i-2_クロス(違いの気づきの時期)」)
「i-1_カイ2乗(考え方の違い)」の分析
次に、日中間で差があるかどうかを、カイ 2 乗分析で検定し、クロス集計に見 られる変数間の関係性が統計的に有意であるかどうかを示す(表 3-10)。まず、
「日中間で国籍と管理項目(品質、時間、リスク、ビジネス)ごとの考え方の 違いは関係があるか?」に対して、SPSS カイ2乗検定の結果では、以下のとお り、有意でない(独立している=関係がない)という結果となった。
暫定有意確率(両側)=P値=0.815 > 0.05
このため、国籍と管理項目(品質、時間、リスク、ビジネス)ごとの考え方の 違いは関係がない、日中差がないということが言える。つまり、日本も中国も 双方とも、考え方に違いを感じる傾向はほぼ同じようである。
「i-2_カイ2乗(違いの気づきの時期)」の分析
一方、「日中間で国籍と、違いの気づきの時期は関係があるか?」に対して、SPSS カイ 2 乗検定の結果では、以下のとおり、有意である(独立していない=関係 がある)という結果となった。
暫定有意確率(両側)=P値=0.007 ≦ 0.05
このため、国籍と気づきの時期は関係がある、日中差があるということが言え
る。つまり、母集団において日本と中国においては、気づきの時期は異なる。
表 3-10: カイ2乗分析 - プロジェクト管理項目の考え方の違いと気づきの時期
変数 Pearson のカイ 2 乗による
漸近有意確率 (両側) 日中差 国籍と管理項目ごとの考え方の違いは関係が
あるか?(「i-1_カイ2乗」(考え方の違い))
0.815 > 0.05
(有意でない=関係がない)
差がない
国籍と気づきの時期は関係があるか?(「i-2_
カイ2乗」(違いの気づきの時期))
0.007 ≦ 0.05
(有意である=関係がある)
差がある
大項目i)の分析結果(考え方の違いと気づきの時期):
日中ともに、考え方の違いを感じており、特に品質とリスクに関しての違いが 多い。違いに気づく時期は異なる。時期の違いでの、「中国は最後になって気づ いた」という部分では、経験の差による結果であると思われる。日本が要件定 義での気づきが多い点は、業務内容の違いによるものと思われる。このように、
気づきの時期は、相互作用が発生する時期における「経験の差」が影響を与え ていると想定される。日本と中国は「経験差」のある集団間であるため、カイ2 乗分析の「差がある」という結果と一致する。考え方の違いは、暗黙知の中で も「糊しろ」のような基準に対する考え方の違いである可能性があることが推 測される。
大項目ii) のクロス集計およびカイ2乗分析 – 分析1(明確化と変化)
ii). 違いを明確化したか?したとするならば、その時期はいつか?その方法はど
のような方法か?
(「ii-1_クロス(違いの明確さ)」、「ii-1_カイ 2 乗(違いの明確さ)」、「ii-2_
クロス(違いの明確化)」、「ii-2_カイ2乗(違いの明確化)」「ii-3_クロス(明 確化による変化)」、「ii-3_カイ2乗(明確化による変化)」(表 3-8の参照記号))
質問に対する分析結果を以下に示す(図 3-11、図 3-12、図 3-13)。「違いは明確 であったか」(図 3-11)をまず質問し、明確ではないと回答した場合に、「明確 化したかどうか」(図 3-12)を質問している。また、明確化した場合に、それに よって、「管理項目に対する考え方が変わったかどうか」(図 3-13)を質問して いる。時期と方法に関しては、別途、分析2で記載する。
「ii-1_クロス(違いの明確さ)」の分析
図 3-11から、中国の方が、明確に違いがあると回答した割合が多いことがわか る。一方、日本は、明確ではないという回答割合が、暗黙知の多い品質とリス クにおいて多くなっている。ii) では、違いの中でも、日本は暗黙知に関する部 分に違いを、中国は、形式知に近い部分に違いを感じていることがわかる。日 本の違いは、何となく感じる曖昧な違いであり、中国は、これは違うという明 確な違いを感じている。つまり、違うという感じ方が違う。
「ii-2_クロス(違いの明確化)」の分析、「ii-3_クロス(明確化による変化)」 の分析
次に、明確ではない部分を明確化したかどうかに関しては(図 3-12)、中国が「明 確化した」と回答した割合が多くなっている。また、明確化によって考え方が 変わったかどうかに関しても、中国が「変わった」と回答した割合が圧倒的に 多くなっている(図 3-13)。ただし、中国は、明確に違いがあると回答した割合 が多いため、「明確ではない部分を明確化した」という人数は少ない。中国は、
違いは不明確であったため、明確化し、その結果、考え方が変わった、日本の 場合は、不明確な違い(何となく感じる曖昧な違い)をそのまま許容し、明確 化しない、そのため考えもあまり変わらない、ということになる。これらには、
曖昧さへの耐性(Tolerance of Ambiguity )の影響が見て取れる。
図 3-11. 違いの明確さ(「ii-1_クロス(違いの明確さ)」)
図 3-12. 違いの明確化(「ii-2_クロス(違いの明確化)」)
図 3-13. 明確化による考えの変化(「ii-3_クロス(明確化による変化)」) 次に、日中間で差があるかどうかを、カイ 2 乗分析で検定し、クロス集計に 見られる変数間の関係性が統計的に有意であるかどうかを示す(表 3-11)。
「ii-1_カイ2乗(違いの明確さ)」の分析
「日中間で国籍と考え方の違いが明確であるかどうか?」に対して、SPSS カイ 2乗検定の結果では、以下のとおり、有意である(独立していない=関係がある)
という結果となった。
暫定有意確率(両側)=P値=0.034 ≦ 0.05
このため、国籍と考え方の違いの明確さは関係がある、日中差があるというこ とが言える。つまり、日本は、「何となく違う」と思い、中国は「これは違う」
と思っている、ということが推測される。
「ii-2_カイ2乗(違いの明確化)」の分析
一方、「日中間で国籍と違いの明確化は関係があるか?」に対して、SPSS カイ2 乗検定の結果では、以下のとおり、有意でない(独立している=関係がない)
という結果となった。
暫定有意確率(両側)=P値=0.189 > 0.05
このため、国籍と明確化は関係がない、日中差がないということが言える。つ まり、母集団において日本と中国においては、明確化に関しては差がないとい うことになる。しかし、前述の日中間において、考え方の違いの明確さは異な る、と出ているため、そもそも「違い」の対象が異なっている。日本は、「何と なく違う」という「曖昧な違い」に対して、明確化しようとしているか、とい う質問になっており、中国に対しては、「これは違う」という「明らかな違い」
に対して、明確化しようとしているか、という質問になっている。そのため、「国 籍と違いの明確化は関係があるとはいえない」という結果になっているが、こ の統計結果は、検定としては判断には使用できないと思われる。
「ii-3_カイ2乗(明確化による変化)」の分析
明確化した場合に、それによって、「管理項目に対する考え方が変わったかどう か」に対して、SPSS カイ二乗検定の結果では、以下のとおり、有意でない(独 立している=関係がない)という結果となった。
暫定有意確率(両側)=P値=0.069 > 0.05
このため、国籍と明確化による考え方の変化は統計的には関係がない、日中差 がないということが言える。
表 3-11: カイ2乗分析 -違いの明確化
変数 Pearson のカイ 2 乗による
漸近有意確率 (両側) 日中差 国籍と考え方の違いの明確さは関係がある
か?(「ii-1_カイ2乗」(違いの明確さ))
0.034 ≦ 0.05
(有意である=関係がある)
差がある
国籍と明確化は関係があるか?(「ii-2_カイ2 乗」(違いの明確化))
0.189 > 0.05
(有意でない=関係がない)
差がない
国籍と明確化による考え方の変化は関係があ るか?(「ii-3_カイ2乗」(明確化による変化))
0.069 > 0.05
(有意でない=関係がない)
差がない
大項目ii) の分析1(明確化と変化)の結果:
国籍と考え方の違いの明確さは関係がある、日中差があるということが言える。
つまり、日本は暗黙知の「何となく違う(曖昧な違い)」違いであり、「糊しろ」
に関する部分を含む可能性を示唆している。中国は、「これは違う(明らかな違 い)」違いであり、形式知に近い部分に違いを感じている。国籍と明確化、国籍 と明確化による考え方の変化は統計的には、日中間で差がない、関係がないと 出ているが、中国に関しては、クロス集計においては、明確化傾向があり、ま た、明確化の結果、考え方が変わったという割合も多い。中国は、違いは不明 確であったため、明確化しており、明確化の結果、考えが変わったと推測され る。日本は、「何となく違う」という不明確さを受け入れ明確化をしない、考え が変わったという割合も中国と比較をすると高くはないと思われる。いずれも、
曖昧さへの耐性(Tolerance of Ambiguity )の文化影響が高い部分であると思われ る。
大項目ii) のクロス集計– 分析2(明確化時期と方法)
ii). 違いを明確化したか?したとするならば、その時期はいつか?その方法はど
のような方法か?
(「ii-4_クロス(明確化の時期)」、「ii-5_クロス(明確化の相手)」、「ii-6_ク
ロス(明確化の方法)」(表 3-8の参照記号))
質問の、時期と方法に対する分析結果を以下に示す(図 3-14、図 3-15、図 3-16)。 中国は「明確ではない部分を明確化した」という人数は少ないため、統計によ る検定は行わず、クロス集計でデータの特徴を把握する。
「ii-4_クロス(明確化の時期)」の分析